メニュー

難しくてもちょっと知りたい最新の歯周病治療・歯周病研究 
論文紹介p047(no.196-200)

No.200
Antibacterial effects of blackberry extract target periodontopathogens.
Gonz lez OA, Escamilla C, Danaher RJ, Dai J, Ebersole JL, Mumper RJ, Miller CS.
J Periodontal Res. 2013 Feb;48(1):80-6.

抗菌性薬剤は口腔内疾患の予防とコントロールのために価値ある付加的な治療を提供することができる。長期間の使用に制限がある場合には、特異的な活性があっても副作用の少ない、自然界に存在するような新規の作用物質の開発が待たれる。ここで、我々は口腔内の片利共生菌と歯周病原性菌に対して、ブラックベリー抽出物(BBE)が持つ抗菌性をin vitroで検討した。
10種類の口腔細菌の物質代謝におよぼす、BBEと画分化したBBEの影響が比色定量水溶性テラゾリウム-1アッセイを用いて評価された。Fusobacterium nucleatumに対する全BBEの殺菌効果はコロニー形成ユニット(CFUs)数を定量することにより決定された。細胞毒性は口腔由来上皮(OKF6)により決定された。
BBEは350-1400μg/mlの濃度でP.gingivalis、F.nucleatumとStreptococcus mutansの代謝活性を減弱させた。F.nucleatumに対して観測された代謝活性の減少は、殺菌性があることと一致して、わずか1時間BBEに暴露された後にみられるCFU数減少に相当するものだった。BBEのアントシアニン豊富な画分はF.nucleatumの代謝活性を減少させたが、P.gingivalisやS. mutansのそれは減少させなかった。このことはBBEには種特異的な物質の存在することが示唆された。口腔上皮の生存率は、6時間以下で総BBE (2.24-1400μg/mL) に暴露された後でも減少しなかった。
BBEは片利共生菌にわずかの効果を示した一方、口腔歯周病原性菌の代謝活性を変化させた。この研究で示されたBBEの特異的な抗菌作用は、過去に示された抗炎症および抗ウイルスとは何ら矛盾せず、歯周組織感染の予防治療や補足的治療として、BBEは期待され
る。
(抗菌、抗細菌、ブラックベリー、歯周炎、歯周病原性細菌、fusobacterium)
(歯周病治療として抗菌薬剤であるクロルヘキシジンマウスリンスなどは有用であるが、その副作用(歯の着色、腐食作用など)が問題である。ブラックベリーには抗炎症、抗ウイルス作用などがあり、歯周病原性細菌への効果が期待される。ということで、ビトロの実験ではあるが紹介する。
ブラックベリーにはポリフェノールが含まれこのこれによる抗菌作用が考えられる。ポリフェノールの一種であるアントシアニンは金属イオンのキレート剤でもあり、細菌の金属イオン利用を阻害してその生育を阻害することが考えられる。ただ、ブラックベリー抽出物はF.nucleatumに加えて、P.gingivalis.とS.mutansに効果があったが、アントシアニン濃縮物はF.nucleatumのみへの作用だったため、ブラックベリーに存在する非ポリフェノール物質の何かがP.ginigvalisやS.mutansに効果があったと考えられる。
ブラックベリーという自然の力を利用した抗菌剤が開発され、臨床実験で効果がありました、なんてヒトへ応用した報告がでてくるかもしれない、、、かもね。)
(平成25年2月12日)


コーヒーブレイク

好き勝手に書き込んできたこの論文紹介は次回200に達する。どれぐらい閲覧されているのだろう。ちょっと調べてみた。
ページビュー数は直近1年でのべ1749ページ数となっていた。月145ページほどで、一日に4、5回閲覧されている計算になる。1749閲覧のうち、新規閲覧は765で残り984は新規でない、つまりリピーター。平均ビュー時間は51秒。地域別では東京からの閲覧が最も多いようだ。
このサイトは医院のトップページがもちろん最も多く閲覧されているのだが、論文紹介の入り口となるこのページ(perioCo000top)は7番目に多く閲覧されていて、全体のページ閲覧に占める割合は3.18%だ。
これらの数字が多いか少ないかはわからない。比較するデータがないからね。


No.199
Hydroxyapatite/β-tricalcium phosphate and enamel matrix derivative for treatment of proximal class II furcation defects: a randomized clinical trial.
Peres MF, Ribeiro ED, Casarin RC, Ruiz KG, Junior FH, Sallum EA, Casati MZ.
J Clin Periodontol. 2013 Mar;40(3):252-9.

