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難しくてもちょっと知りたい最新の歯周病治療・歯周病研究 
論文紹介p067(no.296-300)

No.300
The influence of implant diameter on its survival: a meta-analysis based on prospective clinical trials.
Ortega-Oller I1, Suarez F, Galindo-Moreno P, Torrecillas-Martinez L, Monje A, Catena A, Wang HL.
J Periodontol. 2014 Apr;85(4):569-80.

直径の狭いインプラントの使用はちいさな無歯顎スパンを回復する場合に提案されており、その使用により過剰な骨造成法を避けて、インプラント修復の外科的複雑性を減少させる。直径の狭いナローインプラントの成功率は文献的にすでに解析されているが、著者らの知る限り、前向きのランダム化コントロール研究に基づいたメタ解析は行われてこなかった。この研究の目的は標準的あるいはワイドインプラントに比較して狭小インプラントの生存率を解析することである。
2012年9月1日以前に英語で出版された研究のインプラントに関連した雑誌において、3データベースから電子検索と手検索がおこなわれた。少なくとも10インプラントで1年以上のフォローを行っている前向きヒト臨床研究がメタ解析に含まれた。インプラントはその直径に基づいて2群に分けられた。
最初の検索で484論文が選別され、そのうち49が適格とされて、全編が評価された。最終的に、16研究が選択されて2群に分けられた。すなわち、1) インプラント直径<3.3 mm (群1)と 2)インプラント直径 ?3.3 mm (群2)である。群1と群2に対してなされたメタ解析はそれぞれ、75%と87%の生存率を示した。
メタ解析は狭小なインプラント (<3.3 mm) が幅広いインプラント (?3.3 mm)に比較して生存率が低いことを示した。補綴物、インプラント表面、そして補綴負荷のタイミングなど他の変数がインプラント生存率に影響を与えていることが見いだされた。
(歯槽骨、デンタルインプランテーション、単根歯、補綴、インプラント支持)
「スモールインプラント(ナローインプラント)の定義は明確ではない。3.8mmを標準、3.7mm以下をナローとする研究、3mm以下をナローとする報告、3.0から3.4mmをナローとする研究者などさまざまだ。あるいは<2.9mmをミニ、3から3.4mmをスモールあるいはナロー、3.75から4mmをレギュラー、5から6mmをワイドとする人もいる。要するに統一されたような普遍的な分類はないのだ。
それでもいわゆるナローインプラントはレギュラーあるいはワイドインプラントと比較して、同様の成功率あるいは生存率を示すとされ、システマティックレビューでも90%を超える生存率が報告されている。しかし、メタ解析まではおこなわれていないので、本論文の登場とあいなった。今回の研究では<3.3mmと>=3.3mmに分けて解析している。
ナローインプラントの不成功率はレギュラーインプラントよりも3.92倍高い値を示していた。これはレギューラータイプを選べないという臨床的に複雑な症例が多いからかもしれない。
埋入後<3ヶ月で負荷をかけたナローインプラントは少なくとも3ヶ月後に負荷をかけたナローインプラントに比較して4.42倍の不成功率が増加した。また上顎への埋入は下顎の埋入に比較して5倍不成功率が低かった。」
(平成26年4月24日)


No.299
Outcomes of autotransplanted teeth with complete root formation: a systematic review and meta-analysis.
Chung WC1, Tu YK, Lin YH, Lu HK.
J Clin Periodontol. 2014 Apr;41(4):412-23

