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難しくてもちょっと知りたい最新の歯周病治療・歯周病研究 
論文紹介p096(no.441-445)

No.445
Tooth loss in periodontally compromised patients: Results 20 years after active periodontal therapy.Pretzl B, El Sayed S, Weber D, Eickholz P, Bäumer A.
J Clin Periodontol. 2018 Nov;45(11):1356-1364.

 この研究の目的はアクティブな歯周治療(APT)の後20年、歯周病に易感染性患者における歯の喪失を評価し、患者レベルの歯の喪失に対して影響を与える可能性のある因子を検出することである。
 APT後10年で再評価された、総勢100人の患者から70名がAPT後20年±12か月に再診査された。20年の間に歯の喪失が調べられ、回帰分析に基づいて、患者レベルでの因子の影響が評価された。
 1,639本の歯のうち、201が失われ(平均2.87 歯/患者, 0-19 歯, SD 3.49)、20年間に平均歯の喪失率は0.14歯/患者/年となっていた。患者当たりの平均歯の喪失はサポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)の最初の10年に比べて、次の10年の方が高かった(1.20 vs. 1.67歯/患者)。影響を与える因子として、年齢(p < 0.001)、喫煙(p < 0.001)、SPT遵守(p < 0.001)、配偶者の有無(p < 0.001)、糖尿病の存在(p < 0.001)と心疾患(p < 0.001)が検出された。
 20年に渡る追跡調査により、重度歯周病易感染性患者においてわずかの本数の歯が失われた。喫煙、SPT非遵守、年齢、独身生活と糖尿病や心血管系疾患のような全身疾患が長期に渡る歯の喪失に負の影響を与えている。
(コンプライアンス、糖尿病、歯周治療、喫煙、歯の喪失)
「APTの後、20年に渡るデータからみた歯の喪失率は0.14歯/患者/年と低い。
19本に至るような高い歯の喪失を示す患者もいる一方、ほとんどの患者(67.1%)は長期フォロー期間に0-3歯の喪失であった。
 他の長期観察研究では0.01-0.14歯/患者/年と本研究と同程度か良好な結果を示している。最近のドイツでの18年観察研究では0.15±0.17歯/年で、本研究データに相当していた。
 歯周病に罹患しやすい未治療の集団における40年に渡る研究では平均歯の喪失が13.1本/患者であった(それに対して本研究では2.87歯/患者)。このことから適切な歯周治療がいかに効果的かということがわかる。
 最初の10年で高い歯の喪失率を示したハイリスク患者は次の10年のフォロー期間でも他の患者よりも多くの歯を失うという仮説が確認された。
 他の多くの研究と同様に、年齢、喫煙、SPTへの非遵守者、そして糖尿病がSPT期間中歯の喪失に影響を示した。心疾患については、この研究では関連がみられたが、他の研究では関連性を示してはいない。」
(平成31年1月3日)

No.444
Effect of guava and vitamin C supplementation on experimental gingivitis: A randomized clinical trial.
Amaliya A, Risdiana AS, Van der Velden U.
J Clin Periodontol. 2018 May 14.

この研究の目的は実験的歯肉炎期間中、歯肉炎症の進展に及ぼすグアバと合成ビタミンCの影響を研究することである。
参加者は200gグアバ、200mg合成ビタミンCあるいは水を毎日サプリメントする3群に無作為に割り当てられた。この研究では口腔清掃指導、スケーリング、クリーニングと栄養補助で14日間の実験前期間が設定された。その後、栄養補助を続けながら、実験的歯肉炎が開始された。ベースライン時、実験的歯肉炎の7日、14日にプラーク指数(PI)と歯肉炎指数(GI)が評価された。全期間中、規定のフルーツ/野菜の摂取は最小限に抑えられた。
PIはグアバ、ビタミンCとコントロール群で増加した(ΔPlI: 1.30、1.61と1.79)。しかしながら、グアバ群はコントロール群に比較して、プラークが有意に少なかった。グアバとビタミンC群で生じたGIの増加はコントロール群における増加よりも有意に少なかった(ΔGI: 0.10、0.24と0.87)。
若い非喫煙成人の集団で、口腔清掃禁止期間に先立ち、あるいは期間中、200gグアバ/日あるいは200mg合成ビタミンC/日の消費は、実験的歯肉炎の通常に生じる程度のコントロール群に比較して、実験的歯肉炎の進展に対し、抑制的な効果を示した。
(実験的歯肉炎、グアバフルーツ、栄養補助、ビタミンC)
「ビタミンC欠乏症である壊血病で歯肉炎が生じるのはよく知られたことである。ただし、今時壊血病なんて人いません。
ビタミンC栄養補助の実験的歯肉炎に対する効果を調べた研究では、ポジティブな結果は得られていない。そこで今回の研究では、実験参加者に対し、実験期間中は可能な限り果物と野菜を摂取しないように指示している。するとコントロール群に比較して、実験的歯肉炎によるGIの増加がグアバあるいはビタミンC摂取群では抑制されていた。果物と野菜の摂取を制限させた人のビタミンC摂取量は約5mg/日となっていた。4週間ビタミンCの摂取を5mg/日にすると、その期間の三週から四週目には歯肉出血の部位が有意に増加するという報告がある。従って、今回の研究でコントロール群のGI増加はビタミンC摂取を制限したことによる可能性がある。しかし、コントロール群における実験的歯肉炎14日目の30%出血部位というのは、これまでになされた実験的歯肉炎と同様の数値なので、コントロール群によるGI増加はビタミンC欠乏の結果とは言えないように思えるとのこと。」
(平成30年12月16日)

