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難しくてもちょっと知りたい最新の歯周病治療・歯周病研究 
論文紹介p094(no.431-435)

No.435
Toothbrushing behaviour and periodontal pocketing: An 11-year longitudinal study.
Joshi S, Suominen AL, Knuuttila M, Bernabé E.
J Clin Periodontol. 2018 Feb;45(2):196-203.

成人での歯磨き行動と歯周ポケットの変化との関連を探索することがこの研究の目的である。
我々はフィンランドの2つの国民調査(健康2000と健康2011)に参加し、ブラッシング頻度を報告した、30-89歳の、1,025人の成人からデータを収集した。日常の歯磨きの蓄積評価は、2回の調査で参加者が一日2回あるいはそれ以上ブラッシングした、と報告した数(0から2の範囲)を算定することで示された。歯磨き習慣と11年経過における歯周ポケット(PPD) ≥4 mmの歯数間の関連は交絡因子に対して補正した線形回帰分析で評価した。
歯磨き頻度(ベースライン時あるいはフォロー時)とPPD≥4 mmの歯数変化間に明確な用量反応関係があった。規則正しい歯磨きがPPD≥4 mmの歯数変化に及ぼす蓄積効果のエビデンスも存在していた。両調査で一日に2回あるいはそれ以上ブラッシングすると報告した参加者は、いずれの調査でもこの行動を報告しなかった人よりPPD≥4 mmの歯数が1.99本、より少ないことが示された(95% CI: 1.02-2.95) 。
この11年後ろ向き研究は、歯磨き行動が歯周ポケットの生じた歯の数の増加を、より少なくなることと関連があることを示した。

「 歯磨き習慣と歯周ポケットの変化とには明確な関連があった。ベースライン時あるいはフォロー時に一日2回あるいはそれ以上歯磨き習慣のあるひとは、1日1回より少ないブラッシング習慣の人よりも、歯周ポケットのある歯数の増加が低く抑えられていた。
一日1回の歯磨きは歯周組織の状態を臨床的に良好にするには十分ではあったが、歯磨き習慣レベルが増加することは歯周ポケットを有する歯数の増加を低く抑制できることと関連があった。つまり、一日1回のブラッシング習慣の人は毎日磨かない人よりも良好な歯周組織であったが、一日2回の歯磨き習慣の人よりは悪かった。しかし、1日2回と2回を越える歯磨き習慣の人との間に有意差はなかった。さらに規則正しい継続した歯磨き習慣の人(2000年も2011年も1日2回以上歯磨きしている群)は、他の群の人(どちらの調査でも、1日2回以上磨くとは報告していないか、片方の調査時にのみ1日2回以上歯磨きすると答えた人)より11年間の歯周ポケット増加の抑制されていた。」
(平成30年5月20日)

No.434
Supportive periodontal treatment: Pocket depth changes and tooth loss.
De Wet LM, Slot DE, Van der Weijden GA.
Int J Dent Hyg. 2018 May;16(2):210-218.

 この後ろ向き研究の目的はアクティブな歯周治療(APT)につづくサポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)の10年の結果を決定することである。プロービングポケット深さ(PPD)、プロービング時の出血(BOP)、歯の喪失(TL)と二つの患者関連因子、喫煙とジェンダーの影響が評価された。
 この後ろ向き研究は成人の歯周炎に対してAPTとSPTを受けた患者を調べた。解析は部位、歯、そして患者レベルの情報を用いて行われた。平均値が計算され、パラメトリックとノンパラメトリックな解析がAPTとSPTの結果を評価するために適した方法で行われた。
 APTの後BOPとPPDに有意な改善があった。10年後、患者の9.3%がSPTプロトコールを遵守していた。BOPとPPDにおける改善は維持され、10年フォローで臨床的パラメーターの追加の改善はなかった。さらに、非喫煙者と喫煙者間の差がみられた。10年フォロー後に、喫煙者は4mmあるいはそれ以上の部位の割合が有意に高かった。平均のPPDも喫煙者で有意に高かった。BOPの部位の割合とPPD≥6 mmの部位の割合に対してSPT期間中に男性と女性間でも有意差が見られた。少数の患者(18.5%)が歯を失わなかった。臼歯は最も喪失しやすい歯であることが見いだされた。10年間のフォロー期間中失われた歯の平均数は2.6本であった。
 プロービング時の出血とプロービングポケット深さに関して、サポーティブペリオドンタルセラピーを受け入れる患者は歯周組織の状態を維持していることがこの研究から示された。しかしながら、メインテナンス遵守患者の群では、歯の喪失は臼歯で最も多かった。
(成人性歯周炎、プロービング時の出血、ジェンダー、長期フォロー、非喫煙者、歯周組織メインテナンス治療、プロービングポケット深さ、リスク因子、喫煙者、サポーティブペリオドンタル治療、歯の素質、歯の維持)
「SPTが大事だとはいうものの、患者さんがすべてSPTについて来てくれるわけではない。この研究では10年後9.3%しかプログラム遵守者は残っていない(他の研究で引き合いに出されている例では8年で16%)。
 10年間のフォロー期間中に平均2.3本失われ、歯の喪失平均割合は0.2本/年であった。過去の報告では0.03~0.4本/年となっている。
 またメインテナンスプログラムに定期的に遵守した患者の歯の喪失は年0.12本であったのに対し、不定期にしか従わなかった患者は0.24本であった報告がある。
 ということでSPTに患者を従わせるのはなかなか難しいが、歯の保存という観点からすればその価値はあるということ。」
(平成30年4月24日)

