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難しくてもちょっと知りたい最新の歯周病治療・歯周病研究 
論文紹介p027(no.096-100)

コーヒーブレイク


論文紹介を立ち上げるときに、通し番号を01でも1でもなく001とした。三桁を意識してのことである。そして今回no.100までやってきた。同じ表記で999まで可能だ。
自分のホームページなので、自由気ままに好きなコーナーをつくってきた。この論文紹介もそんな一つだ。思いのまま紹介してきたのだが、気分が乗って沢山書くこともあれば、嫌になってしょぼいこともあった。
ここをどんな立場の人が読んでいるのかわからないが、このコーナーを時々チェックしている人もいるようだ。歯科関係の人かも知れない。

さて、ここで紹介している論文は歯周病や歯周病治療関連の論文である。
先だって機会があって、英文雑誌の直近のインパクトファクターを調べてみた。インパクトファクター(IF)はテレビの視聴率みたいなもので、どれぐらい注目されているか、引用されているかを表したような数字だ。グーグルが各ホームページをランク付けするのに、被リンクに着目するが発想は似たようなもんだ。
歯科分野をみると、トップのIFは3.933でJournal of Clinical Periodontology(JCP)だったのでビックリした。このJCPはここでもよく取り上げる。臨床ネタが良く載っているからね。歯科全般には、保存、補綴、外科、矯正などなど色んな分野が含まれている。JCPが他分野を抑えての一位だ。しかもJournal of Dental Research(JDR)をも抜き去った。インパクトファクターは雑誌が対象とするする分野が広いほど高くなる傾向がある。いろんな分野の人が投稿するし、引用も増えるからだ。JDRは歯科全般を扱う雑誌で、知る限り歯科ではずっとトップだった(事実直近5年の数字は4.389と群を抜いてJDRが一番だ)。今回JDRは3.773と二位に甘んじている。JDRをJCPが抜いたのか~とびっくりだった。さすがeditorトネッティ。今回の出来事が一時的なのか、ずっと続くのか。JCPは今後もこの位置をキープするのか!?
ちなみにトップ20には歯周病関連雑誌がJCPに加えてJournal of Periodontology、 Journal of Periodontal Research、Periodontology2000と4雑誌が入っている。明らかな保存修復系が4ないし5なので、広い意味の保存系(歯内、修復、歯周)がほぼ半分を占めることになる。

余談だが昔のJEってインパクトファクターが低かった(今3.424)。レビューイングはかかるが、投稿すれば通る、と仲間内で言って人がいた。それも何年かまえからそうでもなくなってきたようで、インパクトファクターも上昇した。質も上がったように思う。2度ほど投稿したことがあるが、acceptを知らせる手紙には「1.xxxxx、2.xxxxx、3.xxxxなどの論文も参考文献として追加されていた方が、読者にもよろしかろう」みたいなことが必ず書かれていた。editorが指定する追加参考文献は当然のように自雑誌の論文だった。再実験をしろだとか、大幅に書き換えろなど言われたらへこむが、acceptになって論文を2,3追加しろなんてへとも思わない。笑顔で、acceptありがとうございます、喜んで指定の論文追加いたします、だ。少し前に、科学雑誌で自己雑誌論文の引用を水増ししているがいかがなものか、という記事が朝日新聞に載っていた。

そんな小細工をしなくてもインパクトファクターの高い雑誌は高い。nature、cell、scienceはそれぞれ36.104、32.406、31.777だった。僕らには雲の上どころか月世界、いやM78星雲ぐらいだね。自分がもっとも直近に投稿したJournal of Cell Physiologyでは3.986 で自分にはこのあたりが限界であった。誰しも上をねらいとは思っているが、高きを目指しすぎると軽く門前払いをくらう。

さて、余談が過ぎた。
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No.100
Herpes Simplex I virus impairs regenerative outcomes of periodontal regenerative therapy in intrabony defects. A pilot study.
Bertoldi C, Pellacani C, Lalla M, Consolo U, Pinti M, Cortellini P, Cossarizza A.
J Clin Periodontol. 2012 Apr;39(4):385-92.