No.443
Better-quality diet is associated with lower odds of severe periodontitis in US Hispanics/Latinos.Salazar CR, Laniado N, Mossavar-Rahmani Y, Borrell LN, Qi Q, Sotres-Alvarez D, Morse DE, Singer RH, Kaplan RC, Badner V, Lamster IB.
J Clin Periodontol. 2018 Jul;45(7):780-790.

我々は、ヒスパニック系コミュニティ研究/ラテン系アメリカ人研究からの異なるヒスパニック系サンプルにおける、食事の質と重度歯周病との間の横断的な関連性について調べた。異なる遺伝形質を持つ18-74歳の、ヒスパニック/ラテン系総数13,920人が全顎の口腔内診査を受け、2008-2011年間に2回の24時間の食事に関するリコールを行った。重度歯周炎は臨床的アタッチメントロス≥5 mmを持つ歯が≥30%と定義された。食事の質はAlternative Healthy Eating Index (AHEI-2010)を用いて評価した。年齢、性別、出生、最終の歯科受診、現在の保険、喫煙、糖尿病、エネルギー摂取量で補正し、食事の質と重度歯周炎との関連性を評価した。
食事の質の下位四分位と比較して、最高四分位の人は重度歯周炎のオッズ比が有意に低く(補正OR = 0.57, 95% CI: 0.39-0.82)、AHEI四分位に渡り、用量反応関係にエビデンスがみられた。AHEI-2010部分内では、未精白穀物とフルーツの高摂取と、赤身/加工肉の低摂取が重度歯周炎の低オッズと関連があった。
質の良い食事は重度歯周炎の有病率の低さと関連があった。
将来因果関係が解明される必要はあるが、質の良い食事は重度歯周炎の低有病率と関連があった。
(食事の質、ヒスパニック、ラテン系、歯周病、歯周組織の炎症、歯周炎)
「今回の結果と同様に、精白ではなく未精白穀物の摂取と重度歯周炎とに逆相関があるとの報告がある。未精白穀物は抗酸化物質が豊富で、酸化ストレスに抗している、あるいは抗炎症に作用している、などが考察であげられている。また未精白穀物は炭水化物の吸収を遅らせる作用があるために、このことが血糖値を下げ、糖コントロールの改善につながることで、歯周病のリスクが下がっているのではないかとの考察がある。今一方のお肉については、これまでそういう報告はなかったようである。赤みのお肉はC反応性タンパクと血糖マーカーを上昇させるので、前述とは逆のことが生じるということであろう。もちろんこれらの因果関係が証明されたわけではない。また他の人種でも同様のことが当てはまるかどうかも、今後の研究課題である。」
(平成30年11月16日)

No.442
Periodontal condition in relation to the adherence to nutrient recommendations in daily smokers.Jauhiainen LM, Suominen AL, Männistö S, Knuuttila M, Ylöstalo PV.
J Clin Periodontol. 2018 Jun;45(6):636-649.

