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難しくてもちょっと知りたい最新の歯周病治療・歯周病研究 
論文紹介p099(no.456-460)

No.460
Comparison of periodontitis patients' classification in the 2018 versus 1999 classification.Graetz C, Mann L, Krois J, Sälzer S, Kahl M, Springer C, Schwendicke F.
J Clin Periodontol. 2019 Sep;46(9):908-917

 我々は、2018年と1999年の歯周病分類が、観察期間中(a)患者の特徴、(b)疾患の重症度/広がり/進行と(c)歯の喪失(TL)をどのように反映しているか評価することを目的とした。
総数251人の患者が21.8 ± 6.2年以上フォローされた。1999年分類に対して、臨床的アタッチメントレベル(CAL)を用いて患者は局所型/広汎型、軽度/中等度/重度と侵襲性/慢性歯周炎として分類された。2018分類に対して、患者はCALあるいは骨吸収(BL)と喪失歯の数に従ってステージ分けされた(stage:ステージI-IV)。プロービングポケット深さ(PPD)あるいは分岐部病変ようなさらなる因子がステージを修飾した。歯周病の広がりは広汎型/限局型として亜分類された。患者はBL/年齢指数、喫煙と/あるいは糖尿病に従ってグレード(grade)化された。
1999年分類に従うと、ほとんどの患者は広汎型重度慢性歯周炎(203/251)あるいは広汎型侵襲性歯周炎(45/251)であった。侵襲性歯周炎患者はより若く、女性あるいは喫煙者が少なかった。 侵襲性歯周炎患者は広汎型重度慢性歯周炎患者(0.23 ± 0.25 teeth/patient*year)と同程度の TL (0.25 ± 0.22 teeth/patient*year)を示した。2018分類に従うと、ほとんどの患者は広汎型 III-C (140/251)、III-B (31/251) あるいはIV-C (64/251)として分類された。患者の年齢、喫煙状態、CAL、PPDとBLは良く反映されていた。TLはIV-C (0.36 ± 0.47)、広汎型III-C (0.21 ± 0.24) と限局型(0.10-0.15)間で異なっていた。
患者の特徴、疾患の重症度/広がり/進行度とTLは2018年分類によってよく反映されていた。
(歯周組織の診断、歯周治療、歯周炎、歯の喪失、治療プラン)
「今回の対象症例では、限局型重度歯周炎の少ない集団だった。1999年分類に従うと、慢性歯周炎と侵襲性歯周炎間でジェンダー、年齢、喫煙で特徴の差が見られたが、疾患のリスクや複雑性因子では差が見られなかった。一方新分類では、臨床的アタッチェメントロス(CAL)や骨吸収(BL)を反映していた。しかし、PPDや分岐部病変(FI)などステージを修飾する因子のはずであるが、これはあまり反映されていなかった。これはほとんどの患者がすでに高いステージに分類分けされていたためであろう。
新分類は観察期間中の歯の喪失を良く反映した。このことは1999年の分類ではみられなかったことである。重度の慢性歯周炎も重度侵襲性歯周炎も同程度の喪失歯を示していた。」
(令和2年1月2日)

No.459
Using periodontal staging and grading system as a prognostic factor for future tooth loss: A long-term retrospective study.Ravidà A, Qazi M, Troiano G, Saleh MHA, Greenwell H, Kornman K, Wang HL.
J Periodontol. 2020 Apr;91(4):454-461.

