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難しくてもちょっと知りたい最新の歯周病治療・歯周病研究 
論文紹介p085(no.386-390)

No.390
The association between chronic periodontitis and vasculogenic erectile dysfunction: a systematic review and meta-analysis.
Wang Q, Kang J, Cai X, Wu Y, Zhao L.
J Clin Periodontol. 2016 Mar;43(3):206-15.

このシステマティックレビューおよびメタ解析の目的は、観察研究による勃起障害(ED)と慢性歯周炎(CP)との関連を検索することである。2015年5月22日を含むこの日までのPubMed、EMBASEとCochraneの文献検索が二人の独立したレビューヤーによっておこなわれた。統計学的な解析はReview Manager 5.3を用いておこなわれ、結果は変量効果モデルを用いて決定された 95%信頼区間(CIs)を伴うオッズ比(ORs)で表現された。サブグループ解析は年齢によっておこなわれた。可能性のある250の適格基準論文のうち、38,111 症例と174,807のコントロールを含む4研究が取り上げられた。変量効果メタ解析に基づくと、CPとED間には有意な関連が見られた(OR = 3.07, 95% CI: 1.87-5.05, p < 0.001)。統計学的に過度の多様性が存在したために感度分析がおこなわれた(I(2) = 98%) 。
このシステマチックレビューの結果はCPとED間に正の関連があることを示した。しかし、統計学的な多様性の存在と大きさが、我々の所見の結論を限定的なものとしたために、CPとED間の関連を裏付け、関与する生物学的なメカニズムを検索するために、病態生理学的研究と同様に大規模でよりコントロールされた、社会的に均一な集団の研究が必要である。
(慢性歯周炎、内皮細胞機能不全、勃起障害、メタ解析、システマティックレビュー)
「EDの人はそうでない人に比べてCPの有病率が高い。EDの重症度と骨吸収の程度とも関連が認められるとの報告があったり、また歯周治療によりCPとED間の関連が弱まることから、両者には関連があるとされる。では、その関連に生物学的なメカニズムは存在するのか?CPとEDの病態生理学的な関連を説明するとされている仮説の1つは血管内皮細胞の機能不全である。」
(平成28年7月4日)


No.389
Bleeding on probing as it relates to smoking status in patients enrolled in supportive periodontal therapy for at least 5 years.
Ramseier CA, Mirra D, Schutz C, Sculean A, Lang NP, Walter C, Salvi GE.
J Clin Periodontol. 2015 Feb;42(2):150-9.

サポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)に参加している患者の喫煙状態とプロービング時の出血(BOP)の平均割合との関連を調べることが本研究の目的である。
1985-2011年スイス国ベルン歯科衛生学校(MSDH)にて歯科衛生治療を受けた患者を対象に、歯周病の重症度と進行(不安定性)両方を分類して、8741SPT受診からBOPに関する後ろ向きデータが喫煙状態と関連づけられた。
445人患者全てが、喫煙者27.2% (n = 121)、過去の喫煙者27.6% (n = 123)と非喫煙者45.2% (n = 201)と同定された。平均BOPは、喫煙の状態いかんに関わらず、病気の重症度(p = 0.0001)そして歯周組織の不安定度 (p = 0.0115)とともに有意に増加した。進行性の歯周炎に分類された、歯周組織が安定した喫煙者は、平均BOPが22.4%である不安定な喫煙者(n=25)と比較して平均BOPが16.2%を示した(p = 0.0291)。患者レベルで歯周プロービング深さ(PPD) >= 4 mmの部位率と関連したBOPの評価は非喫煙者や過去に喫煙していた人に比較して喫煙者ではBOPの割合が有意に減少した。
喫煙状態に関わらず、SPT患者で平均BOPの増加は歯周病の重症度と歯周組織の不安定と関連があった。その一方喫煙者は残存するPPDの存在率増加と同時に平均BOPが低いことが示された。
(プロービング時の出血、喫煙、サポーティブペリオドンタルセラピー)
「BOP+の多寡が歯周病悪化の予知因子となる、との報告がある。20-30%の平均BOP%である患者は、低いBOP%の患者より歯周病の進行が高リスクとの報告がある。その閾値を<=20%とする報告があるが、喫煙については考慮されていない。喫煙者はプロービング時の出血が少ない傾向にあるので、喫煙者についてはその影響を考慮すべきであろう。
今回の研究から喫煙の有無に関わらず、BOP+の割合が低いと歯周組織は安定する傾向を示し、高いと安定していなかった。喫煙者の重度歯周炎と分類された患者で、歯周組織の安定している群の平均BOP%は16.2%であり、安定していない群の平均BOP%は22.4%であった。そしてPPD6mm以上の部位が増加するか減少するかのBOP閾値は16.7%であった。喫煙者であってもBOP+の割合低ければその後の歯周組織の安定性を予知する因子となりうる。」
(平成28年6月20日)


No.388
Effect of a Multidirectional Power Toothbrush and a Manual Toothbrush in Individuals Susceptible to Gingival Recession: A 12-Month Randomized Controlled Clinical Study.
Salzer S, Graetz C, Plaumann A, Heinevetter N, Grender J, Klukowska M, Schneider CA, Springer C, Van der Weijden FA, Dorfer CE.
J Periodontol. 2016 May;87(5):548-56.

