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難しくてもちょっと知りたい最新の歯周病治療・歯周病研究 
論文紹介p078(no.351-355)

No.355
Professional mechanical plaque removal for prevention of periodontal diseases in adults--systematic review update.
Needleman I1, Nibali L, Di Iorio A.
J Clin Periodontol. 2015 Apr;42 Suppl 16:S12-35.

この研究の目的はプロフェッショナルメカニカルプラーク除去(PMPR)の、歯周疾患に及ぼす効果を検索した、過去のシステマティックレビューをアップデートすることである。
2004から2014年4月までランダム化コントロール試験に対して検索をおこなった。スクリーニングとデータの抽出が重複して、ナラティブ統合で独立しておこなわれた。
1655タイトルとアブストラクトから24フルテキスト論文がスクリーニングされ、3つの新しい研究が適格とされた。低から中等度のエビデンスの強さで、成人では特に口腔清掃指導(OHI)と組み合わせた場合に、PMPRは治療をしない場合よりもデンタルプラークや歯肉出血/炎症の測定値に大きな変化がえられる可能性が示唆された。中等度エビデンスの強さで、繰り返しと徹底的なOHIによって到達する結果以上には、PMPRはプラーク付着や歯肉出血の結果に付加的な恩恵を提供しないことが示された。低レベルのエビデンスではあるが、頻回におこなうPMPR はプラークや歯肉出血の改善と関連し、多分に1年ごとのアタッチメントロスが少なくなることが示唆されている。
歯周炎の一次予防に及ぼす、PMPRの影響について直接に情報提供できる情報は十分ではない。しかしながら、歯肉の健康と関連して、新しい研究は、OHIを行わずにPMPRを提供することにほとんど価値がない、というエビデンスを補強する。事実、繰り返しの徹底したOHIは繰り返しのPMPRと同様の恩恵を与えうる。
(デンタルプロフィラキシス、デンタルスケーリング、歯周疾患、一次予防、システマティック予防)
「1.治療しない場合に比べて、PMPRをおこなうと、特にOHIが加わると、プラーク付着や歯肉出血は著しい改善が見込まれる(エビデンスレベルは低~中)。2.繰り返しの徹底的なOHIをおこなうと、PMPR+OHIはOHI単独と、プラーク付着や歯肉出血の改善に差はない(中等度のエビデンスレベル)。要するにPMPRには付加的な効果が見られない。それぐらい繰り返しの徹底的なOHIは偉大ということだ。ただ、歯周病の予防に関して、はたしてどうなのかについての情報はない。3.頻度高くPMPRをおこなうとプラーク付着や歯肉炎症の改善と、おそらくはアタッチメントロスの抑制に寄与する可能性がある(エビデンスは低い)。
OHIをおこなわずにPMPRを提供してもほとんど価値がないといえる。繰り返しの、徹底的なOHIは歯周組織の健康に、PMPRと同程度の影響を与えうる。ただPMPRは治療に対する患者の”満足感”を達成させることができるかも知れない。このことは患者のメインテナンス継続に大事なことかも。PMPRの頻度について、どんな時にどれぐらいの間隔ですべきだなどというガイドラインというものはない。」
(平成27年6月5日)

No.354
Efficacy of inter-dental mechanical plaque control in managing gingivitis - a meta-review.
Salzer S, Slot DE, Van der Weijden FA, Dorfer CE.
J Clin Periodontol. 2015 Apr;42 Suppl 16:S92-S105.

