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難しくてもちょっと知りたい最新の歯周病治療・歯周病研究 
論文紹介p086(no.391-395)

No.395
Local disinfection with sodium hypochlorite as adjunct to basic periodontaltherapy: a randomized controlled trial.
Bizzarro S, Van der Velden U, Loos BG.
J Clin Periodontol. 2016 Sep;43(9):778-88.

本研究の目的は歯周基本治療(BPT)期間中全身的抗菌剤(アモキシシリンとメトロニダゾール、AM)の併用あるいは併用しない場合に、0.5%次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)を用いた局所消毒の臨床的および細菌学的効果を調べることである。
ランダム化臨床試験(4群)において、110人の患者がBPTに加えて生食による局所洗浄 (BPT + S)、NaOClによる局所消毒 (BPT + DIS)、BPT + DIS + AMあるいは BPT + S + AMを受けた。成績はベースライン時、3、6と12ヶ月後に解析した。
4群間で12ヶ月後臨床的アタッチメントレベルゲインに差はなかった。BPT + DISはBPT + Sに比較して、付加的な改善を示さなかった。6ヶ月後までのみであったが、BPT + DIS + AMはBPT + S に比較してプロービングポケットデプス(PPD) ≥7 mmの部位がより少なかった(p = 0.037)。要因解析では、AMがBPTに加わるとPPD(p = 0.023)と、 PPD ≥5 (p = 0.007)、≥6 (p = 0.002)と≥7 mm (p < 0.001)の部位数に対して追加で臨床的な減少が見られたが、DISが適用された時には見られなかった。全ての群で、対象とした細菌の同様の減少が見られた。AMは患者の22%で副作用が生じた。
次亜塩素酸ナトリウムによる局所消毒は、AMとの併用であっても、1年のフォロー期間で、BPT単独と比較して臨床的および細菌学的な効果を示さなかった。
(アモキシシリン、メトロニダゾール、歯周炎、スケーリングとルートプレーニング、次亜塩素酸ナトリウム)
「通常の歯周基本治療に加えて次亜塩素酸ナトリウムを用いた場合に、臨床的あるいは細菌学的な効果があったか?残念ながらなかった。しかもAMを併用した場合にも同じく、次亜塩素酸ナトリウムを用いることの有用性を確認することはできなかった。結果が全てなので、これで話はオシマイ。
過去に次亜塩素酸ナトリウムの有用性を示したような報告もあるのだが、すくなくとも今回のプロトコールではダメということ。次亜塩素酸ナトリウムによって一時的に細菌が減少してもその効果は臨床的には反映されないようだ。
ただ、次亜塩素酸ナトリウムの使用の有無に関わらず、AMを用いるとPBTに加えて付加的な臨床的効果がみられている。じゃあAM併用を著者らは勧めているかというとそうではなく、副作用(真菌感染症、鼓腸、発疹/そう痒、暗色尿、下痢、悪心、胃酸の逆流 )も22%でみられているし、常套的な手段として用いるものではないとしている。」
(平成28年9月19日)


No.394
Stimulation of the nitrate-nitrite-NO-metabolism by repeated lettuce juice consumption decreases gingival inflammation in periodontal recall patients: a randomized, double-blinded, placebo-controlled clinical trial.
Jockel-Schneider Y, Goßner SK, Petersen N, Stölzel P, Hägele F, Schweiggert RM, Haubitz I, Eigenthaler M,Carle R, Schlagenhauf U.
J Clin Periodontol. 2016 Jul;43(7):603-8.

この前向き、平行、2群、二重盲検プラセボコントロールランダム化臨床試験が食事性硝酸塩摂取の歯周リコール患者における歯肉炎症への影響を評価した。
慢性歯肉炎のある44人(23テスト/21プラセボ)の歯周リコール患者が登録された。ベースライン時、歯肉炎指数(GI)、プラークコントロールレコード(PCR)と唾液硝酸塩レベル(SNL)が記録され、その後歯肉縁下および縁上のデブライドメントがおこなわれた。続いて、参加者は14日間毎日三回飲用する100mlのレタスジュース飲料を提供された。それは一日に約200mgの硝酸塩摂取となる、標準量の硝酸塩を含む(テスト群)か硝酸塩を欠如する(プラセボ)かであった。
ベースライン時平均GI、PCRとSNLは両群間で有意差はなかった。14日時点でテスト群の平均GIはベースライン時に比較して減少し、プラセボ群に有意に低かった(p = 0.002)(GI 0.3 versus 0.5)。また、テスト群の平均SNLはプラセボ群に比較して有意に高かった(54.0 μg/ml versus 27.8 μg/ml; p < 0.035)。
平均PCRは両群で有意な変化はなかった。
食事性硝酸塩摂取は慢性歯肉炎のコントロールに有益な添加物かもしれない。
(歯肉炎、歯周病、歯周炎)
「食事性硝酸塩は主に野菜由来で、胃と小腸上部で吸収される。循環する硝酸塩の25%は唾液腺に集積する。
舌に存在する嫌気性菌は唾液中の硝酸塩を亜硝酸塩に変換する。そして酸性および還元条件下では亜硝酸塩はプロトンが付加され、亜硝酸を生成する。これはさらにNOや反応性窒素中間体(RNI)に分解される。これらが、硝酸塩の摂取から体内での代謝に関する情報だ。NOの作用としては、血管拡張、血小板凝集、炎症性細胞の集簇、血管内皮細胞の保護などとの関連が列挙されている。
しかし摂取した硝酸塩が本当にこれらの代謝物機能を介して歯肉の炎症を軽減させたのかどうかについては、今回の研究からは当然何もわからない。」
(平成28年9月7日)