ブラッシングと歯肉退縮(GR)との関連に関して臨床研究がなされてきたが、多方向パワー歯ブラシに対する適切なGRデータは乏しい。この研究の目的は、12ヶ月間の観察で頬側中央に位置したGR(PreGR)におよぼす、多方向PTあるいはアメリカ歯科医師会推奨歯ブラシ(MT)の影響を評価することである。
これは12ヶ月の前向き、単盲検、パラレル群、ランダム化、コントロール研究である。少なくとも2本にPreGR?2を示す歯周炎に罹患していない健常人がMTあるいはPTでブラッシングする群とにランダムに分けられた。一時評価パラメーターはPreGR ?2 mm部位での変化であった。臨床的にGR測定の全てがベースライン時、6および12ヶ月後に一人のキャリブレーター試験者によっておこなわれた。二次評価項目は全ての頬側中央部位(PreGRがある、あるいはない場合も)でのGRの変化、1mm以上の変化を示すGR部位の割合における変化、とプロービング深さの変化であった。
107人の参加者全員が研究を遂行できた(PT: 55, MT: 52)。12ヶ月の研究期間の間PreGR ?2 mm部位における平均退縮は両群とも、2.2から2.1mmに有意に減少した(P <0.05)。GRパラメーターの程度はどの時点でもMTとPT間で違いはなかった。臨床的に評価した場合と石膏模型上で評価した場合のGRはともによく相関した。
PTについてもMTについても、毎日12ヶ月間使用したからといってPreGRの増加につながるわけではなかった。
(歯科衛生、根拠に基づいた歯科、歯肉退縮、メタ解析、口腔清掃、ブラッシング)
「電動ブラシを用いたからといって、手用はブラシに比較して歯肉退縮量が大きくなるわけではない、との結果であった。というか、どちらのブラッシング方法であっても歯肉退縮は12ヶ月間のフォローで、0.1mmの改善がみられたという。臨床的な退縮量の測定は1人の試験者がおこなっている。被験者がPTかMTかを隠すことはできても、測定時点はどうしようもない。その患者のベースライン、6ヶ月後か12ヶ月後かはわかってしまう。そのために何となく、時間経過とともに退縮量を小さめに測定してしまうようなバイアスの入る可能性がある。それを回避するために印象して、口腔模型を作成し、評価時点をブラインドにして模型上で退縮量を測定する方法もおこなっている。歯肉の腫脹などは模型でもわかるので、資料採取時期はブラインドにできても、見ればこれは術前か術後かぐらいはわかっちゃうかな。
ブラシの種類に関わらず、GRは改善している。何故だろう。ホーソン効果によって生じるブラッシング技術の改善によるものかもしれない、という指摘がある。改善はわずか0.09mmだが、一応統計学的には有意差があるのだ。」
(平成28年6月13日)


No.387
Effect of self-performed mechanical plaque control frequency on gingival inflammation revisited: a randomized clinical trial.
de Freitas GC, Pinto TM, Grellmann AP, Dutra DA, Susin C, Kantorski KZ, Moreira CH.
J Clin Periodontol. 2016 Apr;43(4):354-8.

歯肉の健康におよぼすセルフケア機械的プラークコントロール(SPC)の頻度の効果を評価することである。
単盲検、パラレル群、そしてランダム化臨床研究に、歯肉炎症が限定的で臨床的アタッチメントロスがごくわずかの、39人の被験者が登録された。3群に分けられた被験者は12、24、48時間間隔でSPC(歯ブラシとデンタルフロス)をおこなうように作業を割り当てられた。歯肉炎指数(GI)、プラーク指数(PlI)と歯肉溝滲出液(GCF)はベースライン時と30日後のフォロー時に評価された。分散分析とTukeyを用いて群は比較された。
ベースラインから30日まで、12時間と24時間SPC間隔には平均GI変化に有意差はなかった(-0.06 ± 0.13 versus 0.05 ± 0.09; p = 0.11)。対して、48時間間隔は12時間と24時間間隔よりも有意に高いGI変化であった(0.33 ± 0.17; p = 0.001)。同様に、平均PlI変化は12と24時間SPC間隔(0.11 versus 0.28; p = 0.15 )で有意差は無く、一方48時間間隔でのSPCは有意にPlIに増加が生じた(0.39; p = 0.001)。
12時間24時間間隔でおこなうセルフケア機械的プラークコントロールは臨床的アタッチメントロスが全くないか限定的な被験者においては、歯肉の健康を維持するのに十分だと思われる。
(デンタルプラーク、歯肉炎、口腔清掃、歯周病)
「最近の歯周病学ヨーロッパワークショップからのコンセンサスレポートでは、少なくとも2分1日に2回ブラッシングすることが普遍的な推薦事項として歯科では広く受け入れられている考えを支持した。その一方でコンセンサスレポートに情報をおこなうために用いられたメタレビューでは、24時間に一度、歯間部プラークの除去と丁寧なブラッシングが歯肉炎の発症と歯間部カリエスを予防する上で適切である、と述べることが理にかなったことと述べられている。
どちらも支持するエビデンスが文献的には限定的であったのだが、今回の結果は1日に1度であっても、歯肉の健康を維持するのには十分だったという臨床的なエビデンスであった。」
(平成28年5月22日)