この研究の目的は、歯周病原性細菌の検出されない実験集団において、孤立した深い骨内欠損に歯周組織再生術を施した際の臨床成績におよぼすヘルペスウイルスタイプ1と2の影響を評価することである。
17人の中等度から重度歯周炎患者において、17の歯周骨内欠損が再生療法とアメロジェニンで治療された。細菌学的な評価はベースライン時(初期治療終了後)と歯周病原体の存在を除外するために1年後とにおこなわれた。ヘルペスウイルス1と2DNAは分子アッセイを用いて、骨内欠損に関わるポケット組織で定量された。臨床的アタッチメントレベル(CAL)、プロービングポケット深さ(PPD)と歯肉退縮(REC)がベースライン時と1年後に記録された。
1年後、17欠損ではCAL獲得、PPD減少、とREC増加がみられた。HSV-1は5人の患者で検出された。ヘルペスウイルス-2は検出されなかった。ヘルペスウイルス-1陽性と陰性の二つの亜群はベースライン時に同質であった。1年後5人のヘルペスウイルス-1陽性患者は12人のヘルペスウイルス-1陰性患者に関して、CAL獲得とPPD減少量が少なく、REC量が増加していた。
ベースライン時ヘルペスウイルス-1の存在は再製治療後の臨床成績不良と関連がある。
(平成24年4月3日)


No.099
Number of teeth is related to atherosclerotic plaque in the carotid arteries in an elderly population.
Holmlund A, Lind L.
J Periodontol. 2012 Mar;83(3):287-91.


歯周病はアテローム硬化性のバックグラウンドを伴う心血管系障害との関連性が指摘されており、歯の数(NT)が冠状動脈疾患に対するリスク指標となりうることが示唆されている。この研究の目的はNTが高齢者集団の頚動脈内中膜複合体厚(IMT)やアテロームプラークと関連があるかどうかを検討することである。
70歳1,016人の被験者を含むpopulation-based研究において、被験者の947人により歯数が自己申告された。頚動脈IMTは超音波によって評価された。プラークの発現数もまた測定された。NTとプラークを伴う頚動脈数との関連を解析するために、ロジスティック回帰分析が用いられた。
年齢、性別、喫煙、肥満指数、ウエスト/腰比、血糖、トリグリセリド、コレステロール、C反応性蛋白、白血球数、血圧、オッズ比0.89 95%信頼区間0.82-0.98でP=0.016のフラミンガムリスクスコア、に対して補正をおこなった後でも、NTとプラークを伴う頚動脈数との間に有意な逆の関連性がみられた。関連性は顕著に直線性を持ち、用量反応性性の関連性が示唆された。参照対象として第一5分位を用い、NTが5分位に分けられた時、第二5分位を除いてすべての分位に対して関連性が存続していた。しかしながら、IMTとの間に関連性は見られなかった。
歯の喪失は、アテローム性硬化症に対して取得が容易なリスク指標となりうることが、今回の研究から重ねて強調された。

(平成24年4月3日)


No.098
Periodontal risk assessment model in a sample of regular and irregular compliers under maintenance therapy: a 3-year prospective study.
Costa FO, Miranda Cota LO, Pereira Lages EJ, Lima Oliveira AP, Cortelli SC, Cortelli JR, Medeiros Lorentz TC, Costa JE.
J Periodontol. 2012 Mar;83(3):292-300.


