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難しくてもちょっと知りたい最新の歯周病治療・歯周病研究 
論文紹介006(no.024-26)

No.026
Prevalence and simultaneous occurrence of periodontitis and dental caries.
Mattila PT, Niskanen MC, Vehkalahti MM, Nordblad A, Knuuttila ML.
J Clin Periodontol. 2010 Nov;37(11):962-7


この研究の目的はフィンランド人成人で歯周炎とカリエスの罹患率と両疾患が同時に罹患しているか、について評価することです。この研究は2000年国民健康調査の一部としておこなわれた。被験者群は30歳以上の5255人であった。プロービングポケット深さ(PPD)、未処置象牙質う蝕が歯ごとに記録された。4mm以上のPPDを有する歯は歯周炎、6mm以上のPPDを有する歯は重度歯周炎とした。64%の人が歯周炎であり、21%が重度歯周炎、29%がう蝕に罹患していた。歯周炎の人は、歯周炎でない人(23%)に比較して、有意に多くう蝕に罹患していた(33%)。このことは重度歯周炎ではより明白な傾向であった(44%)。従って、う蝕に罹患している人は、う蝕のない人(16%)に比較して有意に多く重度歯周炎に罹患していた(31%)。1人あたりう蝕あるいは歯周病の平均罹患歯数は、それぞれ他の疾患の平均罹患歯数が増えるのに対応して、増加していた。これらの結果から、特に重度歯周炎とう蝕は同じ被験者で数多くみられる傾向が示された。

(私の感想:陳腐なテーマなのだが、ちょっとみてみました。色んな人の口の中をみていると、時としてむし歯が一本もないのに、歯周病がすっごく進んでいる人に出くわすことがある。歯医者さんにいったことがなかったが、歯ぐきが腫れてきたのでみてもらうと、歯周病は進行していたというわけだ。それでどうなってるのかなあ、とみたのだが、そういう点での新しい情報はなかった。両疾患の罹患にどのような因果関係があるかは、横断的な研究だからわからん、と著者らが考察で述べているが、そらそうだ。でもなんか書いて欲しかったなあ。
ちょっと気になったのは同じ調査が1978-1980になされていて、その時に比べると、う蝕は大幅に減っていたが、歯周病はあんまり減ってなかったらしいです。)

歯周病、重度歯周炎、う蝕、カリエス、罹患率、健康調査
(平成23年7月7日追記)


No.025
The effect of photodynamic therapy for periodontitis: a systematic review and meta-analysis.
Azarpazhooh A, Shah PS, Tenenbaum HC, Goldberg MB.
J Periodontol. 2010 Jan;81(1):4-14.


このレビューの目的は、従来の非外科的スケーリング・ルートプレーニング処置(SRP)に比較して、成人の歯周炎に対する光線力学的療法(光力学療法)(PDT)の基本治療としてあるいはSRPの補助療法としての効果を評価することである。MEDLINE, EMBASE, CINAHL, 他の関連のあるデータベース、とInternational Pharmaceutical アブストラクトを対象に、最も古いものから2009年5月までの、成人でプラセボ、介入のない対照、あるいは非外科的療法との比較をおこなったPDTのランダム化比較試験が検索された。臨床的アタッチメントレベル(CAL)、プロービング深さ、歯肉退縮、全額のプラークあるいは出血指数、などの変化に対するデータが抽出され、メタ解析され、プールされた平均差(MD)が報告された。5つの研究がこのレビューの対象となった。これらの研究は小サンプル規模で、中等度から高度のリスクベースで遂行された解析であった。含まれた研究では臨床的に不均質であった。独立した処置として、あるいはSRPのコントロール群に対するSRP補助療法として、PDTは統計学的にあるいは臨床的に意味ある優位性を示さなかった。PDTとSRPの併用療法はCAL獲得(MD: 0.34; 95% confidence interval [CI]: 0.05 to 0.63)において、歯周ポケット減少(MD: 0.25 mm; 95% CI: 0.04 to 0.45 mm)において可能性のある有効性をしめした。独立した治療として、あるいはSRPの補助療法として、PDTはコントロールとなるSRPに勝ることはなかった。それゆえ、歯周炎の臨床的な管理に、PDTを通例の処置として用いることは推奨されない。この治療法の適切な評価のためには、よくデザインされた臨床試験が必要である。

(私の感想:光線力学的療法はそれなりに注目されているのだろう、2009~2011にレビューなどが幾つかでている。全部を見たわけではないが、どれもこれまでの論文を解析しているから当然だが、どうも上記と似たような結論のようだ。今一つ結論だけを紹介すると
Photodynamic therapy as an adjunctive treatment for chronic periodontitis: a meta-analysis. Atieh MA. Lasers Med Sci. 2010 Jul;25(4):605-13.
このレビューメタ解析から、スケーリングルートプレーニングと抗菌光線力学的療法の併用処置をおこなうことにより、臨床的アタッチメントレベルとプロービング深さが改善する可能性が支持された。それにもかかわらず、このレビューの所見は、調べられた研究が少数例であることを考えると、慎重に解釈されるべきである。

