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難しくてもちょっと知りたい最新の歯周病治療・歯周病研究 
論文紹介p089(no.406-411)

No.410
Long-term tooth retention in chronic periodontitis - results after 18 years of a conservative periodontal treatment regimen in a university setting.
Graetz C, Plaumann A, Schlattmann P, Kahl M, Springer C, Sälzer S, Gomer K, Dörfer C, Schwendicke F.
J Clin Periodontol. 2017 Feb;44(2):169-177.

縦断的研究は非再生治療レジメのもとでの歯の喪失リスクを評価し、歯の喪失に対する予知因子を同定することを目的とした。
350人(8009歯)がアクティブ歯周治療後(APT、T1)と治療前、そしてサポーティブ歯周治療後平均18+-6年 (SPT、T2)に診査された。記述統計量とcox比例共有異質性ハザードモデルが適応された。
全部で351歯と816歯がAPTとSPT期間中にそれぞれ失われ、患者年当たり0.15+-0.17であった。72%の患者が0-3歯、24%が4-9歯で4%が10歯以上失った。プロービングポケットデプス(PPD)>6mmを持つ歯の割合は17.2%(T0)、1.6%(T1)とT2まで1.7%で安定していた。SPT期間中の歯の喪失は高齢者[HR (95% CI): 1.04 (1.01-1.07) per year] と喫煙者 [2.62 (1.34-5.14)]、PPDのmm [1.35 (1.17-1.56)]、単根に比較して複根 [1.86 (1.36-2.56)]、そして骨吸収のある歯[BL; HR up to 23.6 (12.1-45.6) for BL > 70%]で有意に増加していた。
用意された非再生治療レジメの条件下では歯の喪失リスクは概して低く、少数の患者がSPT期間中の喪失歯の大部分を担っていた。
(メインテナンス、歯周病、歯周治療、リスクモデル、歯の喪失)
「SPT期間中に0.15本/患者/年で歯を喪失した。そして28%の患者が4本以上歯を喪失して、喪失歯の大部分は少数の集団によるものであった。6mmを超えるPPDは2%未満であった。予後因子としてあげているのは年齢である。T1時点で危険率は年に4%ずつ増加している。
骨吸収レベルが70%を超えると、歯の喪失に関するハザード比は骨吸収レベル25%以下に比較して23倍増加した。骨吸収70%を超える歯は19.8年の平均残存年数であり、骨吸収のない場合は29.8年であった。
多根歯はSPT期間中により多く失われたが、分岐部病変によるリスクに有意差はなかった。動揺は歯の喪失に対して有意な予知因子ではなかったようだ。」
(平成29年3月20日)

No.409
Is Trying to Quit Associated With Tooth Loss and Delayed Yearly Dental Visit Among Smokers? Results of the 2014 Behavioral Risk Factor Surveillance System.
ALHarthi SS, Al-Motlag SK, Wahi MM.
J Periodontol. 2017 Jan;88(1):34-49.

アメリカ人における歯周炎の割合は50%近くであると評価されてきた。歯周炎患者は、特に喫煙者は、歯の喪失の割合が高いことに悩まされている。この解析の目的は低口腔健康の予測因子と喫煙者にみられる口腔健康習慣を評価して、喫煙を中止する試みがよりよい口腔健康と、あるいはアメリカにおける喫煙者の口腔健康習慣と関連しているかどうか評価することである。
2014行動危険因子サーベイランスシステム(BRFSS)からのデータが解析に用いられた。喫煙者にデータセットを限定した後、指定した暴露は禁煙しようとする試みの反応者の報告である(はい/いいえ)。二つのロジスティック回帰モデルがおこなわれた。ひとつのモデルは、最も最近の歯科受診が調査の1年以上前であるということと関連した因子を同定した。2番目のモデルは6本かそれ以上の歯の喪失と関連した因子であると同定した。両モデルとも交絡因子に対してコントロールされた。
交絡因子に対してコントロールした後、2014 BRFSSでの喫煙者の中で禁煙を試みることは、調査以前に最も直近の歯科受診が1年以上前である応答者に対し有意に低いオッズと関連し(odds ratio [OR]: 0.93; 95% confidence interval [CI]: 0.90 to 0.97) 、そして6本以上の歯の喪失に対する有意なリスク因子であった(OR: 1.06; 95% CI: 1.02 to 1.10) 。
アメリカの喫煙者内で、喫煙を試みることは毎年の歯科受診応諾と歯の喪失の高いオッズとに関連があった。今後の研究は歯科臨床において禁煙指導をおこなうための適切なアプローチを検討すべきだ。
(行動リスク因子サーベランスシステム、歯周炎、リスク因子、喫煙、禁煙、歯の喪失)
「喫煙は歯周病悪化のリスク因子だ。じゃあ 喫煙をやめたら、どうなる。これについて研究は驚くほど少ない。
今回の研究では禁煙を試みた者は歯科受診をする傾向になっていたという。健康に目覚めた、ということだろうか。
ところが一方で、禁煙を試みた者は6本以上歯を失うオッズが増加するという。これについては、考察もなかなか苦しい。単に歯医者に行く機会が増えて、つまり抜かれる機会が増えたということじゃないかと私は思う。
他に男性、高齢、低教育、低社会経済状態、無健康保険、そして不健康が歯を6本以上失うことと関連のある項目であった。面白いのは、アルコール消費は歯の喪失に抗する関連があった、ということ。これは過去の報告とは異なった結果だ。」
(平成29年3月11日)

