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難しくてもちょっと知りたい最新の歯周病治療・歯周病研究 
論文紹介p015(no.047-049)

No.049
Local inflammatory markers and systemic endotoxin in aggressive periodontitis.
Shaddox LM, Wiedey J, Calderon NL, Magnusson I, Bimstein E, Bidwell JA, Zapert EF, Aukhil I, Wallet SM.
J Dent Res. 2011 Sep;90(9):1140-4.


歯周病に寄与する局所もしくは全身的な因子について焦点を当てた研究は多いが、これらの因子とリンクしたメカニズムに関する情報はほとんどない。我々は、局所型侵襲性歯周炎(LAP)における細菌性内毒素に対する全身的過剰な炎症反応をこれまでに報告した。この研究の目的は歯肉溝浸出液(GCF)中のサイトカイン・ケモカインを測定し、LAPと関連して全身的内毒素レベルを評価することである。臨床パラメーター、GCF、末梢血が、34人のLAP、10人の健康な同胞、そして9人の健康な未治療の対照者から採取された。GCF中のサイトカイン/ケモカイン、血漿中全身的内毒素レベルが定量され、相関解析が全てのパラメーター間でおこなわれた。健康な部位に比較して、9つのメディエーターがLAP病的部位で上昇していた(TNFα, INFγ, IL1β, IL2, IL6, IL10, Il12p40, GMCSF,とd MIP1α, p < 0.001)のに対して、MCP1、IL4とIL8は健常部位で上昇していた(p < 0.01)。健常人被験者に比較して、4から5倍の高い内毒素レベルがLAP患者の血漿で検出され(p < 0.0001)、このことは全ての臨床パラメーターと解析したほとんどのサイトカイン/ケモカインと関連がみられた。結論として、高いレベルの内毒素がLAPで認められ、このことは増悪する局所の炎症反応や疾患の臨床徴候と関連しているといえる。
(私の感想など:アブストには書かれていないが、同胞の患者で健常部位なのに侵襲性歯周炎に罹患した被験者の病変部位と同じサイトカイン濃度パターンがあったようだ。その部位はその後歯周病が進行して、病変部となったそうだ。そのことから、局所の炎症性サイトカインやケモカインパターンを検査することで病変悪化部位の予測が可能かもしれないことを述べている。まあ一箇所だけだからなんともいえないが、可能性はあるかもしれない。しかし健常部位から歯肉溝浸出液を取るのは厳しいような気がする。また10秒以内だと記載されているが、ポケット測定と同じレベルにはならないのもつらいね。)
侵襲性歯周炎、内毒素、サイトカイン、ケモカイン、歯肉溝浸出液、LPS
(平成23年10月17日)


No.048
Periodontal regeneration versus extraction and prosthetic replacement of teeth severely compromised by attachment loss to the apex: 5-year results of an ongoing randomized clinical trial.
Cortellini P, Stalpers G, Mollo A, Tonetti MS.
J Clin Periodontol. 2011 Oct;38(10):915-24.


