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難しくてもちょっと知りたい最新の歯周病治療・歯周病研究 
論文紹介p074(no.331-335)

No.335
Association between periodontitis needing surgical treatment and subsequent diabetes risk: a population-based cohort study.
Lin SY1, Lin CL, Liu JH, Wang IK, Hsu WH, Chen CJ, Ting IW, Wu IT, Sung FC, Huang CC, Chang YJ.
J Periodontol. 2014 Jun;85(6):779-86.

糖尿病患者は歯周炎の高度な広がりと重症度を持つことが知られているが、背景にある関連についてはほとんど調べられていない。糖尿病に罹患していない人において、外科的処置が必要な歯周炎とその後のタイプ2糖尿病(SMT2)との関連が評価された。
これは台湾の国民皆健康システムから得られたデータを用いた後ろ向きコホート研究である。歯周炎コホートには22,299患者が含まれ、既に糖尿病である人やベースラインから1年以内に糖尿病と診断された人は除外された。各研究の参加者は歯周炎に罹患していない集団からの人と、年齢、性別、と指標年により無作為に頻度をマッチさせた。糖尿病に及ぼす歯周炎の影響を評価するために、コックスハザード比例モデルが用いられた。
平均フォロー期間は5.47 ± 3.54年であった。全体的に、歯周炎コホートにおけるDMT2の発生率はコントロールコホートよりも1.24倍高く、性、年齢、同時有病率をコントロールした後における、調整ハザード比率は1.19 (95% confidence interval = 1.10 to 1.29)であった。
歯周炎罹患のアジア人患者で糖尿病リスクを調べた最も規模の大きい国民的規模の研究である。外科的処置が必要な歯周炎患者は外科的処置を必要としない歯周炎患者と比較して2年以内に糖尿病になるリスクは増加する。
(糖尿病、歯周炎、後ろ向き研究、タイプ2)
「対象とした集団が大規模になればなるほど、個々のデータは希薄になりがちだ。歯周病に関するデータは特にそうだろう。そこで著者らが一計を案じて、歯周炎の状態を歯周外科を行う程の患者とそうでない患者に分けた。もちろんこの区分けには限界がある。例えば、歯周外科を受ける人は裕福な人である可能性が高いために、糖尿病が早期に発見されているのではないか。事実ベースライン時低収入の人は糖尿病出現に対するハザードレイシオが1.18であった。
歯周炎が何故糖尿病のリスクになるかについては、局所の炎症巣で産生されるTNFα、IL-6 やIL-1がインスリンの拮抗的な作用を持つ、グラム陰性菌が内毒素血症やさらにインスリン抵抗性を悪化させるから、などの説明がなされている。」
(平成27年1月4日)


再掲
Routine prophylaxes every 3 months improves chronic periodontitis status in type 2 diabetes.
Lopez NJ1, Quintero A, Casanova PA, Martinez B.
J Periodontol. 2014 Jul;85(7):e232-40.

