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難しくてもちょっと知りたい最新の歯周病治療・歯周病研究 
論文紹介p031(no.116-120)

No.120
Effects of a single topical doxycycline administration adjunctive to mechanical debridement in patients with persistent/recurrent periodontitis but acceptable oral hygiene during supportive periodontal therapy.
Tonetti MS, Lang NP, Cortellini P, Suvan JE, Eickholz P, Fourmousis I, Topoll H, Vangsted T, Wallkamm B.
J Clin Periodontol. 2012 May;39(5):475-82.


この研究の目的は、サポーティブペリオドンタルケア中に見られる、再発性あるいは持続性の歯周炎患者で、口腔清掃は良好な患者において、非外科的処置の併用療法として徐放性ドキシサイクリンゲル(SRD)の有効性を評価することである。
シングルブラインド、パラレル群、マルチセンターにおいて、再発のみられた、あるいは病状が継続する歯周メインテナンス患者203人のうち202人が、残存する4mm以上の歯周ポケット全てに、縁下超音波/音波インスツルメンテーション(USI)に続いてSRD投与を併用した(テスト群)あるいは併用しない(コントロール群)群へランダムに割り当てられた。3、6、12ヶ月後にプロービング深さ、BOP減少、治療時間、プロービングアタッチメントレベルにおける群間の差が評価された。
ベースライン時両群に差はなかった。3ヶ月後、テスト群はコントロール群に比較して、平均プロービング深さが有意に減少した(平均差= 0.11 mm、 95% CI 0.03-0.19 mm、 p = 0.003)。SRD投与は、3ヶ月と6ヶ月後において、5mm以上出血のあるポケットから4mm以下出血のないポケットへの移行に有意に大きなオッズ比がみられた(O.R. = 1.4, 95% CI 1.2-1.8 、 3 months)。6ヶ月時点で、SRDの有効性が、深いポケットでのみ見られた。被験者の7.5%で(テスト群とコントロール群間で有意差はなかった)病気の進行が認められ(アタッチメントロス2mm以上)研究を終了した。群間で有害事象の出現に有意差は認められなかった。
この臨床研究から、二次予防プログラムに参加する歯周治療患者における炎症と深いポケットのコントロールにSRDの局所投与は短期間の有利な効果と口腔清掃の満足のいくレベルに維持できることが示された。
(私の感想など:イントロに悲しい事が書かれている。「サポーティブペリオドンタルセラピーは歯周病の長期管理に対して確立された治療法である。しかし、プロフェッショナル予防プログラムは部分的にしか効果を発揮しない。出血のあるポケットに、歯肉縁下の再インスツルメンテーションをおこなっても50%しか改善されない。出血のあるポケットが継続すると疾患の進行や歯の喪失リスクが増加する。」
歯周病の二次予防は難しい。メインテナンス患者でのSRP+テトラサイクリンファイバーの有効性が報告される一方、2%ミノサイクリン単独は効果がなかったという。今回の研究ではSRD併用が、中程度の効果が短期間(6ヶ月)継続してみられている。中程度とは?未治療の患者に対しては、SRP単独に比較するとPPD 0.7mm(あるいは0.4mm)の有意な改善があるとする報告がある。ところが今回の研究では、SRD併用効果の優位さは3ヶ月後0.17mm(ただしPPDベースライン時5mm以上)、6ヶ月で0.27mm(ただしベースライン時6mmのみ)しかない。それで中等度(わずか?)である。12ヶ月では、SRD併用効果ははなくなるので、短期間である。しかもSRD併用効果は深いポケットのみである。じゃあ、6ヶ月ごとに投与すればどうなるのか?それに対して、本論文では正面切っては語られていない。)
ドキシサイクリン、局所抗生剤、メカニカルデブライドメント、再発性歯周炎、徐放性、サポーティブペリオドンタルセラピー、超音波

(平成24年6月7日)


No.119
Influence of autogenous platelet concentrate on combined GTR/graft therapy in intrabony defects: a 7-year follow-up of a randomized prospective clinical split-mouth study.
Moder D, Taubenhansl F, Hiller KA, Schmalz G, Christgau M.
J Clin Periodontol. 2012 May;39(5):457-65.