ハイドロキシアパタイト/β-リン酸三カルシウム(HA/β-TCP)単独あるいはエナメルマトリックスルデリバティブ(EMD)と併用して隣接面分岐部を治療した場合の臨床的評価がこの研究の目的である。
プロービング深さ(PPD)5mm以上でプロービング時出血のある、隣接面クラスII分岐部欠損を少なくとも1カ所を有する30人の患者が研究に参加した。欠損はHA/β-TCP群(n=15);オープンフラップデブライドメント(OFD)+HA/β-TCP充填、あるいは HA/β-TCP-EMD 群 (n=15); OFD+HA/β-TCP+EMD投与に割り当てられた。プラーク(PI)と歯肉炎指数(GI)、PPD、相対的歯肉辺縁位置(RGMP)、垂直と水平的アタッチメントレベル(RVALとRHAL)、と分岐部の診断がベースライン時と6ヶ月後に評価された。
両群とも治療後著しい改善を認めた(p<0.05)。しかしながら、いかなる単一のパラメーターにおいても群間には差を認めなかった(p>0.05)。6ヶ月後、HA/β-TCPとHA/β-TCP-EMD 群にVCAL獲得が1.47±0.99と2.10±0.87mmであった一方、RHCAL獲得は1.47±1.46と 1.57±1.58mm (p>0.05)であった。 HA/β-TCPとHA/β-TCP-EMD群におけるRVBLとRHBL獲得はそれぞれ1.47±1.13と1.70±1.26mm、と 1.90±1.11と1.70±1.37mmであった(p>0.05)。HA/β-TCP-EMD群は7症例の分岐部閉鎖に対し、HA/β-TCP群は4症例であった (p>0.05)。
この臨床研究では、両治療方法とも検討した全ての臨床指数で改善がみられた。しかし、隣接面クラスII分岐部欠損の閉鎖は未だ予知しがたいと言える。
(エナメルマトリックスディリバティブ、ハイドロキシアパタイト-β 三カルシウム、リン酸、隣接面分岐部、再生治療)
(イントロを補足紹介する。EMDの有用性は知られているものの、こと隣接面分岐部に応用した場合の成績はあまりよろしくない。一方、HAやβ-TCPが臨床応用され、骨伝導性や骨欠損の充填を高めることが知られている。ということで、隣接面分岐部に両者を併用するとどうなるか、とうこと。
結果は両者を併用したからといって、優れた結果となるわけではなかった。考察として、コントロール群すなわちHA/β-TCPだけでも症状の改善がみられるので、HA/β-TCPに有効性があって、EMDがそれを上回るあるいは付加的な効果を発揮するものではなかった、と述べられている。
今回の症例はほとんどが遠心分岐部で、クラスII分岐部が閉鎖したのは、HA/β-TCPとHA/β-TCP+EMDでそれぞれ26.6%と46.6%であり、クラスIIがクラスIに改善したのが同様に66.5%と46.6%で、クラスIIのまま変化しなかった症例は両者とも6.6%であった。クラスIなら非外科的処置が有効なことを考えると、概ね良好な経過と述べられている。
とかくGTRと比較されるEMDであるが、GTRに比較するとEMDは再生のためのスペースメイキング力に劣ることが指摘される。この論文の考察でもGTRやEMDを用いた臨床研究の成績を引き合いにだしているが、パラメーター測定方法の違いなどから直接その数字を比較するのは難があると述べている。)
(平成25年2月11日)


No.198
Effect of the timing of restoration on implant marginal bone loss: a systematic review.
Suarez F, Chan HL, Monje A, Galindo-Moreno P, Wang HL.
J Periodontol. 2013 Feb;84(2):159-69.

