x

メニュー

難しくてもちょっと知りたい最新の歯周病治療・歯周病研究 
論文紹介p091(no.416-420)

No.420
Predictors of long-term outcomes in patients undergoing periodontal maintenance.
Martinez-Canut P, Llobell A, Romero A
J Clin Periodontol. 2017 Jun;44(6):620-631.

 この後ろ向き研究はメインテナンス患者の長期予後、喫煙、ブラキシズムと主要な臨床的およびレントゲン的変数間の関連を解析して、メインテナンス患者のベースライン状態を特徴付けることを目的とする。
 中等度から重度歯周炎患者174人のサンプルが、喫煙とブラキシズム、および歯周病が原因で歯を失う(TLPD:0、1-2および>2本~)割合に従って均一な亜集団に割り当てられた。亜集団内の変数の関連性と分布(χ² test)が解析された。
 喫煙とブラキシズムは有意に高いTLPDと関連が見られた。垂直性骨欠損(p < .0001)とアブフラクション(p < .0001)はブラキシズムと関連があり、特にブラキシズムとTLPD>2と関連があった。分岐部欠損(p = .0002)、レントゲン不透過性の歯肉縁下歯石がほとんど認められないこと (χ² p < .0001)、低い平均歯肉炎指数(χ² p = .027)、と増加する平均歯肉退縮>1.5 mm (χ² p = .0026)は喫煙と高いTLPD割合と関連があった。平均のベースライン動揺、アブフラクション、と退縮はTLPDの2つの基本的なタイプを特徴付けていた。
 喫煙、ブラキシズム、と通常の臨床的およびレントゲン的パラメーターは予後不良な患者のベースライン状態を特徴付けるのに用いられうる。
アブフラクション、歯周病、歯周組織の予後、歯の喪失
「喫煙が歯周メインテナンス中のTLPDと高い相関があるのは過去の報告と同様の結果であった。ブラキシズムは垂直性の骨欠損を3倍増加させ、ことに喫煙があると6倍に跳ね上がる。ブラキシズムと歯周病との関連は相反した結果が得られているが、今回の研究はブラキシズムとの関連でTLPDは増加するという結果である。
 ブラキシズムと垂直性骨欠損の関連はみられたが、分岐部病変との関連性は示されなかった。分岐部病変は喫煙との関連性が見られた。
 ブラキシズムは分岐部病変と関連がでそうな感じだが、その関連性を今回の研究では示せなかった。分岐部病変と喫煙との因果関係はなんだろうね。それについての突っ込んだ考察はない。」
(平成29年9月10日)

No.419
Addition of enamel matrix derivatives to bone substitutes for the treatment of intrabony defects: A systematic review, meta-analysis and trial sequential analysis.
Troiano G, Laino L, Zhurakivska K, Cicciù M, Lo Muzio L, Lo Russo L.
J Clin Periodontol. 2017 Jul;44(7):729-738.

EMDはスペース自体維持することができないので、骨壁によって取り囲まれていない骨欠損を治療する時にエナメルマトリックスディリバティブ(EMD)の使用には限界がある。治癒期間に骨欠損内にフラップが落ち込むことを避けるために、EMDとあわせて骨移植材を用いるという併用療法が提案されている。それゆえに、EMDと二相性リン酸カルシウム(BC)の併用あるいはEMD単独治療の後、non-contained infrabony defectの臨床的およびレントゲン的治癒反応を評価することが、この研究の目的である。
プロービングデプス(PD) ≥6 mm で、≥3 mm の骨欠損を少なくとも1カ所を有する52人の患者がEMD/BCあるいは EMD単独にランダムに治療された。臨床的そしてレントゲン的パラメーターがベースライン、歯周外科処置6および12ヶ月後に評価された。手順を標準化するために、アクリルステントとミリレントゲングリッドが用いられた。一次評価項目は臨床的アタッチメントレベル(CAL)の変化とした。
6および12ヶ月時点では臨床的およびレントゲン的パラメーターにおける差があって、各群内のベースラインから統計学的に有意な差が示された (P <0.05)。1年後、EMD/BC群では3.14 ± 1.95 mm (39.6%)の、EMD群では3.30 ± 1.89 mm (48.7%)の平均PD減少が達せられた。EMD/BC では2.38 ± 2.17 mm (24.9%)の、EMD群では2.65 ± 2.18 mm (36.2%)の平均CAL獲得が得られた。骨欠損の鉛直方向の骨再生はテスト群で2.71 ± 1.79 mm (57.9%) 、そしてコントロール群で2.60 ± 2.03 mm (28.5%)であった。治療群間で統計学的に有意な差はなかった。
骨に囲まれていない骨欠損をBCを併用した場合、あるいはしない場合のEMD治療は、ベースライン時と比較して12ヶ月後統計学的に有意な良好な結果を示す。しかし、併用療法は統計学的に有意な改善を示さなかった。
(骨移植、エナメルマトリックスディリバティブ、歯周病、再生)
「EMDとGTRはその再生効果に差がないとする報告もあれば、GTRは処置後の合併症が多いためにEMDの方が成績は良い、とする報告もある。また1-2壁性の場合にはEMDには分が悪いと言われる。骨に囲まれていないような欠損の場合、EMDはスペースを自身では維持できないからだ。骨代用材との併用によりフラップの陥没を防ぐことができるのではないかという考えがあってもおかしくない。そこで今回は1-2壁性の骨欠損(non-contained infrabony defects)の症例にEMD+BCを用いて、EMD単独とその効果を比較した。しかし、残念ながらBCを併用しても、再生効果は高まらなかった。
はたして、フラップの陥凹が抑制されたのかはわからない。BCがよい骨伝導性物質ではなく、BCの吸収プロセス、移植材表面と形態が再生に対して抑制的に働く可能性が指摘されている。移植材の不規則さが表面積を減少させ、欠損への適切な適合と血管新生に好ましからぬ影響を与える。これらが、EMD単独に比較して、BCの併用で差がみられなかった理由ではないかと考察されている。」
(平成29年8月14日)

