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難しくてもちょっと知りたい最新の歯周病治療・歯周病研究 
論文紹介p079(no.356-360)

No.360
Antimicrobial photodynamic effect to treat residual pockets in periodontal patients: a randomized controlled clinical trial.
Carvalho VF, Andrade PV, Rodrigues MF, Hirata MH, Hirata RD, Pannuti CM, De Micheli G, Conde MC.
J Clin Periodontol. 2015 May;42(5):440-7.

慢性歯周炎患者の残存するポケット治療において、光線力学療法(PDT)の有効性を評価するために、ランダム化コントロール臨床研究が企画された。
メインテナンスケアを受けて、残存する歯周ポケットを少なくとも4カ所有する34人の患者が含まれ、テスト群(PDT、n=18)あるいはコントロール群(擬似処置、n=16)に無作為に割り振られた。介入はベースライン時、3、6、と12ヶ月後に行われた。ポケットプロービング深さ(PPD)、プロービング時の出血(BoP)、とプラーク指数(PI)などの臨床パラメーターが介入前、3、6、12ヶ月後に測定された。ベースライン時、7日後、3、6、12ヶ月後に、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)によってAggregatibacter actinomycetemcomitans、Porphyromonas gingivalis、Treponema denticolaとTannerella forsythiaを定量するために歯肉縁下のサンプリングが得られた。
研究期間に全ての臨床変数は有意な改善を示したが、テスト群とコントロール群間に有意差はなかった。細菌学的な検索においても、研究期間のいずれの時点でも有意差はなかった。
この臨床研究で、用いたレーザーと光増感剤プロトコールを考慮するという限定内ではあるが、PDTは残存するポケット治療に付加的な臨床および細菌学的有益性を示すことはできなかった。
(慢性歯周炎、細菌学、歯周ポケット、光線力学的療法、ポリメラーゼ連鎖反応法)
「歯周基本治療を受けて、4mm以上の残存ポケットが対象部位で、光増感剤はメチレンブルー0.01%でダイオードレーザー660nm、90秒、90J/cm(2)、40mWという条件でPDTを用いたが、臨床的にも細菌学的にも差は見られなかった。ネガティブデータだが、これもまた貴重なエビデンスだ。
過去には同様の研究で、歯周病原菌がちょろっと減ったとか、臨床パラメーターがコントロールと比較して改善しているとかの報告もある。本研究では白旗状態。考察では、臨床状態、光増感剤の濃度、その作用時間、歯肉縁下pHや歯肉溝滲出液の変化などがPDT作用に影響を与えるとしている。でも、それを詳細に検討した臨床研究はあんまり見たことがない。
まあ、ご苦労様でした。この研究の対象部位は残存したポケットなので、改善させるのが難しいというハンデはあるよね。
乳酸菌の方がひょっとしたら効くかも。」
(平成27年6月28日)


No.359
Clinical and Biochemical Evaluation of Lozenges Containing Lactobacillus reuteri as an Adjunct to Non-Surgical Periodontal Therapy in Chronic Periodontitis.
?nce G, Gursoy H, ?pci ?D, Cakar G, Emekli-Alturfan E, Y?lmaz S.
J Periodontol. 2015 Jun;86(6):746-54.

この研究は慢性歯周炎患者における初期治療に付随して、Lactobacillus reuteriを含むプロバイオティックサプリメントの臨床的および生化学的パラメーターへの影響を評価することである。
慢性歯周炎(CP)患者30人が含まれて、2群に分けられた。各患者は各1/4顎に隣接面プロービング深さ(PD)が5-7mmで歯肉炎指数(GI)>2である歯がそれぞれ2本以上であった。テスト群はスケーリングとルートプレーニング(SRP)を受けてプロバイオティックを含むロゼンジを服用した。コントロール群はSRPとプラセボロゼンジを受けた。プラーク指数(PI)、GI、プロービング時の出血(BOP)、PDとアタッチメントゲインが測定された。歯肉溝滲出液(GCF)がマトリックス メタロプロテアーゼ(MMP)-8とマトリックスメタロプロテアーゼ阻害因子(TIMP)-1のエライザによる解析のためにサンプリングされた。全ての評価はベースライン時、と21、90、180と360日後におこなわれた。
PI、GI、BOPとPDにおける差が、全ての時点でテスト群に有利に、有意差(P <0.05)が見られた。GCFMMP-8レベルの減少とTIMP-1レベルの増加が180日まで有意に認められた(P <0.05)。90、180と360日でアタッチメントゲインの平均値がコントロール群に比較してテスト群で有意に高かった。
L. reuteriを含むロゼンジはCP患者の中等度に深いポケットにおいて有益なサプリメントかもしれない。MMP-8低下と高値TIMP-1は180日までの炎症関連マーカーの減少について、ロゼンジの役割を示している現象かもしれない。
(慢性歯周炎、デンタルスケーリング、歯肉溝滲出液、マトリックス メタロプロテアーゼ8、プロバイオティック、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害因子-1)
「同じ研究グループの再びロイテリ菌君だ。前回は臨床成績と細菌学的検索、今回は臨床成績に加えて生化学的な検索。
PD減少はテスト群とコントロール群でそれぞれ1.70mmと0.55mmで、アタッチメントゲインは1.39mmに対して0.43mmと、プロバイオティックを併用すると良好な臨床成績が見られている。
MMP-8 は歯周組織の破壊につながる、宿主細胞由来のメインのコラゲナーゼとして知られる。またTIMP-1とTIMP-2は全てのMMPに抑制的に作用する。プロバイオティックの併用は、この両者に180日まで影響を与えた。ただし、360日後には、ベースラインレベルに戻っている。確かに360日には群間の有意差は消えている。でもね、これはどちらの群もSRPの効果がなくなってしまったために、プロバイオティックのあるなしによる差が小さくなって、有意差がでなくなったように思えるけど。
前回と今回の論文をみて、あなたもバイオガイアのサプリメント飲みたくなるかな。」
(平成27年6月27日)


