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難しくてもちょっと知りたい最新の歯周病治療・歯周病研究 
論文紹介p087(no.396-400)

No.400
Comparison of full-mouth disinfection and quadrant-wise scaling in the treatment of adult chronic periodontitis: a systematic review and meta-analysis.
Fang H, Han M, Li QL, Cao CY, Xia R, Zhang ZH.
J Periodontal Res. 2016 Aug;51(4):417-30.

スケーリングとルートプレーニングは慢性歯周炎に対する効果的な方法として広く認識されている。2008年に出版されたメタ解析はフルマウスディスインフェクション(FMD)あるいはフルマウススケーリングルートプレーニング(FMS)、と1/4顎スケーリングルートプレーニング(Q-SRP)間には統計学的に有意な差のないことが示されている。FMDは幾つかの指数で付加的な中等度の改善を示すのみであった。これら二つのアプローチ間に差異が存在するかどうかさらなる検証が必要である。そして、慢性歯周炎患者において24時間以内におこなう、殺菌剤を併用したFMDあるいは殺菌剤を使用しないFMSがQ-SRPよりも臨床的に良好な改善を提供するのかどうか、さらなる検証をするために研究が企画された。Medline (via OVID)、EMBASE (via OVID)、ubMedと CENTRALデータベースが2015年1月27日まで検索された。少なくとも3ヶ月後にまで、FMDあるいはFMSをQ-SRPと比較するランダム化コントロール研究が含まれた。対応する95%信頼区間とあわせて、加重平均差(WMD)を得るためにメタ解析がおこなわれた。
13の論文がメタ解析に採用された。プロービングデプス減少のWMDは中等度ポケットの有する単根歯で、FMD vs. Q-SRPに対して0.25 mm (p < 0.05)であり、そして中等度ポケットを有する、単根歯と複根歯において臨床的アタッチメントゲインがFMD vs. Q-SRPに対して0.33 mm (p < 0.05)であった。これらを除くと、FMD vs. Q-SRP、FMS vs. Q-SRPとFMD vs. FMSのその他のサブ解析においていかなる統計学的な有意差もみられなかった。それゆえメタ解析は、中等度ポケットにおいて、プロービングポケットデプス減少と臨床的アタッチメントゲイン獲得のためにはQ-SRPよりもFMDがよいことを示した。加えて、治療法いかんによらず、重篤な合併症は認められなかった。FMD、FMS とQ-SRPは成人性慢性歯周炎の治療に対してすべて効果的で、これらの治療は患者に明瞭な不快感を生じさせることはなかった。さらに、FMDはQ-SRPを上回る中等度の付加的な臨床的恩恵を持っているので、我々は成人性慢性歯周炎の治療には第一選択としてFMDを推奨して提案する。
(慢性歯周炎、フルマウスデブライドメント、1/4顎スケーリング、ルートプレーニング)
「アブストラクトにあるとおりで、FMD、FMSとQ-SRPいずれも良好な治療結果がえられるのだが、FMDはQ-SRPに対して、中等度ポケットのある限定した条件のもとで、有利な臨床成績がでている。不快症状は3方法とも同程度だし、FMDは短期間で処置が終了するのだから、それならばFMDが一番いいんじゃないですか、というのが著者らの意見だ。対象とした研究では、2研究がポピドンヨードを用いているが、他は全てクロルヘキシジンだ。原法にそったクロルヘキシジン使用は日本ではできない。
個人的な感想だが、広汎型の中等度以上の症例で縁下にたくさんの歯垢や強固な歯石が付着している場合は24時間以内に、というのは現実的にはかなりきついんじゃないかな。」
(平成28年11月27日)

No.399
Localized aggressive periodontitis immune response to healthy and diseased subgingival plaque.
Shaddox LM, Spencer WP, Velsko IM, Al-Kassab H, Huang H, Calderon N, Aukhil I, Wallet SM.
J Clin Periodontol. 2016 Sep;43(9):746-53.

