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難しくてもちょっと知りたい最新の歯周病治療・歯周病研究 
論文紹介p083(no.376-380)

No.380
Predictors of tooth loss due to periodontal disease in patients following long-termperiodontal maintenance.
Martinez-Canut P1.
J Clin Periodontol. 2015 Oct 24:1115-1125.

この研究の目的は歯周病メインテナンス(PM)を受けている患者において、歯周病が原因であった歯の喪失(TLPD) と関連した、患者関連因子(PRFs)および歯に関連した因子(TRFs)を解析することである。
サンプルは500人(平均20年のフォロー)からなっていた。TLPDに及ぼすPRFsの影響はポアッソン回帰と多変量ロジスティック回帰で分析した。PRFとTRFの同時効果はマルチレベルロジスティック回帰とコックス回帰で解析した。
TLPDは515(平均0.05患者/年)であった。有意なPRFsは重度歯周炎(p < 0.001)、侵襲性歯周炎(p < 0.001)、喫煙(p=0.018)、ブラキシズム(p = 0.022)とベースライン時の歯数(p = 0.001)であった。これらのPRFsはより多くの歯を失う患者を特徴付ける。解析した全PRFsは歯の種類と各因子の分類(例えば動揺度0、1、2と3)に依存して有意であった。有意なPRFsはTLPDのリスクを2-3倍増加させたが、他方TRFsは高いレベルまでそのリスクを増加させた。動揺は主たるTRFであった。
重度歯周炎、侵襲性歯周炎、喫煙、ブラキシズムとベースライン時歯の数は解析したTRFsと同様にTLPDに関連があった。
(歯の喪失、歯周病、歯周メインテナンス、歯周治療、予後)
「メインテナンスで歯周病に起因した歯の喪失は0.05本/患者/年。過去の同様の報告はというと、0.04~0.08で、まあ似たようなもんか。
重度歯周炎、侵襲性歯周炎、喫煙、ブラキシズムとベースライン時の歯数がTLPDと関連した有意なPRFsだったのだが、より多くの歯を失う患者(TLPD>2と>3)は特に、重度歯周炎、ベースライン時の歯数と、喫煙とブラキシズムの組合せにより特徴づけられた。ただし、喫煙単独、ブラキシズム単独はより多くの歯を失う患者の特徴にはなっていなかった。」
(平成28年2月21日)


No.379
Associations Between Sex Hormone Levels and Periodontitis in Men: Results From NHANES III.
Steffens JP, Wang X, Starr JR, Spolidorio LC, Van Dyke TE, Kantarci A.
J Periodontol. 2015 Oct;86(10):1116-25.

性ホルモンは炎症や骨の代謝とリンクしている。この研究の目的は第3回国民健康栄養調査(NHANES III)からのデータを利用して、男性における性ホルモンレベルと歯周炎との関連を検索することである。
テストステロン、エストラジオール、性ホルモン結合グロブリンと アンドロステンジオングルクロン酸抱合を含む、755人の男性(30歳以上)からのデータが解析された。算出された生物学的に利用できるテストステロン(CBT)とエストラジオールとテストステロン比率が計算された。歯周炎はNHANESデータから歯周炎の範囲と重症度の最新の分類を用いて定義された(? 3 mmアタッチメントロス、同じ歯でなくプロービングデプス [PD] ? 4 mm? 2を有する歯間部位? 2、あるいはPD ? 5 mm1カ所 )。性ホルモンはカテゴリ分けされたものと連続変数として評価された。
交絡因子に対して補正した時、高い総テストステロン(TT)とCBTレベルは歯周病の有病率(OR [95% 信頼区間 (CI)]はそれぞれ2.1 [1 to 4.5] と3.9 [1 to 14.8])と重症度(OR [95% CI], 2.1 [1 to 4.3] and 3.4 [1.2 to 9.8])との両方に関連性があった。連続変数を用いた時、歯周病の存在と重症度に対するORs(95%CIs)はそれぞれ、TTに対して1.4 (0.6 to 3.3)と1.5 (0.6 to 3.6) for TT、そしてCBTに対して1.3 (0.9 to 1.9)と1.3 (0.9 to 1.8) であった。
これらの所見は男性における歯周炎と性ホルモン、特にテストステロンとの関連性が存在することと矛盾しない。
(アンドロゲン、横断的研究、性腺ステロイドホルモン、炎症、歯周炎、テストステロン)
「過去の研究結果から、著者らは研究の仮説として、テストステロンが低くても、高くても歯周病の有病率や重症度と関連するのではないか、と考えていた。しかしテストステロンが低い場合については関連性が見られず、高い場合には歯周病との関連が見られるという結果であった。
性ステロイドホルモンが歯周病と関連しているメカニズムは何か。1)ホルモンが病原性細菌の増殖あるいは血管機能を変化させるため、2)歯周組織反応が免疫内分泌相互作用によって悪化する、3)線維芽細胞や上皮細胞の特異的な集団が性ステロイドホルモンに反応して修飾されるため、などが考えられているらしい。もちろん今回の研究内容は、そのメカニズムにまで踏み込むような知見が得られるしろものではない。」
(平成28年2月14日)


