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難しくてもちょっと知りたい最新の歯周病治療・歯周病研究 
論文紹介p090(no.411-415)

No.415
Long-term results of periodontal regenerative therapy: A retrospective practice-based cohort study.
Bröseler F, Tietmann C, Hinz AK, Jepsen S.
J Clin Periodontol. 2017 May;44(5):520-529.

この研究の目的は歯周病開業医において骨内欠損に対する再生治療の長期効果を評価することである。
176人の患者で総数1008欠損が 、コラーゲン膜(CM)あるいはエナメルマトリックスディリバティブ(EMD)を用い、あるいは用いずに、コラーゲン添加脱蛋白牛骨ミネラル(DBBMc)を使用した後に解析された。欠損は1と2壁性に、そして浅い(≤6 mm)、中等度 (>6 and <11 mm)そして深い(≥11 mm)に分類された。レントゲン的な骨レベルの変化は1、2~4、と5~10年後に評価された。
平均のレントゲン的な欠損充填は1年後に3.8mmで、10年後まで安定していた。深い欠損と中等度欠損は浅い欠損に比較して充填の程度がより大きかった(53.3%、49.2%、42.9%)。総計で2.6%となる歯の喪失は最初の欠損サイズに依存して(1.2%浅い、1.4%中等度、5.7%深い欠損) 生じていたが、主には歯内が原因で生じていた。
後ろ向き研究の限定的な範囲ではあるが、今回の所見はCMあるいはEMDを併用する、あるいは併用せずにDBBMcを使用した歯周治療が長期の欠損減少と歯周開業医レベルで10年におよぶ歯の存続を誘導しうることを示した。
(ウシ骨ミネラル、コラーゲン、コンプライアンス、エナメルマトリックスタンパク、長期、膜、レントゲン的骨レベル、再生歯周治療)
「今回の再生治療で、単根あるいは複根歯にかかわらず、1ないし2壁性の骨欠損で骨レベルの改善と10年に及ぶ安定性が確認された。骨の大きな獲得は深い骨欠損で得られていた。プロービングポケットデプスも有意に減少して、同様に浅いレベルが維持されていた。
過去の報告では、EMDを用いる/用いないDBBMを用いた6ヶ月後評価の研究が3.2/3.0mm、DBBMとEMDを適用した12ヶ月後の研究では5.3mm、そしてDBBMとGTRを用いた研究では4.7mmとなっている。では、従来型のアクセスフラップはどうかというと、12ヶ月後骨レベルの獲得は0.95mmである。
今回の研究では喫煙者は除外されていない。喫煙は歯周治療の成績に対するよく知られたリスク因子なのであるが、骨レベルの変化に喫煙は有意な影響を与えていなかった。これは別の報告でも同様の傾向が示されている。しかし一方で、過去のコントロール研究では喫煙は非吸収性膜を用いた再生治療でアタッチメントゲインが有意に小さいとの報告もある。ただ、この報告では口腔清掃レベルが悪化リスクを決定しているとも述べている。今回の研究では全ての患者が厳格なメインテナンスプログラムに従っており、喫煙の悪影響が埋め合わせされているのかもしれない。」
(平成29年7月9日)

No.414
A retrospective study on periodontal disease progression in private practice.
Nibali L, Sun C, Akcalı A, Meng X, Tu YK, Donos N.
J Clin Periodontol. 2017 Mar;44(3):290-297.