インプラント歯科の進歩は、インプラントの早期補綴による治療期間の短縮化を促してきた。補綴修復の時期がインプラント辺縁の骨レベルに影響を及ぼすかどうか、系統だっては解析されてこなかった。この研究の目的は、次のプロトコールで歯冠修復されたインプラント間で辺縁骨レベル(MBL)を比較することである。そのプロトコールとは、1)即時修復/荷重(IR/L)、2)早期荷重(EL)、と3)従来型荷重(CL)である。
3つのデータベースから電子文献(2011年11月まで)が検索されて、インプラント関連の雑誌から手検索がおこなわれた。12ヶ月以上のフォローがあり、IR/L、ELあるいはCLでおこなわれたインプラント間でMBLを比較した英語論文で、ヒト対象の臨床論文が含まれた。加えて、インプラントの最小数が各群10以上とした。即時埋入(IP)と遅延埋入(DP)によるインプラントが含まれ、別々に解析された。含まれた無作為臨床研究(RCTs)に対するパブリケーションバイアスの評価がおこなわれた。
最初の検索で1640論文が選択され、そのうち27論文がさらに適格と評価された。最終的に、11論文(8つのRCTs、2つのコントロール臨床研究、と1つの後ろ向き研究であった)が研究目的に合致し、4群に分けられた:1)IR/L+DP vs CL+DP(n=6)、2) IR + DP vs EL + DP (n = 2)、 3) EL + DP vs CL + DP (n = 1)と 4) IL +IP vs CL + IP (n = 2)。 グループ1に対しておこなわれたメタ解析ではIR/L処置が有利ではあったが有意差はなく(p=0.33)、平均MBLにおいて0.09 mm (95% 信頼区間 = -0.27 to 0.09 mm)の差を示した。インプラント設置レベルで補正した後、グループ2から4に対して、MBLに有意差はみられなかった。8つのRCTsでパブリケーションバイアスの中等度から高度リスクで、決定された。
このメタ解析は歯冠修復の時期の影響がインプラントMBLに及ぼす影響を示せなかった。歯冠修復のプロトコール選択はMBL以外の因子に依存すべきだ。
(歯槽骨、デンタルインプラント、デンタルインプランテーション、歯科補綴デザイン、歯科補綴、インプラント支持)
(インプラント埋入後にいつ補綴処置をおこなうことができるのか。患者サイドからは早期の補綴処置圧力がかかる。ここで群分けされて
いる時期だが、2004年のCochranらのコンセンサスに従っていて、IRはインプラント埋入後48時間以内の歯冠修復(ただし負荷はかけない)で、ILは同
じく48時間以内だが負荷をかける場合。そしてELはインプラント設置後48時間以降3ヶ月を越えない場合だ。
CLプロトコールは治癒期間中インプラントに負荷をかけず、治癒を妨げないようにするという理論だ。それに対して、IR/Lは、インプラント
と骨の機械的嵌合によって得られる一時的な安定性が、負荷がかかることによって生じる微少環境変化を保護してくれるという発想を基にしている。
MBLには早期のMBLと遅延型とがあり、後者はインプラント周囲炎との関連が注目されている。早期についての原因は不明であるが、1)外科的な侵襲、2)フィクスチャーとアバットメント間の微小ギャップの存在、3)生物学的幅径の修復によるリモデリング過程、4)咬合の過荷重などが仮説として想定されている。
IR/LとELプロトコールにおけるインプラント挿入時のトルクは初期固定に重要で、動物実験でトルク9.8Ncmごとにインプラント不成功率が20%づつ減少するという報告がある。32Ncm以上が必要だという報告があったようだが、最近の臨床研究ではオッセオインテグレーション獲得に25Ncmで良好な臨床成績を得るのに十分だと述べられている。ただこのレビューで対象となった研究からは、20Ncm以上が必須ではないかと考察されている。
早期の負荷が可能であればそれにこしたことはないであろう。少なくとも短期(1年)のMBLに関して言えば、即時・早期と通法で明らかな差があるとは言えず、いずれがよいかという信頼できるデータが集積していない、というのが現状のようだ。長期ではどうかも、もっとわからないのだが、MBLが生じるのはその大部分が最初の1年以内なようで、そのことと数少ない長期研究とをあわせ考慮すると長期でも変わらないのではないかと述べられている。
もちろん今回の研究対象としているのはMBLだけで、それ以外のパラメーターやインプラント周囲炎に関する検討がされているわけではない。即時、早期負荷を切望する人はもっとエビデンスが欲しいだろう。)
(平成25年2月10日)


No.197
Tongue coating: related factors.
Van Tornout M, Dadamio J, Coucke W, Quirynen M.
J Clin Periodontol. 2013 Feb;40(2):180-5.

舌苔と口臭との明らかな関連性が幾つかの臨床研究で報告されている。この舌苔が何故、いつ形成されるかは未だあきらかではない。この研究の目的は、口臭を訴える集団において舌苔の存在に関連している可能性のある因子を解析することである。
患者は口臭外来(UZ Leuven)からリクルートされた。病歴、食事、口腔清掃習慣についての情報が質問票から得られた。官能スコアと呼気中の硫化化合物、舌背の解剖学的特徴、舌苔の量(宮崎、Winkel、Winkel変法の三つの指標に従った)、舌苔重量、と唾液流量についてのデータが記録された。
口腔清掃状態が舌苔の存在に対する最も強力な決定因子であった。喫煙、義歯装着、歯周組織の状態、と食習慣もまた、明瞭ではなかったものの関連があった。
舌苔の存在は幾つかの因子と関連があり、そのうち口腔清掃状態が最も強い相関因子であった。
(悪臭、口臭症、舌、舌苔)
(口腔清掃状態(プラークスコア)は舌苔の存在と関連があったが、定期的なブラッシングは関連が弱く、舌ブラシの使用とは有意な関連性がみられなかった。ブラッシングや舌ブラシの使用は患者の質問票をもとにしているので、解釈には注意を要するということ。
ソフトフード摂食習慣とマイルドな関連がみられている。ソフトフードって何だ。ミルク、ヨーグルト、チーズ、プディングなどと書かれている。ちなみにハードフードとは、リンゴ、梨、シリアルなどで、後者は摂食時に舌背清掃効果があるのに対し前者は逆に舌苔を増加させる食物ということだろう。
唾液流量が少ない(<0.1 ml/min)と舌苔増加するという報告があるが、今回は関連がみられなかった。歯周病の存在も同様だ。しかし、<0.1 ml/minの唾液量の人も歯周病の人もその割合が少なかったようなので、症例数が十分あれば関連がでるのかもしれない。)
(平成25年2月9日)


