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難しくてもちょっと知りたい最新の歯周病治療・歯周病研究 
論文紹介p057(no.246-250)

No.250
Thermo-reversible green tea catechin gel for local application in chronic periodontitis: a 4-week clinical trial.
Chava VK, Vedula BD.
J Periodontol. 2013 Sep;84(9):1290-6.

緑茶抽出物は抗う蝕、抗炎症、抗コラーゲン溶解作用を有する、ポリフェノールを含んだ天然由来の抗菌物質を含有している。そこで、この研究では、熱可逆性の徐放性緑茶ゲルを発展させ、慢性歯周炎(CP)患者への臨床効果を検索した。
熱可逆性徐放性緑茶カテキンゲルが作成され、in vitroでの放出特性が調べられた。in vivoでは、コントロール化無作為スプリットマウス単独検査者単盲検試験がおこなわれた。1/4顎対側にプロービング深さ(PDs)が4mm以上の2部位を有する患者30人が選択された。歯肉炎指数(GI)、PD、と相対的臨床アタッチメントレベル(rCALs)の評価はベースライン時と4週間後におこなわれた。第一相歯周治療に付随してテスト部位とコントロール部位に緑茶とプラセボゲルが投与された。
平均±SDを比較すると、テスト群内でベースライン時のGI、PDとrCAL値(それぞれ1.92±0.24、4.93 ± 0.58、と9.97 ± 0.72)は4週後の値(それぞれ0.01 ± 0.04、2.87 ± 0.51、と7.87 ± 0.51)と統計学的に著しい有意な差を示した(P <0.001)。テスト群(それぞれ1.91 ± 0.20, 2.06 ± 0.07と 2.1 ± 0.21)とコントロール群間(それぞれ1.79 ± 0.05, 0.97 ± 0.02と 0.97± 0.02)の観測期間内(ベースと4週後)の測定差間には高い有意差が認められた。
熱可逆性緑茶ゲルを用いた付加的局所薬剤療法は慢性歯周炎患者における、臨床研究の4週間に歯周ポケットと炎症を減弱させることが示された。
(吸収性インプラント、慢性歯周炎、ドラッグデリバリー、ゲル、緑茶抽出AR25)
(心保護的、抗酸化、コレステロール低下作用、抗肥満、抗糖尿病、抗がん、抗炎症、抗う蝕、抗菌、抗真菌、抗ウイルスと緑茶カテキンの効用が列挙されている。これらの効果は緑茶に含まれるポリフェノールであるところの没食子酸エピガロカテキン(EGCG)によるものだと注目されているようだ。
歯周炎での活躍はと言うと、抗菌作用を有していること、局所徐放性デリバリーシステムで機械的治療と組み合わせて、歯周炎状態を改善させる報告が述べられている。EGCGがPGE2の産生に関わるリポオキシゲナーゼやシクロオキシゲナーゼの抑制を介して抗炎症的に作用しGIやrCALの減少につながり、カテキンがポケット上皮に付着して歯周病原性菌の増殖抑制に働いている可能性、P.gingivalisのシステインプロテナーゼやPrevotella intermediaのプロテインチロシンキナーゼの阻害を介してビルレンス因子を抑制することでこれがPD減少に向かっている可能性等々の考察がなされている。
今回の研究では、ドラッグデリバリーシステムで用いられている種々の担体のうちで、熱硬化性ゲルを応用している。このゲルと緑茶抽出物を組み合わせて、歯周治療に対する作用を検討した。今回の研究で用いられているポロキサマという熱可逆性物質は共重合体の中では毒性が低く、粘性と生物学的な付着性があって、ヒトの歯肉線維芽細胞の初期の付着を促進し、増殖速度を高めるなどのユニークな性質を持っているということだ。
歯周病の治療に緑茶を一杯、なんて。
(平成25年9月15日)


No.249
Boric Acid irrigation as an adjunct to mechanical periodontal therapy in patients with chronic periodontitis: a randomized clinical trial.
Salam M, Arslan U, Buket Bozkurt S, Hakki SS.
J Periodontol. 2013 Sep;84(9):1297-308.