 この研究の後向き研究の目的はUK個人診療所においてメインテナンスケアを受けている慢性歯周炎患者コホートにおける歯の喪失を評価することである。
アクティブ歯周治療を受けた慢性歯周炎患者100人が少なくとも5年サポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)でフォローされた。歯の喪失割合と患者および歯の因子が歯の喪失に及ぼす影響が評価された。対象患者に基づいた予後システムと新しく歯に基づいた予後システムが歯の喪失に関連して調査された。
 第3大臼歯を除き、SPT期間中に34歯が抜歯され、全体で平均歯の喪失は0.06 teeth/patient/year (歯周病が理由では0.02)であった。多変量分析が、年齢、periodontal risk assesment systemに基づいた患者の、あるいは歯の予後、分岐部病変と過去の歯内治療がSPT期間中の歯の喪失と関連したことを示した。
 個人医院でSPTにある慢性歯周炎症例のコホートで良好な全体の安定性と小さな歯の喪失割合が見られた。患者ベースと歯ベースの予後システムは歯の喪失リスクを評価するために用いられるかもしれない。
(メインテナンス、歯周炎、進行、安定性)
「この研究ではSPT期間中に患者は平均で0.06歯/患者/年(歯周病が原因と限定すると0.02)喪失している。最近のシステマティックレビューでは5年および12-14年のフォローでそれぞれSPT期間中の年平均の喪失歯はそれぞれ、0.15と0.09と報告されている。
この研究では結局のところ4.3%が抜歯となっている(APT期間中に2.6%でSPT期間中は1.7%)。これは低い値といえるのだが、最初の歯周病の状態に依存すると言って良いであろう。
 慢性歯周炎の縦断的な研究のシステマティックレビューが示すところによれば、年齢、喫煙、最初の診断は歯の喪失と関わっているという。この研究では年齢が歯の喪失と関わっていたが、喫煙は有意な差がなかった。これは喫煙者の数が少なかったために統計学的な差を生み出すに至らなかったのだろう、とのこと。
 分岐部病変を持つ臼歯は歯の喪失リスクが、分岐部病変を持たない臼歯に比べて歯の喪失リスクが2-4倍になるという。分岐部リスクはこの論文でも確認されている。」
(平成29年6月2日)

No.413
The Effect of Locally Delivered Statins on Treating Periodontal Intrabony Defects: A Systematic Review and Meta-Analysis.
Sinjab K, Zimmo N, Lin GH, Chung MP, Shaikh L, Wang HL.
J Periodontol. 2017 Apr;88(4):357-367.

成人慢性歯周炎患者へのスタチンの使用は歯周組織の状態にポジティブな影響を与える。しかしながら、局所的デリバリースタチンの歯周治療への影響は未だ系統だっては解析されていない。そこで、このシステマティックレビューとメタ解析は局所の歯周骨内欠損(IBDs)へのスタチンの効果を評価することが目的である。
1965年1/1から2016年3/1まで三つのデーターベース(PubMed、EmbaseとCumulative Index to Nursing and Allied Health Literature)の電子検索と関連論文の査読のある雑誌の手検索が行われた。最低10人の被験者で少なくとも6ヶ月期間のフォローのある 、コントロールランダム化臨床試験(RCTs)と各群に機械的スケーリングとルートプレーニング(SRP)に加えて局所のデリバリースタチン使用とプラセボ間での比較に関する前向き研究が含まれた。
10研究、8RCTsと2つの前向き研究が含まれた。各研究は25歳から55歳の年齢の、15から105人の患者が含まれた。統計学的な結果が記録された。スタチンとプラセボ/非治療群で加重平均差(WMD)と信頼区間(CI)が計測された。そしてメタ解析が欠損への添加、プロービングデプス(PD)減少と臨床的アタッチメントレベル(CAL)獲得である。欠損への添加解析はWMDが1.37mm(95% CI = 0.96 to 1.77; P <0.0001)、PD減少ではWMDが1.76 mm (95% CI = 1.04 to 2.47; P <0.0001)、そしてCAL獲得ではWMDが1.58 mm (95% CI = 0.89 to 2.28; P <0.0001)を示した。しかしながら、研究間で比較には相当の多様性があった。
このシステマティックレビューとメタ解析は、機械的なSRPに付加的な局所デリバリースタチンの使用が骨添加割合の増加にとって有利であることを示した。PD減少とCAL獲得と同様に炎症改善と出血コントロールは、歯周組織のIBDsを有する患者の治療においてこれらの薬剤を用いた際に、有利なことである。
(歯槽骨吸収、ヒドロキシメチルグルタリルCoAレダクターゼ、メタ解析、歯周炎、レビュー)
「用いられているスタチンは3種類でsimvastatin (SMV)、rosuvastatin (RSV)と atorvastatin (ATV)。SMVとATVは脂溶性で受動的に細胞膜を通して拡散する経路と特異的な担体によって輸送される経路がある。RSVは水溶性スタチンで他のスタチンと比較すると効果が長い。脂溶性スタチンよりも肝細胞に対して選択的に作用する。RSVは強い抗炎症作用を持つ。
このスタチンの局所投与は骨欠損、プロービングデプス、とCALに良好な効果を示したのだが、そのメカニズムはというと幅広い抗炎症作用と骨代謝への影響だという。
WMD for PD減少のWMDはchlorhexidine gluconate (CHX) 、doxycycline (DOX) gels、metronidazole (MET) , minocycline (MIN) 、MIN microspheresとtetracycline (TCN) fibersに対してそれぞれ 0.35, 0.51, 0.06, 0.36, 0.26, and 0.21 mmとシステマティックレビューで報告されている。一方のSMV、ATVと RSVのそれは、それぞれ2.09、0.44と2.15 mmである。CAL獲得のWMDはCHX、DOX gels、MET、MIN、MIN microspheresとTCN fibersがそれぞれ0.16、0.34、0.07、0.39、-0.40と-0.17 mmと報告されているのに対し、SMV、ATVと RSVのそれは1.71、0.67と2.16 mmとなっている。いずれも、局所抗菌薬に勝っている。
このシステマティックレビューで気になる点の1つとしてあげているのは、取り上げた10論文のうち、7つが同じ研究グループによるもの、ということ。」
(平成29年5月9日)

