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難しくてもちょっと知りたい最新の歯周病治療・歯周病研究 
論文紹介p088(no.401-405)

No.405
Site-specific treatment outcome in smokers following 12 months of supportive periodontal therapy.
Bunaes DF, Lie SA, Åstrøm AN, Mustafa K, Leknes KN.
J Clin Periodontol. 2016 Dec;43(12):1086-1093.

この研究の目的はサポーティブセラピー後、喫煙が歯周組織の健康に与える影響を、患者、歯、と部位レベルで評価することである。
80人の慢性歯周炎患者、40
人の喫煙者と40人の非喫煙者、が単一群治験にリクルートされた。歯周組織検査はベースライン時(T0)、アクティブペリオドンタルセラピー後3ヶ月 (T1)、そしてサポーティブペリオドンタルセラピー後12ヶ月後 (T2)におこなわれた。 血清中のコチニンレベルを測定することで喫煙状態を確認した。プロービング時の出血(BoP)を伴う プロービングデプス(PD) ≥ 5 mmを主要評価項目と定義した。ロジスティック回帰は患者、歯と部位のクラスター観察項目に対して補正され、データの解析のために混合効果モデルが採用された。
全ての臨床パラメーターはT0からT2で改善した(p < 0.001)、その一方でPD、出血指数(BI)、プラーク指数(PI)は喫煙者と非喫煙者でT1からT2で増加した。喫煙の全体的なネガティブ効果はT2で示され(OR = 2.78, CI: 1.49, 5.18, p < 0.001)、最も著しい効果は上顎の単根歯であった(OR = 5.08, CI: 2.01, 12.78, p < 0.001)。患者レベルでは、非喫煙者 (ICC = 0.051) に比較すると喫煙者(ICC = 0.137) の治療成績のバリエーションはよりすくないことがわかった。
喫煙はサポーティブセラピーの12ヶ月後時点での歯周組織健康にネガティブな影響を、特に上顎の単根歯で、与える。
(慢性歯周炎、多レベル解析、歯周治療、喫煙)
「もう1つ喫煙をテーマの論文だ。
過去の報告と同様に、SPT期間中(T1→T2)に、喫煙者では上顎単根歯のPD>=5かつBOP+の部位は31%から41%に増加したのに対し、複根歯では28%から23%に減少していた。
喫煙者は非喫煙者に比較して、BoPが少なくなる。喫煙状態に関わらず、BoPを含む部位レベルでの歯周組織の診断は疾患の進行との関連している。そして、BoPがなければ歯周組織が安定していると考えられている。しかし、BoPは喫煙者でも非喫煙者でも同程度に疾患の進行と関連しているのかは不明である。
喫煙者でT1でBoPはT2でPD>=5、BoPに対する強い部位特異的な予測因子である。患者レベルでいうと、T2でコチニンの上昇はPD>=5、BoPの9部位以上と関連がある。患者レベルのリスク因子としてとらえられる喫煙であるが、SPTの成績に影響を与える部位関連の変数をも修飾しているようだ。」
(平成29年1月14日)


No.404
Efficacy of Local and Systemic Antimicrobials in the Non-Surgical Treatment of Smokers With Chronic Periodontitis: A Systematic Review.
Chambrone L, Vargas M, Arboleda S, Serna M, Guerrero M, de Sousa J, Lafaurie GI.
J Periodontol. 2016 Nov;87(11):1320-1332.