No.358
Clinical and microbiological effects of probiotic lozenges in the treatment of chronic periodontitis: a 1-year follow-up study.
Tekce M1, Ince G, Gursoy H, Dirikan Ipci S, Cakar G, Kadir T, Y?lmaz S.
J Clin Periodontol. 2015 Apr;42(4):363-72.

この研究の目的は、慢性歯周炎患者に対する歯周初期治療の付加的治療として、L.reuteriを含むロゼンジの効果を評価して、治療患者の歯周ポケットにおけるL.luteriコロニーレベルを調べることである。
総数40人の患者が選択され、2群にランダムに振り分けられた。それぞれの患者は5-7mmのプロービング深さ(PD)を隣接面に一カ所持つ歯と、1/4顎に歯肉炎指数(GI)が2以上の歯が、少なくとも2本あった。群1はスケーリングとルートプレーニング(SRP)プラスL. reuteriを含むロゼンジを受け、そして群2はSRPプラスプラセボを受けた。プラーク指数(PI)、GI、プロービング時の出血(BoP)、PDと相対的アタッチメントレベルが測定された。細菌学的サンプリングがベースライン時、21、90、180、と360日に行われて、培養によって解析された。Bonferroni-corrected paired sample t-test、Bonferroni-corrected Wilcoxon signed rank testとpaired sample t-test が群内の差を評価するために用いられた。Bonferroni-corrected Student's t-test とMann-Whitney U-tests が群間の差を評価するために用いられた。
処置後、PI、GI、BoPとPDは全ての時点で、群2に比較して、群1で有意に低かった(p < 0.05)。同様の結果が、360日時点を除いて、総生菌数と偏性嫌気性菌の割合で認められた。群1では3部位以上で外科処置の必要な患者が有意に少なかった。
L. reuteriを含むロゼンジは再コロニー化を緩徐にし、慢性歯周炎の臨床成績を改善させる有用な付加的作用剤かもしれない。ロゼンジの適性濃度を明らかにするためにさらなる研究が必要だ。
(ロイテリ菌、プロバイオティック、細菌学、歯周炎、スケーリングルートプレーニング)
「ロイテリ菌は静菌的あるいは殺菌的活性を有するreuterinを産生する。また病原菌の組織への付着を阻害するという。
このロイテリ菌をプロバイオティック(probiotics)に用いようとして開発されたのがプロバイオティック ロゼンジprodentis(バイオガイア)だ。プロバイオティックは適当な量を投与することによって、宿主にとって健康に有益な状況を生み出すような生きた微生物のことで、antibiticsに対する言葉だ。バイオガイアのサプリメントはずっと前から売られていたが、今回のようなデータは公表されてなかったと思う。
慢性歯周炎に対して、SRPに付加的に応用したサプリメントは臨床的に効果があった。例えばプロバイオティックありとなしでPDをみると、day0-21で1.20±0.37と0.76±0.36、day0-90では1.44±0.33に対し 0.85±0.32、day0-180では1.77±0.69と0.70±0.24、そしてday0-360でも1.74±0.62と0.57±0.24と、プロバイオティックを併用した場合の方が改善度合いは大きく、いずれも有意差ありであった。
ロゼンジは1日2回3週間の服用だ。ロイテリ菌は投与前には検出されていなかったが、21日(6人)と90日(11人)で検出され(そう、全員じゃない)、その後180日と360日では消失している(培養法では検出限界以下ということ)。もともと歯肉縁下にはlactobacilliが認められることは稀で、PCRなどを用いると認められる、という程度のものだ。ロイテリ菌君は本来は歯肉縁下という環境は好きくないんだろうね。
ずっと縁下に存在させようとするなら、毎日強制的に服用しないとダメなんだろう、と著者らも述べている。」
(平成27年6月27日)


No.357
Java project on periodontal diseases: periodontal bone loss in relation to environmental and systemic conditions.
Amaliya A, Laine ML, Delanghe JR, Loos BG, Van Wijk AJ, Van der Velden U.
J Clin Periodontol. 2015 Apr;42(4):325-32.