歯周病と2型糖尿病(T2DM)は重要な健康問題で、デンタルケアを殆ど受けない低所得者層では特に問題がある。低所得者層を対象にしたコントロール研究で、歯周病の治療に対する低コストモデルは調べられてはいない。歯肉縁上の歯石やプラーク除去を含むデンタルプロフィラキシスは歯周炎の進行を阻止することが示されている。T2DM患者の歯周炎に及ぼすデンタルプロフィラキシスの影響を決定するために、コントロール臨床研究がおこなわれた。
T2DMと慢性歯周炎(CP)罹患患者26人とT2MDでない歯周炎罹患患者26人が選別された。プロービング深さ(PD)、プロービング時の歯肉出血(BOP)、臨床的アタッチメントレベル(CAL)とプラーク付着面がベースライン時と初期治療後3、6、と9ヵ月後に記録された。全ての被験者は口腔清掃指導とベースライン時と3ヶ月ごとにデンタルプロフィラキシスを受けた。糖化ヘモグロビン(HbA1c)レベルはT2DM患者でベースライン時と3ヵ月毎に測定された。
T2DM患者では、治療後3ヶ月で、PD、BOP、プラーク部位の有意な改善がみられた。コントロールでは平均PDがベースライン時に比較して6ヵ月後に有意な改善がみられた(p=0.001)。両群いずれにおいてもCALの有意な改善は生じなかった。両群間で歯周パラメーターに有意な差は認められず、9ヶ月の研究期間で、CPの進行はいずれの被験者にも認められなかった。デンタルプロフィラキシスはHbA1cレベルに影響せず、HbA1c濃度、術前メタボリック状態とCPの重症度との間に関連性は見られなかった。
3ヵ月ごとの定期的なroutineプロフィラキシスは、コントロール不良なそしてコントロール良好なT2DMいずれの場合にも、歯周組織の健康を有意に改善させ、CPの進行を防止した。
(慢性歯周炎、歯科衛生、デンタルポリッシング、歯科スケーリング、糖尿病、2型)
「糖尿病は歯周病を悪化させるが、糖尿病がコントロールされずに生じているハイパーグリセミアもまた歯周病のリスク因子と考えられている。逆方向的に、歯周治療は血糖レベルを下げて、血糖値コントロールによい影響を与えるとの報告がある。はたしてそうだろうか。
HbA1cレベルは過去3ヶ月の平均的な血糖値を正確に反映すると言われ、血糖コントロールの良い指標値として用いられる。
この研究では、歯周治療はHbA1cレベルを変化させることはなかった。過去の報告では影響があるとする報告もあれば影響しないとする報告もあり、またその影響力はHbA1cのコントロールの程度とは無関係のようである。
3カ月毎の口腔清掃指導、縁上のスケーリングと歯冠研磨がおこなわれると、糖尿病の有無に関わらず歯周病の進行が抑制された。
またHbA1cが7%以上の患者群と7%未満の群に分けて解析したが、両群間に歯周治療の改善程度に差はなかった。つまり歯周治療の効果は、糖尿病や血糖コントロールの良し悪しによる影響を受けないようだ。」すみません310とダブってしまいました
(平成26年12月28日)


No.334
Newly identified pathogens associated with periodontitis: a systematic review.
Perez-Chaparro PJ1, Goncalves C1, Figueiredo LC1, Faveri M1, Lobao E, Tamashiro N, Duarte P, Feres M.
J Dent Res. 2014 Sep;93(9):846-58.

