メニュー

難しくてもちょっと知りたい最新の歯周病治療・歯周病研究 
論文紹介p052(no.221-225)

No.225
Regenerative periodontal therapy: 30 years of lessons learned and unlearned.
Susin C, Wikesjo UM.
Periodontol 2000. 2013 Jun;62(1):232-42..

このレビューで、我々は歯周組織再生に対する戦略の発展において過去30年間に生じた進歩と後退について熟考する。自己省察を追求するにあたって、失われた歯根膜組織の再構築探究について、我々を導いてくれるべき教訓を再探訪することに焦点をあてた。過去のものとなる信念と伝統も検討した結果、この分野を進展させるのに貢献できた。患者と最終的には社会の利益となる新しい治療法を発展させる手助けとなるべく、この習得すべき/修正すべき知識の大部分が中心原理となっている。。
(何とも抽象的だね。歯周組織には強い本質的な再生能力があるということで、まとめを列挙する。
・長い上皮性の付着は避けられない事象ではない。つまり原因ではなく治癒がうまく生
じなかった結果である。
・歯周組織の再生のためには、スペース供給、治癒の安定化と一次治癒が必要だが、それだけでは十分ではない。
・歯周組織の再生は数週間以内に生じるが、組織の成熟完成にはもっと時間が必要だ。・歯周組織の治癒修飾戦略は創傷治癒の早い時期をターゲットにすべきだ。
・組織の閉塞遮断は付加的に歯周組織再生を促進するが、また治癒失敗の可能性も増加させる。(GTRのこと、メンブレン露出などをさす)
・骨バイオマテリアル自体は歯周組織の再生に必要な環境を提供しないように思われる。(骨誘導能がないため)
・骨バイオマテリアルとデバイスは局所の制限因子を克服するために用いられるが、一方で創傷治癒を損なわせる可能性もある。
・生物学的因子は新規再生テクノロジーの重要な要素になるので、歯周組織の創傷治癒再生を阻害する局所/全身因子を、またバイオマテリアルやデバイスの不都合な影響を緩和するのに魅力的なものに思える。
・歯周組織の創傷治癒/再生にとっても理想的な構成物は、局所適応に際して取り扱いが容易で、成形性、スペース供給性、生体適合性、生体生着性、多孔性および生分解性基質などの諸性質を有する生物製剤である。)
(平成25年6月2日)


No.224
Risk factors for periodontal disease.
Genco RJ, Borgnakke WS.
Periodontol 2000. 2013 Jun;62(1):59-94.

リスク因子は、歯周組織の感染に対する個々人の反応において重要な役割を果たしている。これらリスク因子を同定すれば、歯周病のコントロールに重要なリスク因子の修飾が可能で、対象患者にとっては予防と治療の助けとなる。歯周病罹患率のとらえ方、科学的方法論の進歩、過去数十年の統計解析における変化は、歯周疾患に対する幾つかの主要なリスク因子の同定を可能にしてきた。我々がとらえた最初の変化は、歯周疾患が普遍的なものではなく、異常な感受性を示す成人のある集団においてのみ幾つかのタイプがみられる、という理解であった。リスク因子の解析と交絡因子の影響を排除するための統計学的な補正と集団の層別化が可能になったことで、独立したリスク因子同定がなされるようになった。これらの独立した、修飾可能な歯周疾患に対するリスク因子は喫煙やアルコール消費などの生活習慣因子も含まれる。それらには糖尿病、肥満、メタボリックシンドローム、骨粗鬆症、低カルシウムおよびビタミンD食などの病的および不健康状態を含む。これらのリスク因子は修正可能で、その管理は多くの歯周病患者の最新ケアの重要なポイントである。侵襲性歯周炎における遺伝的要因の役割は明白である。しかしながら、遺伝的因子(すなわち特異的遺伝子)は慢性成人性歯周炎との関連が強く示唆されるのだけれども、一般的な集団にとっての明確なエビデンスは未だみられていない。そのような遺伝的な因子は、病気の進行に高い感受性のある患者を同定することに効果を発揮するので、慢性歯周炎と関連したそのような因子を同定する努力を遂行することは重要である。喫煙、糖尿病と肥満、閉経後の骨粗鬆症などの、歯周病に対する全身的リスク因子の多くは比較的ありふれており、クリニックや歯科でみられる歯周病患者のほとんどに影響を及ぼしていると予想される。それゆえリスク因子の同定と管理は歯周病患者に対するケアの重要な要因となる。
(歯周病の進行にはバイオフィルム、ことに歯周病原性菌を伴う歯肉縁下領域の増殖が必要であるが、それだけでは不十分である。リスク因子が疾患に対する個人の感受性や抵抗性を変化させているからである。このリスク因子には全身的なものと局所的なものがあり、前者には性、喫煙、アルコール、コントロールされていない糖尿病、肥満、メタボリック症候群、骨粗鬆症、カルシウムおよびビタミンD欠乏食、ストレスと不適切な対応、遺伝的因子などがありこれらは対応可能な全身的因子だが、人種や遺伝的な因子には対応が極めて困難である。
さてあまり取り上げられることのなかったリスク因子、ストレスについて少しみてみよう。金融破綻や配偶者の喪失などが歯周病の重症度と関連があるという。そしてダメージに対する対応が適切な場合にはその関連性が低くなるという。
心理的なストレスは健康的で無い行動を取りやすくなるだけでなく、生体の免疫反応にも影響を与えるという。ストレスにさらされると、ノルアドレナリンが放出され、これが免疫系を抑制する。そしてこのことが歯周組織破壊を亢進するという事などが書かれている。)
(平成25年5月27日)