No.408
Periodontitis is not associated with metabolic risk during the fourth decade of life.
Shearer DM, Thomson WM, Broadbent JM, Mann J, Poulton R.
J Clin Periodontol. 2017 Jan;44(1):22-30.

この研究の目的は当初に健康であった集団の20代と30代の期間における、歯周炎と糖化ヘモグロビン(HbA1c)の軌跡パターンとの間についての関連性を調べることである。
前向きダニーディン健康と発達に関する学際研究による26、32、38歳時に集められたHaA1cデータが、研究メンバー(n=893)を集団軌跡モデル(GBTM)を適応する軌跡に割り当てるために用いられた。このモデルによりベースラインの人口統計学的、喫煙とウエスト身長比共変数の統計学的関連を集団の構成員の確率に割り当てることができた。そして、軌跡の過程期間中に生じたイベントがその過程を変えるかどうかを調べるために、時間に依存した共変数(歯周炎)を軌跡自身に追加した。
3つのHbA1c軌跡群が同定された:「低」(n = 98, 11.0%); 「中」(n = 482, 54.0%); 「高」 (n = 313, 35.0%)で、それぞれ38歳に 平均HbA1cが29.6、34.1と38.7であった。32歳と38歳で歯周炎に罹患することは軌跡で上方移行と関連があった。しかし、関連のいかなるものも統計学的に有意差はなかった。
早期成人から早期中年にかかる12年の期間で、歯周炎は高血糖との関連を見いだすことができなかった。このことは、生涯において歯周炎は後の高血糖進展に何ら影響しないことが示唆される。
(糖化ヘモグロビン、縦断的、歯周炎、喫煙、2型糖尿病、ウエスト身長比)
「歯周炎が2型糖尿病と関連しているという数多のエビデンスがある。歯周炎という慢性炎症が感受性のある人の糖コントロールに影響を与えている、ということは考えられることである。しかし、歯周炎が糖尿病や糖尿病リスクのある人におけるHbA1cレベル、耐糖障害、糖コントロールに影響を与えることを示唆する研究もあれば、関連がないという研究もあって、相反する所見がでているのも事実である。
ベースライン時糖尿病でなかった歯周炎の人が五年後のHbA1cの上昇と関連があったなどという報告もある。そのような報告とは直接の比較はしにくい。対象年齢が違っていたり、高血糖の定義が違っていたりするからである。
本研究から、歯周病は血糖コントロールに影響を及ぼしていくわけではないと考えられるので、歯周病が血糖コントロールを介して糖尿病に 影響しているという仮説は想定しにくいのではないか。」
(平成29年2月26日)

No.407
Efficacy of adjunctive anti-plaque chemical agents: a systematic review and network meta-analyses of the Turesky modification of the Quigley and Hein plaque index.
Escribano M, Figuero E, Martín C, Tobías A, Serrano J, Roldán S, Herrera D.
J Clin Periodontol. 2016 Dec;43(12):1059-1073.