No.418
Addition of enamel matrix derivatives to bone substitutes for the treatment of intrabony defects: A systematic review, meta-analysis and trial sequential analysis.
Troiano G, Laino L, Zhurakivska K, Cicciù M, Lo Muzio L, Lo Russo L.
J Clin Periodontol. 2017 Jul;44(7):729-738.

骨内欠損の臨床的な改善を高めるために、エナメルマトリックスディリバティブ(EMD)の骨代用材(BS)への添加が検討されている。このシステックレビューの目的は、BS単独治療と比較して併用した場合に次の様な項目、すなわち臨床的アタッチメントレベル(CAL)獲得、プロービングデプス(PD)減少と退縮(REC)、に対して有益な効果を示すのかどうかを見いだすことである。
最低でも6ヶ月のフォローのある、骨内欠損の治療に対して、BSとEMDの併用をBS単独のコントロール群と比較して処理している、ヒトのランダム化コントロール研究に対して電子データベース(PUBMED、SCOPUS、EBSCO Host Research Databases and Web of Knowledge )検索をおこなった。そして、メタ解析と試験連続解析が行われた。
タイトルとアブストラクトによってふるい分けされた総数1,197論文から、9つの研究が全文精読され、そのうち5論文がメタ解析に含まれた。テスト群とコントロール群間で、CAL獲得、PD減少、とRECに対して両者に有意差は示されなかった。
骨内欠損治療においてBSへのEMD添加はCAL獲得、PD減少、とREC変化に関して有益ではないように思える。しかしながら、そのような結果はメタ解析に含まれた研究の少なさと不均質さがあったために、慎重に検討しなければならない。
(アメロジェニン、骨代用材、エナメルマトリックスディリバティブ、組織再生誘導、骨内欠損、メタ解析、歯周欠損、歯周組織再生、システマティックレビュー)
「歯周組織再生能力のあるバイオマテリアルを用いても歯周組織の再生が常におこるわけではない。EMDで30%、bovine-derived bone xenograft+コラーゲン膜で70%との報告がある。じゃあ、両方混ぜちゃえば、もっといいことが起こるんじゃないか、誰でもそう考える。
BSのスキャホールド機能でEMDの作用をブーストすることがあるんじゃないか、あるいはEMDの再生能力がBSの効果に追加されるんじゃないか、と考えられている。ところが、これまでの両者の併用効果についての結果は相反している。
今回のシステマティックレビューの結論は、BSにEMDを添加しても歯周組織再生に有益である、とのエビデンスは得られなかった、の一言。もっとよいレシピがあれば、両者の併用に有効性が認められるかもしれないから、みんなもっとがんばれと鼓舞している。」
(平成29年8月12日)

No.417
Comparisons of periodontal regenerative therapies: A meta-analysis on the long-term efficacy.
Wu YC, Lin LK, Song CJ, Su YX, Tu YK.
J Clin Periodontol. 2017 May;44(5):511-519.