既知のシステマチックレビューから収集したエビデンスに基づいて、成人が歯間部セルフケアを種々の方法を用いて行い歯肉炎を管理することに関して、歯ブラシに加えて機械的な歯間部プラーク除去効果とはどれ程のものであろうか。
歯間部清掃道具に関するシステマティックレビューを含めるように、デザインされた方法によって、インターネットソースが検索された。プラークと歯肉炎スコアが対象とした一次パラメーターであった。選択した論文の内容が抽出された。バイアスの強いリスクが評価され、収集されたエビデンスが等級化された。
395論文のスクリーニングの結果、6つのシステマティックレビューがスクリーニングされた。2論文がデンタルフロスの有効性を、歯間ブラシ(IDB)については二つ、ウッドスティックが一つ、口腔洗口液では一つがそれぞれを評価した。デンタルフロス、ウッドスティック、と口腔洗口液が歯ブラシに加えて歯肉炎を減少させることを支持する、不明瞭あるいは小さい程度の弱いエビデンスが引き出された。プラークに関する影響についてはエビデンスはなかった。歯ブラシと組み合わせて、IDBsはプラークと歯肉炎ともに改善させるという中等度のエビデンスが存在した。
IDBsによる歯間部清掃が歯間部のプラーク除去に対して最も効果的な方法であるとエビデンスから示唆された。利用できる研究の大部分はプラーク除去について、フロスが一般的に効果的であると示せなかった。しかしながら歯間部セルフケアに対して全ての検索道具は、程度の差はあれ、歯肉炎の管理を支持しているように思える。(デンタルプラーク、歯肉炎、歯間ブラシ、歯間部清掃、メタレビュー、システマティックレビュー)
歯肉炎の管理に、機械的プラークコントロールのために用いる種々の歯間部清掃用具の効果に付いてのシステマティックレビューメタ解析。
フロス+歯ブラシが歯ブラシ単独に対して、歯肉炎に対する小さいが有意な効果があるという、弱いエビデンスがある。しかしプラーク指数に関しては付随して減少することに関して、エビデスが欠如している。
フロスがセルフケアツールとして有用であると、システマチックレビューは強くは支持しない。しかし有効性に関するエビデンスの低さは、フロスの使用を排除するものではない。歯間ブラシが入らないような歯間部では、フロスは最も効果的な道具といえる。フロスは歯間部清掃の第一選択としてオススメという訳ではないが、患者が他の道具を好まないのであれば、清掃道具として用いるのもよろしかろう。
ウッドスティックは炎症を改善させて出血スコアを減じると説明されるが、実のところエビデンスに欠ける。結局のところ歯ブラシ単独に比較して、ウッドスティック+歯ブラシに対するエビデンスは弱く、出血に関しては不明瞭な程度の有効性であり、同時にプラークの減少に対するエビデンスは欠如している。
歯ブラシ単独に比較して、歯ブラシに加えて歯間ブラシの効果については中等度のエビデンスがある。歯肉炎については34%の減少で、プラークスコアについては32%減少に相当する。歯間ブラシについては歯ブラシの補助道具として、その有効性が強調され、故にセルフケアツールとして推奨されている。
口腔洗口剤については歯肉炎に対する効果のエビデンスは弱い。その程度も不明。プラークスコア減少についてはエビデンスを欠く。総括すると、歯間部プラークを除去するために、最も効果的な清掃道具は歯間ブラシとであるといえる。
(平成27年5月23日)


No.353
Clinical performance of access flap in the treatment of class II furcation defects. A systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials.
Graziani F, Gennai S, Karapetsa D, Rosini S, Filice N, Gabriele M, Tonetti M.
J Clin Periodontol. 2015 Feb;42(2):169-81.

