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歯周病専門医のしまぶくろ歯科医院です。

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Q6.歯周病治療の将来はfuture

A.新しいお薬の開発が試みられています。

健康な歯肉

<画期的なお薬が世に出るかも>

歯周病の原因であるばい菌(プラーク)を取り除くと歯ぐきの炎症が治まってきます。しかしばい菌を取り除いたり、歯ぐきの手術をしても失われた骨が必ずしも元の健康な状態にまで戻る訳ではありません。
その失われた歯のまわりの骨を”再生”させようとする試みが世界中の歯周病研究者の間でなされています。
切り傷や骨折などケガをしたとき清潔にし安静に保てばその傷は治ってきます。あたりまえのような事ですが、傷が治る際に傷の部分では色んな細胞が色んな活性物質を出して、細胞を増やしたり傷を修理するものの産生を促したりします。そこでそのような傷の治るときに出てくる活性物質を積極的に応用すれば傷の治りが早くなるのでは、と考えられます。
現在そのような発想で歯周病によって失われた骨を”再生”させようとするお薬の開発がなされようとしています。
もしこのようなお薬の開発が成功すれば将来的には歯周病で骨がなくなった部分をお薬を用いて積極的に元の健康な状態にもどすことが可能となるかもしれません。→<お薬(リグロス)が世に出ることになりました>

そしてついに.歯周組織再生治療薬 リグロス(科研製薬)誕生FGF-2

<<新情報>>
科研製薬が25年の長きに渡って研究を重ねてきた、新しい歯周組織再生治療薬の製造販売承認を平成28年9月取得しました。「リグロス」と呼ばれるもので、組換え型ヒトbFGF(塩基性線維芽細胞成長因子)を有効成分とする世界初の歯周組織再生医薬品です。 

参照ページ
http://www.kaken.co.jp/nr/release/nr20160928.html

サイトカイン・増殖因子は生き物の成長、免疫や傷が治る時などに大活躍する物質で、たくさんの種類があって、色んな作用を持っている。
線維芽細胞増殖因子(FGF-2、bFGF)は細胞や組織の増殖、分化に関わる因子で、生体内で産生される物質である。これらサイトカイン・増殖因子を歯周組織の再生に応用しようとする研究がここそこと出てきた。BMP2とFGF-2がその代表格であったように思う。
BMP-2は最右翼だったかもしれない。何せ「骨形成因子」と称することからわかるように、骨形成を強力に誘導、促進する因子なので、歯周病で失われた骨を再生させるのには最適なように思えた。確かに、学会発表でみるとBMP2は動物実験で骨の形成を促進していた。ところがよからぬことが起こる症例もあった。歯と骨の癒着や歯の吸収である。
一方の「リグロス」の有効成分として世にでることとなったbFGFであるが、培養器内で細胞が分化して骨の様な石灰化物形成を促進するかどうか調べたところ、 こちらは歯周組織の要である歯根膜細胞の石灰化物形成を抑制した。あかんやん。
ところがどうして、動物実験で歯の周りの骨を削って歯周病が生じたようなモデルを作り、bFGFをふりかけたところ、何と、コントロールと比べて早くにたくさんの骨が出来たのである。
物事には順番とタイミングがある、骨ができて欲しいからと、じゃあ骨をガンガン作らせましょうでは具合悪い。
BMPは確かに骨を作らせた。しかし家を作るのに、コンクリートを無秩序にどんどん流し込んでもちゃんとした家はできない。
bFGFの何が良かったのか。
歯と骨との間にはクッションの役割をする両者の連結組織である歯根膜がある。先に骨ができてしまうと、その組織の入る余地がなくなり、しかも骨と歯が非生理的な状態で接することになる(癒着や吸収が生じたのはそのためと思われる)。骨の形成はちょっと待っておいて欲しい、順番は先に歯根膜組織だ。骨など硬組織形成は後回しがいいのだ。さらにさらに、通常の歯周外科では歯の根の面にそって上皮細胞が真っ先に入り込んでくる。これも理想的な再生には邪魔な存在だ。傷口を早く治すという意味ではいいのだが、しっかりした接着を伴う理想的な治癒にはこれも具合悪い。bFGFはこの上皮細胞の増殖を抑制した。そこで合点がいく。上皮の増殖や石灰化を抑制して、歯根膜細胞の増殖、遊走を活性化するbFGFは秩序だった歯周組織再生にとっても好都合な作用を持ち合わせていたのだ。
bFGFは、家を作るのに携わる人手をどんどん集める(細胞の増殖や遊走促進)、材料を集める(細胞外基質産生上昇)、物資輸送の道路やインフラを整備する(血管新生)、といったことをするのだ。再生によりよい環境作りをしていると考えられた。で結果的に秩序だった機能的な歯周組織を再生させた。
<開発が始まったのは25年前>
bFGFが歯周組織の再生を促すと確信があってプロジェクトが始まったわけではない。