このシステマティックレビューの目的は、局所あるいは経口抗菌剤が慢性歯周炎(CP)の喫煙者に対する非外科的な歯周治療の臨床成績を改善するかどうか評価することである。
医学文献検索とRetrieval System Online、Excerpta Medica Database、とThe Cochrane Central Register of Controlled Trialsが2016年3月まで検索された。喫煙者(最低12ヶ月は1日10本以上喫煙)のCPを局所あるいは経口投与抗菌剤と関連した、あるいは非外科的歯周治療単独により治療をおこなった場合に、少なくとも6ヶ月間継続したランダム化臨床治験が選択された。変量効果メタアナリシスがプロービングデプス(PD)と臨床的アタッチメントレベル(CAL)について平均差を評価するためにおこなわれた。
108の適格候補の論文の中から7つが選ばれた。局所の抗生剤投与を試したほとんどの研究(75%)は、喫煙者がこの治療方法から恩恵を受けると報告した。階層推定値はベースラインPD ≥5 mmの部位で0.81 mm (P = 0.01) の追加のPD減少と0.91 mm (P = 0.01)のCALを見いだした。逆に抗菌剤の経口投与に関するメタ解析はベースラインからの平均変化における有意な差を見つけることができずに、わずか1研究がその使用を支持しただけであった。
CPのある喫煙者において、局所抗菌剤の付加的な使用は、治療前にPD ≥5 mmを示す部位においてPD減少とCAL改善に非外科的歯周治療の有効性を高めた。スケーリングとルートプレーニングに経口抗菌剤/抗生剤が治療で併用された時には、最近のエビデンスは同様の有効性を示さない。
(抗感染薬、慢性歯周炎、スケーリング、トピックとしてレビュー文献、ルートプレーニング、喫煙)
「喫煙者は非喫煙者に比較して治療の効果が低いとされる。そして定期的にメインテナンスを受けていても喫煙者の歯の喪失リスクは高い(1日10本以上の喫煙者のリスクは5倍にまで達する)。一方、非外科的歯周治療の後12ヶ月後では、PDが4mm以上を示すポケット残存部位数が小さくなり(30%少ない)、2mm以上のPD減少である部位数が大きく(22%以上)なることに示されるように、禁煙はPDの改善を促す。
過去のレビューでは喫煙者にSRPに抗菌剤を併用することの有用性が良いとも悪いとも言えない、というものと、局所の抗菌剤併用がPDに対してもCALに対しても改善に効果があるとするのものがある。
2002年、2008年のヨーロッパペリオワークショップでは喫煙者に対する抗菌剤の付加的経口投与には有効性があるとしている。しかし、これらの論文に含まれる研究の大部分が患者の喫煙状態についての記載がない、異なった病型についても評価されている、喫煙者の治療効果にのみ基づいたメタ解析がされている、等々の批判をしている。
喫煙者の慢性歯周炎で深いポケットに対して局所デリバリーシステムによる抗菌剤の併用は良いのかもしれない。しかし喫煙そのものが予後に悪い影響を与えることが明白なので、抗菌剤の併用をするしないに関わらず、まあ、先に禁煙指導すべきであろう。」
(平成28年12月30日)

No.403
Systemic antimicrobials adjuvant to periodontal therapy in diabeticsubjects: a meta-analysis.
Grellmann AP, Sfreddo CS, Maier J, Lenzi TL, Zanatta FB.
J Clin Periodontol. 2016 Mar;43(3):250-60.