この単盲検、無作為化コントロール臨床試験の目的は、スケーリングルートプレーニング(SRP)の付加的治療としてホウ酸洗浄が臨床的および細菌学的パラメーターに及ぼす影響を評価して、慢性歯周炎患者(CP)においてこの方法をクロルヘキシジン洗浄とSRP単独と比較する事である。
45人の全身的に健康な歯周炎患者がこの研究に参加した。彼らは3群に分けられた。1)SRP+生食洗浄(C)、2)SRP+クロルヘキシジン洗浄(CHX)、と3)SRP+ホウ酸洗浄(B)。ホウ酸の理想的な濃度を決定するための臨床前検討がおこなわれた。ベースライン時、治療1ヶ月後と3ヶ月後に、プラーク指数(PI)、歯肉炎指数(GI)、プロービング深さ(PD)、臨床的アタッチメントレベル(CAL)とプロービング時の出血(BOP)を含む臨床的な診査がおこなわれ、歯肉縁下プラークサンプルが採取された。Porphyromonas gingivalis (Pg)、Tannerella forsythia(Tf)とTreponema denticola (Td)の定量的な解析はリアルタイムPCR(PCR)を用いておこなわれた。
この研究ではホウ酸濃度は0.75%とした。いずれの群においても全ての臨床パラメーターはベースライン時に比較して全ての診査ポイントで統計学的に有意な減少を示した(P<0.001)。いずれの群においても口腔全体のPDとCAL減少は治療後の全てのポイントで同程度であった(P>0.05)。ベースライン時と1ヶ月間における中程度に深いポケット(PD>=5、<7)におけるPDとCAL減少は他の群に比較してB群でより著しい改善があった(P0.05)。深いポケット(PD>7)においてその減少はBとCHX群で同程度であった(P>0.05)。治療後最初の1ヶ月においてBOP(パーセンテージ)はCHXとC群と比較してB群で有意に低かった(P <0.001)。GIとPIスコアは治療後のいずれの時点においてもC群と比較してBおよびCHX群で有意に低い値を示した(P <0.05)。Pg、TfとTdの量は1ヶ月後いずれの治療群においても有意に減少した(P<0.05)。治療後のいずれの時点においても細菌学的パラメーターに対して群間に統計学的に有意な差はみられなかった(P >0.05)。
この研究結果からホウ酸はクロルヘキシジンにとってかわりうるかもしれず、中等度ポケットの早期PDとCAL改善とともに口腔全体のBOP改善にホウ酸が優れているという理由から、ホウ酸がより有益であることが示唆された。
(抗感染試薬、ホウ酸、クロルヘキシジン、慢性歯周炎、ルートプレーニング)
(ホウ酸は眼科領域で殺菌洗浄に2%ホウ酸が用いられている。そして殺虫剤にも用いられていることもご承知だろう。今回はin vitroの予備実験で6、3、1.5%では細胞毒性が認められたために0.75%を臨床に応用している。
種々の臨床的な有効性はどんなメカニズムなのか。ホウ酸がグルタチオンなどの抗酸化物質を上昇させることで、酸化ダメージを抑制することが知られている。この抗酸化作用の関与を一つ指摘している。組織障害に関わるセリンプロテアーゼをホウ素が阻害するために、この作用の関与を次に指摘している。またホウ素が炎症あるいは免疫反応に対する制御作用を持つ可能性についても述べている。
ホウ酸が歯周病原性菌に対して抗菌的に働く報告があることを示しつつも、今回の歯肉縁下サンプルを対象とした検索では、少なくとも調べた細菌種に対する抗菌的な結果は認められていない。歯周病原性細菌の抑制効果が臨床上ないのかどうかは今回の検索だけでは不明である。
クロルヘキシジンにとって変わる口腔内洗浄薬剤として、今後投与方法を検討する価値があろうというアピールがなされている。ちなみに全身的あるいは局所的有害事象はなかった、ということだ。)
(平成25年9月8日)


No.248
Tooth loss and periodontitis in older individuals: results from the Swedish national study on aging and care.
Renvert S, Persson RE, Persson GR.
J Periodontol. 2013 Aug;84(8):1134-44.