結局、光線力学的療法の現在の評価というのは次の論文のタイトルに表されているような気がする。Insufficient evidence for photodynamic therapy use in periodontitis.歯周炎で光線力学的療法の使用に対する不十分な根拠(Herrera D. Evid Based Dent. 2011;12(2):46.)光力学療法が、独立した治療としてあるいはスケーリングルートプレーニングの補助的療法として、スケーリングルートプレーニング単独よりも優れているというには、不十分な根拠しかない。
光線力学的療法の有効性を示す論文がまたちょろちょろ出てきているので、もう少し先では評価が変わるのだろうが、科学のエビデンスを求める目はなかなか厳しい。)

歯周病治療、レーザー、歯周病、歯肉溝浸出液、光力学療法、光線力学的療法
(平成23年7月4日追記)


No.024
Combined photodynamic and low-level laser therapies as an adjunct to nonsurgical treatment of chronic periodontitis.
Lui J, Corbet EF, Jin L.
J Periodontal Res. 2011 Feb;46(1):89-96.


近年、歯周病の治療ではデンタルレーザーの使用に関心が高まってきている。この短期間臨床試験の目的は、慢性歯周炎に対する非外科的治療の補助的処置として、低出力レーザー治療を併用した光線力学的療法の効果を評価することである。
未治療の非喫煙慢性歯周炎患者24人が、スケーリング・根面デブライドメント処置と5日以内に光線力学的療法と低出力レーザー処置を付加させるかさせないかで、ランダムにスプリットマウスで割り当てられた。プラーク、プロービング時出血、プロービング深さ、歯肉退縮がベースライン時、処置後1および3ヶ月後に記録された。歯肉溝浸出液が、ベースライン時、1週および1ヶ月後にインターロイキン1測定のために採取された。
テスト歯では、コントロール歯に比較して、1ヶ月後のプロービング時出血部位率や平均ポケット深さの著しい減少がみられた(p<0.05)。1週間後には両群ともに歯肉溝浸出液の有意な減少がみられ(p<0,001)、加えてテスト群では1ヶ月後にもさらに減少していた(p<0.05)。テスト部位では、1週間後の歯肉溝浸出液のインターロイキン1レベルが、コントロール部位に比較して著しい減少が示された(p<0.05)。3ヶ月後では、テスト群とコントロール群間で歯周組織の臨床パラメーターに有意差は見られなかった。
本研究から、光線力学的療法と低出力レーザー療法の併用療法は、短期間の根拠で、慢性歯周炎の非外科的療法に有益な補助的処置であることが示唆された。慢性歯周炎の非外科的療法の補助的処置として、光線力学的療法と低出力レーザー療法の併用療法が長期的な有効性を有するかどうかの評価のためにはさらなる研究が必要である。

私の感想:学会でこの抗菌光線力学的療法システムを扱っている出展会社があったので資料をもらった。日本総代理店ウエイブレングスが「ペリオウェイブ;抗菌光線力学的療法によ光殺菌システム」あるいは「最先端歯周治療 光力学療法」と称して販売している。うたい文句は「痛くない、腫れない、短時間」それでちょっと興味があってこの論文に目を通してみた。
光線力学的療法とは何か。細菌に親和性のある光感受性薬剤を歯周ポケット内に注入して光化学反応を促進する波長のレーザーを照射するのである。するとフリーラジカルや活性酸素が発生し、これが抗菌的に働くという、従来にない新システムである。
研究では低出力レーザーに光線力学的療法を組み合わせている。光線力学的療法という名前がいかついが、ゴーストバスターズみたいこれでばりばり細菌を撲滅してくれるのなら、歯周病もたちどころに治っちゃうのか、なんて思って読んでみたが、結果は期待はずれだった。
確かに、処置後1ヶ月ではコントロールと比較して臨床パラメーターに差があるのだが、3ヶ月たつとその優位性が失われている。あかんやん!というか、歯周基本治療で十分治ってているので、この付加的な治療にあまり有意義な価値を見いだせない。レーザーと光線力学的療法を組み合わせてもこの程度ならなおさらである。1ヶ月後の有意差がでるのはレーザーか光線力学的療法かどっちかが効いているのか、両方の組み合わせが重要なのか?著者らももっと調べなあかんと述べている。
肝心なこと、この抗菌光線力学的療法はホントに効くのか。考察で著者らは、スケーリング・ルートプレーニングと組み合わせて有効、と報告された論文もあれば、補助的療法としての抗菌光線力学的療法には有意な有益性がない、とする報告もある、と述べている。
さてさて今回はこのへんにして、次回この光線力学的療法の歯周病治療に関するレビューをみてみよう。
歯周病治療、レーザー、歯周病、歯肉溝浸出液、光力学療法、光線力学的療法
(平成23年7月2日追記)


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