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難しくてもちょっと知りたい最新の歯周病治療・歯周病研究 
論文紹介p093(no.426-430)

No.430
At least three phenotypes exist among periodontitis patients.
Delatola C, Loos BG, Levin E, Laine ML.
J Clin Periodontol. 2017 Nov;44(11):1068-1076.

 この研究の目的は術前のレントゲン的そして細菌学的特徴をもとに、無監督のモデリング技法(クラスタリング)を用いて歯周炎患者の表現型を同定することである。
後ろ向き研究には392人の未治療歯周炎患者が含まれていた。非正規化スペクトラルクラスタリングアルゴリズムが患者のクラスター化に用いられた。クラスタリングの結果はその後人口統計学的、レントゲン的骨吸収パターンと細菌学的データを基に特徴付けられた。
 患者の大部分は3つの主要なクラスターの一つに適合した(正確には90%)。クラスターA(n = 18)はAggregatibacter actinomycetemcomitansの高い出現率と高い割合で特徴付けられ、それはより局所的な歯槽骨吸収パターンと若年者に対して傾向が見られた。クラスターB (n = 200)とC (n = 135)は疾患の重症度パターンと喫煙習慣に明瞭な差があったが、細菌学的な特徴には差がなかった。
歯槽骨吸収パターンと細菌学的なデータを基に、未治療歯周炎患者は少なくとも3つの表現型にクラスター化できた。これらの結果は他のコホートで確認されるべきだ。そして歯周治療成績と疾患の進行の基本に関して臨床の有用性が探索される必要がある。
(骨吸収、細菌学的データ、モデリング、歯周炎、表現型、レントゲン的データ)
「歯周炎を分類する試みがこれまで行われてきたが、それらは必ずしもうまくなされたとは言いがたい。
 臨床的に慢性歯周炎と称する歯周炎とは異なった何か特別な臨床像の歯周炎があるやんか、というのが過去から現在に至る諸家の意見である。それはかつて若年性歯周炎と呼ばれ、今は侵襲性歯周炎と呼ばれるものである。全身的には健康で、プラークもそう多くないのに若くして発症・進行するというものである。若くして発症したのかどうか、正確に客観的にこれを知ることは難しいので、臨床的には診断がしにくいのだが、他に方法がないので結局、年齢が診断の大きなマーカーとなっている。
 この研究では、歯周炎患者を意図的に年齢をはずして、レントゲン的な骨の吸収パターンと細菌学的な検索を指標にクラスタに分けてみた。すると3つの群分けができてA群はAaの検出頻度が高い群(35.4±27.9%でB群とC群はそれぞれ0.6±6.1%と0.7±2.6%)、そしてB群とC群はPgの検出頻度が高い群(B群とC群はそれぞれ20.3±23.4%と26.7±27.3%であったのに対しA群は2.8±6.1%)となっていた。骨吸収のパターンはというと骨吸収のない歯の割合がA群、B群とC群がそれぞれ16.2±9.1%、2.6±3.8%と0.5±1.4%であり、50%を超えて骨吸収のあった歯の割合は2.3±2.3%、2.2±2.1%と8.1±4.5%となっていた。これらの群分けは歯槽骨吸収と細菌学的を指標に分類したので、これらの特徴がでていて当然である。A群はAaが多く検出され、歯槽骨吸収が局所的で、BとC群はPgが優勢で歯槽骨吸収が広範囲に広がる傾向だ。で、興味深いのはこのクラスター分類が年齢とは独立して行われたのだが、A群の平均年齢が24.4±9.2歳(B群は42.8±11.5歳で、C群は44.2±8.6歳)だったということ。細菌学的にも特徴のある局所性侵襲性歯周炎患者集団は存在すると言って良いのであろう。ただ注意すべきは、臨床的に侵襲性歯周炎と診断された患者は、どの群にも存在していた。
 広汎型侵襲性歯周炎と広汎型慢性歯周炎を区別するのは難しい。
B群とC群の差はというとC群の方がより重度で喫煙者の割合がより高いということであったが、細菌学的な特徴に差はなかった。喫煙はC群を特徴付ける要因の一つだとは思われるが、それ以外の未知の細菌や環境因子なども考慮すべき隠れた要因があるのかもしれない。」
(平成30年3月25日)

No.429
Scientific evidence on the links between periodontal diseases and diabetes: Consensus report and guidelines of the joint workshop on periodontal diseases and diabetes by the International Diabetes Federation and the European Federation of Periodontology.
Sanz M, Ceriello A2,3, Buysschaert M4, Chapple I, Demmer RT, Graziani F, Herrera D, Jepsen S, Lione L, Madianos P, Mathur M, Montanya E, Shapira L, Tonetti M, Vegh D.
J Clin Periodontol. 2018 Feb;45(2):138-149.