No.393
Long-Term Outcomes of Untreated Buccal Gingival Recessions: A SystematicReview and Meta-Analysis.
Chambrone L, Tatakis DN
J Periodontol. 2016 Jul;87(7):796-808.

このレビューの目的は、1)未治療頬側歯肉退縮(GR)欠損の長期経過の転帰と関連して報告されている、審美的および機能的変化を評価すること、と2)未治療GR欠損の歯と歯周組織状態の進行/悪化にどのような因子が影響するかを評価することを目的とする。
根面被覆や歯肉増大処置を受けていない、局所あるは多数に渡るGR欠損を有する成人患者を対象にした臨床成績を報告している≥24 ヶ月の介入あるいは観察研究が 選択基準と考えられた。MEDLINEとEMBASEデータベースが2015年7月まで出版された論文を対象に検索された。ベースラインと最も最近のフォロー成績を比較するために、ランダム効果メタ解析がおこなわれた(すなわち、≥1 GRの患者数とGR部位数である )
378の選択可能性のある論文のうち8(6研究を報告)が選定基準を満たしていた。ベースラインとフォロー情報を持つ1,647GR欠損のうち78.1%がフォロー期間中にGR深さの増加を経験したのに対し、残りは減少か変化無しであった。さらに、フォロー患者の中でGR欠損の数が79.3%に増加した(つまり新たなGR欠損となる)。蓄積された推量(4研究からのデータ)は患者の数(odds ratio 2.43; P = 0.03)に関しても、GR部位数(odds ratio 2.16; P = 0.0005)に関しても、長期進展する退縮の有意に増加するオッズを示していた。
良好な清掃状態患者における未治療退縮欠損は長期のフォロー期間中に、進行する高い可能性をしめした。
(疾患進行、疫学、エビデンスに基づく歯科、歯肉退縮、メタ解析、歯根)
「角化歯肉の存在はCALの動向に関与するようだ。ある論文では角化歯肉が>1mmだと、GR部のCALは獲得され、角化歯肉のないGRではCALはロスするという。また角化歯肉(>=2mm)が歯肉退縮の進行を予防するのに重要かもしれない。
で、それ以上の有用なコメントがないのが何とももどかしい。」
(平成28年8月15日)

No.392
A Prospective, Case-Controlled Study Evaluating the Use of Enamel MatrixDerivative on Human Buccal Recession Defects: A Human Histologic Examination.
McGuire MK, Scheyer ET, Schupbach P.
J Periodontol. 2016 Jun;87(6):645-53.