この研究の目的は栄養学的に推奨された、健康的な食事が喫煙者の歯周組織状態と関連があるかどうかを調べることである。
フィンランドにおける横断的2000健康調査から、毎日の喫煙者が2つの年齢群(30-49歳と50-79歳、n = 704と267)で口腔清掃レベルに従って解析された。歯周組織の状態は歯肉出血の6分画数と≥4 mmの深い歯周ポケットの数で測定した。栄養の情報は有効な食物頻度質問票から収集し、Baltic Sea Diet Score (BSDS) とthe Recommended Finnish Diet Score (RFDS)を用いて評価した。
総研究集団の中では、スコアと歯周組織状態との関連は観察されなかった。良好な口腔清掃の30~49歳の集団では、食事のスコアは深い歯周ポケットの歯数と逆の関連性がみられた(p = .078 (BSDS) and p = .027 (RFDS))。
喫煙するフィンランド人成人の代表的なサンプルでは、健康的な食事は歯周組織状態と関連がなかった。良好な口腔清掃状態の若い年齢集団では、健康的な食事はより良い歯周組織と関連があった。年齢と口腔清掃は食事と歯周組織状態との関連を修飾しているように思える。
(食事、歯肉疾患、栄養、歯周病、歯周炎)
「活性酸素は殺菌に関与するが、低濃度で存在するとNuclear factor-kBなどのレドックス感受性遺伝子を活性化し、亢炎症性サイトカインの産生を誘導する。多量になると、活性酸素はタンパク質や脂質などの高分子を破壊しうる。
抗酸化物は酸化ストレスに抵抗し、グルタチオンペルオキシダーゼやスーパーオキサイドジスムターゼなどによって内在性に産生されたり、ビタミンA、CそしてEやフラボノイドなどの食べ物由来で存在する。非喫煙者に比べると喫煙者では抗酸化物質の蓄積が低いと報告されている。というのも喫煙者では活性酸素の発生が増加して、抗酸化物質の消費が増加しているためではないかと説明されている。その結果として、喫煙者は酸化ストレスへの抵抗性が落ちているとも考えられている。
高カロリー食品を摂取すると酸化ストレスが増加するので、食品は酸化ストレスの抗酸化物質だけでなく、酸化ストレスの源泉とも言える。食物中に高精製糖や飽和脂肪酸が多く含まれると、過剰なエネルギー摂取がクエン酸回路に負担をかけ、ひいては活性酸素や亢炎症性サイトカイン産生へとつながる。砂糖添加、低線維性食品、低抗酸化、高飽和脂肪酸摂取などは病的な歯周組織との関連が報告されている。
で、糖尿病や口腔清掃不良など、一般的な歯周病リスクがないのであれば、30-49歳の喫煙者において、栄養学的におすすめの食事は深いポケットがある歯の数が低くなることと関連するようです。」
(平成30年10月26日)

No.441
The effect of twice daily kiwifruit consumption on periodontal and systemic conditions before and after treatment: A randomized clinical trial.
Graziani F, Discepoli N, Gennai S, Karapetsa D, Nisi M, Bianchi L, Rosema NAM, Van der Velden U.
J Periodontol. 2018 Mar;89(3):285-293.

歯周初期治療(IPT)の前後で歯周組織パラメーターと全身健康状態への、キウイフルーツ一日2回の摂取の機能的食品としての影響評価することが目的である。
ベースライン時、参加者はテスト群とコントロール群に無作為に割り当てられ、5ヶ月間キウイフルーツ2個/日摂取するか、キウイフルーツ食さないか、とした。最初の二ヶ月は、歯周治療は行われなかった(2M)。その次に、24時間以内にフルマウスIPTが行われた。参加者はそして、3ヶ月後に再評価された(5M)。全身バイオマーカーとバイタルサインを評価する、血液サンプルもベースライン、2Mと5M時に採取された。
ベースライン時2群に偏りはなかった。2M時、出血スコア以外の他のパラメーターに群内の差は見られなかった。出血スコアはキウイフルーツ群で6.67% ± 11.90% (P < 0.01)有意に減少していた。テスト群とコントロール群の比較から、2ヶ月間のキウイフルーツ消費は出血、プラーク、とアタッチメントロスの有意な低下となっていた。IPTの後両群は臨床的に有意に良好な改善を示したが、コントロール群ではテスト群に比較して、出血、プラークおよびアタッチメントロスのより大きな有意な減少を示していた。全身的なバイオマーカーとバイタルサインはテスト群とコントロール群間で臨床的に関連のあるような差は示さなかった。
キウイフルーツ消費はいかなる歯周組織へのインスツルメンテーションがないにも、あるいは患者の行動の変化がないにも関わらず、歯肉炎症を減少させた。キウイフルーツの食事摂取には歯周治療に対する付加的な効果は認められなかった。
(フルーツ、炎症、歯周病、ランダム化臨床試験、治療)
「2ヶ月のキウイフルーツ摂取で歯肉の炎症が軽減した。キウイフルーツにたっぷりある抗酸化物(ビタミンC,オメガ3-脂肪酸、フェノール化合物など)のおかげではなかろうかと。ただ、2ヶ月後のビタミンCレベルは有意差をもっての上昇は認められなかった。
2ヶ月のキウイフルーツ摂取単独では歯肉の炎症が減弱したのに、歯周治療もおこなった際には、キウイフルーツの炎症抑制効果はなくなってしまった。というか、キウイフルーツを摂取しなかったコントロール群の方が、歯周治療により歯肉炎症改善効果が大きかった。これは、キウイフルーツによる効果よりも歯周治療による効果の方が、炎症抑制効果が著しいことと、キウイフルーツ摂取によって、既に歯肉炎症が軽減してしまっていたために、コントロール群の改善程度の方が大きくなったのであろうと、推測している。」
(平成30年9月30日)


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