No.412
Cross-Sectional Evaluation of Periodontal Status and Microbiologic and Rheumatoid Parameters in a Large Cohort of Patients With Rheumatoid Arthritis.
Schmickler J, Rupprecht A, Patschan S, Patschan D, Müller GA, Haak R, Mausberg RF, Schmalz G, Kottmann T, Ziebolz D.
J Periodontol. 2017 Apr;88(4):368-379.

この研究は歯周組織の状態と細菌学的所見、ならびにそれらの慢性関節リウマチ(RA)患者におけるリウマチ疾患のパラメーターへの影響を評価することである。
168人のRA患者が含まれた。健康なコントロール群(HC, n = 168)が年齢、性、と喫煙習慣に従って構成された。リウマチに関するデータ(疾患の罹患期間、疾患の活動スコア28、リウマチ因子[RF]、抗環状シトルリン化ペプチド抗体[aCCP]、投薬)が患者の記録から抽出された。歯科の診査には次の項目が含まれた。1)歯科所見(う蝕、喪失歯と処置歯[DMF-T]指数);2)歯肉炎歯数(papillary bleeding index [PBI]);3)歯周組織の状態(プロービングデプス [PD]、アタッチメントロス [AL]).歯周組織の状態は健康/軽度、中等度あるいは重度に分類された。歯肉縁下バイオフィルムは11歯周病原細菌に関して解析された。統計学的な解析には
1) Kolmogorov-Smirnov test; 2) Mann-Whitney U test; 3) Pearson χ2 test; 4) Kruskal-Wallis testと5) regression analysis; 有意水準 α = 5%が用いられた。
RA患者における平均DMF-T(19.3 ± 4.8)はHC群(16.9 ± 5.8)より有意に高い値であった。特に喪失歯数の寄与のためであった(RA = 6.0 ± 5.4, HC = 3.1 ± 3.3; P <0.01)。RA患者はHC群に比較して増加するPD(P <0.01) とALの割合が有意に高かった(P <0.01)。中等度から重度歯周炎はRA患者の98%にみられ、HC群の82%にみられた(P <0.01)。RAのRF陽性患者RF陰性患者よりもより状態の悪い歯周組織であった(P =0.01)。年齢、PBI、とTreponema denticolaの存在はRA患者における歯周組織の状態と関連があった (P <0.03)。統計学的に有意な差はなかったが、Porphyromonas gingivalisとFusobacterium nucleatumはRAの抗CCP陽性患者により頻度高く高い濃度で生じていた(P=0.06)。
RA患者はHC被験者よりも歯周組織の状態は悪かった。RAの抗CCP陽性患者において高いPorphyromonas gingivalisとFusobacterium nucleatum濃度の見られる傾向であったが、歯周病とRA間にある関連性に関して歯周病原性細菌とリウマチパラメーターの重要性は未だはっきりしない。
(関節リウマチ、Porphyromonas gingivalis 、細菌、バイオフィルム、シトルリン、歯周炎)
「RFが歯周炎の重症度と関連がみとめられた。しかし、非外科的歯周治療をおこなってもRFには変化がないとの結果があるため、歯周炎とRAとの関連を議論するのに、このパラメーターはあまり重要ではないかもしれない。DAS28と歯周病の重症度とは関連がなかった。増加するDAS28値と喪失歯数との関連が見られたのだが、このような所見は過去にはなかった。RA患者は健常人より多く歯を失っているという事実を追認するものであるが、DAS28の特別な重要性ははっきりしない。
RA患者におけるF.nucleatumとP.micraの高い濃度と検出割合を見いだしているが、過去の報告とは一致しない結果である。
近年の文献の注目するところは歯周炎とRAの関連に重要な役割を果たしていると想定されているのはP.gingivalisである。P.gingivalisはヒトの軟骨細胞に侵入する能力を持つ可能性が示されている。そして、Pgは自身が持つペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PPAD)発現により、タンパクをシトルリン化できる。慢性関節リウマチは骨と骨をつなぐ関節にある滑膜中のタンパク質がPPADによってシトルリン化されて免疫異常を引き起こすものと考えられている。つまりシトルリン化されたペプチドが自己抗原として働き、自己抗体(抗CPA)の産生が開始され、慢性関節リウマチの病因となっている。それで、Pgもこの慢性関節リウマチの病因に、加担していると考えられるわけだ。この仮説は歯周炎をもつRA患者の血清中ではシトルリン特異抗体の増加が見いだされていることや、シトルリン特異抗体とRA疾患の活動度に関連があることからも支持されている。今回の研究では縁下バイオフィルム中のPg濃度と血清中に見られるCCP陽性所見の間に統計学的な有意差はなかった。でも、おしい、p=0.06だった。それで、論文では関連性のある傾向が見られていると表現している。」
(平成29年5月4日)