歯周病の発症と進行における、幾つかの種類の口腔細菌の役割を支持する多大なエビデンスがある。
そうは言うものの、一昔前に紹介された独立した培養診断法の結果は新規歯周病原菌の存在を指摘してきた。しかしながらこれらの研究のデータは全てが評価されたわけではない。歯周病の病因におけるこれらの細菌の実際の役割について、いくつかの誤解を生じたかも知れない。このシステマティックレビューの目的は”関連性”研究の結果に基づいて、新規に同定された歯周病原菌に対するエビデンスの現在の重要度を決定することである。このレビューはPRISMA 声明に従っておこなわれて報告された。MEDLINE, EMBASEとCochraneデータベースが、(1)被験者から採取された歯肉縁下プラークサンプルの細菌学的なデータを歯周炎と歯周組織の健康と比較する研究と(2)すでに知られた歯周病原体以外の少なくとも1種類の細菌を評価している研究に対して、2013年の9月まで検索をおこなった。同定した1,450論文から、41研究が適格とされた。データが抽出され、事前の試験的な形式に登録された。
結果はBacteroidetes、Candidatus Saccharibacteria、 Firmicutes、Proteobacteria, Spirochaetesと Synergistetes門から17種類あるいは系統型の関連を支持する文献に中等度のエビデンスのあることが示唆された。Candidatus Saccharibacteria門とArchaea ドメインも歯周病と関連があるように思える。これらのデータは歯周病の病因に過去に同定されていない種の重要さを指摘するもので、この感染の発症と進行に疑いのあるこれら新規病原体による実際の役割が、将来の研究対象となる可能性がある。
(Archaea、細菌、デンタルプラーク、細菌学、歯周病、DNA)
「あまり見たことがないレビューですね。
健康な歯周組織と関連する細菌種としてyellow(Streptococcus species)と purple (Veillonela parvulaとActinomyces odontolyticus)complexesがあり、歯周病と関連する細菌としてはred (Porphyromonas gingivalis、 Treponema denticola, Tannerella forsythia)と orange complexes (Fusobacterium、 PrevotellaとCampylobacter species)がある。
そして、”関連性”研究と”排除”研究からred complexの3菌種とPrevotella intermedia, Parvimonas micra、Fusobacterium nucleatum、 Eubacterium nodatumと Aggregatibacter actinomycetemcomitansなどのorange complexの幾つかの菌種が歯周病と関わりのあることが確証されている。
さて、ここであげられた17分類群のうち4菌種は未培養で13種はこれまでに培養されている。培養可能な菌のうち5つはグラム陽性で(Eubacterium saphenum、Mogibacterium timidum、 Peptostreptococcus stomatis、 Filifactor alocis and Enterococcus faecalis)であり、他の8種(Bacteroidales [G-2] sp. oral taxon274、Porphyromonas endodontalis、Treponema lecithinolyticum、Treponema medium、Treponema vincentii、Anaeroglobus geminatus?Megasphaera oral clone BB166として知られる、Selenomonas sputigena、Fretibacterium fastidiuosum) はグラム陰性の嫌気性菌である。
また、新しい歯周病原菌候補のうちの5つはBacteroidetes and Spirochaetes門(これらには既に知られる歯周病原菌:P. gingivalis, T. forsythia, T.denticola、T. socranskiiとPrevotella属が含まれる)に属した。
7種はFirmicutes門であり、他の5つは、Proteobacteria, SynergistetesとCandidatus Saccharibacteria門内に分布していた。
ある菌が健康な歯周組織より疾患部位で高いレベルで認められる、だけではその菌が歯周病の発症や進展に関わりを持っているかどうか十分ではない。病気が発症して炎症が生じると、そのような環境で生息しやすい細菌が増加するであろう。つまり病気の発症とは関係なく、歯周病に罹患した部位で増加する菌も存在することが考えられる。あるいは生体の反応を免れることのできる”keystone pathogen”が細菌のコミュニティーのバランスを失調させて、それによって生じる菌叢の撹乱が歯周組織の破壊を引き起こして持続させているという仮説も紹介されている。
将来的には、ここにあげたような菌種が新たに見いだされた歯周病原菌として、教科書に載ることになるのであろうか。」
(平成26年12月25日)


No.333
Periodontal effects of 0.25% sodium hypochlorite twice-weekly oral rinse. A pilot study.
Galvan M1, Gonzalez S, Cohen CL, Alonaizan FA, Chen CT, Rich SK, Slots J.
J Periodontal Res. 2014 Dec;49(6):696-702.