このレビューの目的は根完成歯の自家移植の臨床成績と種々の影響因子の効果を評価することである。
Pubmed、Scopus、Google scholarと手検索が2013年2月まで前向きおよび後ろ向きコホート研究と症例シリーズを同定するために用いられた。マルチレベルポアッソン回帰を用いて、1年ごとの不成功率(FR)、1年および5年生存率(SRs)、感染に関連した根吸収率(RR)、アンキローシス率(AR)、全身投与抗生剤(SAs)の影響、歯内治療と固定方法とドナー歯の形態が解析された。不成功はフォロー期間中に移植歯が失われた場合と定義された。
26研究が含まれた。推定FR、RR、AR、1年および5年SRはそれぞれ2.0%、2.1%、1.2%、98.0%と90.5%であった。SAなし、縫合固定、14日以内のワイヤー固定、臼歯の場合には推定FRは高かった。SAなし、術後14日以内の歯内治療<アブストにはこう記述されているがたぶん術後14日以降の間違いであろう>、と前歯/小臼歯ドナーの場合には推定RRは高かった。ワイヤー固定と小臼歯ドナーの場合には推定ARは高かった。
根完成歯の自家移植は低いFR、RR、とARであり、好ましい治療といえる。しかし、SA、歯内治療、固定法と歯の形態はその成績に影響を与えるようだ。
(根形成歯、メタ解析、生存、システマティックレビュー、歯の自家移植)、
「18世紀に歯の自家移植が紹介された。その後20世紀にAndreasenらによってその予後やリスク因子が明らかにされ、標準的な外科処置法が提案された。歯の自家移植、特に根未完成歯ではインプラントに匹敵する予後の良さが報告されたが、根完成歯については生存率不良が報告された。さらに根吸収やアンキローシスなどの合併症がしばしば見受けられた。そこで今回のシステマティックレビューで調べてみよう、ということだ。
対象とした各論文の自家移植の生存率は30-100%と幅がある。1年生存率で見るとすべての報告が>88%で、推定FRは2%、推定1年SRは98%、そして推定5年SRは90.5%であった。
感染に関連した根吸収は施術後1-2ヶ月で生じることが多いため、今回のレビューでは1年以内での検討をおこなった。それによると2.1%だという。ところが2研究ではRRが50%を超えていた。歯内治療が早期におこなわれなかったのでは、とコメントがあった。
アンキローシスの兆候は移植後1年以内に認められるようなので、5年以内を対象に調べている。その結果は1.2%だが、これも2研究で100%となっている(うち1研究はRRが75.8%だ)。
抗生物質の不使用は使用しなかった場合に比べて、FRは2.5倍、RRは1.5倍高い値を示している。
歯内治療を行う時期についてはさまざまなガイドラインがある。FRは術後2週間以内と2週間を超える場合と変わらないようだが、RRは14日を超えた場合には14日以内の場合に比較して2倍高い値をしめすようだ。
ワイヤー固定もおこなうと、不成功例は減少する傾向のようだが、ARは3倍増加する。そして14日を超えてワイヤー固定をおこなうと、14日以下よりFRが少なくなるようだ。
1年ごとのFRは前歯で低く、大臼歯で高くなっている。RRは逆に臼歯で低く、前歯で高い。ARは前歯や小臼歯より臼歯で低い値を示す。臼歯でFRが高く、合併症が少ないのは、咬合力の負荷が高いこと、根表面が大きいことと関係があるのかもしれない。
歯周ポケットが深い場合の歯はどうだろう。 元論文に記述がない場合も多いので解析困難なようだが、深い歯周ポケットの歯を調べてみると、RRやARが他の研究の値に比べて著しく高くなっているわけではなさそうだ。」
(平成26年4月17日)


No.298
Dietary modulation of the inflammatory cascade.
Dawson DR 3rd, Branch-Mays G, Gonzalez OA, Ebersole JL.
Periodontol 2000. 2014 Feb;64(1):161-97.