No.386
Long-Term Effect of Four Surgical Periodontal Therapies and One Non-Surgical Therapy: A Systematic Review and Meta-Analysis.
Mailoa J, Lin GH, Khoshkam V, MacEachern M, Chan HL, Wang HL.
J Periodontol. 2015 Oct;86(10):1150-8.

このシステマティックレビューの目的は、歯周治療において、4つの外科的および非外科的治療の長期(>=2 years )効果を評価することである。
関連する論文に対して査読のある雑誌を4つのデータベース電子検索と手検索がおこなわれた。慢性歯周炎と 診断された患者が10人以上で、外科的治療を非外科的治療と比較し、2年以上のフォローをおこなっている、そして治療後にプロービングデプス(PD)と臨床的アタッチメントレベル(CAL)における変化を報告している、前向きコントロールでヒト対象臨床研究が含まれた。変量効果メタ解析が軽度、中等度と深いPDにおいて外科的および非外科的治療成績を比較するためにおこなわれた。
8つの前向き臨床研究が含まれた。1-3mmPDにおいては、スケーリングおよびルートプレーニング(SRP)、ウイドマン改良フラップ(MWF)と骨整形術(OS)がそれぞれ23.2%、39.4%と61.39%の CALロスであった。SRP、MWFとOSは、それぞれPDの2.5%、3.3%と6.3%増加であった。4-6mmにおいては、SRP、MWFとOSがそれぞれ8.4%、6.5%と5.22%のCAL獲得であった。SRP、MWFとOSはそれぞれ18.7%、25.4%と30.8%のPD減少であった。PD ? 7 mmにおいては、SRP、MWFとOSはそれぞれ9.8%、14.2%と9.38%のCALであった。SRP、MWFとOSはそれぞれ21.6%、33.1%と42.8%のPD減少であった。
外科的処置は浅いPDにおいて非外科的処置よりもCALロスが有意に大きかった。中等度PDにおいては、MWFがSRPよりもPD減少が有意に大きく、外科処置でCAL獲得が有意に低かった。深いPDでは、SRPよりも有意に大きいPD減少であった。
(縦断的研究、歯周デブライドメント、歯周炎、レビュー、外科的フラップ、系統的ルートプレーニング)
「最初のPDが浅い場合(1-3mm)はSRP、MWF、 OSいずれもCALはロスしている(それぞれ-23.2、-39.4、-61.39%)。そしてPDはSRPとMWFで増加(それぞれ2.5、3.3%の増加)していたのに対し、OSでは6.3%の減少となっていた。
次にPDが4-6mmの場合である。CALはいずれの処置群でもゲインとなっていた。SRPが最も高く8.4%であった。対して外科処置群はいずれもSRPに劣っており、OFDが7.58%、MWFが6.5%で最も低いOSは5.22%であった。PDについていうと、その減少量は逆にOSが30.8%と最も大きく、MWFがついで25.4%、最も効果が低かったのはSRPの18.7%であった。とは言うもののOSとSRP間に統計学的に有意な差はなかったようだ。
中等度のPDでは、PDの減少を狙う処置を選択すると、CAL獲得の程度は低くなる、といえる。
そして>=7の場合。CALゲインはMWFが最も高く14.2%でSRPとOSが同程度の9.8%と9.38%であった。PDはというと、こちらはOSの42.8%とOFDの41.8%とが減少が大きく、MWFとSRPは、それぞれ33.1%と21.6%であった。
最初のPDに関わらず、OSは最もPD減少が大きかった。ついでMWFとSRPとなっていた。
SRP後の変化について述べられている。SRP後は炎症の消退により、結合織の再構築が生じ、結合織に対するプローベの根尖方向への貫通に対する抵抗が生じる。結果としてプロービング/アタッチメントレベルの改善が認められる。しかし、この現象は結合織付着が獲得されたと解釈すべきものでは無く、炎症緩解による歯肉組織の質の変化とみるべきであろう。で、分岐部や根面溝や分岐部はSRPが困難な部位であり、外科的なアクセスが適応と考えられる。」
(平成28年5月20日)



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