糖尿病と歯周炎は死亡率との関連が独立した、慢性の感染する可能性のない疾患で、双方向性の関連を持っている。
この研究の目的は両疾患の疫学的および機構的関連に対するエビデンスをアップデートし、効果的な歯周治療のメタボリックコントロールに対するコントロール(糖化ヘモグロビン、HbA1c)に及ぼす影響を再調査することである。
歯周炎の患者は高血糖とインスリン抵抗性に対するリスク上昇という、強いエビデンスがある。糖尿病患者内のコホート研究は歯周炎患者における有意に高いHbA1cレベル(vs 歯周組織の健康な患者)を証明しているが、1型糖尿病の人については十分なデータがない。歯周炎は2型糖尿病の増加リスクとも関連がある。
歯周炎と糖尿病間の機構的関連にはインターロイキン(IL)-1-β、腫瘍壊死因子-α、IL-6、NFκB活性化受容体リガンド/オステオプロテゲリン比、酸化ストレスとトル様受容体(TLR)2/4発現の亢進が関与している。
歯周治療は糖尿病患者にとって安全で効果的であり、長期のフォローに関する研究は決定的ではないが、3ヶ月後のHbA1c0.27-0.48%減少と関連している。
ヨーロッパ歯周病学会(EFP)と国際糖尿病学会(IDF)が医師、口腔健康管理専門職、と患者に対して糖尿病と歯周病の初期の診断、予防、共同管理改善のためのコンセンサスガイドラインを報告している。
(HbA1c、関連、慢性腎疾患、合併症、糖尿病、妊娠糖尿病、インシデント、介入、メカニズム、死亡率、腎障害、歯周炎、網膜症、1型糖尿病、2型糖尿病)
「疫学的なエビデンス
1.明白な糖尿病のない人では、歯周炎と血糖状態(HbA1c)、空腹時血糖レベルおよびまたは経口ブドウ糖負荷試験との間に関連性のある強いエビデンスがある。歯周炎患者では歯周組織の健康な人に比較してHbA1cレベルが高くなっている。
2.歯周炎はHbA1cによって測定される不良な血糖コントロールと有意な関連がある。
3.1型糖尿病の人では、歯周炎が不良な血糖コントロールと関連しているかどうかのエビデンスデータは不足している。
4.歯周炎と関連して研究された糖尿病合併症は網膜症、腎障害、神経障害性足潰瘍、種々の心血管系病変と致死である。研究の大多数が歯周病の悪化状態と糖尿病合併症間の高い関連/リスクを報告している。
5.歯周炎は前糖尿病と糖尿病進行の高いリスクを示している。
6.歯周炎が妊娠性糖尿病における糖コントロールを損なうかどうかについての問いかけを扱うデータは不十分である。
7.歯周炎妊婦が妊娠性糖尿病の進行させる異常なリスクを有するかどうかを解析している研究はない。