栄養補助食品は伝統的に栄養不足をただす、あるいは予防するためにビタミンやミネラルを添加することで成り立っていた。必須脂肪酸のような他の炎症性メディエーターで食事を補充すると、クローン秒や関節リウマチなどの慢性炎症性疾患のコントロールに用いられる標準的な治療に、付加的に有益である。このレビューは特異的な生体分子で栄養補助を通じて炎症カスケードの治療修飾に対して用いられた戦略に焦点をあてた。慢性炎症に対して局所あるいは全身的な反応に、これら生体分子がどのように影響を与えるのか、その例が調べられた。特に、慢性歯周炎に対する宿主反応を修飾する可能性を証明する文献の概観が提供されている。
「歯周病とは直接関係のないようなタイトルだが、いみじくもPeriodontology2000に掲載されている論文なので歯周病との関連についても触れられている。その一部だけちょっとかいつまんでみよう。
歯周炎はバイオフィルムによって発症進展するが、組織破壊は免疫炎症反応の結果として生じると考えられている。免疫炎症反応を修飾することで、組織破壊のを防ぐという概念はあったものの、最近まであまり注目されてはこなかった。
栄養補助食品は血清中の栄養素を上昇させる。このことで、炎症反応を変化させうることが指摘されている。最近注目されているのがn-3 多価不飽和脂肪酸である。そう代表的なのが、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)である。この二者は細胞内に取り込まれて炎症性サイトカインを減少させるような結果が示されている。疫学調査でもドコサヘキサエン酸の高いレベルが歯周炎の低有病率と関連するなどの報告がある。しかし、n-3多価不飽和脂肪酸の治療併用効果についてはまだまだ研究例が少ない。それでも、動物実験や臨床研究から、歯周炎のような慢性炎症性疾患で、n-3多価不飽和脂肪酸が食事介入として用いられることで、抗炎症作用を発揮しうることが支持されている。」
(平成26年4月11日)


No.297
Does enamel matrix derivative application provide additional clinical benefits in residual periodontal pockets associated with suprabony defects? A systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials.
Graziani F1, Gennai S, Cei S, Ducci F, Discepoli N, Carmignani A, Tonetti M.
J Clin Periodontol. 2014 Apr;41(4):377-86

骨縁上歯周ポケットの治療における、エナメルマトリックスデリバティブ(EMD)の効果をレビューするのが本研究の目的である。
歯周骨縁上欠損にオープンフラップデブライドメント(OFD)とEMDとを比較するランダム化臨床研究が、電子および手検索を通じて同定された。スクリーニング、データの抽出と質の評価がおこなわれた。主要評価項目は歯の生存(TS)と臨床的アタッチメントレベル(CAL)獲得であった。ポケットプロービング深さ(PPD)減少と退縮(REC)増加は二次評価項目であった。臨床的およびレントゲン的骨増加に関する情報もまた収集された。
検索から1170研究が同定され、99被験者/358歯を報告する3論文が組み入れ基準に合致して選択された。フォローアップ(8-12ヶ月)期間中歯の喪失はなかった。EMDの付加的な平均の有益性は:CAL獲得1.2 mm [confidence interval (CI): (0.9, 1.4), p < 0.00001, I(2) = 66%]、PPD減少1.2 mm (CI: [0.8, 1.5], p < 0.0001, I(2) = 0%)REC増加-0.5 mm (CI: [-0.8, -0.2], p = 0.003, I(2) = 0%)であった。バイアスリスクが同定された。
TSに差はなかったが、EMD投与はODF単独に比較して臨床的およびレントゲン的な付加的な有益性があった。それにも関わらず、この特異的な適応に対する多施設研究を支持する一方で、データの不足から方法論的および潜在的な出版バイアスリスクがあるため、これらの結果を解釈するにあたっては慎重さが要求される。
(アクセスフラップ、アメロゲニン、エナメルマトリックスデリバティブ、メタ解析、骨縁上欠損)
「再生治療は骨縁上ポケット、骨内欠損、根間欠損などを対象としておこなわれてきている。骨内欠損については従来の方法より予知性のある優れた方法であることが示されている。分岐部については上下顎の頬側、下顎の舌側で、限定的ではあるが、臨床的なメリットのあることが示されている。
それらに対して骨縁上の歯周ポケット、すなわち水平性の骨吸収に対してはどうだろうか。垂直性の骨欠損とは異なり、水平性の骨吸収では再生が難しいとされている。歯肉退縮も生じやすいし、再生に必要なスペース確保が難しいのでGTRの適応にもなりにくい。
EMDは血管新生、根面の線維芽細胞増殖促進、骨芽細胞の分化促進や抗炎症などの生物学的活性を有して、歯周組織の創傷治癒や再生を促進する作用物質として幅広く用いられている。
そこで水平性の骨吸収に対してEMDの効果はいかがなものかというところを調べたというイントロが述べられている。
水平性骨吸収に対するOFDの臨床的な成績はPPDの減少が約2mmでCAL獲得は1mmであり、これらの結果は骨内欠損に対するオープンフラップの成績より劣る。これはよく言われるように、垂直性骨欠損のような創傷、血餅や再生剤を安定化させる残存骨壁がないためであろう。
それでもEMDは臨床的に有効であったので、骨縁上の軟組織の治癒に対しても付加的な効果をもたらすと考えられる。」
(平成26年4月6日)