高齢者の増加に伴い、高齢者集団を対象とした研究の必要性が生じている。この研究の目的は歯科保険の利用できる60から95才の人を対象に口腔および全身的状態を評価することである。
プロービング深さ(PDs)、歯の喪失、歯槽骨レベルと全身状態が高齢者のうち代表的なコホート群で研究された。
前期高齢者(60あるいは67才)、中期高齢者(72あるいは78才)と後期高齢者(81才以上)の年齢で1,147人が募集された。今回の研究では、そのうちに無歯顎者200人が含まれていた。有歯顎者の82%が毎年のデンタルケアを受けていた。全身疾患はありふれた罹患状態であった(糖尿病5.8%、心血管疾患20.7%、肥満71.2%、C反応性蛋白上昇98.4%)。血清C反応性蛋白は歯周組織の状態と無関係であった。セメントエナメルジャンクションから5mm以上離れた骨吸収を有する部位30%以上と定義した、歯周炎の進行速度は、前期高齢者群の女性で11.2%であり、後期高齢者群の男性で44.9%であった。後期高齢者群の個人は骨吸収かつPD5mm以上のカットオフレベルで定義された歯周炎により高頻度で罹患しやすい(オッズ比: 1.8; 95%信頼区間: 1.2 to 2.5; P <0.01)。後期高齢者群の7%では20本以上歯が残存し、歯周炎もみられなかった。全身疾患、歯科受診、あるいは喫煙は歯周炎罹患の理由にはならず、年齢と性別が歯周炎罹患の関連性を説明できる事項であった。
歯周炎の罹患率は年齢とともに増加した。性別は高齢者における歯周炎の主要な説明的な因子である。頻度高く歯科受診しても、結局高齢者集団の口腔内は不健康である。(疾患、疫学、老年医学、歯周炎、罹患率)
(歯周炎の定義って難しい。この研究ではいくつか基準を設けている。PD5mm以上を有する歯が2本以上、とすると前期、中期、後期高齢者の集団のうちそれぞれ(女性37.0%、男性57.0%)、(女性36.8%、男性48.7%)、(女性29.3%、男性35.9%)となり年齢がすすんでも歯周病の割合に変化はない、となる。ところが、部位30%で骨レベルが5mm以上とするとそれぞれ(女性11.2%、男性16.0%)、(女性22.5%、男性27.4%)、(女性23.9%、男性44.9%)年齢とともに歯周病患者の割合は増加する。ちなみに歯が20本以上残存する人の割合は、前期、中期、後期高齢者で、それぞれ60%以上、40数%、20%程度(グラフなので正確な数字はわからない)と年齢とともに低下している。
さて、歯周病が進行すると、抜歯の対象となる可能性が高まる。そうなると歯周病が進行した結果だとしても、それを評価しにくくなる。抜歯の理由は歯周病だけではないので、歯を抜く直前の情報がなければ、歯が無いからといってそれが歯周病の進行した結果だとは言えない。
この研究対象患者で、有歯顎者の84%は毎年歯科ケアを受けているのである。そのためにだと思うが、結論には悲しい事が書かれている。足繁く歯科にかかっても高齢者では口腔内の健康は保てない、って。高齢者の自身のプラークコントロールには限界があるのか、高齢者対応の歯科ケアが確立されていないのか、年齢がすすむと人間病気には勝てないのか。こんな結果を見て、あなたはどう思い、どんなことを考えて、どのような行動を起こそうと思うだろうか。)
(平成25年9月8日)


No.247
Periodontal disease and rheumatoid arthritis: a systematic review.
Kaur S, White S, Bartold PM.
J Dent Res. 2013 May;92(5):399-408.