この研究の目的は、歯周組織メインテナンス治療(PMT)期間中における、歯周組織リスクアセスメント(PRA)と歯周病の再発や歯の喪失との関連を検索することである。
前向きPMTプログラムで、定期的な遵守者(RC)患者75人と不規則にしか遵守できない(EC)患者89人が選択された。アクティブな歯周治療後とPMT3年後に歯周組織診査とPRAがおこなわれた。参加者のリスクプロファイル(低、中、あるいは高度)が評価され、歯周病の再発と歯の喪失が、一変量と多変量解析を用いて解析された。
RCはECに比較して、歯周病の再発と歯の喪失が(P<0.05)少ないことが示された。RCとECにおける歯周病再発の進度は、中等度リスクプロファイルの場合はそれぞれ2.7%と3.4%であった一方、高度リスクプロファイルの場合はそれぞれ6.7%と11.2%であった。PMT期間中、RC群で79歯(0.65±1.4本/被験者)、EC群では70歯(0.78±2.1本/被験者)が失われた。RCとEC群の中等度あるいは軽度プロファイル被験者よりも高度リスクプロファイル被験者は、歯周病再発と歯の喪失がより生じやすいことが示された(P<0.05)。
リスクプロファイルは歯周病再発と歯の喪失に影響を与えた。RCは歯周病再発と歯の喪失が少なかった。PRAモデルは患者のリスクを詳細に検討して、リコール間隔を調整するのに有益だとおもわれた。
(私の感想など:定期的なリコールを遵守する被験者は、遵守できない被験者より歯の喪失や歯周病悪化のリスクが低くなる。これはこれまでの報告と同様だ。ちなみにRC患者とEC患者の平均通院間隔は前者が3.3ヶ月で後者が8.1ヶ月、再発は前者が10.6%で後者が16.8%、さらに歯の喪失は前者が22.6%後者が30.3%となっている。
加えてPRAモデルに従って患者のリスクプロファイルを分類して、この区分けが再発などと関連することを示している。ただリスク区分をリコール間隔に具体的にどう反映させればよいのかがわからない。さらに、リスクに応じてリコール間隔を変えたら、それは再発率や歯の喪失にどんな風に、どれぐらい影響を及ぼすのか???興味あるんだけどね。)
コンプライアンス、メインテナンス、歯周炎、リスク因子、歯の喪失
(平成24年3月30日)


No.097
Birth weight of infants of mothers with aggressive periodontitis.
Schenkein HA, Koertge TE, Sabatini R, Brooks CN, Gunsolley JC.
J Periodontol. 2012 Mar;83(3):279-86.


歯周病感染が低体重や早産の素因となるならば、母親が侵襲性歯周炎(AgP)に罹患した時には、そのような結果が生じるはずだ。
AgP患者の女性、歯周組織が健康なその同胞と血縁関係のない歯周組織が健康な女性らから、質問表により出生児体重データが回収された。後ろ向きと前向きの両出産結果データが用いられた。多くの歯周組織評価は出産後におこなわれたので、低体重出産に対するリスク因子のほとんどが不十分なデータであった。我々は、母親の歯周病診断および臨床変数と得られた出生児体重との関連性を決定した。
コントロール被験者あるいは侵襲性歯周炎患者で、平均出生児体重において有意差はみられなかった。このことは、全ての出産が考慮された場合にも、歯周組織診査前1年未満あるいは2年に報告された人のみに限っても当てはまることであった。歯周組織が健康なコントロールについて言えば、侵襲性歯周炎患者の同胞が出産した新生児の13.2%で、また血縁のない母親が出産した新生児の12.8%で、2,500g未満の体重であった。一方、広汎型侵襲性歯周炎に罹患した母親から生まれた9.9%と局所型侵襲性歯周炎に罹患した母親から生まれた新生児の10.3%が2,500g未満であった。
集団内での侵襲性歯周炎罹患が比較的希であったために、妊娠の結果との関連を調べる前向き研究を遂行するのに被験者が参加することが困難性であるとの理由から、我々は病気発症が出生前に起こりうると仮定して、不十分な後ろ向きアプローチのみならず前向きデータを用いて折衷的なアプローチを応用した。我々の結果は、このようなアプローチの限界を考慮しなければならないが、母親がAgPであることが低体重児出産の素因であるという証拠を示すことはできなかった。AgPは歯周炎の慢性タイプとは異なった特有の生物学的特性を有しており、そして低体重児出産との関連性を欠如することが今ひとつの特性かもしれない。
(私の感想など:歯周炎の母親は低体重出産のリスクが高くなるという。じゃあ歯周炎の中でもより進行性だと考えられるAgPではより明確な関連がみられるであろう、との仮説から研究したが有意な関連がみられなかった。
これまでの歯周炎罹患母親と低体重児出産との有意な関連を示した報告と、被験者数などの規模は変わらない、コントロールも同胞まで用意した(AgPは遺伝的な背景が考えられているので、本研究では歯周組織の健康な姉妹もコントロールとしている)、また研究対象とした集団の新生児体重は過去の平均と比較して差があるわけではない、ということだ。ただ、この研究では、多くの被験者で歯周組織の検査診断を出産数年後におこなっている。つまり妊娠中の歯周組織状態が分類した診断とは異なっている可能性も否定できない。これが理由となっているかもしれない。
今ひとつの解釈は、本研究の結果が「AgPは低体重児出産とは関連していない」という単純な事実を表しているかもしれない。)
(平成24年3月25日)