No.296
Inter-bacterial correlations in subgingival biofilms: a large-scale survey.
Loozen G1, Ozcelik O, Boon N, De Mol A, Schoen C, Quirynen M, Teughels W.
J Clin Periodontol. 2014 Jan;41(1):1-10.

健康と疾患の間に横たわる口腔生態および生態の差の複雑性はよく知られたことであるが、疾患に関連した動態の明確な見解は欠落している。この研究では、20種類の手がかりとなる口腔細菌の出現率と存在量が健康と疾患において評価され、もっと重要なことは詳細な調査が細菌種間でおこなわれた。
盲検の細菌学的なデーターベースが横断的に後ろ向き研究で解析された。データーベースは歯周炎の段階的変化のある(健康状態から歯周炎まで)6308人の患者からのサンプルに対する細菌学的解析に基づいて行われた。20の口腔細菌とプロービング深さの量に関してデータが提供された。
Porphyromonas gingivalis、Tannerella forsythia、Treponema denticola、Eubacterium nodatum、Porphyromonas micra とPorphyromonas intermedia はポケット深さの増加とともに存在量と有病率の明確な上昇を示した。相関行列からほとんどすべての細菌は他の種類の細菌と関連があり、これらの関連のほとんどは有意であった。いくつかの有益な細菌は他の有益な細菌と強い関連があった。
細菌の関連性に関する知識は細菌叢が変化したバランスを回復することに焦点を当てた新しい治療選択肢を築く可能性がある。
(細菌、生態学、細菌学、歯周炎)
「結果を少しまとめる。Red complexであるT.forsythia、T. denticola、P.gingivalisおよびorange complexであるP.intermedia、P.micra、E.nodatumなどはポケット深さ(PD)の増加とともにその存在率や細菌量が増加していた。 そしてF. nucleatum、C.rectus、Veillonella parvulaはPDの浅い深いにかかわらずその存在率はほとんど変化していなかった。A.actinomycetemcomitans、P.nigrescens、 E.corrodens、Capnocytophaga species、C. gracilis、C. conisus S.mitis、S. constellatus group、S. gordonii group、A. odontolyticus、A.oris、V. parvulaはPDの増加とともにその量は減少傾向であった(orange complexのP.nigrescensやC.gracilisはPDの増加とともに存在率や量は増加していたとする報告もある)。
細菌同士の関連でいうとT.forsythia とT.denticolaは健常組織関連細菌であるStreptococcal group、A.orais、V.parvula、E. corrodens、Capnocytophaga speciesと負の相関があった。Strectococciはbacteriocinを産生するとことがしられており、これが歯周病原細菌の抑制に関連しているのではないか。
T.denticolaとP.gingivalisの共生関係が述べられている。T.denticolaによって産生されるsuccinic acidがP.gingivalisのエンベロープに取り込まれている。等々の考察でした。」
(平成26年3月27日)

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