メニュー


難しくてもちょっと知りたい最新の歯周病治療・歯周病研究 
論文紹介p011(no.038-039)

No.039
Association between periodontal condition and use of tongue piercing: a case-control study.
Pires IL, Cota LO, Oliveira AC, Costa JE, Costa FO.
J Clin Periodontol. 2010 Aug 1;37(8):712-8.


このクロスセクショナルの研究は舌ピアスをしている人について、歯周組織の状態と歯肉退縮に対するリスクとを評価することである。
ブラジルで、60ケース(舌ピアスをしている人)と120コントロール(非使用者)、13と28才、男性および女性で多種の人種が選択された。患者の口腔内健康記録における臨床評価には歯周組織パラメーターと歯の破折の有無が含まれた。ケースとコントロールが、人口統計学的について、行動に関して、そして興味の臨床変数について比較された。歯肉退縮出現に対するリスク変数は、線形およびロジスティック回帰を伴う多変量回帰モデルで同定された。
ケース群はコントロール群と比較したとき、歯肉退縮の頻度と重症度が高かった。舌ピアスをしている人はコントロール群に比較して下顎前歯の舌側歯肉退縮の頻度が11倍を示した。下顎前歯舌側における歯肉退縮の存在はピアスの使用、男性、プロービング時の出血と関連があった。
舌ピアスの使用は下顎前歯舌側の歯肉退縮と出現率と強い相関があった。

(私の感想:ちょっと際物の論文かな。日本でも時々みる舌や口唇ピアス。この論文では歯茎が下がることとの関連をメインテーマとして調べている。ピアスによる歯肉退縮(歯茎が下がること)は過去の報告でも19.2から68.13%の割合のようである。
ピアスをすることで生じる具合の悪いことには通常の耳ピアスで見られる腫れ、痛み、感染などがあろう。この研究では対象となった舌ピアス被験者では36.7%で装着直後に腫れか感染・炎症が生じていたようである。
この研究では舌がもっともよく接触すると考えられる下の前歯の裏側、そしてその比較として上の前歯の裏側と、それぞれ歯肉退縮の関連を検討している。その結果、上の前歯裏側では歯肉退縮との相関が見られなかったのに、下の前歯では関連がみられた。つまり、舌ピアスが歯や歯ぐきに接触する機会の多いことが、歯肉退縮の原因となっていることを示唆される。舌ピアスにより歯の破折が生じる可能性もあるが、それについてはピアスの存在だけではなく、ピアスを噛んだりするクセのせいかもしれないと、関連を保留している。舌ピアス、ファッションとしてはいいのかもしれないが、口腔内の健康、という観点からはあまりおすすめできるものではないような。それ以前にそんなことに違和感を持つ人の方が一般的だとは思いますが。)

ボディピアス、歯肉退縮、歯周組織、リスク因子、歯の破折
(平成23年9月4日追記)


コーヒーブレイク


論文を読むのは面白い。ふ~ん、そうだったのか。そんなことがわかっていないのか、色々と科学的な情報が得られるからね。もちろん面白くない論文もある。そんなのは、ちらっとみて、すておく。また別の論文を見ればよい。
読む方にはどの雑誌のどの論文を読むか自由があるが、書く方は雑誌に自由に掲載できる訳ではない。科学雑誌に論文を載せるのは、それなりの苦労がある。できあがった論文を投稿したからといって、それが自動的に採用されるわけじゃない。通常編集者が、複数のしかるべき人(レビューヤー)にその論文を送り、雑誌に載せる価値があるかどうか採点してもらう。採点者が、無条件に皆OKと返事してくれればよいが、そうとは限らない。ちょっとの修正でOKならよい方で、データを追加せよなんて言われようものなら、再実験。もちろん、即座に却下てなこともある。皆それなりに苦労している。だから、掲載された論文は本来非常に重いものだ。


No.038
Vitamin D status and periodontal disease among pregnant women.
Boggess KA, Espinola JA, Moss K, Beck J, Offenbacher S, Camargo CA Jr.
J Periodontol. 2011 Feb;82(2):195-200.


妊婦の歯周炎は妊婦の40%以下でみられ、妊婦の有害事象と関連している。ビタミンD欠乏は歯周病や歯の喪失に関連し、ビタミンD低下は妊婦に共通の現象である。この研究の目的は、妊婦のビタミンD状態と歯周病との関連を研究することである。
ケース-コントロール試験が行われた。症例群は中等度から重度歯周炎に罹患した妊婦とし、対照群は歯周組織が健康な妊婦と定義された。母性データは病歴から要約され、妊娠14から26週に血清が採取された。血清中の25-ヒドロキシビタミンD(25[OH]D)レベルは液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法 を用いて測定した。
25[OH]D血清レベル中央値とビタミンD欠乏(75<nmol/lと定義した)の出現率が症例群と対照群で比較された。ビタミンD欠乏の女性のうち、中等度から重度歯周炎に対するオッズ比と95%信頼区間が妊婦の人種、採血時の季節そして他の潜在的交絡因子で調整されて多変量ロジスティック回帰分析を用いて計算された。117症例全てが、118の対照症例と比較された。症例群では対照群と比較して25[OH]D中央値レベルが低く(59対100nmol/l;p<0.001)そしてビタミンD欠乏が生じていた(65%対29%;P<0.001)。ビタミンD欠乏で中等度から重度歯周炎に罹患している女性の調整オッズ比は2.1(0.99 to 4.5)であった。 
ビタミンD欠乏(血清 25[OH]D <75 nmol/l)は妊娠期間中の歯周病と関連があった。ビタミンDの補給は妊婦の口腔内の健康を改善するために有望な治療方法であるといえる。

(私の感想:妊婦の歯周病は低体重児出産のリスクがある。感染防御にビタミンDは重要であるが、妊婦ではしばしばビタミンD低下が認められる。それで、妊婦のビタミンDと歯周病との関係が気になりますよね~、ということだ。
被験者となった症例群とコントロール群、つまり中等度から重度の歯周病になっている妊婦さんと歯周病じゃない妊婦さんの特性が論文中の表にでている。そのデータをみると興味深い。列挙する。年齢は、歯周病群が平均27才、コントロールが平均31才。アフリカ系アメリカ人の割合が歯周病群73%、コントロール群21%、結婚している人の割合が歯周病群26%、コントロール群73%、保険契約者の割合が歯周病群19%、コントロール群68%、妊娠中喫煙している人の割合が歯周病群28%、コントロール群8%、だという。おおざっぱに言ってしまうと、歯周病になっている妊婦さんの代表的な像は、アフリカ系、妊娠しているけど結婚していなくて、医療保険を持たず、喫煙している人も少なくない、となる。ふ~ん。
ビタミンDを摂取すれば歯周病にならない、という訳ではないだろうが、妊娠中はビタミンD不足にならないように気をつけましょう、という風に読み取れる。)

歯周病、妊娠、ビタミンD
(平成23年8月27日追記)



最新の歯周病治療・歯周病研究論文紹介トップ

癒しのクスリ箱、息抜きにブログをどうぞ

p010(No.036-037) ← p011 → p012(No.040-041)