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難しくてもちょっと知りたい最新の歯周病治療・歯周病研究 
論文紹介p098(no.451-455)

No.455
Five-year stability of clinical attachment after regenerative treatment of infrabony defects compared to controls.Abdul Rahman N, Nickles K, Gallenbach K, Dannewitz B, Ramich T, Scharf S, Röllke L, Schacher B, Eickholz P
J Clin Periodontol. 2019 Jun;46(6):650-658.

  骨内欠損における、再生治療によって達成されたアタッチメントの60 ± 12ヶ月以上の安定性を、コントロール歯と比較して評価することである。
 2004年から2010年の間に少なくとも1つの骨内欠損において再生治療を受けた患者が後ろ向きコホート研究のためにスクリーニングされた。ベースライン、手術後12と60 ± 12ヶ月に対して利用できる完全な診査と、治療していない対照歯が解析のために適格基準を提供した。
 27人の患者が(58 ± 11.7 歳、12名の女性、5人の喫煙者)含まれ、患者は1骨内欠損と1コントロール歯を提供した。再生治療により1年後(2.7 ± 1.6 mm; p < 0.001)、そして5年後(3.0 ± 2.2 mm; p < 0.001)有意なアタッチメントゲインが得られた。コントロール歯は安定していた(垂直的アタッチメントレベル[PAL-V] 変化: 1 year: 0 ± 0.8 mm; 5 years: -0.2 ± 1.2 mm)。この研究では再生歯(-0.3 ± 2.4 mm) もコントロール歯(-0.2 ± 1.4 mm)も、手術後1年から5年のPAL-Vの有意な変化は見いだされなかった。多変量解析が、喫煙とアタッチメントロスを伴う広汎型の歯周病再発(PPD > 5 mmの部位)とを関連づけた。
 骨内欠損における再生治療によって獲得されたPAL-Vは歯周組織の退縮した、しかし歯肉の健康なあるいは歯肉炎部位と同程度に5年以上に渡り、安定している。喫煙と歯周炎再発はアタッチメントロスと関連がある。
(歯周組織誘導、手術的、歯周アタッチメントロス、歯周炎、外科的処置)
「今回の研究では27症例中25症例がエムドゲインであった。
過去のGTR5年経過報告では、GTRの結果は安定していたが、不規則なSPTや喫煙はアタッチメントロスを引き起こす傾向にあった。今回の研究でもコントロールに比較して、再生治療群では、有意差はなかったが、規則正しく頻度高いSPTが臨床的アタッチメントレベルの安定に寄与し、SPT回数とアタッチメントレベルの獲得とが相関していた。」
(令和元年9月30日)

No.454
Soft drink consumption and periodontal status in pregnant women.Menezes CC, Ribeiro CCC, Alves CMC, Thomaz EBAF, Franco MM, Batista RFL, Silva AAM.
J Periodontol. 2019 Feb;90(2):159-166.

 歯周疾患はメタボリック症候群と関連が有り、妊娠期間中 妊娠高血圧腎症や早産と関係している。我々は、代謝疾患とも関係があるソフトドリンク消費が歯周疾患とも関連があるかもしれないと仮説を立てた。この研究の目的はソフトドリンク消費と妊娠期の歯周組織状態との関連性を評価することである。
 これはBRISA (Brazilian Ribeirão Preto and São Luís Birth Cohort Studies)コホート内症例対照研究であった。妊娠女性(n=1,185)は質問票を完成させ、妊娠22週から25週に歯周組織診査を受けた。独立変数はソフトドリンク消費頻度(回数/週)であった。アウトカムはプロービング時の出血を伴い(PD/BOP)、≥4 mmプロービング深さを有する、あるいは≥4 mmアタッチメントレベル (CAL)を有する歯の数として測定された、歯周組織状態であった。平均比(MR)は、母親の年齢と収入で補正した、ゼロ過剰なポアッソンを用いて評価した。
 妊娠中にソフトドリンク消費の最も高い三分位値はPD/BOP と関連があった(MR = 1.34; 95% 信頼区間(CI): 1.03 to 1.75)、一方、拡張期圧の最も高い三分位値はCALとも関連があった(MR = 1.21; 95% CI 1:07 to 1.35)。
高いソフトドリンク消費は妊娠中女性のPD/BOP歯の数と関連があった。そのことから飲料消費は全身的炎症負荷に寄与する因子、 歯周疾患、メタボリックシンドローム、有害な妊娠結果に共通だと示唆される。
(疫学、歯周疾患、妊娠、ソフトドリンク)
「ソフトドリンク消費はCALとは関係しなかったが、PD/CALと関連があったので、PDやBOPは全身的な炎症の程度を評価するのにあたり、より強力と考えられる。
 砂糖入り飲料消費と砂糖添加物は非妊娠性女性でのプロービングデプス深化と関連を示す報告がある。砂糖消費とBOP/PDとの関連は、飲料中の砂糖添加が、歯周病と関連性が言われる、炎症性のメカニズムを引き起こしたり、メタボリック症候群を誘導するからかも知れない。またソフトドリンクの高消費は、歯周病においてメタボリックや炎症性の異常にみられるトリアシルグリセロール、HDLレベルの減少、C反応性タンパクの増加と関係しているとも考えられる。」
(令和元年8月9日)