このケースコントロール研究の目的は、健康なあるいは病的部位からのプラークサンプルで刺激した時の、限局型侵襲性歯周炎(LAP)患者末梢血の炎症反応を比較することである。
全血と歯肉縁下プラークサンプルが13人のLAP被験者、LAP被験者の14人の同胞と6人の歯周組織の健康な人から収集された。全血は健康な部位あるいは病的な部位からのプラークサンプルで24時間刺激された。14種類のサイトカイン/ケモカインレベルがマルチプレックスアッセイを用いて検出された。
限局型侵襲性歯周炎の培養は、用いた刺激にかかわらずコントロール培養よりも、G-CSF、INFγ、IL10、IL12p40、IL1β、IL-6、IL-8、MCP-1、MIP-1αとTNFαで高いレベルを示した。健康な同胞からの血液はコントロール被験者と比較して高いレベルのIL--6を示したが、LAP被験者からの培養で観察されたレベルよりも低かった。
この研究は、細菌がLAP患者に見られる過剰炎症反応を生じさせる重要な因子であると思われるのだが、細菌の存在に対する宿主反応の素因が刺激性のあるプラークの構成要素よりもより重要な役割を果たしているかも知れないことを示唆している。
(侵襲性歯周炎、ケモカイン、サイトカイン、エンドトキシン、細菌学)
「侵襲性歯周炎の歯周組織破壊は、過度な炎症反応によってもたらされていると考えられている。しかし、その過剰反応がプラーク中の特異的な菌や特異的な構造物に起因しているのかどうかはよくわかっていない。
LAP患者の血液サンプルの縁下プラーク刺激による各種サイトカイン反応性は、プラークの出所、つまり健常部位か病的部位かに依存せず、コントロールの人よりも高かった。それで、プラークの側の要因もあるかもしれないが、LAPは生体側の要因が大きく関わっているのではないかと想定するわけです。では生体側の要因が大きいなら、LAPの同胞も同じく頻度高くLAPになっていてもおかしくないよね。で、調べると、LAP患者の健常な同胞はLAP程ではないが、コントロールよりは高い反応性だった。ここで著者らは、LAPの健常な同胞はLAPの素因があるので将来歯周炎が進行するかも、と考察している。」
(平成28年11月20日)

No.398
Association between depression and periodontitis: a systematic review and meta-analysis.
Araújo MM, Martins CC, Costa LC, Cota LO, Faria RL, Cunha FA, Costa FO.
J Clin Periodontol. 2016 Mar;43(3):216-28.

このシステマティックレビューとメタ解析の目的はうつ病と歯周炎との関連に関して科学的なエビデンスを評価することである。
2015年10月まで3つのデータベースで電子検索がおこなわれた (PROSPERO-CRD42014006451)。手検索や灰色文献もまた含まれた。423研究が検索された。二人の独立した研究者が研究を選択し、データを抽出し、Newcastle-Ottawa scaleNewcastle-Ottawa scaleの修正バージョンによりリスクバイアスを評価した。歯周病のあるなしに対してメタ解析がおこなわれた(二分法)。要約効果尺度とオッズ比(OR) 95% CIが計算された。
研究の選択の後、15がシステマティックレビューに含まれた(8横断的研究、6ケースコントロールと1コホート研究)。6研究はうつが歯周炎と関連していると報告する一方で9研究は関連なしであった。方法の質評価では研究のほとんどはバイアスリスクは低かった。7横断研究のメタ解析はうつと歯周炎に有意な関連を示さなかった(OR = 1.03, 95% CI = 0.75-1.41 )。
現在のシステマティックレビューからの所見は研究間の大きな多様性を示しており、メタ解析の要約効果尺度がうつと歯周炎の関連性を確認することは出来なかった。明確な集団で異なるデザインによる将来の研究がこの関連を調査するためにおこなわれるべきだ。
(侵襲性歯周炎、慢性歯周炎、抑うつ障害、歯周病、歯周炎)
「 慢性ストレスやうつ病が全身疾患と関わりのあることが言われる。歯周病とうつもそんな1つだ。その生物学的なメカニズムって何だろう。慢性ストレスは免疫系を抑制するので感染しやすくなる。病的微生物の感染を受けて、歯周組織の破壊も生じる。また亢炎症性のサイトカインを上昇させたりもするので、血管炎症も生じる。でもって歯周炎に罹患しやすい患者の歯周組織感染を悪化させる。というようなことが解説されている。ただストレスのある人、うつの人は口腔清掃が不良だったり、喫煙してたり、摂食行動に問題があったりするので、そのような影響が主な原因で歯周病との関連が生じていることも考えられる。」
(平成28年11月8日)

No.397
Using prognostic factors from case series and cohort studies to identify individuals with poor long-term outcomes during periodontal maintenance.
Fardal Ø, Grytten J, Martin J, Houlihan C, Heasman P.
J Clin Periodontol. 2016 Sep;43(9):789-96.

