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難しくてもちょっと知りたい最新の歯周病治療・歯周病研究 
論文紹介p084(no.381-385)

No.385
Long-term regular dental attendance and periodontal disease in the 1998 adult dental health survey.
Karimalakuzhiyil Alikutty F, Bernabe E.
J Clin Periodontol. 2016 Feb;43(2):114-20.

この研究の目的は英国成人における長期歯科受診パターンと歯周疾患との関連を検索することである。
UKで1998年の成人歯科健康調査に参加した3272人の成人からのデータを用いた。歯科受診パターンに関して、3つの質問に対する回答に基づいて4つの軌跡(現在定期的に受診中、以前からずっと今も定期的に受診、以前は受診していた、と定期的には受診しない)に分類した。ポケットデプス(PD)>=4の歯とアタッチメントロス(LOA)>=?4 の歯の数が結果判定にもちいられた。歯科受診パターンと歯周組織の測定結果との間の関連性は、負の回帰モデルを用いた、未処理と調整モデルにおいて評価した。
人口統計学的(性、年齢と住居地)および社会経済学的(教育と社会)因子で補正すると、不定期な受診者と過去の定期的な受診者はPD >=4 mm の歯(95%信頼区間Rate Ratiosがそれぞれ1.58 [1.28-1.95] と1.34 [1.12-1.60])およびLOA >=4 mmの歯 (1.34 [1.04-1.72]と1.37 [1.07-1.75])が継続した定期的な受診者よりも多かった。しかしながら、以前より継続して定期的に受診する者と現在定期的に受診している者との間に歯周組織評価に差は見られなかった。
国民的で横断的なデータの解析から、長期的に異なる歯科受診パターンの成人は異なる歯周組織の健康状態であることを示していた。
(成人、横断的研究、デンタルケア、歯科健康サービス/利用、予防歯科)
「ずっと継続して定期的に歯科受診している群と不定期にしか歯科受診をしない群とでは、PD >=4 とLOA >=4 mm の割合の差がそれぞれ58%と34%であった。
ただ過去はそうではなかったが現在定期的に受診している群と従前より現在に至るまで定期的に歯科受診をおこなっている群とには差がなかった。カリエスや歯の喪失に関しても同様の傾向があるらしい。過去はどうであれ現在定期的に受診している2群に差がなかった。それゆえ、過去には不定期な受診であっても、今定期的であれば、過去のサボりをレスキューするものがあるとも言える。
今回4群に分けられているが、定期的な受診がどの程度の間隔か、あるいは定期的な受診の期間がどれ程か、など群分けの明確な基準については決められていない。」
(平成28年5月16日)



No.384
Tooth loss in molars with and without furcation involvement - a systematic review and meta-analysis.
Nibali L, Zavattini A, Nagata K, Di Iorio A, Lin GH, Needleman I, Donos N.
J Clin Periodontol. 2016 Feb;43(2):156-66.

この研究の目的は、最初の診断時に分岐部病変(FI)に罹患している臼歯に関して、歯の喪失リスクを検討することである。
このシステマティック研究の検索は 、FIの測定と歯の喪失に関するデータを含む、少なくとも3年のフォローをしている長期研究に関して、Ovid Medline、Embase、LILACSとCochrane Libraryを利用しておこなわれた。
1207タイトルの最初の検索から、総数21研究がこのレビューに含まれた。メインテナンス期間中FIに起因する歯の喪失相対リスクは10年までの研究で1.46 (95% CI = 0.99-2.15, p = 0.06)そして、10-15年までのフォロー研究で2.21 (95% CI = 1.79-2.74, p < 0.0001)であった。クラスIIおよびクラスIII分岐部病変を持つ臼歯では歯の喪失リスクが徐々に増加することが観察された。
FIの存在は、10-15年までのサポーティブペリオドンタルセラピーによりメインテナンスされている臼歯に対して、歯の喪失リスクをおおよそ倍にした。しかしながら、ほとんどの臼歯は、クラスIII分岐部でさえも、歯周治療にうまく反応していることから、これらの歯をメインテナンスするために可能な限りのあらゆる努力がなされるべき、ということが示唆されるものである。
この結論を立証するためには、患者自身が評価して報告する、治療成績を記述している長期研究が必要である。
(分岐部、進行、歯の喪失、治療)
「分岐部を有する臼歯の喪失相対リスクは10年までで1.46、10-15年で2.21、そして15年以上では3-4倍であった。ただ、同じ分岐部であってもその喪失リスクはクラスIからクラスIIあるいはクラスIIIになると有意に増加するので、単に分岐部病変の有無だけで判定するよろしくない。
最近のレビューでは分岐部病変に対して、再生治療で期間4-7.5年で歯の存続が94-100%、トンネリングでは5-8年で89%、根切除では4年で79%と報告されている。
クラスIIIの分岐部病変であっても5-15年のフォローで歯の喪失は30%なので、分岐部の進行があるからといって諦めずに、あらゆる努力をしなさいということです。」
(平成28年5月10日)