 歯周病の新分類は近年提案された多次元ステージングとグレーディングに基づいて、歯周病を同定することを目的としている。しかし、今日まで、その予後予知特性は研究されていない。この研究の目的は新しい分類に含まれたパラメーターが、歯周炎患者における長期フォロー後の歯の喪失を予測するのかどうか評価することである。
1966年1月と2004年1月の期間にミシガン大学で、歯周炎患者が選別され、歯周炎新分類に従って分類された。全フォロー期間中に少なくとも1期間/年診療を受けた患者において、喪失歯の数/理由が抽出されて新分類を含む変数(ステージング、グレーディングと範囲)の予知能力を解析するために用いられた。
 平均フォロー期間289.7 ± 79.6ヶ月の、総292人の患者が含まれた。31 人(10.6%)患者はステージ(stage)1、ステージ2として 85人 (29.1%)、ステージ3として146 人(50%)、ステージ4として30人 (10.3%)が分類された。グレーディングに対しては、34 人(11.7%)がグレード(grade)Aとして、193人 (66.1%)がグレードBとして、65人 (22.2%)がグレードCとして分類された。multilevel Cox 回帰分析の結果、ベースライン時のステージ(HR:3.73 between stage 4 and Stage 1) とグレード (HR: 4.83 between grade C and grade A)と歯周病に関連した歯の喪失間に統計学的に有意な関連を示したが、歯周炎の範囲に対しては差は見られなかった。
 この研究から歯周炎の新分類の予知力に関する最初のエビデンスが提供された。ステージ4あるいはグレードCの患者は歯周病に関連した有意に高い喪失歯を示した。
(歯周炎、サポーティブペリオドンタルメインテナンスセラピー、歯の喪失)
「ベースラインから30年までの喪失歯の数がステージ1、2、3、4がそれぞれ、0.25、1.00、1.17、4.43であり、グレードA、B、Cがそれぞれ0.80、0.93、2.65であった。やはりステージ4とグレードCでは喪失歯多い。10年まで、20年までの喪失歯数も同様の傾向であった。ただ、グレード分類はいずれのタイプポイントでも有意差あったが、ステージ分類は、10年まで、20年まで経過では有意差があったものの30年経過では有意差はなかった。これはベースライン時の診断が、さすがに20年以上30年に至るまでの予後を予測するのは困難なのであろう、という解釈である。
  色々あるが、単純に骨吸収が根中央1/3以上、ポケットデプス5mm以上、分岐部病変2度以上、歯周病原因の喪失歯がある、このいずれかでも条件を満たしていれば、、ステージ3以上というのが歯周炎新分類である。ステージ4は歯周病原因の喪失歯4本以上で咬合崩壊しているような症例だからね。
  定期的に長期メインテナンスしている症例は、そのほとんどがステージ3であった。歯周病新しい分類と旧分類を比較した論文(Graetz2019JCP;46:908)でも同じくステージ3分類が多くなっている。歯周病学会の専門医申請症例も、たぶんほとんどがステージ3になるであろう。」
(令和2年1月1日)

No.458
Implementation of the new classification of periodontal diseases: Decision-making algorithms for clinical practice and education.Tonetti MS, Sanz M.
J Clin Periodontol. 2019 Apr;46(4):398-405.

 歯周病の新分類の導入は理論的根拠と容易に適応できるアルゴリズムに沿って、新しい症例定義と診断プロセスの構築の注意深いナビゲーションを必要とする。このレポートの目的は臨床開業医と教育現場に対し企画された、ひとつのそのようなアプローチの理論的根拠を述べることである。
著者らは健康な歯周組織、歯肉炎と歯周炎の基調となる歯周診断を効率的に区別するために、新分類に基づいた経験的な意志決定アルゴリズムを進展させた。
段階的なアプローチが提案され、それには以下のことが含まれた。(a)健康な歯周組織、歯肉炎と歯周炎疑いを区別することのできる感度のよいスクリーニングステップ、(b)歯周炎とアタッチメントロスによって特徴付けられた他の病態間の異なる診断を提供する特異的な確認ステップ(c)歯周炎症例管理の重症度と複雑性を評価するステップ(staging;ステージング)、と(d)症例のリスクプロファイルを評価するためのステップ(grading;グレーディング)特異的な意志決定アルゴリズムが診断過程の全てのステップに対して述べられている。
提案された過程は歯周組織の健康と疾患の異なる症例定義間の区別を可能にする。過程の診断的正確さと対費用効果は、異なるレベルの専門知識をもつ術者、異なる集団と臨床現場に一般化できる前向き研究において検証する必要がある。
(症例の定義、診断、歯肉炎、歯周病、歯周組織健康、歯周炎、歯周炎グレーディング、歯周炎ステージング)