No.433
The effect of horizontal and vertical furcation involvement on molar survival: A retrospective study.
Nibali L, Sun C, Akcalı A, Yeh YC, Tu YK, Donos N.
J Clin Periodontol. 2018 Mar;45(3):373-381.

分岐部付近の歯周病変(分岐部病変、FI)は歯の喪失の高いリスクを臼歯に生じさせると報告されてきた。
この後ろ向き解析の目的はUK個人診療所環境においてサポーティブペリオドンタルセラピーを受けている慢性歯周炎患者の臼歯で、疾患の進行と歯の喪失におよぼすFIの影響を評価することである。
633本の臼歯が、アクティブ歯周治療(APT)とそれに続く少なくとも5年のSPTを受けた、100人の慢性歯周炎患者で解析された。臼歯は切除、再生、あるいは保存的方法の組合せで、それぞれの臨床的な必要度に応じて治療された。
23本の臼歯がAPT期間中に抜歯され、さらに23本がSPT期間中に喪失した。多変量解析は垂直と水平の両方の分岐部構成要素がSPT期間中に歯の喪失リスク増加と関連していることを示した(それぞれOR 5.26, 95% CI: 1.46-19.03, p = .012とOR 9.83, 95% CI: 1.83-50.11, p = .006)。
臼歯における水平および垂直のFI両方に注意を向けるべきである、なぜならそれらはSPT期間中に歯の喪失と関連があるからだ。
(分岐部、メインテナンス、歯周炎、進行、安定)
「多変量解析で、分岐部病変や分岐部の垂直的構成要素は歯の喪失と関連が見られた。分岐部病変のクラスIは統計学的に有意だったのに対し、クラスII-IIIは有意差に達しなかった。これは症例数の差によるものだろうと述べられている(分岐部病変なし:345症例、クラスI:161症例、クラスII:79症例、クラスIII:48症例)。
アクティブな歯周治療(APT)の期間に23歯が抜歯された。分岐部病変なしはAPT後もほとんどが病変なしだった。ベースライン時クラスIだったものはほとんどが分岐部病変なしになっていた。ベースライン時クラスIIはAPT後クラスIとクラスII半々に、そしてSPTの最終時に26%が病変なしになっていた。3症例はクラスIIIに悪化していた。クラスIIIはAPT後もクラスIII(根切以外)だった。
SPT期間中、分岐部病変なし、クラスI、クラスIIそしてクラスIII病変の抜歯はそれぞれ1.4、7.9、12.8、8.1%であった。臼歯のおおよそ65%はその分岐部病変の診断が変わらずだったが、23%が悪化し8%が改善、そして4%が抜歯であった。」。
(平成30年4月9日)

No.432
Definition of aggressive periodontitis in periodontal research. A systematic review.
Ramírez V1, Hach M2, López R3.
J Clin Periodontol. 2018 Mar;45(3):278-284.