No.453
The influence of an anti-inflammatory diet on gingivitis. A randomized controlled trial.Woelber JP, Gärtner M, Breuninger L, Anderson A, König D, Hellwig E, Al-Ahmad A, Vach K, Dötsch A, Ratka-Krüger P, Tennert C.
J Clin Periodontol. 2019 Apr;46(4):481-490.

 この研究の目的は、歯肉炎患者において抗炎症性食事の異なるパラメーターに対する影響を検索することである。
30人の患者が、彼らのプラーク評価によって階層化された実験群とコントロール群に無作為に割り当てられた。実験群は4週間加工炭水化物と動物性タンパク質の低い、そしてオメガ3脂肪酸、ビタミンC、ビタミンD、抗酸化物質、植物性硝酸塩と線維が豊富な食事に変更が義務づけられた。コントロール群では食事の変化はなかった。両群とも歯間部清掃が制限された。歯周パラメーターは盲検的に歯科医師によって評価された。血清学的および縁下プラークサンプルがベースライン時と実験最終時に採取された。
 プラーク評価に関しては差が無かったが、実験群は歯肉出血に関して有意な減少(GIベースライン: 1.04 ± 0.21, GI 最終: 0.61 ± 0.29, p < 0.05)、ビタミンD評価は有意な増加で、また有意な体重減少が示された。炎症性血清学的パラメーター、血清オメガ脂肪酸、あるいは 縁下歯肉細菌叢に関しては群間に差はなかった。
 評価された食事は臨床的に適切な範囲内で歯肉炎を有意に減少させ、一方血清学的炎症パラメーターと歯肉縁下細菌叢はこの研究期間では影響を受けていないように思えた。
(炭水化物、宿主修飾、微量栄養素、栄養、オメガ3脂肪酸、歯周疾患)
「歯肉炎はコントロールされていないデンタルプラークバイオフィルム蓄積の結果と考えられている。ところが、これは西洋食のもとでのみの関連ではないかという報告がある。西洋食とは、すなわち、高糖質、飽和トランスオメガ6脂肪酸、微量栄養素や線維成分が低い、などで特徴付けられ、これらの成分はプラーク蓄積や全身的な炎症を惹起しやすいと考えられている。
 実験群もコントロール群もプラークは減少して歯肉炎も軽減している。そして、それに見合うように両群とも歯肉炎症が延焼している。西洋食のいかんにかかわらず、原因的因子であるプラークの歯肉炎に対する影響は存在することがわかる。
 そして実験群ではさらにBOPの減少がみられていることから、食事による宿主の反応や制御の重要性が強調される。実験群での低カロリー摂取もまた、歯周組織の良好な状態と関連があるようだ。さらに、コントロール群と実験群では細菌叢に変化が無かったことから、実験群で歯肉の炎症がより低下するということの理由として、縁下細菌叢の変化というよりは、歯周組織の免疫学的反応の変化によるものだと、推測される。」
(令和元年7月14日)

No.452
Prevalence and predictive factors of dentin hypersensitivity in Brazilian adolescents.Silva MS, Lima ANAN, Pereira MMA, Ferraz Mendes R, Prado Júnior RR.
J Clin Periodontol. 2019 Apr;46(4):448-456.