本研究の目的は、深い歯周組織骨欠損に組織再生誘導法(GTR)をおこなって7年後の、長期再生成績におよぼす自己血小板濃縮物(APC)の影響を検討することである。
25人の患者で、2ヶ所の対側性骨内欠損がGTR法(ランダム化スプリットマウスデザイン)によって治療された。APCは付加的に投与された。7年後、治癒結果がブラインド状態で診査者により臨床的に評価され、ベースライン時と12ヶ月後の結果とが比較された。さらに歯の保存解析がおこなわれた。
7年後、23人の患者が歯の保存解析で、16人の患者がスプリットマウス解析で調査可能であった。テストおよびコントロール歯の84%が残存していた。両群とも、中央値アタッチメントレベルはベースライン時、10.5mm[(25/75%): テスト群 9.0/13.0、コントロール群 10.0/12.0] が1年後に6.0mm[テスト群 4.0/6.8、コントロール群 5.0/7.0]へと有意に減少した(p < 0.05)。その6年後、テスト部位で7mm[5.3/10.0] (p <0.05) へと逆に増加し、コントロール部位では安定していた[5.0/7.8] (p > 0.05)。プロービング時の出血(BOP)は両群で増加した。最後の6年間は患者の26%しかサポーティブペリオドンタルセラピーを受けなかった。この限定された条件下ではあるが、本研究からGTR治療の臨床成績は7年にわたり維持されていることが示された。しかし、APCを付加的に使用することは、長期の安定性に対してネガティブな影響を与える可能性がある。
(私の感想など:GTRの長期影響はいかようであるかを検討している。他の論文を引用しているが、5年で平均臨床的アタッチメントゲインが2.2から3.0、10年で2.4から3.8mmとのこと。今回の研究では7年後の中央値だが、テスト側3.5mmで、コントロール側5.0mmなので、比較的よい結果の方だ。問題はGTRに自己血小板濃縮物(APC)を加えた時の成績だ。
今回の研究ではベースラインから術後1年でテスト側(GTR+APC)もコントロール側(GTRのみ)も5.0mmのアタッチメントゲインがある(ベースラインから1年後のPPD減少値は、テスト側では6.5mm、コントロール側6.0mm)。ところが、コントロール側ではその後7年目までアタッチメントレベルが維持されたのに対し、テスト側では5.0mmが3.5mmに悪化している(ベースラインから7年後のPPD減少値がPPDはテスト側では、4.5mm、コントロール側5.5mmとなっている。つまり1年後から7年後に、それぞれ2mmと0.5mmポケット深化がみられている)。
GTRにAPCを組み合わせると、良いことが起こらないばかりか、長期には悪いことが起こる、という結論だ。スプリットマウスデザインなので、個人レベルの全身的な影響はテスト側もコントロール側も同じはずだ。今回のAPCによるネガティブな結果については、説明できる理由も持たないと考察では述べられている。
APC信奉者にとって、これはあまり聞きたくない結果かも知れない。)
GTR、骨内欠損、長期予後、メンブレン、歯周病/歯周外科、血小板、リン酸トリカルシウム
(平成24年6月3日)


No.118
Drug-induced gingival overgrowth: a study in the French Pharmacovigilance Database.
Bondon-Guitton E, Bagheri H, Montastruc JL.
J Clin Periodontol. 2012 Jun;39(6):513-8.