 1999年に導入されて以来、侵襲性歯周炎(AgP)という用語は多くの研究の話題となってきた。歯周病分類に対する国際ワークショップを支持する論文はいくつかの疾患の特徴をリストアップするが、症例を同定するために使用可能な診断基準を提供はしていない。結果として、AgPの理解に相当なバリエーションが予想される。
この研究の目的はオリジナル歯周研究において報告されたAgPの定義を系統立って評価することである。
 英語で出版されたAgPに関するオリジナル研究を系統だったレビューである。
電子検索から833のアブストが得られた。これらの中から472の公表文献が選定基準を満たしており、評価された。出版物の26.5%には、AgP操作化に関する情報はなかったが、別の一つの文献を参照している。12.7%の出版物には症例がどのように定義されたかに関して情報は提供されていない。症例定義に対する基準の多くの組合せがみられた。
 この研究はオリジナル研究におけるAgPという用語の理解と使用にかなりの多様性があることと症例同定の記述に貧弱さがあることを示した。誤った分類の影響と選択バイアスの傾向と大きさは不明で、この用語を用いる批判力のある読者、専門家、と患者によって検討されるべきだ。
(侵襲性歯周炎、歯周疾患、歯周炎、システマティックレビュー)
「侵襲性歯周炎ってなんだろうねえ。歯周炎の中で、何かちょっと違う雰囲気の歯周炎ってあるやんか。比較的若いのに、あんまりプラークもないのに、激しく組織破壊が進行した、、、うん、ある、ある。それがかつて若年性と呼ばれた侵襲性歯周炎である。でもそれを、明確に定義することは難しい。困ったもんだ。
 年齢に依存して用語を用いるのは賢明ではではないと提言されているが、45.2%の文献では定義の基準に年齢制限を含んでいた。文献で対象となった患者の最少年齢は7から37歳、最高年齢は13歳から82歳であった。
定義の12.2%で”家族集積”が用いられていた。また11.8%で”沈着物の量と歯周組織破壊が不釣り合い”が用いられていた。逆にいうと、残りの大部分の文献はこれらの基準に触れていないことになる。
 AgPの定義に用いられているCALで最も多いのは>=5mm、次に>=4mm、プロービングデプスについても同様に>=5mm、 >=6mmであった。
 1999 International Workshop for a Classification of Periodontal Diseases and ConditionのAgPに関するコンセンサスレポートでは、AgPの臨床的特徴を定義するに当たってポケットデプスはパラメーターに含まれていない。著者らは探索した文献の40%でポケットデプスが含まれていると嘆いておられる。CALなんだよね、見ないといけないのは。
年齢やポケットデプスが前面に出る傾向にあるのは、臨床的にとっつきやすいからだろう。家族集積、それ簡単に調べられないよね。家族全員連れてきてCAL測りますかねえ。
 AgPという用語の理解と使用に多様性があると述べられているのだが、AgPの統一された明確な定義、ってどこにあるんだろうね。AgPという用語があるのに。」
(平成30年3月31日)

No.431
Vertical subclassification predicts survival of molars with class II furcation involvement during supportive periodontal care.
Tonetti MS, Christiansen AL, Cortellini P.
J Clin Periodontol. 2017 Nov;44(11):1140-1144.

分岐部病変は歯の生存で重要な予測因子である。これまで分岐部病変の水平的要素が予測価値基準として注目されてきた。根のそれぞれに残存する歯周支持組織は分岐した臼歯維持に重要な役割を果たしていると考えられる。この臨床調査研究の目的は垂直的な細分類が歯の維持に及ぼす影響について予備的に評価することである。
少なくとも10年歯周サポーティブケアを継続して遵守した200名の患者におけるクラスII分岐部病変臼歯の歯の維持が後ろ向きに1医院で評価された。ランダムに選別された分岐部を有する臼歯が垂直的な細分類(最も病変の進行した根について残存歯周支持)に関して診断され、臨床的な記録から抜歯に至る期間が決定された。Kaplan-Meier生存率曲線が描かれた。
クラスII分岐部病変を有する臼歯の10年生存は52.5%であった。生存は細分類Aで91%、細分類Bで67%と細分類Cで23%であった。生存の平均は細分類A,BとCに対してそれぞれ9.5-10.1年、8.5-9.3年、6-7.3年であった。生存率分布の相等性試験は曲線の全ての部分で 高い有意差を示した(p < .001)。 喫煙による層別解析は2群に有意差のあることを示した(p < .001)。抜歯/ロスに対する危険率は細分類BとCに対してそれぞれ4.2と14.7であった。
分岐部病変の垂直性細分類として評価した残存歯周組織支持はクラスII水平分岐部を持つ臼歯生存の良い予知因子に思えた。このことは予後、治療計画、効果的な臼歯保存戦略の作成に対して意味を持つ。
(臼歯分岐部、歯周組織支持、歯周炎、予後、歯の生存)
「分岐部病変の分類にはLindhe & NymanあるいはGlickmanなどが代表的なものとしてあげられる。いずれも水平的な歯周組織の破壊を指標にしている。ここでは細分類として垂直的な組織破壊の状況と予後との関連を調べている。最も組織破壊の進んでいる根を対象に、根の長さを三分割して最進行部位が歯冠側1/3、中央1/3、根尖1/3であるときそれぞれ細分類A、B、Cとしている。
結果、当然A、B、そしてCと組織破壊の程度が大きいほど予後は悪くなっている。特にCの予後が著しく悪い。そして喫煙者と非喫煙者で比較すると、細分類AとBではあまり差がないのに対して、細分類Cで喫煙者の経過が著しく早期に悪化していた。
今後このような垂直的な組織破壊を指標にした分岐部病変の分類が多く取り入れられるのかもしれない。」
(平成30年3月25日)

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