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難しくてもちょっと知りたい最新の歯周病治療・歯周病研究 
論文紹介p014(no.044-046)

No.046
Periodontal disease as a risk for dental implant failure over time: a long-term historical cohort study.
Levin L, Ofec R, Grossmann Y, Anner R.
J Clin Periodontol. 2011 Aug;38(8):732-7.


この研究の目的は、患者の歯周組織状態に依存したデンタルインプラントの長期生存率を評価すること、またあわせてインプラント失敗に関して、歯周組織状態の影響が長期フォローアップ期間を通じて一定であるか否かを評価することである。この研究は、歯周専門クリニックで1996年から2006年までに治療を継続して受けた患者の前向きコホート研究デザインである。今回のコホートは2336本のデンタルインプラントを施された、736人の患者からなる。生存期間と検索変数との相互関連を含む、Coxの比例ハザードモデルが用いられた。患者の平均年齢(標準偏差)は51.13(12.35)歳であった。フォローアップ期間は最長144ヶ月、平均(SD)54.4(35.6)ヶ月であった。インプラント全体の生存率は95.5%であった。健康あるいは中等度慢性歯周炎患者に対して、埋入されたインプラントによる108ヶ月時点でのカプラン・マイヤーの累積生存率(CSR)はそれぞれ0.96と0.95であった。重度歯周炎群のCSRは108ヶ月では0.88に低下していた。フォローアップ50ヶ月以降では、重度慢性状態がインプラント失敗に対する有意なリスク因子となることがCoxのモデルから示された[hazard ratio (HR)=8.06; p<0.01]。Coxのモデルから、喫煙は50ヶ月以降、ほぼ有意差ありと言ってよい影響を示していた(HR=2.76; p=0.061)。
歯周組織の状態と喫煙はインプラント失敗の有意なリスク因子である。歯周組織と喫煙状態に対するHRは、フォローアップ期間を通じて一定というわけではなかった。
タバコ、糖尿病、インプラント失敗、メインテナンス、歯周炎、喫煙、サポーティブセラピー

(私の感想など:歯周病であることが、その後のインプラント治療予後にどのような影響を及ぼすかは興味あるところで報告もあるが、その結論は影響ない、あるいは影響する、と両方の報告がある。この論文では、重度歯周炎であっても50ヶ月までは影響は見られないが、それ以降は不成功リスクが8倍になると述べている。ここでいう失敗、不成功とはインプラントが除去されてしまうことである。50ヶ月過ぎたらインプラント除去例が増えるといっても、急に取らなあかん状態になるわけではないだろうから、その前からインプラント周囲炎になっているのだろう。そうすると、重度歯周病の影響は歯を抜いた後のインプラントへも強く影響を及ぼしていると考えられる。
重度歯周炎で108ヶ月たっても0.88の生存率があるので、そこそこの数字だと解釈する人もいるだろう。でも、インプラントが除去されていなくても相当な骨吸収がある例もあるだろうから、実態はもっと悪いのかもしれない。いずれにせよ、歯周病とはなんともやっかいな病気なのだろう、と思うことしきりである。)

歯周病、長期メインテナンス、サポーティブペリオドンタルセラピー、歯の喪失
(平成23年10月9日)


No.045
Predictors of tooth loss during long-term periodontal maintenance: a systematic review of observational studies.
Chambrone L, Chambrone D, Lima LA, Chambrone LA.
J Clin Periodontol. 2010 Jul;37(7):675-84.


この研究の目的は長期歯周治療メインテナンス(PM)で歯の喪失に影響を及ぼす因子を体系的に評価することである。
CENTRAL、MEDLINE と EMBASE が2009年9月まで検索された。歯周治療を受け、少なくとも5年間はメインテナンスケアプログラムを受けた患者に限定した研究が、このレビューに適切な対象とした。PM中に歯の喪失に関するデータが記載されていれば、今回の研究対象として考慮された。探索戦略として、527の可能性のある適切な論文が同定され、うち13の後ろ向き研究症例がこのレビューに含まれた。ニューキャッスルオタワのスケールによって調べられた偏りの評価リスクから、8研究が方法論的に中等度のクオリティ、5つが低いクオリティであると考えられた。積極的な歯周治療の後に41,404本の残存歯牙のうち、3,919本がPM期間中に失われた。歯周病が原因で歯牙喪失した割合と歯の喪失を経験しなかった患者の割合は、 1.5% to 9.8% と 36.0% to 88.5%であった。研究の個々の結果から異なった患者に関連した因子(例えば年齢や喫煙)と歯に関連した因子(歯種と部位、最初の歯の予後)がPM期間中の歯の喪失と関連があることが示された。
検索した研究には不均一性がかなりあり、そのために明確な結論をだすことはできなかった。年齢、喫煙、そして最初に判断した歯の予後はPM期間中の歯の喪失と関連があることが見いだされた。