歯肉増殖は、フェニトイン、シクロスポリン、あるいはカルシウムチャンネル阻害剤でよく知られた薬剤副作用(ADR)であり、他の薬剤との関連も知られている。
我々はフランスにおける、薬剤関連の歯肉増殖(DIGO)についての自主申告データを概説する。
1984年から2010年までのフランス医薬品安全性監視データベースに登録されたDIGO症例を選択した。
147件のDIGO症例(全症例の0.04%)があり、その多く(86.4%)が「重篤ではなかった」。患者は男性で、40から69才の人の頻度が高かった(58.5%)。経過は47.5%の症例で良好であった。最も「疑わしい」薬剤はカルシウムチャンネル阻害剤(30.6%)で、続いて免疫抑制剤(15.2%)と抗けいれん剤(10.1%)であった。DIGOはまた、ADRが「ノーマーク」(mycophenolate mofetil、valproic acid、clarithomycin、ethynylestradiol、levonorgestrel、desogestrelなど)であった薬剤に対しても報告されていた。免疫抑制剤かカルシウムチャンネル阻害剤については事象発生に二つのピーク(0-3ヶ月と12ヶ月以上)が、抗けいれん剤については一つのみのピーク(12ヶ月以上)があった。
歯肉増殖はしばしば生じる非重篤な事象で、半数の症例でのみ経過良好であった。このADRはカルシウムチャンネル阻害剤、シクロスポリン、フェニトインについては「既知の事象」であるが、他の免疫抑制剤、抗けいれん剤、抗生剤、口腔避妊薬などについても生じていた。
(私の感想など:各薬剤服用患者での歯肉増殖発生率は、フェニトインで40%、ニフェジピン6~85%、シクロスポリン30%(報告に幅があり7~70%)などが報告されている。本論文では副作用として報告されている症例をもとにデータを収集している。新薬で重篤症例やノーマーク症例は、報告として取り上げられる機会が多くなる。逆に、重篤でない歯肉増殖症例は報告があがってこないような潜在的な症例が多いと考えられる。症例報告数は、概ね各薬剤での歯肉増殖発生率x利用頻度(服用患者数、服用期間が影響する)に比例するであろうから、歯肉増殖が報告された薬剤で最も多かったカルシウムチャンネル阻害剤はそれだけこの薬剤が多く利用されていることを意味するのかもしれない。
DIGO症例は男性で(58.5%)あるいは40才以上で(71.4%)多かった。カルシウムチェンネル阻害剤やシクロスポリンは女性よりも男性で歯肉増殖が生じやすいという報告があるようで、今回の結果はこのことを反映していたようだ。
歯肉増殖との関連が疑われた薬剤を抜粋して列挙する。
カルシウムチャンネル阻害剤(nifediine、diltiazem、nicardipine、amlodipine、verapamilなど)、免疫抑制剤(cyclosporine、mycophenolate mefetil、sirolimus、tacrolimusなど)、抗けいれん剤(phenytoin、phenobarbital、gabapentinなど)
その他(prednisone、prednisolone、valsartan、atenolol、lysine acetylsalicylateなど))
薬剤副作用、抗けいれん薬、カルシウムチャンネル阻害剤、薬、歯肉増殖、免疫抑制剤
(平成24年5月29日)


No.117
Control of periodontal infections: A randomized controlled trial I. The primary outcome attachment gain and pocket depth reduction at treated sites.
Goodson JM, Haffajee AD, Socransky SS, Kent R, Teles R, Hasturk H, Bogren A, Van Dyke T, Wennstrom J, Lindhe J.
J Clin Periodontol. 2012 Jun;39(6):526-36.