この研究の目的は分岐部クラスII欠損(FD)の治療における、アクセスフラップ(OFD)の成績を系統だってレビューすることである。
最低6ヶ月フォローアップされ、クラスII FDに対してOFDを伴う外科処置を評価しているRCTが同定された。スクリーニング、データの抽出と質的評価が3人の評価者によって独立しておこなわれた。主要評価項目は歯の残存と水平的臨床アタッチメントレベル(HCAL)の変化であった。垂直的臨床アタッチメントレベル(VCAL)、ポケットプロービング深さの減少(PPD)、退縮の増加(REC)、水平(HBL)と垂直骨レベル(VBL)データが収集された。
検索から1571論文が同定され、そのうち11論文が組み入れ基準に合致した。データ解析は199人の患者と251FDで行われた。歯の残存はほとんど報告されていなかった。炎症の改善が認められ、加重平均の差はHCALが0.96 mm [CI: (0.60, 1.32), p < 0.001]、VCAL に対して0.55 mm [CI: (0.00, 1.10), p = 0.05]であった。6ヶ月以上におけるPPD減少は1.38 mm [CI: (0.91, 1.85), p < 0.01]であった。バイアスの強いリスクが同定された。
OFDで治療をおこなった下顎クラスII分岐部病変の歯は手術後6ヶ月で有意な臨床的改善を示した。しかしながら、これらの変化の大きさとそれらの臨床的関連性をさらに理解するためには、前向きで長期の臨床的研究が必要だ。
(アクセスフラップ、保存的手術、分岐部欠損、メタ解析)
「クラスII分岐部の改善指標として水平的アタッチメントレベルの改善は重要な項目なのだが、実際の成績として変化量はあまり大きくない。分岐部欠損が広いほど歯の喪失機会が増えることや、クラスI分岐部病変の予後が良好なことから、臨床的には、分岐部欠損は閉鎖されるか縮小して欲しい。
今回の研究では手術後6ヶ月で水平的に約1mmの回復が見られているが、多くの場合分岐部病変のクラスは変化していない。11論文のうち7論文で分岐部閉鎖についての報告がなされているが、術後6ヶ月では閉鎖は生じないようだ。
他の臨床所見としてBOPの改善が確認され、そしてPPDは約1.5mmの改善となっている。水平的な骨の変化はわずか0.09mmで、これについては、骨の変化にはもっと期間が必要なのかも知れない、とのコメントがある。
今回はテーマとして焦点を当てていないが、吸収性メンブレン、エナメルマトリックスディリバティブや多血血小板血漿の応用は、応用しない場合に比較して、HCALやPPDの改善に統計学的に有意な減少をもたらしていた。しかし、その適応には限界があり、術後プラークコントロール可能な環境もその予後を大きく左右する要因のようだ。
さらにメインテナンスの重要性も指摘されており、喫煙と定期的なSPTからの脱落はクラスIIやクラスIII病変を有する多恨歯にとって歯の喪失リスクとなる。ただ、今回の研究では対象とした各論文のデザインや情報に多様性が大きいため詳細な解析はできなかった。」
(平成27年5月10日)


No.352
Bruxism is unlikely to cause damage to the periodontium: findings from a systematic literature assessment.
Manfredini D, Ahlberg J, Mura R, Lobbezoo F.
J Periodontol. 2015 Apr;86(4):546-55.

この論文は次の疑問に答えるために、MEDLINEとSCOPUSを系統だってレビューする:ブラキシズムはそれ自体歯周組織の損傷を引き起こすというエビデンスはあるのだろうか?
ブラキシズムと歯周組織(例えば、アタッチメントレベルの減少、骨吸収、歯の動揺/移動、歯周組織の知覚の変化など)との強い関連性を評価している、ヒトを対象にした臨床研究を適格とした。方法論的な不十分な点はCritical Appraisal Skills Program定性評価を適応し、主に非特異的なブラキシズム診断に従って、所見の内部妥当性に関して同定した。
同じ要旨で複合的な論文はなく、含まれた6つの論文はトピックに関してばらつきが大きかった。所見から、歯周組織に及ぼすブラキシズムの唯一の影響というのは歯周組織の感覚亢進であり、その一方で歯周病変との関連はなかった。疫学研究におけるHillの判定基準の解析に基づくと、主に、ブラキシズムと歯周病変間の時間的な関連と用量反応効果の縦断的な評価がないために、必然的な結論の確実性は限定的であった。
このレビューで評価された、ブラキシズムと歯周組織の問題に横たわる因果関係的な関連に関して、確実な根拠のある結論を出せないほどの、乏しい文献の量や質ではあるが、ブラキシズム自体は歯周組織に損傷を引き起こすことはできない、と考えるのは合理的であるように思える。しかしながらまた、方法論的な問題のために、特に睡眠時のブラキシズム評価に関して、もっとハイクオリティな研究(例えば、ランダム化コントロール研究)がさらにこの問題を解明するために必要であることを強調することは重要である。
(ブラキシズム、歯周組織、レビュー)
「ブラキシズムは、歯のクレンチングあるいはグラインディングによって、そして/あるいは下顎の緊張または食いしばりによって特徴付けられる、反復性の顎-筋肉活動である、というのが最近コンセンサスが得られた定義らしい。そして、ブラキシズムには睡眠時のものと覚醒時のものとがある。このブラキシズムは歯の支持組織、すなわち歯周組織の荷重負担に対する強いリスク因子である可能性が示されてきた。
ブラキシズムと関連した言葉に咬合性外傷がある。咬合性外傷とは、適応能力そして修復能力を超えて、歯周組織の付着器官にダメージを与える、機能的あるいは異常な力による歯周組織への損傷、と定義されている。ここでも、咬合力が歯周組織の適応力を越えると傷害が生じる。一次性咬合性外傷は、咬合力そのものが歯周組織に変化を起こす主要な病因的因子であり、二次性咬合性外傷は、歯周組織が炎症や骨吸収によって破壊されている時に生じる。ただ、最近の文献では、一般に咬合の過度な力が健康な歯周組織に対して長期の損傷を引き起こすことは、生じにくいとされている。
咬合的な因子単独で歯周病の発症は説明できない、ことは昨今の同意事項であると思われる。
この論文の結論は、タイトルにほぼ全て集約されている。それ以上の結論的なことは、文献欠如のために、示すことができないようだ。唯一の道理にかなった仮説は、歯周組織の感覚の増大は歯周組織に対するブラキシズムの結果である、だった。」
(平成27年4月27日)