付加的な抗生剤投与は糖尿病患者における歯周治療を改善させることが示唆されている。
この研究の目的は糖尿病患者において、スケーリングとルートプレーニング(SRP)に付随して全身的抗菌剤の使用する場合対SRP単独とを評価する、ランダム化臨床試験を系統だってレビューすることである。
PubMed、Cochrane Central Register of Controlled Trials、EMBASE、TRIP、Web of ScienceとLILACSデータベースと灰色文献が2015年5月まで検索された。2534の適する可能性のある研究から、13研究がシステマティックレビューに含まれた。プロービングデプス(PD)減少と臨床的アタッチメントレベル(CAL)獲得(一次評価項目)、そしてプラーク指数(PI)とプロービング時の出血(BOP)における加重平均の差(WMDs)がランダム効果モデルを用いて評価された。
PD減少におけるWMD[-0.15 mm, n = 11, p = 0.001, 95% confidence interval (CI) -0.24, -0.06]は抗生剤使用に有利であった。CAL獲得、PIとBOP減少におけるWMD(それぞれ-0.14 mm, n = 9, p = 0.11, 95% CI -0.32, 0.03; 4.01%, n = 7, p = 0.05, 95% CI -0.04, 8.07; and -1.91%, n = 7, p = 0.39, 95% CI -6.32, 2.51 )は付加的な抗生剤使用に恩恵があるとはいえなかった。
糖尿病患者で併用療法はPD減少においてSRPの効果を高めた。
(アモキシシリン、抗生剤、アジスロマイシン、慢性歯周炎、クラブラン酸、糖尿病、ドキシサイクリン、メトロニダゾール、歯周病、歯周治療)
「局所投与のレビューを見たので、少し前の論文だが 経口投与も見てみようと、とりあげた。
過去の同様のレビューではCAL獲得とPD減少の両者で有意差のある効果を認めたのだが、 今回のレビューでは糖尿病患者に対してSRPと併用して抗生剤を用いると、PDのみで減少効果を認めた。BOPについてはともに効果に差はない。
歯周基本治療をおこなっても多くの場合にはCAL獲得には結びつかない。一方ポケットについては、5mm以上の箇所が多くなると、再発リスクが高まるとの報告がある。あるいは、歯周治療後に6mm以上が一カ所でもあると、細菌の再増殖、さらにはアタッチメントロスのリスクが高まる。で、ポケットデプスが改善するのはよろしかろう、ということだ。
今回の抗生剤を併用するとポケットの付加的な減少量は0.15mmであった。はたして、臨床的に妥当性があるのだろうか。このような差が臨床的に意味があるかどうかについての指標をあげている。1)提案する治療が症例の予後を変えるか。2)将来の治療を単純化したり、少なくしたりできるか。3)さらなる積極的な治療の必要性を減じることができるか。4)メインテナンス治療を修正あるいは単純化できるか。5)患者と術者にたいして回復治療を容易にするか。6)コストーベネフィット比が好ましいものになるか。このような観点からみると、抗生剤の併用の妥当性に対するエビデンスはまだ不十分ということになる。
さらに問題点はある。各研究で用いる抗生剤の種類、フォロー期間治療の種類などに差があるのだ。
日本ではメトロニダゾールを用いることができないのだが、メトロニダゾールを用いた研究が多い中で、抗生剤を併用すると付加的な効果があると、その結果を借用してもいいのだろうか。」
(平成28年12月13日)

No.402
Efficacy of Local Antimicrobials in the Non-Surgical Treatment of Patients With Periodontitis and Diabetes: A Systematic Review.
Rovai ES, Souto ML, Ganhito JA, Holzhausen M, Chambrone L, Pannuti CM.
J Periodontol. 2016 Dec;87(12):1406-1417.