No.196
Incidence and magnitude of bacteraemia caused by flossing and by scaling and root planing.
Zhang W, Daly CG, Mitchell D, Curtis B.
J Clin Periodontol. 2013 Jan;40(1):41-52.

この研究の目的は(1)スケーリング・ルートプレーニング(SRP)と比較してフロッシングによる菌血症の出現頻度、程度、細菌の種類を検索し、(2)臨床的パラメーターとの関連を同定することである。
歯周炎患者30人に対して、別々の診療時に全顎のフロッシングと1回の1/4顎SRPがおこなわれた。ベースライン時、フロッシング後30秒と10分、SRP開始5分後、SRP完了後30秒と10分に血液サンプルが採取された。総菌血症と 緑色レンサ球菌菌血症 (VSB)が検索された。
総菌血症出現頻度はフロッシング時には30%であり、SRP時には43.3%であった(有意差なしp=0.21)。フロッシングとSRPによるVSBの出現頻度はともに26.7%であった。フロッシングは SRPよりも総菌血症の高い平均マグニチュードであった(7.4±16.2 CFU/ml対 2±3.4 CFU/ml)。しかし、両者の差に有意差はなかった(p=0.09)。 緑色レンサ球菌はフロッシング菌血症から分離されたうちの11.4%であり、SRPでは7.6%であった。臨床的パラメーターと出現頻度あるいはロッシング後の菌血症のマグニチュードとに関連はなかった。歯肉の炎症はSRP後の総菌血症の出現頻度(p=0.01)やVSBの出現頻度(p=0.001)と関連がみられた。いかなる臨床パラメーターとも、SRP後の総菌血症あるいはVSBのマグニチュードと関連はみられなかった。
総菌血症あるいはVSBの出現頻度やマグニチュードにおいて、フロッシングとSRP間には差がなかった。この所見は、感染性心内膜炎を予防するための抗生物質予防投与の再評価する際に重要である。
(抗生物質予防投与、菌血症、フロッシング、感染性心内膜炎、口腔清掃、スケーリング・ルートプレーニング、 緑色レンサ球菌)
(ある種の歯科治療が菌血症を惹起するということで、感染性心内膜炎のリスク患者(弁膜症や弁置換術後患者など)に対しては、歯科治療に際し予防的な抗生物質投与がガイドラインとして示されてきた。しかし、この5年ほどの間に各国のガイドラインが改定され、抗生物質の投与が必要とされる歯科治療が従前に比べると限定されてきた。何故なら、抗生剤投与が必要とされてきた歯科治療であっても、その処置による菌血症の発生が日常の口腔清掃によるそれとほとんど変わらないことがわかってきたからだ。実際には菌血症がどの程度(菌血症の程度や持続)であれば、IEリスクが生じるのか詳細なエビデンスはない。
フロッシングによる30%の菌血症は過去の報告(20、22、38と40%など)と比べるとまあ変わらない。SRP後の43%についても、過去の13、51、70、75、81と90%に比較して、その範囲内である。
今回特にVSBについて述べているのは、 緑色レンサ球菌がIEと関連する重要な口腔細菌であり、IEの予防のために用いる抗生物質のターゲットとなる細菌はこの 緑色レンサ球菌だからだ。
フロッシング30秒後菌血症30%が10分後には16.7%、VSBは26.7%が0%になっていた。生体の細菌駆逐は効果的におこなわれているといえよう。SRPでは菌血症が処置開始5分後に33.3%、処置後30秒で16.7%、処置10分後には6.7%であった。SRPのは処置時間は平均42分なので、6.7%の人は50分ほどの菌血症が続いていることになる。フロッシングは平均4.4分なので、菌血症の持続時間は圧倒的にSRPの方が長いと言える。ただ菌血症の持続時間がIEリスクをどの程度増加させるのかについての研究はないようだ。
フロッシング時の出血が菌血症出現と関係あるか、については今回の研究では否だった。これは過去の幾つかの報告と一致している。ただブラッシング時の出血とは関連あり、とする報告があるので、同じ口腔清掃でも方法が異なれば違う傾向が出るのかも知れない。)
(平成25年2月8日)



癒しのクスリ箱、息抜きにブログをどうぞ