本研究の目的は、全身的抗生剤投与、局所抗生剤治療、と/あるいは歯周外科と組み合わせておこなう、スケーリングルートプレーニングの治療成績を比較検討することである。
187人の被験者が、2x2x2要因配置分析を用いたランダム化コントロール臨床試験にて、SRP単独、SRPに加えて1、2あるいは3種類の付加的治療をおこなった8群に割り当てられ、24ヵ月間モニタリングされた。全身的アモキシシリン+メトロニダゾール(SMA)、局所テトラサイクリンデリバリ(LTC)と歯周外科(SURG)が付加的治療として評価された。臨床的アタッチメントレベル(CAL)とプロービングポケット深さ(PPD)がメイン効果のANCOVAにより統計学的に評価された。
SRPに対する付加的治療の効果は3ヶ月時点で最小であった。3から6ヶ月の間では、特に歯周外科処置を受けた患者でPPD減少がみられた6ヶ月時点では、CAL獲得とPPD減少の両方が、すべての群で平衡に達し、24ヶ月まで維持された。24ヵ月後のCAL獲得がSMA(0.50mm)で改善しており、PPDはSMA(0.51mm)とSURG(0.36mm)において減少がみられた。喫煙はCAL獲得とPPD減少を損なわせた。
付加的治療を受けた患者は、SRP単独の成績と比較すると概して良好なCAL獲得と、あるいはPPD減少結果を示した。種々の付加的治療には加算的な効果のみで、相乗的な効果はみられなかった。
(私の感想など:SRPに加えておこなう種々の付加的治療を比較した研究だ。どれがいいんだろう、素朴に知りたいね。
しかし、これが飛び抜けて良い、という劇的な結果ではなかったようだ。PPDでみると、外科的処置は有効なようだ。また6ヶ月後では外科+全身的な抗生剤投与でCAL改善が良好だったという(12ヶ月後ではPgもAaも検出されていない)。しかし、他の報告で、抗生剤使用効果の優位性は5年と持たなかったということで、果たして効果持続が長期に渡るかどうかには疑問符がつくようだ。
その一方で、局所的な抗生剤投与は付加的な効果がないという判断だ。
いずれの方法を併用しようともあるいはSRP単独でも3ヶ月後にはCALおよびPPDの改善が著しい(逆に言うと、SRP単独を上回る併用療法の効果はあるけれどもSRP単独効果幅の方がインパクトが強い)。その後の効果は付加処置の種類によって、多少差はあるのだが、改善したCALやPPDはSPTによって良好に維持されていた。こんな結果をみると、SRPをおこなえば、併用療法の種類にこだわらなくても治療効果は良好で、さらにそれを維持するSPTが重要であると、感じる。この論文はパートIと銘打っているので、調べる内容が変わって続報がでるのであろう。)
抗生物質、歯周病、歯周外科、ランダム化コントロール試験
(平成24年5月26日)


No.116
Systemic antibiotics and debridement of peri-implant mucositis. A randomized clinical trial.
Hallstrom H, Persson GR, Lindgren S, Olofsson M, Renvert S.
J Clin Periodontol. 2012 Jun;39(6):574-81.


このランダム化コントロール試験は、インプラント周囲粘膜炎の全身的抗生物質投与を受けるあるいは受けないでおこなった非外科的治療を比較した。
48人の被験者がアジスロマイシン(4日間)服用あるいは服用せずに非外科的なデブライドメント処置を受け、6ヶ月間フォローされた。細菌学的な解析のために、チェカーボードDNA-DNAハブリダイゼーション法が用いられた。
フォロー期間中に抗生物質服用のために5人が除外された。ベースライン時、1および3ヶ月後にどの群にも差はみられなかった。6ヶ月後プロービングポケット深さ(PPD)に統計学的な有意差はみられなかった(Mean diff PPD: 0.5 mm, SE: ±0.4 mm, 95% CI: -0.2, 1.3, p= 0.16)。平均%インプラント出血はベースライン時と6ヶ月時点を比較すると、それぞれテスト群で82.6%から27.3% に、コントロール群で80.0%から47.5%に減少していた(p<0.02)。
研究群間でいかなる有意差もみられなかった。6ヶ月後にみられた臨床的な改善は口腔清掃の改善に起因するようだ。本研究は、インプラント粘膜炎の治療に抗生剤を使用する、というエビデンスを提供できなかった。
(私の感想など:インプラント周囲のデブライドメントに加えて、アジスロマイシンという組織移行性が高くかつ長期間有効濃度が保たれる抗生剤の全身的投与を併用したときに、デブライドメント単独より効果があるか、を検討した臨床研究。結果は否。ベースラインと6ヶ月後間のBOP変化は、コントロール群に比較してテスト群で有意な減少が見られているが、これは6ヶ月後の細菌学的検索結果に差がないので抗生剤使用の効果ではなかろうという考察。じゃあ何で?に対しては、それはテスト群患者のプラークコントロールが良かったためであろう、と述べている。アジスロマイシンは何してんだ、と言いたくなる。論文最後には、粘膜炎に対する最初のデブライドメント治療に抗生剤は併用すべきではないと結論づけている。)
抗生物質、細菌学、インプラント歯周炎、インプラント周囲粘膜炎、治療
(平成24年5月22日)



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