歯周炎と糖尿病に関してのメカニズム
1.歯周組織の細菌叢と糖尿病の存在間で原因となる様な関連性を示すデータは今のところない。
2.糖尿病患者(あるいは動物モデル)の歯肉組織内で、コントロール不良な糖尿病の亢炎症性メディエーター(インターロイキン[IL]-1-β、腫瘍壊死因子-α、IL-6、NFκB活性化受容体リガンド/オステオプロテゲリン比と酸化ストレス)レベルの上昇が歯周組織破壊の増加が見られることに重要な役割を果たしている、という主張を支持する臨床研究からのエビデンスが存在する。
3.歯周炎が糖尿病コントロールに及ぼす影響を媒介する、ある生物学的なメカニズムを支持する中等度レベルのエビデンスがある。ほとんどの研究で、循環する亢炎症性メディエーターが糖尿病と歯周炎患者で上昇、特にTNF-αとCRP、していることを示している。これらの亢炎症性メディエーターが糖尿病コントロールに影響ているのかもしれない。
4.糖尿病コントロールが酸化ストレスを減少させ、脂質プロファイルを改善させ、そして循環サイトカインレベルを減少させるという機構的なエビデンスが存在する。しかしこれらの生物学的な変化が歯周組織の状態を改善させるのかについての研究はない。
5.いくつかのヒト対象研究からの、良好な歯周治療が糖尿病患者の循環CRPとTNF-αレベルを減少させるというエビデンスが存在する。
介入研究
1.現在のエビデンスは糖尿病患者において、効果的なホームケアを伴う歯周治療が安全で効果的であることを示している。コントロール不良な糖尿病であっても、標準的な非外科的治療は臨床歯周パラメーターや局所の炎症測定値を改善させる。追加的な治療(抗菌薬や外科処置)に恩恵があるのかどうかについては科学的なエビデンスが欠如しているので、今後の研究が必要である。
2.歯周治療が糖尿病患者における糖コントロールに有効かどうかについて、4つの最近のシステマティックレビューが、2型糖尿病患者のHbA1cレベルを臨床的に意味ある、そして統計学的に有意な減少に対して、一致したエビデンスを提示している。これらのメタ解析から報告されているHbA1c減少は歯周治療の3-4ヶ月フォローで0.27%-0.48%である。6ヶ月でこの効果が維持されるのかを示す十分なデータはない。
3.歯周治療が1型糖尿病患者でのHbA1c減少に影響するのかについての十分なエビデンスはない。
4.抗生剤の付加的な使用が糖尿病患者でスケーリングルートプレーニング単独の効果を上回るほどにHbA1c減少を増強しない。」
(平成30年2月26日)

No.428
Natural history of periodontitis: Disease progression and tooth loss over 40 years.
Ramseier CA, Anerud A, Dulac M, Lulic M, Cullinan MP, Seymour GJ, Faddy MJ, Bürgin W, Schätzle M, Lang NP.
J Clin Periodontol. 2017 Dec;44(12):1182-1191.

 この研究の目的は40年に渡る、非治療歯周病における長期アタッチメントそして歯周病に関連した歯の喪失(PTL)を評価することである。
 スリランカお茶工場における歯周炎自然経過研究からのデータは1970年最初に調べられた。2010年、オリジナルのコホートの75被験者(15.6%)が再び調べられた。
4 0年に渡るPTLは0と28歯(平均13.1)間で変化した。4人の被験者でPTLが生じなかったのに対し、12人は無歯顎であった。ロジスティック回帰はPTLに対する統計学的に有意な共分散としてアタッチメントロスを提示した(p < .004)。マルコフ連鎖分析は喫煙と歯石が疾患の開始と関連があること、歯石、プラークと歯肉炎がアタッチメントロスと重度疾患への進行と関連があることを示していた。30歳で平均のアタッチメントロス<1.81 mmは最も高い感受性と特異性(0.71)を生じており、その結果その被験者は60歳で少なくとも20歯を持つコホートに割り振られた。
 これらの結果は30歳以下で喫煙の中止を行うとともに早い時期における歯周炎治療の重要性を強調することになる。今回の結果はさらに、歯石の除去、プラークコントロール、と歯肉炎のコントロールが疾患の進行、アタッチメントのさらなるロス、そして最終的に歯の喪失を防ぐのに必須であることを示している。
(臨床的アタッチメントロス、縦断的、自然経過、歯周病の進行、予知、歯の喪失)
「歯の喪失に関して言えば、アタッチメントロスがPTLに最も影響を与えていた。年齢、歯石指数(CI)、タバコ消費、betel nut chewingがアタッチメントロスとの関連を通じてPTLに影響していた。しかしPIとGIは40年に渡るTTLとは有意な関連を示さなかった。
 30歳で1.8mm平均アタッチメントロスをカットオフ値にすると、デンタルケアがなくとも30年後の60歳で20本以上歯が存在することが予知できた。予防措置はこの予知性を劇的に変化させうる可能性がある。予防措置を含めた初期の治療の実行は、単に30歳で1.8mmの平均アタッチメントロスがある、ということ以上に個々の人にとってはベストなことではなかろうか。ちなみにこの研究では、倫理的な観点からは問題があるかもしれないが、歯周病の自然経過をみる目的であったので、参加者にはいかなる予防措置や治療的な措置はおこなわれていない。」
(平成30年1月26日)

No.427
Association of flossing/inter-dental cleaning and periodontitis in adults.
Cepeda MS, Weinstein R, Blacketer C, Lynch MC.
J Clin Periodontol. 2017 Sep;44(9):866-871.