この研究は最小限の歯周治療をおこなった患者において、プラークと歯肉炎に対する1週間に二度の0.25%次亜塩素酸ナトリウム口腔内洗口の影響を評価することである。
この研究は歯周炎患者30人を含み、3ヶ月継続して、無作為、コントロール、単盲検の並行群間臨床研究としておこなわれた。15人の患者が調整した0.25%次亜塩素酸ナトリウム(テスト)15mlで30秒間洗口し、15人は水(コントロール)で洗口した。Clorox(R) 標準漂白剤が次亜塩素酸ナトリウムの原料であった。ベースライン時と2週後に、対象となった患者は0.25%次亜塩素酸ナトリウムか水で5分間プロフェッショナルな歯肉縁下洗浄を受けたが、歯肉縁下あるいは縁上のスケーリングはされなかった。頬側面と舌側面の歯肉縁上プラークの有無は視診にて確認された。おのおのの歯はエアーにて乾燥され、光反射を利用して歯の表面や隅角のプラークを同定するために、口腔ミラーが用いられた。全顎のポケット深さのプロービング後に、30秒以内の歯肉出血が各歯6部位で評価された。有害事象は質問票と視診で評価された。
この研究に参加した30人全員がこの研究のベースラインと2週後を全うし、12人の参加者が3ヶ月後までを全うした。次亜塩素酸ナトリウム洗口群と水洗口群は、ベースライン時から3ヶ月後にそれぞれ、プラーク付着のない頬側面が94と29%(3.2倍の差)、プラーク付着のない舌側面が195%と30%(6.5倍の差)とプロービング時に出血のない歯の数が421%と29%(14.5倍の差)に増加した。次亜塩素酸ナトリウム洗口群と水による洗口群との間にみられた臨床的な改善の差は統計学的に有意であった。漂白剤の味についてのマイナーな訴えを除くと、研究参加患者にいかなる有害事象も確認されなかった。
0.25%次亜塩素酸による週に二回の口腔洗口はデンタルプラークレベルとプロービング時の出血の著しい減少を生じさせ、期待できるような歯周病管理のための新しい方法となるかもしれない。
(デンタルプラーク、歯肉出血、家庭用漂白剤、洗口、歯周治療、次亜塩素酸ナトリウム)
「次亜塩素酸ナトリウム洗口の効果に関しては、0.05%で1日2回洗口の効果が報告されている。それによるとプラークスコアー、歯肉炎指数とBOP部位がそれぞれ48%、52%と39%減少したという。今回は濃度を5倍に上げる代わりに、週二回(水曜日と日曜日、原液6%を用時に24倍希釈して15mlを30秒間洗口)と洗口回数を減らした実験デザインとした。
洗口液が歯周ポケット内浸透できる深さは0.1-0.2mmと報告されている。しかし、縁上のプラークコントロールは5mmまでの縁下ポケット細菌叢に影響することが知られている。また今回は最初の診察時に次亜塩素酸ナトリウムで歯肉縁下の洗浄(歯周病原細菌の活動をサポートする、ヘルペスウイルスは次亜塩素酸ナトリウムに高い感受性を有する)を行っている。これらのことが影響して臨床的な著しい改善につながったのではないかと述べられている。
今回BOP部位の減少は確認されたが、歯周ポケットの深さに関しては、統計学的に有意な差のある減少は認められていない。
今回使用された洗口剤の元はといえば、Cloroxという漂白剤である。webページをみればわかるが、トイレ、バス、流し、タイルなどでお使いください、とある。」
(平成26年12月18日)


No.332
An evidenced-based scoring index to determine the periodontal prognosis on molars.
Miller PD Jr1, McEntire ML, Marlow NM, Gellin RG.
J Periodontol. 2014 Feb;85(2):214-25.

この研究は6つの予知因子を評価してスコアを割り当て、臼歯の歯周組織予後を決定するために定量的スコアリング指数を導き出した。
中等度から重度歯周炎患者102名の臼歯816本についてデータが集められた。評価された6つの要素(年齢、プロービング深さ、動揺度、分岐部病変、喫煙と臼歯のタイプ)が統計解析に基づいて数値スコアを割り当てられた。すべての要素に対するスコアの合計がおのおのの臼歯に対する予後を決定するために用いられた。この研究では、最初の診査時に全ての第一および第二臼歯が存在する患者のみに限定された。全ての患者は治療後最低15年は評価された。
治療後の期間は15年から40年で、平均24年であった。研究が終了したとき、639本の臼歯が残存し(78%)、その残存した臼歯のうち588本は歯周組織が健康な状態であった(92%)。低スコア(スコア1-3の)臼歯においては、15年の残存割合は98から96%であった。中等度スコア(スコア4-6)の臼歯においては、15年残存割合は95-90%であり、高いスコア(スコア7-10)の臼歯では残存割合が86から67%であった。
この結果は中等度から重度歯周炎と診断された臼歯の歯周組織の予後はエビデンスを基にしたスコアリング指数を用いて計算されうることが示された。
(長期ケア、歯周炎、予後、喫煙、歯の動揺)
「6つの評価項目のスコアリングは
年齢:<40歳は0、40歳>=は1
プロービング深さ:<5mmは0,5から7mmが1、8から10mmが2、>10は3
動揺度:動揺なしは0、クラスIが1、クラスII は2、クラスIIIが3
分岐部病変:病変なしは0、1カ所は1、2カ所は2,3カ所かthrough and throughが3
喫煙:非喫煙者は0,喫煙者4
臼歯のタイプ:下顎の第一あるいは第二は0、上顎の第一は1、上顎の第二が2
の評価値を割り当て、それぞれの歯に対するこれらの評価値の合計をMiller-McEntire のスコアとしている。
これらの項目のうち年齢と臼歯のタイプは、術者も患者も変えることのできない不可抗力の評価項目だ。
喫煙は歯周ポケット、動揺度、分岐部病変をはるかに凌駕する、最も負の影響力が大きい。逆に臼歯のタイプは影響力が少なく、年齢の影響が最もすくないようだ。」
(平成26年12月13日)


No.331
Comparing clinical attachment level and pocket depth for predicting periodontal disease progression in healthy sites of patients with chronic periodontitis using multi-state Markov models.
Mdala I1, Olsen I, Haffajee AD, Socransky SS, Thoresen M, de Blasio BF.
J Clin Periodontol. 2014 Sep;41(9):837-45.