No.383
Training in different brushing techniques in relation to efficacy of oral hygiene in young adults: a randomized controlled trial.
Harnacke D, Stein K, Stein P, Margraf-Stiksrud J, Deinzer R.
J Clin Periodontol. 2016 Jan;43(1):46-52.

この研究の目的は若年ドイツ成人の無作為集団について、口腔清掃後のプラークスコアを評価し、これらスコアに及ぼすフォーンズ法と修正バス法のコンピューターに基づいた練習の効果を比較することである。
18-19才70人がフォーンズ法、修正バス法あるいは口腔清掃の基本説明(コントロール群)のコンピューターに基づいたトレーニングを受けた。marginal plaque index (MPI;歯肉に隣接した部位にプラークが見られる部位の割合)とBOPがベースライン時と6、12、28週後に評価された。MPIは、参加者が口腔清掃を彼らができうるベストな状態と返答した直後に評価された。
ベースライン時83.3%± 12.5 (mean ± SD) のMPIレベルが観測された。12週後、MPIに関して各群には有意な差があった(p < 0.05 ):フォーンズ群:70.3% ± 14.7; バス群: 77.91 ± 14.37; コントロール群: 79.3% ± 9.2である。BOPに関して差は見られなかった。
若年ドイツ成人の無作為集団において、口腔清掃後の歯肉縁には高いプラークレベルが観察された。12週後、プラークレベルはフォーンズ法のトレーニングを受けた群で口腔清掃後のプラークレベルがわずかに減少したが、その効果はその後次第に小さくなった。この研究は歯肉炎症の徴候におよぼすトレーニングの効果を証明することができなかった。
(バス法、フォーンズ法、ブラッシングテクニック、口腔清潔、若年成人)
「ドイツのブラッシング法の主流はフォーンズ法らしい。15才ドイツ人のおよそ93%は歯肉炎で、13%以上に4mm以上のポケットがみられるらしい。歯周病の予防にはプラーク除去が疑うところのないことなのだが、どのブラッシング方法を指導すべきかについての、科学的な根拠に基づく指針というものは存在しないと言って良い。この研究では、修正バス法やコントロールに比較して、フォーンズ法がプラークレベルを下げる効果のあることを示した。同様にフォーンズ法の優位性を示す研究は幾つかあるようである。
プラークレベルを下げたといっても高々10%程度であり、トレーニング後であってもまだ70%ものプラークが残っているのである。しかもその効果は長続きしていない。まあ、1回の指導なので、こんなもんだ、とも、だからこそ繰り返しの指導が必要なのだとも、言えるのかも知れない。
最後に著者らは、コンピューターを利用した修正バス法によるトレーニングは、少なくとも若年ドイツ成人にに対しては何ら恩恵をもたらさなかった、と述べている。嫌いなのかな。」
(平成28年4月7日)


No.382
Loss of molars in periodontally treated patients: results 10 years and more after active periodontal therapy.
Dannewitz B, Zeidler A, Husing J, Saure D, Pfefferle T, Eickholz P, Pretzl B
J Clin Periodontol. 2016 Jan;43(1):53-62.