 この研究の目的は成人における象牙質知覚過敏用(DH)の有病率を調査することである。
 診断は自己申告に基づき、触診と冷却試験で確認された。DHと予知因子との関連は多変数モデルで決定された。サンプル数は384人の成人であった。
 有病率は19.0%であった。歯磨きの方向が垂直/水平の被験者(OR = 0.53, 95% CI = 0.47-0.60, p < 0.001)、デンタルバイオフィルムの存在 (OR = 2.45, 95% CI = 1.94-3.09, p < 0.001)、非カリエス歯頚部 (OR = 2.76, 95% CI = 2.40-3.18, p < 0.001), of gingival recession (OR = 1.63, 95% CI = 1.44-1.86, p < 0.001) そして唇側転位 (OR = 1.60, 95% CI = 1.40-1.82; p < 0.001)では、擦過刺激に対するDH有病率は高かった。冷却刺激で診断されたDHでは、水平/垂直方向へのブラッシング(OR = 0.73, 95% CI = 0.66-0.82, p < 0.001)、マウスリンスの使用(OR = 2.65, 95% CI = 2.16-3.25, p < 0.001)非カリエス歯頚部(OR = 1.75, 95% CI = 1.57-1.96, p < 0.001)、唇側転位 (OR = 1.75, 95% CI = 1.51-1.90, p < 0.001) そして歯肉退縮 (OR = 1.78, 95% CI = 1.59-1.99, p < 0.001)との関連がみられた。
 サンプル中のDH有病率は、成人5人におおよそ一人がDHということから憂慮されることである。DHの人は外傷的なブラッシングと患歯におけるデンタルバイオフィルム、非カリエス歯頚部、歯肉退縮と唇側転位の存在が多く報告されている傾向がある。
(病因、関連因子、象牙質知覚過敏、歯科、疫学、リスク因子)
「象牙質知覚過敏症の最も罹患している歯種は小臼歯と報告されているようだ。しかし、切歯や犬歯もまた、最も罹患している歯種に分類される傾向なようだ。
エアー刺激は歯全体への刺激となるので、実際の状況に近い刺激であろうし、より感受性の高い検査であろう。それに対して、擦過する検査はピンポイント刺激なので、象牙知覚過敏症であるのに、それを見逃してしまう可能性もある。ただ、両者のは似たような結果を提供しているようだ。
この研究では酸性食品や飲料と象牙質知覚過敏症との関連は見いだされなかった。成人対象の研究では、低pH飲料の消費は象牙質知覚過敏との関連性があって、酸性食品が重症度に影響するようだ。
象牙質知覚過敏症の発症は酸性食品や飲料の摂取と、あるいは過剰な口腔清掃の結果である。そのことが歯肉退縮とあいまって、あるいはなくてもエナメル質の損耗や象牙質露出につながる。」
(令和元年6月21日))

No.451
Interdental cleaning and periodontal pocketing among finnish adults.Bernabé E, Knuuttila M, Suominen AL.
J Clin Periodontol. 2019 Mar;46(3):310-320.

フィンランド人成人において、歯周ポケット形成を有する歯の11年間の変化と歯間部清掃頻度との関連性を調べた。
健康2000調査に参加し、2004年そして/または2011年に再診査された、30歳から82歳の有歯顎者1667人のデータが解析された。参加者はベースライン時、自らの歯間部清掃頻度(デンタルフロスあるいは歯間ブラシ)を報告した。≥4 mm歯周ポケットを有する歯が各調査毎にカウントされ繰り返しの結果として処理された。歯間部清掃頻度とPD ≥4 mmの歯の数との間の関連性は、人口統計学的要因、社会経済的な地位、糖尿病、歯ブラシ頻度、歯科受診、歯の数に対してコントロールを行い、線形混合効果モデルで評価された。
12%の成人が毎日歯間部清掃していると報告した。歯間部清掃の頻度に従って、各調査ごとに、≥4 mmのPDを持つ歯の数に有意な逆相関傾向がみられた。しかしながら、交絡因子のフルセットで補正すると、この関連性は完全に減弱した。これに反して、歯ブラシ頻度はベースライン時のPD ≥4 mmを持つ歯の数、そして調査期間中変化の割合は負の関連があった。
歯間部清掃は歯周疾患に対する他の確立されたリスク因子を、要因とすると歯周ポケット形成における11年の変化と関連はなかった。

(成人、コホート研究、歯科用品、ホームケア、口腔清掃、歯周疾患、歯周炎)

「この研究ではたぶん、歯間ブラシ使うヒトはポケット形成が、使わないヒトに比べて少なくなるであろう、という結果を期待したのだと思う。僕も期待した。交絡因子を除かなければその傾向があったみたいだが、残念ながら調べた交絡因子で全て補正すると、関連性がど~んとなくなってしまった。
このことが直ちに、ポケット深化抑制の歯ブラシの効果に加えて、歯間ブラシを使うことの付加的なメリットが臨床的にない、ということを意味しているわけではないだろう。そもそもこのデータ解析では、よく歯を磨く人は歯間部清掃も頑張っている、ということが明確になっている。だから交絡因子としてブラッシング頻度で補正することは、歯間部清掃の影響を見えにくくしてしまったのであろう。」
(令和元年年6月2日)



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