この研究の目的は慢性歯周炎患者における健康部位の変化を理解することと、疾患の進行と関連する因子を同定することである。
163人のアメリカ人およびスウェーデン人から健康部位に関するデータが、プロービング時の出血(BOP )と臨床的アタッチメントレベル(CAL )+BOPあるいはポケット深さ(PD )+BOPを基に、2-3-状態(健康、歯肉炎、慢性歯周炎)マルコフモデルを用いて解析された。
2年間で、 健康部位の10% (CAL + BOP)と3% (PD + BOP)が慢性歯周炎に進行した。概して、健康な部位は両モデルとも変化する前に32ヶ月間健康な状態のままであった。健康な状態からの変化のほとんど (87-97%) は歯肉炎状態への推移であった。歯肉炎病変の予期される存続期間は4-5ヶ月で、それらの部位は高い確率で (96-98%)回復した。ベースライン時CAL/PD>4mm部位数で測定された疾患の重症度と喫煙は、健康な部位から6ヶ月以内に慢性の歯周炎へと急速に移行する変化と関連があり、歯肉の発赤はPD+BOPモデルにおいてのみ関連していた。年齢とともに、疾患の歯肉炎への進行割合は減少した。
歯肉炎と歯周炎に対する移行の可能性はPD+BOPを用いるよりもCAL+BOPを用いた方が高かった。喫煙と疾患の重症度は早い進行の有意な予知因子であった。
(抗生剤、慢性歯周炎、多段階マルコフモデル、歯周治療)
「歯周病の進行を予測することができれば、歯周病予防に役立つであろう。そのために歯周病のリスク因子の解析が盛んに行われ、オッズ比や相対比などの統計学的な手法が用いられてきた。この研究ではそれを、マルコフモデルを用いて解析しようという試みである。マルコフモデルってなんだろう。イントロから学んでみよう。マルコフモデルの仮定は、被験者の健康状態が限定した幾つかの状態(例えば、健康歯肉、歯肉炎、歯周炎)のうちの一つにあると仮定して、被験者がその状態間を移動していく様子をシュミレーションすることで、その有病率などを求める解析法のようだ。
これまでの解析では歯周病の悪化進行という点にのみ注目してきたが、マルコフモデルでは疾患を進行と改善という両方向性に考慮しているところがより優れた解析法というわけだ。そして、歯周病には”burst theory”と呼ばれる、病気の突発的な急速進行とその後に寛解があるので、ますますこのマルコフモデルの概念がぴったり、ということになる。
CAL+BOPを指標に3状態(健康、歯肉炎、慢性歯周炎)を定義した方が、PD+BOPを用いるよりも高い確率で歯周病進行を予知した。これはCALの方が歯周病の有病率を過大評価し、PDの方は逆に過小評価しているからである。というのもアタッチメントレベルは過去の組織破壊の蓄積を含めた評価であるので、歯肉に炎症がなくてもアタッチェメントロスは生じる。一方PDは歯肉退縮が生じれば減少するし、どちらかというと現在の病状を表す指標だ(歯肉の腫脹があれば高くなる)。というわけで歯肉の発赤はPS+BOPモデルのみで有意差がでたのであろう。
過去の報告と一致して、最初のポケットが深いと早い歯周病進行の予知因子だという。歯周ポケットが深いとどうしようもない、ということか。
喫煙と年齢は、疾患の進行を促進するというより、治癒過程の抑制ということが考察で述べられてる。
男性は健康歯肉から歯肉炎への移行と関連があったが、早い歯周炎進行とは関連がなかった。男性の方が歯周病有病率や疾患に対するリスクが高いのだが、侵襲的な歯周炎とは関連がないとのレビューがあり、この点は今回の結果と合致するところだった。」
(平成26年12月7日)


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