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難しくてもちょっと知りたい最新の歯周病治療・歯周病研究 
論文紹介p019(no.059-061)

No.061
Contribution of host genotype to the composition of health-associated supragingival and subgingival microbiomes.
Papapostolou A, Kroffke B, Tatakis DN, Nagaraja HN, Kumar PS.
J Clin Periodontol. 2011 Jun;38(6):517-24.


歯周病とう蝕は人に影響する最も罹患率の高い病気のうちの二つである。しかしながら、これらの疾患に対する個人の感受性は母集団内で有意に異なる。それゆえ、この研究の目的は、健康な状態の歯肉縁上および歯肉縁下の微生物群ゲノムの組成に及ぼす宿主遺伝子型の影響を検索することである。
口腔内および全身的に健康な、成人の一卵性および二卵性双生児から、歯肉縁下および歯肉縁上のプラークが採取された。接合子体の構造は13縦列型反復配列のマルチプレックスPCRにより決定された。末端標識制限酵素断片多型分析が細菌叢プロファイルの検索のために用いられた。双子間の微生物群落の類似性と同様に、双子に共通の細菌種の数が2標本t検定を用いて計算され比較された。
双子ペア間の微生物群落の類似性と同様に、双子ペアに共通種の数に差異はなかった。年齢はこれら微生物パラメーターに遺伝的な影響を及ぼす修飾因子ではなかった。歯肉縁上と歯肉縁下群落の類似性の関連において、一卵性と二卵性双子ペア間に差異はみられなかった。
たとえあるにせよ、歯肉が健康な状態で恒常性が維持された口腔内微生物群落に対して、宿主遺伝子型の寄与はあきらかではない。
(私の感想:一卵性双生児は遺伝子型が同一で、二卵性は半分が同じである。年齢は同じだし、環境要因も類似項が多くなるので、両ペアを比較することで、遺伝的な影響を推し量ることができる。
この研究では健康な歯周組織細菌叢に対する遺伝的な影響を検討している。結果は上述したように、明確な影響を示すことはできなかった。後天的な要因が主に細菌叢の構成を決めるということか。年齢と共に双子ペアの類似性が減少しているので、そうかもしれない。ただ著者らはマイナーな細菌種では遺伝的な影響があってもよかろう、とは考察している。)

細菌、遺伝子型、16S、歯肉縁上、歯肉縁下
(平成23年12月4日)


No.060
Azithromycin concentrations in blood and gingival crevicular fluid after systemic administration.
Lai PC, Ho W, Jain N, Walters JD.
J Periodontol. 2011 Nov;82(11):1582-6.


アジスロマイシンは幾つかの歯周病原因因子に対して有効であるマクロライド系の抗生剤である。マクロライド系は吸収されると歯肉線維芽細胞に蓄積され、このことが薬物動態に影響を与える。
この研究は、アジスロマイシンの定常状態レベルが血清中よりも歯肉溝浸出液(GCF)中でより高濃度で長く維持されるという仮説を検証することである。
4人の健康な被験者が初回500mg、次の2日は各250mgのアジスロマイシンを服用した。血清およびGCF中サンプルが最終服用の後2時間、2、4、7日に採取された。GCFサンプルはペーパーストリップスで上顎の臼歯から採取された。ストリップスはプールされ、高純度水に溶出された。抽出後、血清およびGCF抽出液中のアジスロマイシン濃度が寒天拡散バイオアッセイで測定された。
2、4、7日後に血清アジスロマイシン濃度はそれぞれ0.22 ± 0.02,、0.08 ± 0.02、そして0.04 ± 0.01 μg/mLであった。 歯肉溝浸出液中の濃度はそれぞれ8.82 ± 1.25、 7.90 ± 1.72と7.38 ± 1.15 μg/mLであった。平均GCF中のレベルは平均血清レベルより有意に高かった (P ?0.02; paired t test)。
これらの所見からアジスロマイシンの薬物動態プロフィールがGCFと血清で異なることが示された。定常状態では、GCF中のアジスロマイシン濃度は血清のそれよりも高くまた持続していた。従前の研究も考慮すると、GCF中で観察されたレベルはAggregatibacter actinomycetemcomitans (以前のActinobacillus actinomycetemcomitans),、Porphyromonas gingivalis とPrevotella intermediaに対する最小抑制濃度を超えていた。
(私の感想など:アジスロマイシンは組織移行性に優れる抗生剤としてしられる。また3日投与で1週間の血中濃度が維持されるので使いやすい抗生剤と言える。
このアジスロマイシン、日本ではジスロマックが有名、が歯周病原性細菌のAa、Pg、Piなどに有効で、有効濃度がGCF中で維持されるのだという。No059論文では、抗炎症作用も有するとのことのようなので、歯周病治療に有効な気がする。
しかし、臨床応用では有効性が示されないとする報告もあるところが辛いところだ。)

(抗感染性薬剤、歯周炎、薬物動態)
(平成23年12月4日)


No.059
J Dent Res. 2010 Aug;89(8):831-5. Epub 2010 Apr 16.
Azithromycin decreases crevicular fluid volume and mediator content.
Ho W, Eubank T, Leblebicioglu B, Marsh C, Walters J.


アジスロマイシンはルートプレーニングに対する反応を高め、慢性肺疾患の治療において抗炎症効果を発揮する。これらのことから、アジスロマイシンが歯肉における炎症メディエーター産生を抑制し、歯肉溝浸出液(GCF)を減少させるのではないかという仮説をたてた。この仮説を検証するために、10人の歯周組織の健康なボランティアが48時間に毎24時間ごとにアジスロマイシン投与を受けた。アジスロマイシン服用前(ベースライン)、服用2、4、7、14日後に、12箇所の上顎歯間部位からGCFサンプルが採取された。サンプル中のIL-1β、 IL-8、 TNF-α、 VEGF、 IL-6と IL-10アッセイがおこなわれた。アジスロマイシン服用に伴い、GCF量は2日から7日まで有意に減少した(P < 0.05)が、14日後にはベースライン時レベルに上昇した。この時、 IL-1β、 IL-8、 TNF-αと VEGF濃度は一時的に減少した (P < 0.05)。IL-6とIL-10は検出されなかった。研究期間を通じてプラークはみられなかったので、これらの結果はアジスロマイシンが歯肉で抗炎症効果を発揮したと考えられる。

(私の感想など:次の論文とあわせてコメントします)
(平成23年12月4日)


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