No.223
Surgical and nonsurgical periodontal therapy. Learned and unlearned concepts.
Heitz-Mayfield LJ, Lang NP.
Periodontol 2000. 2013 Jun;62(1):218-31.

このレビューの目的は非外科的および外科的歯周治療に関連したコンセプトに焦点を当てることだ。このことは過去数十年に渡って学んだことあるいは過去のものとなったことがある。。歯肉掻爬術や汚染した根面セメント質の徹底的な除去などの多くの治療法は忘れ去られつつある。テクノロジーの進歩により電動インスツルメント、レーザー、抗菌力学療法、局所抗菌デリバリーシステムを含む非外科的歯周治療など幅広い新しい方法が導入されてきた。しかしこれらの方法が手用インスツルメントを用いた非外科的なデブライドメント以上に有意な優位さを提供することは示されていない。そのために、デブライドメントの方法は術者や患者の選択に大きく依存している。特殊な全身的抗菌剤が進行した疾患患者における非外科的な付加的治療として用いられることが望ましいかも知れない、と最近のエビデンスは示している。フルマウスディスインフェクション法は関連した治療オプションになっている。我々は非外科的処置と外科的処置が同様の長期間の治療予後成績となる一方で、外科的治療は当初の深いポケットに対しプロービング深さの減少と臨床的アタッチメント獲得を大きくもたらすことを学んだ。変わらないのは徹底的な機械的デブライドメントと適切なプラークコントロールが非外科的および外科的歯周治療の成功に重
要ということだ。
(色々たくさん書かれているが、わかりやすいところをひとつ書き抜く。2.9mm以下にSRPをおこなうとアタッチメントロスの可能性があり、それ以上ではアタッチメントゲインを得られる可能性がある。ウイドマン改良法による歯周外科ではアタッメントロスと獲得の境界ポイントは4.2mmだった。さらに5.4mmを上回れば、その優位性は外科的治療>非外科的治療となり、5.4mmを下回れば外科的治療<非外科的治療となる。もちろんこれは平均値での話。
我々が学んだことがまとめられている。
・歯周バイオフィルムの徹底的な破壊と除去が良好な治療成績に必要と思われる一方、根表面の除去は不必要である。
・進行した歯周炎あるいは侵襲性歯周炎で深いポケット患者に特殊な全身的抗菌剤の使用は非外科的治療の付加的治療として有益で、それゆえさらなる治療の必要性を減少させる可能性がある。
・フルマウスディスインフェクションとフルマウススケーリング/ルートプレーニングプロトコールは従来型の四分の一顎単位のデブライドメントに匹敵する治療オプションになりうる。
・定期的なサポーティブペリオドンタルセラピーと適切な口腔清掃指導を受けるならば、深いポケット(>6mm)を有する患者に対するアクセスフラップ手術は有益である。
・新しいテクノロジーとコンセプトの価値はその方法の導入後しばらくは判定されないだろう。適切な評価には十分なサンプルサイズで良好に管理された研究で適切なフォローが必要だ。
・システマティックレビュープロセスを用いて、文献のバイアスのない、明白な評価が我々のパラダイムを変えうるのかもしれない。
・新しいコンセプトを習得するために時として古いコンセプトをうち捨てる覚悟が必要だ。)
(平成25年5月19日)


No.222
Periodontal self-care: evidence-based support.
Drisko CL.
Periodontol 2000. 2013 Jun;62(1):243-55.