<参考文献>

FGF-2 stimulates periodontal regeneration: results of a multi-center randomized clinical trial.
Kitamura M, Akamatsu M, Machigashira M, Hara Y, Sakagami R, Hirofuji T, Hamachi T, Maeda K, Yokota M, Kido J, Nagata T, Kurihara H, Takashiba S, Sibutani T, Fukuda M, Noguchi T, Yamazaki K, Yoshie H, Ioroi K, Arai T, Nakagawa T, Ito K, Oda S, Izumi Y, Ogata Y, Yamada S, Shimauchi H, Kunimatsu K, Kawanami M, Fujii T, Furuichi Y, Furuuchi T, Sasano T, Imai E, Omae M, Yamada S, Watanuki M, Murakami S.
J Dent Res. 2011 Jan;90(1):35-40. .

Periodontal tissue regeneration by signaling molecule(s): what role does basic fibroblast growth factor (FGF-2) have in periodontal therapy?
Murakami S.
Periodontol 2000. 2011 Jun;56(1):188-208.

Fibroblast growth factor-2 stimulates directed migration of periodontal ligament cells via PI3K/AKT signaling and CD44/Hyaluronan interaction.
Shimabukuro Y, Terashima H, Takedachi M, Maeda K, Nakamura T, Sawada K, Kobashi M, Awata T, Oohara H, Kawahara T, Iwayama T, Hashikawa T, Yanagita M, Yamada S, Murakami S.
J Cell Physiol. 2010 Sep 20

Fibroblast growth factor-2 regulates the cell function of human dental pulp cells.
Shimabukuro Y, Ueda M, Ozasa M, Anzai J, Takedachi M, Yanagita M, Ito M, Hashikawa T, Yamada S, Murakami S.
J Endod. 2009 Nov;35(11):1529-35.

Fibroblast growth factor-2 regulates expression of osteopontin in periodontal ligament cells.
Terashima Y, Shimabukuro Y, Terashima H, Ozasa M, Terakura M, Ikezawa K, Hashikawa T, Takedachi M,
Oohara H, Yamada S, Murakami S.
J Cell Physiol. 2008 Sep;216(3):640-50.

Basic fibroblast growth factor regulates expression of heparan sulfate in human periodontal ligament cells.
Shimabukuro Y, Ichikawa T, Terashima Y, Iwayama T, Oohara H, Kajikawa T, Kobayashi R,
Terashima H, Takedachi M, Terakura M, Hashikawa T, Yamada S, Murakami S.
Matrix Biol. 2008 Apr;27(3):232-41. <BR>

Periodontal tissue regeneration using fibroblast growth factor-2: randomized controlled phase II clinical trial.
Kitamura M, Nakashima K, Kowashi Y, Fujii T, Shimauchi H, Sasano T, Furuuchi T, Fukuda M, Noguchi T, Shibutani T, Iwayama Y, Takashiba S, Kurihara H, Ninomiya M, Kido J, Nagata T, Hamachi T, Maeda K, Hara Y, Izumi Y, Hirofuji T, Imai E, Omae M, Watanuki M, Murakami S.PLoS One. 2008 Jul 2;3(7):e2611.

<リグロス誕生を祝って>

リグロス開発に関わった

リグロス


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