この研究の目的はサポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)期間中における臼歯の喪失に対するリスク因子を同定することである。
アクティブ歯周治療期間中(APT)に55本、平均13.2 ± 2.8年のSPT期間中に154本の臼歯が抜歯された。FIクラスIII(HR 4.68, p < 0.001)、ベースライン時骨吸収(BL) > 60% (HR 3.74, p = 0.009)、残存平均プロービングデプス(PPD, HR 1.43, p = 0.027)、と歯内治療(HR 2.98, p < 0.001)がSPT期間中臼歯の喪失に対して関連のある歯関連因子因子として同定された。しかしながら、FIクラスIIIあるいはBL>60%臼歯に対する平均生存期間はそれぞれ11.8年と14.4年であった。患者データでは、年齢 (HR 1.57, p = 0.01)、女性(HR 1.99, p = 0.035)、喫煙 (HR 1.97, p = 0.034)と糖尿病 (HR 5.25, p = 0.021)が臼歯喪失の有意な予知因子であった。
結局、歯周治療は臼歯の良好な予後をもたらす。クラスIII FI、進行したBL、歯内治療、残存PPD、年齢、女性、喫煙と糖尿病はAPT後の臼歯の予後に強く影響を与える。
(分岐部病変、長期、臼歯、サポーティブペリオドンタルセラピー、歯の喪失)
「クラスIIIのFIがSPT期間中の臼歯の喪失に対して、最も関係のある歯関連因子であった。しかし、クラスIII分岐部病変だからといって、どんどん抜歯になるわけではない。クラスIIIのFIの63%は10年後も残存していた(平均残存が11.8年)。
他にはベースライン時の進行した骨吸収(>60%)、歯内治療歯、残存する増加したPPDなどが喪失にからむ因子であった。
この研究では上顎で抜歯となる傾向が高かったが、FIの複雑な解剖学的形態と高い有病率ためと考察している。
歯の喪失にかかわる患者関連因子には年齢、性別、喫煙、糖尿病があった。」
(平成28年3月17日)


No.381
Prognostic factors for the loss of molars - an 18-years retrospective cohort study.
Graetz C, Schutzhold S, Plaumann A, Kahl M, Springer C, Salzer S, Holtfreter B, Kocher T, Dorfer CE,Schwendicke F.
J Clin Periodontol. 2015 Oct;42(10):943-50.

この研究の目的はサポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)の期間に異なる程度の分岐部病変を持つ、臼歯の喪失に対する長期の予知因子を同定することにある。
ベースライン時2373本の臼歯を持つ379人の準拠した被験者が後ろ向きに評価された。非外科的(n=76)あるいは外科的(n=303)非再生アクティブ歯周治療(APT:T0-T1)の後、患者は18.3 ± 5.5 (9-30.8) 年の間、SPT治療を継続した。歯の喪失と被験者関連因子がマルチレベルCox回帰分析を用いて評価された。
256人の被験者で、APT期間に159本、SPT期間に438本の臼歯がそれぞれ抜歯されて、全体として74.8%(T2)の生存率となった。SPT15年後生存率はFI-1 = 85.6%、FI-2 = 74.9%とFI-3 = 62.3%に比較してFI=0の臼歯は92.4%であった。臼歯喪失のリスクはFI-3である歯 (hazard ratio: 2.39 [95% confidence interval: 1.54-3.70])、骨吸収>50% (2.16 [1.36-3.42])、動揺歯(2.07 [1.51-2.84])、上顎臼歯(1.44 [1.12-1.85])と歯内治療処置歯(1.89 [1.58-2.26])。平均残存ポケットプロービングデプスのmm毎に対して、歯の喪失危険は1.89倍(1.58-2.26)増加した。被験者レベルでは、年齢1年ごとにHRは1.03 (1.01-1.05)であった。
分岐部病変、骨吸収、歯の動揺、平均ポケットデプスと年齢はSPT期間中歯の喪失を強く予測した。歯周病に罹患しやすい臼歯の長期維持は保存的な非再生アクティブ治療とサポーティブペリオドンタルセラピーを介して可能であった。
(骨吸収、分岐部病変、歯周炎、サポーティブペリオドンタルセラピー、歯の喪失)
「残存するPPDの増加が有意に臼歯の喪失の高いリスクと有意に関連があった(PPDmmあたり1.89危険度の増加)。ということで、歯周治療のゴールは歯周組織の炎症のコントロールとPPDの減少を目指すべきである。
上顎臼歯は下顎臼歯よりも歯の喪失リスクが高い。分岐部病変の有病率は上顎で25-72%、下顎で16-50%なので、喪失リスクの高さはこの有病率の差と考えられたが、解析ではそうではなかった。また上顎の方が骨吸収が高いからでもなかった。上顎の方がアタッチメントロスが生じやすい、分岐部へのアクセスが難しい、あるいは上顎の方が骨密度が低いからなどが考えられるようだ。」
(平成28年3月6日)



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