我々は歯周組織再生治療とフラップオペレーション間の治療成績における長期の差をメタ解析した。
2016年6月までのEMBASE、PubMedとCochraneデータベースを 用いて系統立った文献検索をおこなった。治療成績はプロービングポケットデプスと臨床的アタッチメントレベルでの変化をみた。我々は歯周外科後の異なる時点で報告されたデータを抽出し、同じモデル内にすべてのデータを統合させた。治療成績における非線形傾向をhふょうかする目的で制限 3 次スプライン解析が用いられた。多元ポイントで成績を報告している研究があったために、同じ研究により報告されているデータに対して幾つかの相関構造を考慮した。
縦断的なメタ解析に総数52のランダム化コントロール研究が含まれた。フォローアップの期間は0.5年から10年であった。異なった相関構造のもとで治療成績の傾向は類似していた。エナメルマトリックスディリバティブ(EMD)と組織再生誘導法(GTR)は長期のフォローにおいてフラップオペ(FO)よりもより良好なプロービングポケットデプス(PPD)減少と臨床的アタッチメントレベル(CAL)獲得がみられたが、EMDとGTR間に差はなかった。
FOと比較して、歯周組織再生術は1年後のより大きなPPD減少とCAL獲得を達成し、その効果は5-10年継続しているようだ。
(エナメルマトリックスディリバティブ、組織再生誘導法、縦断的メタ解析、歯周組織再生治療)
「長期経過をみると、まず1年後あたりで平均1.5mmのPPD減少とCAL獲得がみられるのだが、その後これらの差は徐々に減少する傾向となっている。
今回の解析では、除外基準として、分岐部病変とnon-contained 骨内欠損(0壁性と1壁性)を設定している。そして、0壁と1壁を除いた骨内欠損を対象とした今回の解析で調べる限り、再生治療の効果についてEMDとGTR間に差はなかった、もちろん、結論として述べられている、長期の再生効果持続も、contained 骨内欠損の症例に関して、ということになる。
フラップデザインについては、ほとんどの研究がコンベンショナルなアクセスフラップデザインであり、少数の研究でminimally invasive flap あるいはcoronally advanced flapが用いられている。
メインテナンスについては、予後における重要な要素なのだが、対象とした研究におけるメインテナンスにはバリエーションが大きすぎて、評価をできなかったようだ。」
(平成29年8月3日)

No.416
Long-Term Stability After Regenerative Treatment of Infrabony Defects: A Retrospective Case Series.
Nickles K, Dannewitz B, Gallenbach K, Ramich T, Scharf S, Röllke L, Schacher B, Eickholz P.
J Periodontol. 2017 Jun;88(6):536-542.

この研究は再生治療によって骨内欠損(IBDs)に獲得される付着の長期安定性を評価することである。2004年から2010年までの少なくとも1カ所IBDに対して再生治療を受けた患者全てが後ろ向き症例としてスクリーニングされた。ベースライン時と術後12ヶ月後に完全な診査(プラーク/歯肉炎指数、プロービングデプス[PD]、垂直臨床的アタッチメントレベル[CAL-V]が患者に対して利用できた場合には、術後60 ± 12 ヶ月の再診査を要請した。再診査にはインターロイキン(IL)-1多型性とサポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)受診の回数計測の診査が含まれた。IBDに寄与する項目の解析に、41人の患者(24名の男性、17名の女性、年齢、中央値62.0歳、下位4分位/上位4分位:49.8/68.3歳、6人の喫煙者、9人のIL-1陽性)が含まれた。
再生治療の結果1年後(中央値: -3 mm,、下位4分位/上位4分位 : -1.5/-4 mm; P <0.001) と5年後(中央値: -3 mm, 下位4分位/上位4分位 : -1.9/4.5 mm; P <0.001)に有意なアタッチメントゲインが得られた。この研究は術後1から5年後に、VAL-Vの中央値変化を見いだすことはできなかった(中央値: 0 mm; 下位4分位/上位4分位 : -1/1.5 mm; P = 0.84) 。重回帰分析は、SPT受診の回数が、術後1から5年後のCAL-Vロスと関連することを示した。IL-1多型性と5年再診査時点でのPD >6 mm部位の割合は術後1年から5年後のCAL-Vロスと関連がある。
再生治療によって得られたCAL-Vは5年に渡って安定しているように思えた。頻回のSPTは安定性と関連している。IL-1多型性と全額の再感染は安定性の低さと関連している。
(エナメルマトリックスプロテイン、組織再生誘導法、歯周、歯周組織アタッチメントロス、歯周炎、二次予防、歯周外科、外科的)
「対象としたのは歯間部垂直性骨欠損。術前にレントゲン的に4mm以上、垂直的な臨床的アタッチメントレベルは6mmを超えて、プロービングデプスは6mm以上のもの。
IBDに対して再生治療行った場合、 ベースライン時のCALが9.5±1.6mmで、術後1年後が6.5±1.9mm、同5年後が6.3±2.4mmとなっている。つまり12ヶ月後の得られたCALは3mmで、5年後もほぼ安定しているようだ。今回の報告では1年後から5年後の変化は平均値の数値ではロスなのだが、有意差がないので、まあ安定と称している。過去の報告(EMDや各種メンブレン)も同様な傾向で、半年から1年後までに大きなCAL獲得が得られて、その後ほぼ変わらないかややロス(0.5mm~1.6mm)が生じるようだ。
アタッチメントロスの原因には、SPTをきちんと受けない、喫煙、「loser patients」の存在などがあげられている。再生治療でなくても非外科的処置であっても 定期的なSPTが歯周組織の安定に欠かせない。長期の予後については、再生治療だからということとは関係なく、やっぱりあとのフォローが重要ということか。」
(平成29年7月17日)

癒しのクスリ箱、息抜きにブログをどうぞ

Loading

上の検索エンジンでサイト内の検索が可能です。

p090(No.411-415)
← p091 → p092(No.421-425)