No.378
Is progression of periodontitis relevantly influenced by systemic antibiotics? A clinical randomized trial.
Harks I, Koch R, Eickholz P, Hoffmann T, Kim TS, Kocher T, Meyle J, Kaner D, Schlagenhauf U,Doering S, Holtfreter B, Gravemeier M, Harmsen D, Ehmke B.
J Clin Periodontol. 2015 Sep;42(9):832-42.

歯周病の進行に及ぼす全身的抗生剤併用治療の長期的な影響を検索した。歯周病の進行過程に及ぼす影響は未だ不明瞭であるが、しばしば全身的抗生剤が併用して用いられる。
中等度から重度歯周炎に罹患した患者からなる、前向き、無作為、二重盲検、プラセボコントロール、多施設研究が、アタッチメントロスに及ぼす全身的アモキシシリン500mg+400mgメトロニダゾール(3x/日、7日)の併用使用の影響を評価した。主要評価項目は27.5ヶ月観察期間後にアタッチメントロス?1.3 mm が増加を示した部位の割合(PSAL)とした。標準的な治療は、抗生剤あるいはプラセボ投与を伴う、機械的デブライドメントと、3ヶ月間隔のメインテナンス治療からなる。
506人の参加患者のうち、406人が解析のために、意図して含まれた。プラセボ群で観察されたメディアンPSALは抗生剤群の5.3に比較して7.8%であった(それぞれQ25 4.7%/Q75 14.1%; Q25 3.1%/Q75 9.9%; p < 0.001)。
両治療ともに疾患の進行を抑制するのに効果的であった。プラセボに比較して、経験に基づいた全身的抗生剤の処方は、統計学的に有意ではあるが、さらなるアタッチメントロスは、絶対的に小さく付加的な減少を示した。臨床家は付加的な抗生剤の処方をおこなうかおこなわないか決定する時に歯周病に対する患者の総リスクを考慮すべきだ。
(アモキシシリン/メトロニダゾール、アタッチメントロス、臨床的関連、デブライドメント、転帰パラメーター、歯周炎、ランダム化コントロール権k集、全身的抗生剤)
「抗生剤を併用してもしなくても、機械的デブライドメントをおこなうと、ともに良好な臨床的な改善がみられた。そして残存する5mm以上の深いポケットの割合は、プラセボ群5.5%で、抗生剤併用群では2.1%であった。
5mm以上あるいは6mm以上のポケット深さ継続が歯の喪失の高いリスクとなることが知られている。5mm以上のポケットデプスが4カ所以下の割合が、抗生剤の併用で大きく増加している(ベースライン時:プラセボ0.4%、抗生剤併用0.8%だったのが、27.5ヶ月後:プラセボ36.5%、抗生剤併用63.1%)。これは臨床的に非常に意味のある結果だと思われる。しかし、アタッチメントロスはとみると、PSALは最終的にプラセボ群と抗生剤併用群間で統計学的に有意差はあるが、絶対値としてその差はごく小さい。だから、アクティブな歯周治療後における歯周病の進行を抑制を期待して抗生剤を併用することは、絶対オススメという訳ではない、というのが著者らの結果に対する解釈だ。
歯周病に対する各人のリスクを考えて、抗生剤を併用した方が良いかどうかを決定すべきという結論でした。」
(平成28年1月31日)


No.377
Acute-phase response following full-mouth versus quadrant non-surgicalperiodontal treatment: A randomized clinical trial.
Graziani F1, Cei S1, Orlandi M2, Gennai S1, Gabriele M1, Filice N1, Nisi M1, D'Aiuto F2.
J Clin Periodontol. 2015 Sep;42(9):843-52.