結合織移植(CTGs)と歯肉弁歯冠側移動術(CAFs)は歯肉退縮(GRs)に用いられた時、歯周付着装置を再生しない。新生骨、セメント質、そして歯周靱帯線維に代わって、CTG+CAFは長い上皮付着と結合織付着を介して修復する。エナメルマトリックスデリバティブ(EMDs)は、データは限られているが、歯周組織を再生しうるという原理の証明が示されている。
矯正治療前に4本の小臼歯抜歯を必要とする3人の患者が無作為、オープンラベル研究で登録された。ミラークラスIとクラスIIGRの誘導後2ヶ月後に、各患者は根面被覆のために3本の歯は EMD+CAFを、1本の歯はCTG+CAFを受けた。根面被覆9ヶ月後、3人の患者のそれぞれから4本全ての小臼歯は歯周組織再生の証拠を探索する、組織学的およびマイクロトモグラフィー(micro-CT)解析のために、外科的に抜歯一塊切除された。標準的な臨床計測、レントゲン的そして口腔内撮影が規定期間の時点でおこなわれた。
EMD+CAFで処置された9本のうち7本は、新生骨、セメント質、と挿入線維で組織学的に列挙される歯周組織の再生が、程度に大小はあるが示された。マイクロCTはこれらの所見を裏付けた。CTG+CAFで処置された3本の歯はいずれも歯周組織の再生を示さなかった。臨床的な測定結果は両処置とも同等であった。根吸収とアンキローシスを示す1例がEMD+CAFで見られた。
GRを処置する際にその効果を示す大規模研究(9本) により、EMD+CAFはヒトの組織において、歯周組織再生の組織学的エビデンスを示している。生理的作用メカニズム、理想的な患者プロファイル、と予知性のある再生につながる基準はさらなる探索が必要だ。
(歯槽骨、バイオメティックス、セメント質、歯肉退縮、歯周組織再生)
「ヒトの組織学的検索はなかなかそう症例をかせげるものではない。9本とはいえ、largeと表現されている。
歯肉退縮は歯肉切除をおこなって人工的に作り出したものだ。これについては何か言いたいことのある人がいるかもしれない。
今回の結果は統計処理はなされていない。 EMD+CAF により歯周組織再生はみられたがそのバリエーションは大きかった。どの程度かというと新生セメント質は0~2.7mm(平均±SD以下同:1.2±0.83)、新生骨は-0.5~4.5mm(1.93±1.61)であった。一方のCTG+CAF は新生セメント質が0~0.6mm(0.2±0.28)、新生骨は-2.3~0.5mm(-0.6±1.22)であった。生じた新生組織量の差が激しい。ただ、EMD+CAFは基本的に新生セメント質や新生骨がみられているのに対して、CTG+CAFはそれらがほとんどない。
EMDの作用機序は不明だが、セメント質形成の促進、歯根膜細胞の遊走促進などが示唆されている。
根吸収やアンキローシスがEMD+CAFでは生じる症例があり、CTG+CAFでは見られなかった。といっても、例数も少なく、他の要因も検討せねばならない。」
(平成28年8月12日)

No.391
Prospective association of sex steroid concentrations with periodontalprogression and incident tooth loss.
Samietz S, Holtfreter B, Friedrich N, Mundt T, Hoffmann W, Völzke H, Nauck M, Kocher T, Biffar R.
J Clin Periodontol. 2016 Jan;43(1):10-8.

この研究の目的は、男性および女性において性ステロイドホルモンと、歯周病の進行および歯の喪失間の前向きの関連を決定することである。
我々はポメラニアでの健康研究、すなわち人口ベースで縦断的コホート集団から5年間のフォローがある女性1465人と男性1838人(年齢20-81才)からデータを用いた。総テストステロン(TT)と他の性ステロイドレベルが測定された。平均臨床アタッチメントロス(CAL)が評価された。一般化線形モデルが年齢、喫煙、腹囲、糖尿病、身体活動度、採血時期とベースラインとフォロー間の期間に対して補正されて、横断的解析と縦断的解析が実施された。
 フル補正モデルは、横断的解析[men: ß = -0.0004 (-0.023;0.022), p = 0.97; women: ß = -0.033 (-0.057; -0.009), p = 0.006] においても、縦断的解析[men: ß = -0.033 (-0.100;0.034), p = 0.33; women: ß = -0.023 (-0.086;0.040), p = 0.47]においても、TTとCAL間に一致した関連を示さなかった。歯の喪失に対して、横断的にも縦断的にもいかなる性ステロイド濃度との関連は見いだされなかった。

性ホルモンと歯周病進行あるいは歯の喪失との間に一貫性のある関連は見いだされなかった。生理的以下、あるいは生理学的を上回るテストステロン濃度のように、内分泌的パラメーターと歯周病進行あるいは歯の喪失間の可能性のある関連を評価するためにはさらなるコホート研究が必要だ。

(SHIP、疫学、歯周炎、血清テストステロン、歯の喪失)
「性ホルモンは年齢とともに減少し、骨密度やフレイルと関連する。歯周炎の罹患、歯周炎の進行、歯の喪失もまた高齢者で認められる現象であるからして、性ホルモンと歯周炎の進行や歯の喪失と関連が見られるのではないかと、検討したが残念ながら今回の研究ではそのような関連性は認められなかった。これまで両者に関連があるとも、ないともどちらの報告もあるのだが、関連ありとしているのは、横断的な研究ばかりである。一方、両者に関連を見いだせなかった研究は今回の研究と同様に縦断的研究である。今のところ両者の関連を肯定するほどの確たるデータは未だないようだ。」
(平成28年7月31日)


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