このシステマティックレビューは歯周病と関節リウマチとの関連に有用なエビデンスを考慮することである。
MEDLINE/PubMed、CINAHL,DOSS、Embase、Scopus、Web of Knowledge、MedNarとProQuest Theses and Dissertationsが歯周病と関節リウマチ間の関連を調べた定量的な研究に対して、データベースの始まりから2012年6月までが検索された
。19の研究が組み入れ基準に合致した。歯の喪失、臨床的アタッチメントレベル、と赤血球沈降速度に関してこれらの状態間における関連性を支持する良好なエビデンスが見いだされた。C反応性蛋白とIL-1βに対して中等度のエビデンスが認められた。歯周治療が関節リウマチの臨床像に正の影響を示すいくつかのエビデンスが見られた。これらの結果は、共通のリスク因子や共通の病的過程が関節リウマチと歯周病間の関連の原因となっている可能性のある、臨床パラメーターに関する強いエビデンスと生物学的マーカーに基づく中等度のエビデンスを提供している。これら二つの慢性炎症性疾患間の生物学的プロセスと臨床的関係を十分に探索するために、さらなる研究が必要だ。
(炎症、慢性疾患、歯周炎、リウマチ学、生物学的マーカー、リスク因子)
(リウマチ患者の歯周組織状態が、リウマチのない患者に比べてどうか?というと、リウマチだと歯周病の罹患率が高い、という。慢性歯周炎により慢性炎症の最初の一撃”hit”があり、続いて関節リウマチを引き起こす関節炎誘発性の第二弾”hit”も加わって炎症反
応を悪化させる。これらの反応亢進が循環血液中に存在する、C反応性蛋白、サイトカイン、プロスタノイド、マトリックッスメタロプロテアーゼ、、TNFアルファなどの全身的炎症メディエーターを増加させ、結合識破壊を媒介する滑膜や歯根膜の構成細胞をさらに刺激していることが考えられる。これが一つ目の仮説。
最近の新しい仮説は、細菌の酵素によって部分的に変性された蛋白により自己免疫疾患が進展するというものである。この仮説の中心になるのは抗環状シトルリン化ペプチド抗体の出現である。P.gingivalis由来の脱イミノ化酵素が産生され、蛋白のシトルリン化と歯周組織の感染と関節リウマチの進展とを結びつける自己抗体が誘導される。でも抗-CCP抗体の上昇とと歯周病の存在との関連性は未だ明確ではない。)
(平成25年8月31日)


No.246
Clinical effects of potassium-titanyl-phosphate laser and photodynamic therapy on outcomes of treatment of chronic periodontitis: a
randomized controlled clinical trial.
Dilsiz A, Canakci V, Aydin T.

歯周治療の主な目的は感染をコントロールし、そして疾患の進行を阻止することである。最近の研究からレーザー照射や光線力学療法(PDT)のなどの付加的な治療法が慢性歯周炎(CP)の治療に幾つかの追加の恩恵を提供する可能性のあることが示されてきている。この無作為コントロール臨床研究の目的はCP治療の成績に及ぼすpotassium-titanyl-phosphate (KTP) レーザーとPDTの臨床的評価と効果を比較することである。
未治療CPの24人の患者について、四分の一顎がスケーリングルートプレーニング(SRP)単独(A群)、SRPの後PDT(B群)あるいはSRPの後にKPTレーザー(C群)にランダムに割り当てられて処置を受け、スプリットマウス研究デザインで治療された。歯周ポケットは次のようなパラメーターでKPTレーザーで暴露された。つまり0.8 W出力、50 ミリ秒入/50ミリ秒切、1照射当たり30秒、そして200μm直径でフレキシブル光ファイバー チップ11.7 J/cm(2)フルーエンスである。選択されたポケットはステントでガイドされた圧力コントロールプローベでプロービングされた。評価された臨床歯周パラメーターはプラーク指数、歯肉炎指数、プロービング時出血(BOP)、プロービング深さ(PD)、と臨床アタッチメントレベル(CAL)であり、これらはベースライン時と治療後6ヶ月に検査記録された。
全てのパラメーターにおいてベースライン時に群間に統計学的な解析においての差はみられなかった(P >0.05)。ベースライン時の値と比較して全ての治療はBOPとPD減少の有意な改善とCAL獲得を生じた(P<0.05)。加えて、C群は他の処置群と比較してより大幅なPD減少を示した (P <0.05)。
CP患者において、深い歯周ポケットの従来の歯周治療による臨床成績は付加的なKTPレーザーを用いることによって効果が高まりうる。
(慢性歯周炎、レーザー治療、レーザー、固体、歯周組織デブライドメント、光化学療法、光感受性試薬)
(歯周治療におけるPDTとKPTレーザーの付加的効果を調べているのだが、まずPDTについてはその効果が得られなかったので、あまり考察はない。そらそうだ。これまでの報告は結果が相反する程度が書かれているのみ。レーザーについて、これまでより効果が高かったことの理由についてはレーザーの条件設定差かもと述べられている。
臨床データのみなので、PDTやKPTレーザーで歯周ポケット内細菌や生体応答の変化については不明である。)
(平成25年8月21日)


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