糖尿病患者は歯周治療に対する反応が悪い。スケーリングルートプレーニング(SRP)の併用として局所の抗菌薬の利用は健康な患者の歯周治療に付加的な利益をもたらす。このレビューは、SRP単独に比較して、慢性歯周炎(CP)と糖尿病(DM)を有する患者の歯周臨床パラメーターに及ぼす、SRPの併用としての局所抗菌薬の効果を評価することである。
1)少なくとも6ヶ月フォロー;2)局所抗菌薬との併用をしたSRP;そして3)歯周炎とDMのある患者、を対象としたランダム化コントロール試験のみが適格と考えられた。MEDLINE、EMBASEとLILACS databasesが2016年1月までに出版された論文に対して検索された。変量効果メタ解析が治療後の臨床的アタッチメントレベル(CAL)、プロービングデプス(PD)、プロービング時の出血、と歯肉炎指数の変化に対しておこなわれた。
このレビューに関連性があると考えられた153論文の中から6つが選択された。試験の大部分は、1型および2型糖尿病患者において、局所の抗菌剤の使用に関連して、有意なPD減少とCAL獲得を示した。良好にコントロールされた患者を含み、最も深い部位あるいはベースライン時PD ≥5 mmの部位に抗菌剤を適応した試験のみが有意なPD減少とCAL獲得を示した。
DMとCP患者において、SRPの併用として局所の抗菌剤の使用はSRP単独に比較してPD減少とCAL獲得において、特によくコントロールされた患者で深い部位においては、付加的な恩恵を得ることができるかもしれない。
(抗感染症治療薬、糖尿病、歯周病、レビュー、システマティック、ルートプレーニング)
「このレビューは、局所の抗菌薬併用がポケットデプスと臨床的アタッチメントレベルの改善に有効であると述べている。他の最近の二つの システマティックレビューでは、糖尿病患者でのSRP+全身的抗菌剤はポケットデプス減少には中等度の効果があったが、臨床的アタッチメントレベル獲得には何ら恩恵がなかったことが示されている。局所投与では徐放性で長期間に渡って高い濃度が維持されるのが良い結果をもたらすのかも知れない。局所投与では投与部位や評価を、ベースライン時PD>=5mmの選択した部位や最も深い部位にしている研究であるのに対して、全身的抗菌剤投与では浅い部位も深い部位もある全顎的な評価になっているので、深い部位の方がよりポケットデプス減少の反応が出やすいことを考慮すると、全身的抗菌剤投与の効果は現れにくくなっているのかも知れない。」
(平成28年12月9日)

No.401
Endodontic status and retention of molars in periodontally treated patients: results after 10 or more years of supportive periodontal therapy.
Pretzl B, Eickholz P, Saure D, Pfefferle T, Zeidler A, Dannewitz B.
J Clin Periodontol. 2016 Dec;43(12):1116-1123

この研究の目的はサポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)のもとにある患者で根管状態が臼歯の保存に及ぼす影響を評価することである。
ベースライン時90人に歯内治療がおこなわれている臼歯188本を含む、 136人の被験者で1015本の臼歯が後ろ向きに調べられた。
根管治療はSPTの平均13.2年の期間に臼歯喪失の有意な一因となっていた(Hazard ratio: 2.98, 95% CI: 1.74-5.1, p < 0.001)。歯内治療は第一大臼歯で(p < 0.001)そして上顎で(p = 0.01)有意に頻度が高かった。歯内治療臼歯では、根管治療のおこなわれていない臼歯に比較 してクラスIII分岐部病変がより頻度高くみられた(p < 0.001) 。根管治療処置の臼歯では、幾つかの患者あるいは歯に関連した因子が歯の保存に影響を示していたが、periapical index4と5(分類で「病気」)の臼歯のみが有意に頻度高く失われた。
歯周治療後の歯周組織に感染しやすい患者の臼歯の保存は歯周因子と同様に歯内因子によって影響を受けている。長期的に積極的な歯周治療と10年以上のSPTを通じてこれらの歯を保存することは可能である。
(歯内状態、臼歯、periapical index 、サポーティブペリオドンタルセラピー、歯の喪失)
「歯周病と歯内病変(あるいは治療)の関連を直接的に調べたわけではない。
歯周炎患者の根尖性病変を持つ歯はそうでない歯に比べて少なくとも3年以上の期間でより多くの骨吸収が生じていると、過去に報告されている。歯周炎患者の根充歯が歯周炎を進行させるのかどうかについては、相反する報告がある。歯内治療をおこなった歯は通常歯冠修復処置をおこなうので、修復マージンがプラークコントロールや歯周組織に影響する。なので、歯内の状態が歯周組織や歯周病変に直接影響を与えているのかどうか、判断するのは難しい。
根管治療をおこなった臼歯で分岐部病変が多く見られていた。これはいわゆる歯内ー歯周病変の問題で、副根管を通じて分岐部に感染が及ぶのであろう。
また根充状態もまた影響のある因子だが、今回の研究では有意差はでなかったようだ。緊密な根充歯は28.3%の喪失であったのに対し不緊密な歯は46%となっていた。」
(平成28年12月4日)



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