(私の感想など:タイトルは大上段に構えたものだが、あんまり面白くない。メインテナンス中に抜歯となる歯の予知因子がわかればそんな嬉しいことはない。でも実際には要因は多種多様で、確実なものを調べ上げるようなことをすると、統計処理に耐えられず脱落していく。そのため結論的には、ありきたりな要因だけが残ることになる。
年齢はどうしようもない。でも患者さんに年をとったら悪くなるのは当たり前や、とは何事やと怒られそうだが、やっぱり仕方がない。歯を失いたくない患者さんができることと言えば、専門医でなくてもいいと思うが、歯周病を診てもらえるドクターのもとに定期的に通うこと、タバコを吸う人はタバコをやめることになるようだ。
ただ悲しいことに、メインテナンスは歯牙喪失リスクを下げるが、歯周病の発症・進行や再発を完全に防げるわけではない。)
歯周病、長期メインテナンス、サポーティブペリオドンタルセラピー、歯の喪失
(平成23年10月6日)


No.044
Association between chronic periodontal disease and obesity: a systematic review and meta-analysis.
Chaffee BW, Weston SJ.
J Periodontol. 2010 Dec;81(12):1708-24.


肥満はその有病率が増加しつつあり、世界的な罹病に対する主要な寄与因子の一つである。歯周組織の炎症はメタボリック症候群を悪化させる可能性があり、肥満がその症候の一つであるが、肥満の結果として歯周病に対するリスク増加が考えられている。このレビューの目的は、疫学研究から肥満と歯周病との関連についてのエビデンスを体系的に収集し、両疾患の関連について定量的な要約を導き出すことにある。
MEDLINE, SCOPUS, BIOSIS, LILACS, Cochrane Library, とブラジルの歯科データベース文献の体系的な検索が、関連研究の結果と特徴を標準形式に要約されておこなわれた。関連性の要約基準を得るためにメタアナリシスが行われた。電子検索で、554のユニークな引用文献が同定された。70の研究が、57の独立した集団を示して、あらかじめ設定された基準を満たした。設定基準にマッチしたほとんどすべての研究はクロスセクショナルな実験デザインで、その結果は41の研究で正の関連性を示唆して、固定効果要約オッズ比は1.35で、若年層、女性と非喫煙者内で強い関連性を示す幾つかの根拠を伴っていた。追加の要約評価は肥満の人で平均臨床アタッチメントロスの増加や、歯周病患者で平均BMIが高く、増加するBMIの人の歯周病罹患率がオッズ比が増加する傾向のあることが示唆されている。これらの結果は、偶然の産物であるとは言いにくいものではあるが、測定されていない交絡因子がこれらの評価に信頼性を有する未知の影響を及ぼしていた。
この正の相関は 歯周病の進行過程で、肥満に対して生物学的にありそうな役割と矛盾無く首尾一貫したものであった。 ごく僅かの縦断的研究ではイベントの一次的な順位付けを区別できず、従って肥満が歯周病のリスク因子である、あるいは歯周病が体重増加のリスクを上昇させるかもしれないという根拠は限定的である。臨床の場においては、肥満成人を診る際には歯周病の罹患率が高いと予期はすべきである。

(私の感想など:全身的な事項の中で、肥満と歯周病の相関については報告がある。ただ、心疾患ほどには客観的な強い相関はエビデンスを提示できないようだ。ただ、女性、非喫煙そして若年層では、肥満と歯周病に強い相関があるみたい。肥満ってメタボの典型的な症候の一つだから、何かあってもおかしくないが、論文をくって調べると、案外統計処理にはのってこないみたいだ。関連するのはサイトカインや酸化ストレスの関与が考えられるが詳細にはそのメカニズムは解明されていない。
著者らはこれまでのデータから明確なエビデンスがあるとは言えないし、もしそうだとしてもその時の対処法が示されているわけではないが、肥満患者には歯周病が多いと思うから気をつけろと述べている。)
肥満、歯周病、体重、過剰摂取、歯周病

(平成23年10月2日追記)




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