この研究の目的はフロッシングと歯周炎のとの関連を評価することである。
これは2011-2014のアメリカ全国健康栄養調査を用いた横断的研究である。我々はフロッシングについて3つのカテゴリー、つまり、ここ1週間に0-1、2-4と≥5日と 歯周炎のCDC定義を用いた。年齢、ジェンダー、喫煙、飲酒、収入と歯科受診に対してコントロールするオッズ比を計算した。
総数6939名の成人被験者が含まれ、35%が1週間に1回以下のフロスで、40%が歯周炎であった。補正した後、歯周炎のオッズはより頻度低くフロスをする被験者に対しててよりも1週間に>1フロスを行っている被験者に対して17%低かった(odds ratio=0.83, 95% CI 0.72-0.97)。用量反応はみられなかった。男性は女性の2倍歯周炎であった。若い被験者、非喫煙者と高収入の被験者は歯周炎罹患に対して低いオッズであった。
フロッシングは歯周炎の中等度に低有病率と関連があった。高齢、男性、喫煙、低収入と低い歯科受診は歯周炎の高い有病率と関連があった。1週間に2-4日フロスをおこなうことはもっと頻度おたっかうフロスをおこなうことと同程度に有益なのだろう。これは横断的研究で、フロッシングと歯周炎の因果関係を立証させることができない。
(横断的研究、フロッシング、歯間部清掃、アメリカ全国健康栄養調査、歯周炎)
「アメリカでは35%がフロスを使用しないか頻回にフロスを行ってはいない。収入が増加するほど、学歴があがるほどフロスの使用頻度は上昇している。
1週間に0-1日、2-4日、そして5日以上フロッシングする人の歯周炎の割合はそれぞれ42、21、そして37%であった。つまり、フロッシングの観察された有益性は用量反応を示していない。歯周炎を予防するためにはブラッシングと併用して1週間に2-4日のフロッシングで十分だと言えるのかもしれない。
あるいはフロッシングには適切な技術が必要で、フロッシングを行っている人が全て適切に使用清掃できているのかは不明である。これもまた今回用量反応が見られなかった理由のひとつかもしれない。」
(平成30年1月2日)

No.426
Effect of surgical periodontal treatment associated to antimicrobial photodynamic therapy on chronic periodontitis: A randomized controlled clinical trial.
Martins SHL, Novaes AB Jr, Taba M Jr, Palioto DB, Messora MR, Reino DM, Souza SLS.
J Clin Periodontol. 2017 Jul;44(7):717-728.

このランダム化コントロール臨床治験は重度慢性歯周炎(SCP)患者の外科的歯周治療(ST)への抗菌的光線力学療法の単回付加的適用の効果を評価した。スプリットマウスデザインでSCP患者20人がaPDT+ST (テスト群、 TG)あるいはSTのみ(コントロール群、CG)で治療された。aPDTはダイオードレーザーとフェノチアジン光増感剤を用いて1回施された。全ての患者が手術後90日までモニターされた。ベースライン時、60日および150日時に、40の縁下種がチェカーボードDNA-DNAハイブリダイゼーションにより測定された。臨床的および細菌学的パラメーターが評価された。
深い歯周ポケットデプス(PPD ≥5 mm)では、術後90日においてテスト群はコントロール群よりもPPDで有意に高い減少を示した(p < .05)。テスト群はレッドコンプレックスの病原菌(Treponema denticola)がより有意に少ないことも示した(p < .05)。
(抗菌光線力学療法、慢性歯周炎、細菌学、光感作性、外科処置)
「aPDTが付加的な治療法として有効とする報告もあるが、一方で、多くの臨床研究がaPDTの付加的な効果に対しては否定的な結果を示している。しかし、これらは慢性歯周炎の非外科的な治療に関する報告である。
aPDTのメリットとして分岐部や根の陥凹部などアクセスしにくい場所へも適応できる、抗生剤の薬剤耐性も生じにくいと考えられる。
テスト群ではT.denticola(150days)でコントロールに比較して有意にその比率が減少した(Red complexは両群で減少)。
この研究ではSPTの間隔が通常の3ヶ月よりも短い間隔でケアがなされており、このことも術後の歯周組織の安定に寄与していたと考えられる.」
(平成29年12月31日)


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