このシステマティックレビューとネットワークメタ解析(NMA)の目的は、プラーク歯数(PlI)の変化を指標にして、6ヶ月、ホームユース、そしてランダム化臨床治験(RCTs)における、異なった抗プラーク化学薬剤の効果を比較することである。
PlIを評価する治験が同定、スクリーニングされ、組み入れ基準のために評価された。
43論文が含まれた:49が歯磨剤、32がマウスリンスと2論文が両方である。NMAは歯磨剤とマウスリンスに対してそれぞれ4242人と4180人の被験者からのデータを含む51研究を解析した。歯磨剤については、トリクロサン共重合体とクロルヘキシジンが、フッ化第一スズ(SnF)と比較したときに有意な差をもって、最も大きな効果を示した。マウスリンスについては、エッセンシャルオイルとクロルヘキシジンはデルモピノール、アレキシジンとセチルピリジニウムクロリドに比較して有意な差を持って、最も大きな効果を示した。
(エビセンスの量には著しい不均衡が含まれるという)この研究には限界があるが、NMAで評価した際に、トリクロサン共重合体あるいはクロルヘキシジン含有の歯磨剤とエッセンシャルオイルあるいはクロルヘキシジン含有のマウスリンスはPlIに最も高い影響を示した。
(抗菌、歯肉炎、ネットワークメタ解析、プラーク歯数、システマティックレビュー)
「まず、歯磨剤について、複数の研究があって、NMAでコントロールと比較してPlIに有意差があるのはCHX(n=3)とトリクロサン共重合体(n=16)であり、他の薬剤との比較で有意差があったのは、アブストラクトにあったようにクロルヘキシジン vs SnFとトリクロサン共重合体 vs SnFであった。
次にマウスリンス。同様に複数の研究があって、NMAでコントロールと比較してPlIに有意差があるのは、エッセンシャルオイル(n=9)、高濃度(0.05%を超える濃度)塩化セチルピリ二ジウム(CPC)(n=6)、 0.1%以上のクロルヘキシジン(CHX)(n=4)、とトリクロサン共重合体(n=3)で ある。またマウスリンスではCHXとエッセンシャルオイルに差はなかった。ただし過去のシステマティックレビューでは差のあることを報告している。エッセンシャルオイルのノンアルコールタイプはプラセボに対して有意な差がでているのであるが、1研究のみである。
(平成29年2月5日)

No.406
Tooth loss and alveolar bone crest loss during supportive periodontal therapy in patients with generalized aggressive periodontitis: retrospective study with follow-up of 8 to 15 years.
Díaz-Faes L, Guerrero A, Magán-Fernández A, Bravo M, Mesa F.

この研究の目的は広汎型侵襲性歯周炎(GAgP)患者におけるサポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)期間中の歯の喪失発生率を決定して、歯の喪失リスクを同定し、そしてフォロー期間中のデンタルレントゲン上の歯槽骨頂の高さの変化を定量化することである。
この後ろ向き研究は歯周治療後25人のGAgP患者656本を含んでいた(ベースライン)。ベースライン時とフォロー期間最後に、社会人口統計学的、歯周組織の、そしてレントゲン的変数に関してデータを収集した。 線形回帰分析モデルがリスク因子と歯の喪失との関連性を評価するのに用いられた。
28本の歯がSPT期間中に抜歯された。患者一人あたりの平均歯の喪失は、10.9 ± 2 年の平均フォロー後、すべての原因で1.12 ± 2.01本、そして歯周病が原因に対して0.9 ± 2.0本であった。臨床的な変数は最終フォロー時点で改善した。この時プロービングポケットデプスにおいては平均-1 ± 0.8 mmの減少 (-0.7 to -1.3, 95% CI)と臨床的アタッチメントロスでは-0.6 ± 0.9 mmであった(-0.9 to -0.2, 95% CI)。フォロー期間最後の平均歯槽骨骨頂吸収は0.36 ± 0.56 mm (0.10-0.61, 95% CI)であった。喫煙は歯の喪失と関連した(p=0.052)。
定期的なサポートケアプログラムにあるGAgPにおける歯の喪失率は低かった。臨床的変数は改善し、骨吸収は時間が経過しても最小限であった。喫煙は歯の喪失と関連した。
(侵襲性歯周炎、歯槽骨吸収、後ろ向き研究、喫煙、歯の喪失)
「SPT平均10.9年で患者一人あたり歯の喪失は全体で1.12本、歯周病が原因に限っていうと 0.9本であったう。患者一人あたり0.1本/年であった。他の研究では、0.14、 0.08、 0.21、そして 0.15といった数値が並ぶ。それに対して、厳格なSPT管理下にない、平均6.97年フォローでは0.27本/年という報告がある。
歯周病が原因で歯を失うことがなかったヒトは72%もいたのだが、歯を失うことの一番の原因はやはり歯周病であった。失った歯の82%は複根歯となっている。
歯の喪失に及ぼすSPTの影響の研究結果は相反している。今回の研究では、歯の喪失はSPTの受診数やコンプライアンスと関連がみられなかった。最近のメタ解析ではSPTコンプライアンスがよければ歯の喪失は少なくなっている。しかし歯周病のタイプによる差はなく、結果には高い不均一性がある。GAgPであっても厳格なSPTがあれば歯の喪失や骨吸収も最小限に抑えられるようである。」
(平成29年1月27日)

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