No.411
Periodontal regeneration compared with access flap surgery in human intra-bony defects 20-year follow-up of a randomized clinical trial: tooth retention, periodontitis recurrence and costs.
Cortellini P, Buti J, Pini Prato G, Tonetti MS.
J Clin Periodontol. 2017 Jan;44(1):58-66.

この研究の目的は骨内欠損に対する3つの治療方法の長期成績とコストを比較することである。45人の患者において45の骨内欠損が無作為に次の処置を受けた:
チタン強化型 延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)膜を用いたmodified papilla preservation technique (MPPT Tit、N=15);expanded-PTFE membranesを用いたフラップ手術(Flap-ePTFE, N = 15) とフラップ手術単独(Flap, N=15)である。サポーティブペリオドンタルセラピー(SPC)が1年間は毎月、その後20年間は3ヶ月ごとに提供された。再発部位には歯周治療が施された。
41人の患者がSPCに応じた。4被験者はフォローアップから脱落した。1年と20年の間の臨床的アタッチメントレベルの差はMPPT Titで、-0.1 ± 0.3 mm (p = 0.58);フラップ-ePTFEで、-0.5 ± 0.1 mm (p = 0.003) フラップで-1.7 ± 0.4 mm (p < 0.001)であった。20年の時点で、フラップ処置をおこなった部位はMPPT Titに比較して(1.4 ± 0.4 mm; p = 0.008)そしてFlap-ePTFE (1.1 ± 0.4 mm; p = 0.03)に比較してより大きなアタッチメントロスを示した。フラップ群は処置歯2本を失った。再発がMPPT Titでは5症例、Flap-ePTFEでは6症例、そしてフラップ群では15症例みられた。1年時点での残存ポケットは再発の数と有意な関連があった(p = 0.002)。フラップで処置した部位は再発に対してより大きなORである、SPCで20年フォローアップする期間に再生した部位に比較して再治療のコストが高かった。
再生治療はフラップよりも良好な長期の恩恵を提供する:歯の喪失がなく、歯周炎の進行がなく、20年以上にわたって再治療のコストも少ない。これらの恩恵は再生治療と関連したより高価な直接のコストという状況において解釈される必要がある。これらの初期結果はより大きな集団と幅広い臨床現場に広げる必要がある。
(コスト解析、骨内欠損、長期、歯周組織再生)
「再生治療は通常のフラップオペと比べて、CAL獲得やPPD減少が大きく、歯の喪失、歯周病進行や再治療も少ないといいことずくめ。
フラップは再生治療と組織学的な治癒形態が異なるだけでなく、深いポケットが残存するという問題もある。しかもこの深いポケットが歯周病進行の高いリスクとなるのがやっかいだ。再生治療の効用は質的なもの(組織学的な治癒形態)によるのか量的なもの(PPD減少)か、未だ明確にはされていない。」
(平成29年4月6日)

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