「2017年に歯周病新歯分類が発表され、Tonetti MS, Greenwell H, Kornman KS. Staging and grading ofperiodontitis: Framework and proposal of a new classification andcase definition.J Periodontol. 2018;89(Suppl 1):S159–S172.でその詳細を知ることができる。そしてさらに臨床開業医や教育現場でも新しい歯周病分類がわかりやすいようにと書かれたのが今回紹介した論文である。
まず、最初に対象とした患者に臨床的アタッチメントロス(CAL)があるか、あるいはレントゲン検査による骨吸収があるかどうかを調べる。あれば歯周炎疑いである。しかし、レントゲンで骨吸収がないからといって、歯周炎でないとはいえない。それはレントゲンで骨吸収所見がなくてもCALがあり得るからである。レントゲン診査は感度の高い診断ツールではない。それゆえ、レントゲンで骨吸収が無い場合には必ずCALを評価しなければならない。そのCALであるが、まず歯間部CALを調べる。歯間部CALがなければ、さらに3mmより深いプロービングポケットデプス(PPD)を伴う頬側あるいは舌側の歯肉退縮の有無を調べる。これら歯間部および頬舌のCALがなければ全顎のBOPを診査する。全部位中BOP>10%なら歯肉炎(gingivitis)の診断である。BOP<10%なら診断は歯周組織健康(periodontal health)である。レントゲン検査は骨吸収の存在を評価するのに有用であるが、この段階でレントゲン検査は必ずしも必要ではない。何となれば、CALで診断可能だからである。最終的にCALあるいはレントゲン的な骨吸収が認められたら、第2段階へ進む。
第2段階は観察されたCALあるいは骨吸収の特異性評価である。つまりCLAや骨吸収が歯周炎起因か、歯内歯周病変、根破折、う蝕、修復物や埋伏智歯など他の局所的因子起因かの判断が必要になる。後者であれば、歯周炎は否定され、第一段階へ戻り、その局所因子起因部位以外の歯列に対して歯肉状態の評価がなされる。次に、観察された歯間部CALが局所因子起因でなければ、歯間部CALが非隣接歯以外にも存在するか調べる。存在しなければ、ステップ1に戻り他の部位の歯周組織評価をおこなう。なぜなら歯周炎の定義が非隣在歯で2歯以上に歯間部CALがある、あるいは>3mm以上のPPDがある頬側あるいは舌側CAL≧3が2歯以上に存在する、ということなので、この条件を満たさない場合は歯周炎にはならないのである。そして、CALが2歯以上に認められれば、歯周炎の診断のために歯周組織の評価と全顎のレントゲンにより包括的な歯周組織評価を行う必要がある。PPDが4mm以上を示していなければ、全顎BOPを評価する。BOP≧10%なら診断は歯周炎患者で歯肉炎症状態(gingivalinflammation in periodontitis patient)、BOP<10%なら歯肉退縮のある健康な歯周組織の患者(reduced but health periodontium in a periodontitis patient あるいはpatient with a reduced but healthy periodontium)となる。PPDが4mm以上なら、ステージング(staging)とグレーディング(grading)によってさらに評価される必要のある歯周炎症例となる。
第三段階、歯周炎症例のステージングに必要なのは歯周組織チャート、フルマウスレントゲンと喪失歯既往歴である。歯周病の広がりを、CAL/骨吸収(BL)が<30%歯(限局型)あるいは≧30%歯(広汎型)で評価する。次に、ステージ(stage)I、IIかステージ(stage)III、IVのふるい分けをする。CAL≧5mm以上、あるいはBLが根の中央1/3かそれ以上ならステージIIIかIVと評価する。CAL<5mmであっても、2度ないし3度の分岐部病変があればステージIIIまたはIVとなる。分岐部病変2度、3度がなくてもPPDが>5mmなら同様にステージはIIIかIVだ。PPDが3から5mmの間であっても、歯周病罹患による喪失歯があったなら、それはステージIIIかIVとなる。ややこしい。要はCAL≧5mm、分岐部病変2度ないし3度、そしてPPD≧5mm以上、歯周病に起因した喪失歯存在、の4項目の一つでもあれば、ステージはIIIかIVに移行してしまう。逆に言うと、CAL<5mm(あるいはBLが歯冠側1/3にとどまる)、分岐部病変は1度まで、3mm<PPD<5mm、かつ歯周病起因歯がない、の4つ全ての条件を満たす場合のみステージIないしIIである。
今度はステージIかIIかの分類分け。BL<15%とCALが1と2mmの間の場合はステージIの診断である。BLが15%と33%の間、CALが3と4mmの間ならステージIIである。
BLが根中央1/3かそれ以上とCAL≧5の場合に、歯周病起因の喪失歯が4本以上で対合している歯のペアが10本もない、あるいは咬合崩壊、舞踏歯、フレアアウトあるいは重度顎堤欠損の時にはステージIVと診断される(いずれか1項目でもあれば)。
第四段階はグレード(grade)を決める。過去の検査記録があれば、過去五年の歯周病の進行度を評価する。<2mmはグレードBである。5年で進行がなければグレードAである。>2mmならグレードCである。グレードとBは、知られているリスク因子(喫煙と糖尿病)の存在で高いグレードへ移行する。喫煙10本/日以上でグレードC、<10本の喫煙はグレードBへ移行する。同様に、HbA1c<7.0だとグレードB、HbA1c≧7.0だとグレードCへ移行する。 過去の記録が利用できないとき、ほとんどがそうだろうが、最も罹患している歯が評価対象となり、骨吸収/年齢が0.25と1.0の間であればグレードBとする。そして<0.25ならグレードA歯周炎、≧1.0ならグレードCとなる。前述のように喫煙や糖尿病が併存すればグレードは高くなる。」
(令和元年12月31日)

No.457
Long-term impact of powered toothbrush on oral health: 11-year cohort study.Pitchika V, Pink C, Völzke H, Welk A, Kocher T, Holtfreter B.
J Clin Periodontol. 2019 Jul;46(7):713-722.