No.096
Is self interdental cleaning associated with dental plaque levels, dental calculus, gingivitis and periodontal disease?
Crocombe LA, Brennan DS, Slade GD, Loc DO.
J Periodontal Res. 2012 Apr;47(2):188-97.


この研究の目的は、オーストラリア成人の歯間部清掃行為がプラーク付着、歯肉炎や歯周炎の改善と関連しているかどうかを検討することである。
成人口腔健康国民調査2004-06からデータを収集した。結果の評価項目には、口腔清掃評価として3つの指標(歯垢、歯石、歯肉炎の有無)を用い、そして歯周病評価として2つの指標(歯周ポケットか臨床的アタッチメントロスが4mm以上部位の有無)を用いた。独立変数は次の三つの群に分類された:歯間部清掃を少なくとも毎日はする(daily+)、定期的には行うが毎日はしない(<daily)、と歯間部の清掃を定期的にしない群(基準群)である。共変数で補正し、基準群に対して罹患比(PRs)と95%信頼区間(95%CIs)を算定するために、頑健な分散推定を有するポアッソン回帰が用いられた。
定期的な歯間部清掃は歯垢の減少(<daily、PR=0.89、95% CI=0.84, 0.95; daily+, PR=0.89、95% CI=0.82, 0.96)、歯石の減少(<daily、PR=0.88、 95% CI=0.80、 0.97; daily+、PR=0.79, 95% CI=0.70, 0.89) と中等度/重度歯肉炎の改善(daily+、PR=0.85、 95% CI=0.77, 0.94)と関連がみられた。歯周ポケット深化は <daily群に対して抑制されている傾向であった (PR=0.61、95% CI=0.46, 0.82)が、しかし、daily+清掃とは関連がみられなかった(PR=0.99、 95% CI=0.663, 1.49)。歯間部清掃と臨床的アタッチメントロスとの有意な関連は見られなかった(<daily、PR=0.90、95% CI=0.77, 1.05;daily+、PR=1.17、95% CI=0.95, 1.44).
(私の感想など:口腔清掃行為は比較的短期間で歯垢の付着や歯肉の炎症の変化に影響を与える。例えば歯間ブラシを使用したことがない人が歯間ブラシを毎日一生懸命すれば、歯周病の状態にもよるが、軽度であれば通常数日で出血はおさまってくる。この研究結果からも、歯間部清掃が歯垢歯石や歯肉の炎症に与える影響がわかる。
しかし歯周ポケットの深化やアタッチメントロスとの関連は示されなかった。一つにはクロスセクショナルな研究の限界であろう。アタッチメントロスは長期間の病気進行の結果なので、1時点でのアンケートを指標とするには無理がある。また定期的な歯間部清掃と分類はしているが、その清掃内容や定期的に清掃した期間などの詳細が不明である。
継続した調査を行えば、また歯間部清掃性と単に歯垢付着や歯肉炎だけでなく歯周病の発症進行との関連がもう少し明確になるかもしれない。)
(平成24年3月24日)



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