No.351
Impact of cigarette smoking on clinical outcomes of periodontal flap surgical procedures: a systematic review and meta-analysis.
Kotsakis GA1, Javed F, Hinrichs JE, Karoussis IK, Romanos GE.
J Periodontol. 2015 Feb;86(2):254-63.

歯周フラップ外科処置は歯肉縁下の沈着物を除去するためにしばしば用いられる。その結果、進行した歯周病の治療として、臨床的アタッチメントレベル(CAL)の獲得を伴った、歯肉炎症とプロービング深さ(PD)の減少を生じる。、しかしながら、臨床研究は非喫煙者に比較して、喫煙者では歯周組織の治癒が損なわれることを報告している。このシステマティックレビューとメタ解析の目的は、歯周フラップ手術後の臨床成績に及ぼす、喫煙の影響を評価することである。
喫煙者における歯周外科処置に関連した論文のシステマティック電子レビューが、あらかじめ定義された、適切に最適化された方法を用いて、1977年から2014年3月までを含めておこなわれた。メタ解析はPDとCALの二つの主要評価項目における変化に対して、別々におこなわれた。
最初の検索から、390のタイトルとアブストラクトが得られた。スクリーニングの後、8つのコントロール臨床研究が最終的に選択された。3研究がバイアス低リスクとして、2研究がバイアス中等度、そしてバイアス高リスクとして3研究が評価された。論文の定性的な評価は非喫煙者対喫煙者について改善した治療効果を一致して示していた。喫煙者と非喫煙者におけるPD減少はそれぞれ0.76から2.05 mmと1.27から2.40 mmであった。CALに対しては、非喫煙者対喫煙者における獲得はそれぞれ0.29から1.6 mmと0.09から1.2 mmであった。研究被験者363人を報告している8研究についてのメタ解析は、0.39 (0.33 to 0.45) mmの平均PD (95% confidence interval) 減少であった。同様の結果がCALの平均獲得で見られた (0.35 [0.30 to 0.40] mm, n = 4 studies)。
比較的均一な利用できる情報であったことを考慮すると、著者らはアクティブな喫煙者は歯周フラップ手術の候補者になりうると結論する。しかしながら、非喫煙者と比較すると、治療効果の大きさは喫煙者では損なわれる。それゆえ、喫煙者は、1)禁煙が推奨され、2)非喫煙者と比較して臨床的な成績が相当低下することを、術前に十分な情報として告げられるべきである。
(メタ解析、歯周デブライドメント、歯周ポケット、レビュー、喫煙)
「喫煙者は、ニコチンの血管収縮作用のためにプロービング時の出血が少なくなるために、歯周病に対する自覚症状が乏しくなり、それゆえに歯周病が放置されやすくなる。
歯周外科処置後の成績が、喫煙者では非喫煙者に比較して悪くなるとの報告がある。そのメカニズムはというと、好中球機能不全、唾液および血清中免疫グロブリンAとGの減少、歯周病原菌の増加、そして線維芽細胞増殖および機能不全などである。
非喫煙者と喫煙者間で歯周外科処置後における、歯周ポケットの改善の差は0.4mmであった。スケーリングルートプレーニング単独と、局所ミノサイクリン併用とにおいて、歯周ポケットの減少における差異は約0.3mmであり、そのために2mm以上の歯周ポケット改善部位の割合は増加する。修正ウイドマンフラップに局所の抗菌薬を用いた際も同様に、フラップ単独の効果に加えて0.3mmの平均歯周ポケットの改善が見られる。臨床的に言うと、歯周外科処置後の成績には、これらの付加効果ぐらいの差が喫煙者と非喫煙者の間には存在するということだった。」
(平成27年4月23日)

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