歯周セルフケアに関するこのレビューの基本はシステマティックレビューやメタ解析の結果に基づいている。システマティックレビューから収集されたエビデンスに基づいて、システマティックレビューでクオリティ評価基準に合致した比較的少数の臨床研究について、これらレビューの著者らの大多数によるコメントが重要である。
歯間部清掃道具、つまり歯間ブラシはフロッシングあるいは歯ブラシ単独よりも歯間部プラークと歯肉炎を減ずるのにより効果的である。回転振動電動ブラシを使用することで、手用歯ブラシを上回る幾つかの付加的な恩恵が得られる。典型的な口腔清掃レジメに加えて、1種類あるいはそれ以上の化学療法薬を用いた、歯科医師や歯科衛生士によって推奨される方法が、患者のプラークや歯肉炎症レベルを減少させることがシステマティックレビューやメタ解析から示された。口腔洗浄は視認できるプラークを減少させるようには思えないが、プロービング時の出血、歯肉炎指数やプロービング深さ測定で決定される炎症を減弱させるように思えた.今日まで、セルフケアの有効性と歯周病に関して、幾つかの領域では高いクオリティのあるエビデンスが欠如している、あるいは貧弱である。低学歴、喫煙、と社会経済的状態は不利益な歯周組織健康結果と関連している。自尊心、自信、完全主義の変化は口腔健康状態や口腔健康行動と関連している。口腔清掃と関連した心理的要因をよりよく理解することで、予防と教育に関して専門スタッフがよりすぐれたプログラムをデザインできる一助となる。加えて患者の口腔清掃を向上させる戦略をさらに発展させるのに有益であろう。
(歯周病予防に対するプロフェッショナル機械的プラークコントロールの意味するところがまとめとして記述されている。
・口腔清掃指導を伴わないプロフェッショナルメカニカルプラーク除去はほとんど価値が無い。
・頻度高くプロフェッショナル機械的プラーク除去をおこなうことで、より良好な歯周組織の健康を得ることができるが、その適切な頻度に関して研究解析から収集された指導手引きはほとんどみあたらない。
・プロフェッショナルプラーク除去の有無にかかわらず、口腔清掃指導を支持する軽度から中等度のエビデンスがある。
続いて手用ブラシと電動ブラシについては以下のようなコメントである。
・プラークスコアや歯肉炎スコアに統計学的に有意な小さな差異が存在するが、臨床的な意味合いについてははっきりしない。
・強力なエビデンスに基づく結論が欠如しているのだが、プラーク除去および歯肉炎消退に関して電動ブラシは手用ブラシと少なくとも同程度には効果的で回転振動タイプの電動ブラシは他のタイプよりもわずかに有利なようだ。
歯間部清掃で歯ブラシ単独やフロスに比較して、歯ブラシと歯間ブラシ使用についても書かれている。
・歯間ブラシは歯ブラシ単独によるブラッシングよりも優れてプラ-ク除去しうる。
・歯間ブラシはデンタルフロスやウッドスティックよりも優れてプラークを除去しうる。)
(平成25年5月11日)


No.221
Effect of pregnancy on gingival inflammation in systemically healthy women: a systematic review.
Figuero E, Carrillo-de-Albornoz A, Mart n C, Tob as A, Herrera D.
J Clin Periodontol. 2013 May;40(5):457-73.

この研究の目的は妊娠と歯肉の炎症との関連について総括的で定量的な評価を得ることである。
MedlineとEMBASEデータベースが2011年8月まで検索された。歯肉炎症におよぼす妊娠の影響を、歯肉指数(GI)と、あるいはプロービング時の出血で評価した前向きコホートあるいは横断的な研究が対象となった。可能な場合にはメタ解析がおこなわれた。
33の研究(14のコホートと19の横断的研究)で代表される44論文が対象となった。可能な場合におこなわれたメタ解析は以下の事を示した。(1)妊娠初期ののGIは妊娠中期後期の妊婦と比較して有意に低い値を示した。(2)コホート研究を検討したところ、妊娠中期[WMD=0.143; 95% CI (0.031;0.255); p=0.012]や後期[WMD=0.256; 95% CI (0.151; 0.360); p<0.001]と比較して出産後は有意に低い平均GIスコアであった。(3)妊娠してい
ない女性は妊娠中期や後期女性よりも低い平均GI値であった。プラークレベルに少し変化を認めた。
メタ解析に含まれる研究数が限定的ではあったが、このシステマティックレビューは、妊娠期間中を通じての、そしてプラークレベルの変化がなかったけれでも、妊娠と産後あるいは非妊娠間に有意なGI増加の存在を確認した。
(プロービング時の出血、歯肉炎症、歯周病、妊娠、妊娠性歯肉炎)
(妊娠性歯肉炎はあるか?妊娠時の歯肉炎と呼ぶべきである、といった議論があった。
妊娠時に生じる女性ホルモンの変化が生体の免疫系やバイオフィルムに影響を与えて、歯肉の炎症を惹起あるいは増大させているという仮説がある。今回のレビューでもこの点についての検討をおこなったが、明確な結論を導き出すことはできなかったと述べている。
中期後期をピークとして妊娠中に歯肉の炎症は増大する。プロービングポケット深さやPIは、非妊娠女性は妊娠時や出産後の女性に比べて低い傾向を示すが、妊娠時や出産後の女性のプロービングポケット深さやPIに大きな変動はなかった。細菌学的あるいは免疫学的パラメーターに関しては異なる傾向の結果が得られている。)
(平成25年5月5日)



癒しのクスリ箱、息抜きにブログをどうぞ