ランダム化長期臨床研究の目的は、慢性歯内-歯周病変に罹患した、あるいは根尖まであるいは根尖を越えてアタッチメントロスのあるホープレスな歯に対して、歯周組織再生治療をおこなう場合と抜歯、修復処置をおこなった場合、それぞれの臨床的そして患者サイドの結果を比較することである。広汎型重度歯周炎を呈し、歯周組織に問題があり抜歯の対象となる、ホープレスな歯が少なくとも1本存在する50人の患者が研究対象となった。試験治療として、25本のホープレスの歯に対し、再生治療をおこなった。対照として、25本はホープレスな歯の抜歯とコンベンショナルなあるいはインプラントで支持された固定性の義歯で補綴をおこなった。
コントロール群では、14本がインプラント支持による修復で、8本は歯牙支持のブリッジ、2本はメリーランドブリッジで修復されたが、1本は修復処置をおこなわなかった。全ての固定性部分義歯は5年フォローアップ期間維持され、83%は生物学的な合併症を認めなかった。試験群では、25本の再生がみられた歯のうち、23本が臨床的にかなりの改善を示した。2本は不満足な結果で1年後に抜歯となった。23本の良好な再生がみられた歯(92%)は5年後の診査時にも良好な健康状態と機能を保っていた。84%はリコール期間に中生物学的な合併症は進行していなかった。全ての患者は、研究の試験およびコントロール修復で機能的に快適であると報告した。試験群では、平均臨床的アタッチメントレベル獲得が 7.7±2.8mmで、レントゲン的骨の回復が 8.5±3.1mm、プロービングポケット深さ(PPD)が4±1.7mmであった。再生の見られた歯のほとんどが動揺も減少した。
再生治療はホープレスな歯にも適応でき、その予後を変える可能性がある。再生治療は、根尖に至る、あるいは根尖を越えた骨内欠損を有する、歯の重度易感染性歯に適した代替法といえる。
(私の感想など:根尖を越えて骨吸収があっても、再生治療で5年はOKだ、という。確かに症例写真の一つが掲載されているが、通常は抜歯のような症例である。
歯周組織再生失敗のほとんどが、患者のネガティブ因子、外科処置方法や材料が適応でなかったこと、執刀医の技術や経験が不十分であったことで説明できるとしている。そして、今回のような結果は、患者を十分に選択し、経験豊富な臨床家が技を駆使して再生治療をおこない、厳格なサポーティブペリオドンタルセラピーをおこなってはじめて得られるのだ、というようなことを述べている。
ふむ。)
臨床試験、ホープレスな歯牙、長期、歯周組織再生、抜歯、歯周外科
(平成23年10月14日)


No.047
FGF-2 stimulates periodontal regeneration: results of a multi-center randomized clinical trial.
Kitamura M, Akamatsu M, Machigashira M, Hara Y, Sakagami R, Hirofuji T, Hamachi T, Maeda K, Yokota M, Kido J, Nagata T, Kurihara H, Takashiba S, Sibutani T, Fukuda M, Noguchi T, Yamazaki K, Yoshie H, Ioroi K, Arai T, Nakagawa T, Ito K, Oda S, Izumi Y, Ogata Y, Yamada S, Shimauchi H, Kunimatsu K, Kawanami M, Fujii T, Furuichi Y, Furuuchi T, Sasano T, Imai E, Omae M, Yamada S, Watanuki M, Murakami S.
J Dent Res. 2011 Jan;90(1):35-40.


歯周組織再生におけるリコンビナントヒト線維芽細胞増殖因子-2(FGF-2)の局所応用の効果について検索した。この研究では、ランダム化二重盲検プラセボ対象臨床試験が歯周病に罹患した253人の成人患者で行われた。ウィドマン改良歯周外科が行われ、0%(基剤のみ)、0.2%、0.3%あるいは0.4%FGF-2を含む治験薬200μが2あるいは3壁性の骨欠損へ投与された。投与後36週における骨再生の割合について検討すると、FGF-2各濃度は基剤のみに比較して有意な差があり、0.3%FGF-2群でピークがみられた。約2mmである臨床的アタッチメントの再獲得は、群間で有意差はみられなかった。歯槽骨の異常増殖やアンキローシスを含む、臨床的上安全性に問題はなかった。これらの結果は、歯周病で破壊されたヒト歯周組織の再生に、FGF-2投与が有効であることが強く示唆された。
(私の感想など:これはFGF-2の臨床試験の結果を示した、北村先生の論文である。多施設でおこなわれて、非常に信頼性の高い臨床治験である。考察にもあるが、GTRでは6ヶ月で欠損部の骨再生が34%、エムドゲインで31%(3年)、PDGF+TCPで57%(6ヶ月)なのに対し今回のFGF-2は遜色なく50.6%(9ヶ月)である。
いくら治験で効果が確認されても、実際の薬になるのは幾多の手順を踏まなければならない。どうなることか)
歯周病、組織再生、FGF-2
(平成23年10月10日)



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