個々の患者に予後因子を適応した時の正確度は不確かである。
この研究の目的は、(1)歯周メインテナンス期間中に歯を失う患者を、(2)治療に反応のない患者を、(3)歯周メインテナンス期間中再治療の必要のある患者を、同定するために、幾つかの成績調査(症例集積研究とコホート)から得られた予後因子を適応することである。加えて、歯の喪失が最初の予測と関連があり、予後因子のいずれかがリスク因子でもあることが決定された。予後因子のある、そしてない患者の成績に対してχ2検定がおこなわれた。有意水準はp ≤ 0.05に設定された。感度と特異性は予後因子のある、そして予後因子のない患者に対して計算された。
予後因子は歯を失った患者のごく一部のみを特定した(34-48%)。予後因子を組み合わせると正確度は低下した。非予後因子を持つ、より高い割合の患者が歯を喪失した(53.8-96.2%)。家族歴をもとに非反応性の患者を特定できる可能性は5.9%、ストレスに対しては32.4%、そして多量の喫煙者に対しては8.7%であった。最初に不確かな予後/予後不良な、有意により多くの患者(29/40 , χ² = 16.2 p < 0.05) と不規則な/コンプライアンスのない有意に少数の患者(11/40, χ² = 16.2, p < 0.05) が再治療が必要と特定された。家族歴を持つ、40人の患者のうち21人(52.5%) (p = 0.655)は再治療が必要と特定された。予後因子の組合せで、再治療が必要な患者の総40%から5-20%が特定された。最初にホープレスな予後とされた9本のうち6本(67%)が失われ、予後不良な歯の10/109 (9%)が失われ、中等度予後の歯11/346 (3%)が失われ、良好な予後の歯9/1972 (0.46%)失われた。予後因子のどれも歯周疾患の進展に対するリスク因子とはみなせなかった。
長期の予後成績の悪い個々の患者を特定するために予後因子を適応しても、低い正確度の関連性しかなかった。
(歯周病、歯周炎)
「リスク因子、予後因子、予測因子
これらの用語はこれまであまり明確な定義のもとに使われてこなかった。リスクは疫学的には本来病気を引き起こす因子という意味だが、臨床的には病気の発症だけではなく進行にも用いられている。予後因子は治療がなされなかった場合や治療法を適応した場合に生じてくる臨床成績と関連した検査値であり、病気の進行に関する変数が予後不良を示すものと全く同じとは限らない。例えば喫煙は歯周疾患が発症しやすい、そして臨床成績に影響するものとしてリスク因子であり、予後因子である。それに対し、分岐部はリスク因子ではないが、病気が既に存在する時には予後因子となる。
過去の研究から見いだされた予後因子(年齢、性、喫煙)を今回のメインテナンス期の対象者に当てはめてみたが、歯を失うことに対する予後因子のいずれも歯周病の進行に対するリスク因子ではなかった。」
(平成28年10月29日)

No.396
1.2% Rosuvastatin Versus 1.2% Atorvastatin Gel Local Drug Delivery and Redelivery in Treatment of Intrabony Defects in Chronic Periodontitis: A Randomized Placebo-Controlled Clinical Trial.
Pradeep AR, Garg V, Kanoriya D, Singhal S.
J Periodontol. 2016 Jul;87(7):756-62.

スタチン( 3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルCoA還元酵素抑制剤)は炎症と歯槽骨吸収を制御しうる脂質低下薬の重要なグループである。ロスバスタチン(RSV)とアトルバスタチン(ATV)は破骨細胞による骨吸収を抑制することが知られ、骨形成促進作用をもつことが提唱されている。この研究の目的は、慢性歯周炎患者(CP)の骨内欠損(IBDs)に対して、スケーリングルートプレーニング(SRP)に加えて、1.2%RSVと1.2%ATVゲルの局所薬物徐放(LDD)および再徐放システムの効果を評価そして比較することである。
90IBDs部位を有する90人全員がSRP処置とそれに続いて、1.2% RSV、1.2% ATVあるいはプラセボゲルのLDDを受ける治療にランダムに割り当てられた。プラーク指数(PI)、 改変歯肉出血指数 (mSBI)、プロービングデプス(PD)、臨床的アタッチメントレベルそしてIBD深さを含む臨床的およびレントゲン的パラメーターがベースライン時と6および9ヶ月で記録された。
3群全てが全ての期間でPIとmSBIに有意な減少を示した。スタチン薬剤での平均mSBIとPD減少とCAL獲得とIBD深さの減少がプラセボゲルLDDより有意に大きい値を示した。これらパラメーターにおける改善は6と9ヶ月でATVあるいはプラセボゲルよりもRSV LDDで有意に大きかった。
1.2%RSV のLDDはメカニカル歯周治療の補充として1.2%ATVあるいはプラセボゲルよりも有意に大きな臨床的ーレントゲン的改善を呈した。
(歯槽骨吸収、慢性歯周炎、薬剤徐放システム、-ヒドロキシメチルグルタリルCoA還元酵素抑制剤、歯根膜、再生)
「スタチンは言わずと知れた抗高脂血症薬の1つである。このお薬、脂質を低下させるだけでなく、抗炎症、免疫制御、抗酸化、抗血栓、血管内皮安定化作用を有して、血管新生、骨芽細胞分化促進能力も持ち合わせる。で、このスタチンが歯周病の骨内欠損に何故効果があったかというと、これらの持ち合わせた作用のたまものだと考察している。本当かどうかは、よう知らんけど。
そして次に、RSVの効果がATVのそれを上回ったのは何故か。その理由として抗炎症作用がより強いことに加えて、冠動脈プラークの回復、小、低比重リポ蛋白の減少に優れるから、低比重リポ蛋白コレステロールを低下させる作用に優れているから、などと述べられている。抗炎症はまだしも、他の作用は歯周病の臨床症状改善メカニズムとどう関係あるんだろう。よう知らんけど。」
(平成28年9月25日)


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