中等度急性期反応がフルマウス非外科的処置(FM-SRP)後24時間に生じる。この研究の目的は1/4顎スケーリング(Q-SRP)対FM-SRPの後の急性期(24時間)と中期(3ヶ月)炎症を比較することである。
38人の歯周病に罹患した被験者がベースライン受診後FM-SRPあるいはQ-SRPに無作為に振り分けられた。歯周組織および人体計測的なパラメーターはベースライン時と3ヶ月後に収集された。血清サンプルはベースライン時、治療の1、7、および90日後に収集された。炎症の高感度アッセイおよび血管内皮アッセイがおこなわれた。
FM-SRPは24時間後著しい急性期反応を生じた[C-reactive protein (CRP)は3倍増, (IL-6)は2倍増、そして腫瘍壊死因子は軽度上昇]。フォロー後のいずれの時点でも群間に全身的バイオマーカーにおける有意差はなかった。両治療法とも、群間に差はなく臨床的歯周パラメーターの同等の改善を生じせしめた。処置時間は 、CRP (R = 0.5, p < 0.001) およびIL-6 (R = 0.5, p = 0.002)と、相対的な24時間時点の増加と正の相関がある一方、深い(>6 mm)ポケットの数はIL-6の比例的な増加のみを予知した(R = 0.4, p < 0.05)。
FM-SRPはQ-SRPと比較して、24時間持続する中等度の急性期反応を惹起する。血管イベントのリスクに関するそのような所見の最終的な影響を主張するためには、さらなる研究が必要だ。
(C反応性タンパク、フルマウス、インターロイキン-6、1/4顎、スケーリングとルートプレーニング)
「24時間以内の非外科的な歯周治療後に、TNF-α、IL-6やCRPなどの増加をともなう中等度の急性炎症反応の生じることが報告されている。これらの炎症反応は、処置後に生じる菌血症や縁下のインスツルメンテーションによる局所の組織ダメージによるものと推測される。
Q-SRPでは、処置後24時間でIL-6とTNFαが若干上昇するのみである。24時間後のC反応性タンパクと処置時間には正の相関が見られているので、作業時間が長いというのは全身的炎症マーカーを亢進させるのであろう。そして、1/4顎の処置程度であれば、24時間後には全身的炎症マーカーを上昇させる程の侵襲にはならない。ただ、3ヶ月もたてば、両処置群ともに炎症マーカーには差がなくなっている。」
(平成28年1月14日)


No.376
Effect of overweight/obesity on response to periodontal treatment: systematic review and a meta-analysis.
Papageorgiou SN, Reichert C, Jager A, Deschner J.
J Clin Periodontol. 2015 Mar;42(3):247-61.

この研究の目的は、肥満、過体重あるいは正常体重患者間で歯周治療に対する反応が異なるかどうかを検索することである。
ランダム化および非ランダム化研究の両方が、2013年7月まで検索して同定された。バイアスのリスクはDowns-Black チェックリスト、コクランツールおよびGRADEフレームワークで評価された。定量統合は全身的健康と糖尿病患者に対する亜集団によりランダム効果メタ解析でおこなわれた。
患者867人を含む15研究が含まれた。過体重/肥満と正常体重患者間でいかなる臨床的歯周パラメーターに対しても有意な差はみられなかった。全身的に健康な過体重/肥満の患者では、全身的に健康な正常体重患者と比較して、歯周治療はTNFαにおける強い減少(1研究)とHbA1cのより強い減少(1研究)と関連が見られた。糖尿病の正常体重の患者に反して、糖尿病の過体重/肥満患者における歯周治療はアディポネクチンレベルの増加(2研究)とレプチンレベルの減少(2研究)と関連があった。しかしながら、不一致、不正確、と研究の欠如のために、存在するエビデンスの質は低い。
臨床的歯周パラメーターに差は見られなかったが、炎症性あるいはメタボリックパラメーターには、過体重/肥満と正常体重患者間に有意な差があった。しかし存在するエビデンスは弱かった。
(メタ解析、肥満、過体重、歯周病、歯周治療、歯周炎、システマティックレビュー)
「脂肪症の体重増加や肥満が歯周病の進行と関連することが報告されてはいるが、 全身的に健康な状態では体重によっては歯周治療に対する反応に有意な差は認められなかった。
肥満とTNFαとの関連についてコメントがある。TNFαは歯周組織の破壊に重要と考えられている、炎症初期に誘導されるサイトカインの1つである。GCF中のTNFαが肥満の人で高いという報告もあるが、血清中のTNFαは歯周組織破壊の程度とは関連がなかったという報告もある。糖尿病と歯周病の関連でもTNFαは話題になるが、歯周病と肥満での関係でもその関連性は未だはっきりしないようだ。
また糖尿病患者でも、体重によって歯周治療に対する反応に有意な差は見られなかった。歯周病、糖尿病、と肥満は交絡因子であると結論づけられている。歯周治療を行うと、脂質代謝に関するパラメーターが変化するとか、糖コントロールが改善するとかなど報告がある。ということで強いエビデンスを示すことが難しいようだ。」
(平成28年1月4日)



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