 この研究は、成人集団における歯周組織の健康、う蝕と歯の喪失に関する電動ブラシ
の11年長期効果を評価することが目的である。
ポメラニアにおける健康研究(SHIP)-1、SHIP-2、SHIP-3診査時歯科検診と問診
データの存在するSHIP参加者コホートが含まれた。混合効果線形回帰モデルが、暴露
(手用vs電動ブラシ)と結果変数(平均プロービングデプス(PD)と平均臨床的ア
タッチメントロス(CAL)、DMFSとDFS指数を使用したう蝕状態)間で、可能性のある
ベースライン時の共変量に対して補正して構築された。
 最終ベースライン(SHIP-1)研究サンプルは2,819人で構成された。電動ブラシ使用
者は、18.3%(SHIP-1)から36.9%(SHIP-3)に増加し、手用ブラシ使用者よりも、よ
り若く、優位に低い平均PD [β: -0.09 (95% CI: -0.16; -0.02)] と平均CAL [β:
-0.19 (95% CI: -0.32; -0.07)]進行であり、17.7% 低いDMFS指数の進行と19.5%多
い歯の保存がなされていた。
 長期に、電動ブラシは、保存される歯数増加に加えて、平均PDとCAL減少に効果的と
思われる。
(う蝕、歯肉炎、口腔清掃、歯の喪失、歯ブラシ)

 「これまでも電動ブラシの使用に関して、短期間の研究が、プラークの除去と歯肉炎
の減少効果を示してはきた。今回の研究は、そのことがPDとCALの悪化抑制につなが
る可能性にあることを初めて示した長期研究である。より多くの歯が残存することは
電動ブラシの使用が実際の口腔健康に有益であることを明確にしている。
 今回の研究では全顎ではなく半側のみの検査である。カリエスはう窩の有無のみで調
べているので、表面にでてこない隣接面カリエスは除外されている可能性がある。電
動ブラシと手用ブラシの併用や電動ブラシの種類(ロータリータイプvs振幅タイプ、
音波vs超音波など)に対しても考慮されていない。
(令和元年11月30日)

No.456
The furcation tunnel preparation-A prospective 5-year follow-up study.Rüdiger SG, Dahlén G, Emilson CG.J Clin Periodontol. 2019 Jun;46(6):659-668.

 この研究の目的は分岐部トンネリングした臼歯を5年以上サポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)で前向きにフォローすることである。
 42の分岐部トンネリング臼歯(トンネリング前は全てクラスIII)を持つ患者総勢32人がアクティブな歯周治療後SPTを始めた段階でリクルートされた。臨床的な記録、細菌のサンプリングと標準化されたレントゲン撮影が、ベースライン時、1年(このときはレントゲンはなし)、2年そして5年後に行われた。総生菌数、総streptococci、Streptococcus sanguinisとmutans streptococci (MS)が培養を通じて、一連の歯周病原菌はチェッカーボードテクニックを用いて同定された。
 5年後、29臼歯(69%)が未だ機能していた。失われた臼歯のうち、8本は上顎で、5本が下顎であった。歯周病の再発とカリエスが歯の喪失の理由であった。マルチレベル回帰分析から、喫煙習慣、プロービング時の出血、と分岐部におけるMSの存在が歯の喪失リスク増加と関連があった。
 分岐部トンネリングをおこなった臼歯は多くの症例でSPT5年維持された。喫煙習慣、ベースライン時の出血スコアと分岐部でのMSの存在が歯の喪失リスク因子であった。
(分岐部トンネリング、メインテナンス、歯周炎、リスク因子、歯の喪失)
「トンネリングした上顎臼歯で33%、下顎臼歯で21%が5年の間に失われた。
アタッチメントレベルがSPT最初の2年で安定していたのに対し、SPT期間に再発になりやすいと知られる分岐部部位で特に、2-5年にロスが著しかった。
そして、最初の2年よりも、2~5年の間に多くの歯が失われた。
 唾液中やプラーク中のmutans streptococci と関連した根面カリエス所見は過去の報告と一致していた。分岐部における根面カリエスの進行は、この研究ではベースライン時の唾液流量や緩衝能が低い、そしてmutans streptococciやlactobacilli数が高い時に見られた。過去の報告で知られるようなred complexの存在と歯周病の進行との関連は今回の研究ではみられなかった。上顎でのthrough and through 分岐部病変は、歯周病原細菌の存在とは無関係に再発を生じやすく運命づけられている臨床状態なのかもしれな
い。また一方、下顎については、分岐部のう蝕に対する高い感受性よって歯周病の再
発リスクの可能性が過小評価されているようだ。」
(令和元年10月26日)


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