定期的なデンタルケア受診集団における、歯槽骨吸収(ABL)と環境的全身状態との関連性を評価することが目的である。
この研究対象集団はインドネシア、西ジャワ州Purbasari tea estateからの被験者からなっていた。フルセットのデンタルレントゲンが各被験者から得られ、ABLの量が評価された。加えて、次のようなパラメーターが評価された:血清ビタミンC、ビタミンD3、HbA1cとCRP,ハプトグロブリン表現型、いわゆる歯周病原細菌とウイルス、食事習慣、喫煙と生体測定学である。
この集団の45%がビタミンC欠乏/不足、82%がビタミンD3欠乏/不足、70%が前糖尿病状態、6%が未治療糖尿病、21%に3.1から16.1mg/lの範囲でCRP値の上昇がみられた。上述したパラメーター全てを含む回帰分析の結果は、ABL変動の19.8%を説明する、4つの有意な予知因子を明らかにした。Porphyromonas gingivalis 細胞数とCRP値はABLと正の関連を示したのに対し、グアバジュース献立数は負の関連をしめした。
今回の結果はP.gingivalisレベルの上昇は歯周炎進行の予兆かもしれないという過去の所見を確認した。新しい所見としては、グアバフルーツの消費は、栄養不良集団において、歯周炎の抑制的な重要な役割を果たしている可能性があるということだ。
(BMI、骨吸収、CRP、ハプトグロブリン、HbA1c、歯周病原因子、歯周炎、未治療、ウイルス、ビタミンC、ビタミンD)
「同じ集団を用いた以前の研究では、血清ビタミンC値とアタッチメントロスとの間に逆相関があったのだが、今回の研究ではそのような相関がみられなかった。でグアバフルーツが登場。グアバフルーツは100g中228mgのビタミンCを含んでいる。1個のグアバフルーツ摂取で、約400mgのビタミンCを摂取することになるらしい。でもね、前回の研究でもグアバフルーツについては調査していたのだが、有意差のあるような相関はでていない。抗酸化ビタミンであるビタミンCの効き方に影響を及ぼすハプトグロブリンまで調べているが、あんまり関係なかった。ビタミンCとグアバに惹かれて読んだが、なんか鳴かず飛ばずだね。」
(平成27年6月27日)


No.356
Effect of professional mechanical plaque removal performed on a long-term, routine basis in the secondary prevention of periodontitis: a systematic review.
Trombelli L1, Franceschetti G, Farina R.
J Clin Periodontol. 2015 Apr;42 Suppl 16:S221-36.

歯周炎の進行予防における、長期の定期的なプロフェッショナルメカニカルプラーク除去(PMPR)の効果を評価する、エビデンスについて系統的にレビューすることが本研究の目的である。
アクティブな歯周治療を受けて、少なくとも3年間PMPRを含むメインテナンスプログラムに参加していた歯周炎患者におけるPMPRの影響を評価した、前向き研究を同定するために文献検索がおこなわれた。
メインテナンス期間中に未治療と比較して、介入効果を評価したRCTsは見いだされなかった。サポーティブ治療の一部としてPMPRの効果を評価した19の前向き研究が含まれた。通常は、フォロー期間中に歯の喪失出現はないあるいは低いと報告した。5年あるいは12-14年のフォロー期間中、毎年の歯の喪失率加重平均は群間に有意差はなく、それぞれ0.15 ± 0.14と0.09 ± 0.08であった。平均臨床アタッチメントロスは5年から12年の範囲のフォローアップで<1mmであった。
PMPRを含むサポーティブ治療は歯周炎治療患者における臨床的アタッチェメントロスと同様に、歯の喪失や年単位歯の喪失率を限定するようだ。しかしながら、介入が長期間の歯周パラメーターに影響を与えるのか、どの程度与えるのかについては未だ査定される必要がある。
(デンタルプラーク、デンタルスケーリング、歯周アタッチェメントロス、歯周炎、歯の喪失)
「歯周治療の二次予防でSPTの重要さと効果は確立されているといってよい。定期的なPMPRはメインテナンスプラグラムの中に通常含まれるのだが、アクティブな歯周治療がおこなわれた後の、歯周組織の長期安定性についてPMPR自体の関連性については十分に解明されているとは言いがたい。
結局は明確なエビデンスは得られなかったのだが、以下のようなことが推断されるようだ。
歯を失わずに歯周病の進行を限定的にするためには、とにもかくにもPMPRを含むSPTを強いることだ。データ的には、歯肉縁上縁下のプラーク歯石を除去することを目的としておこなわれるPMPRは、異なったフォロー期間で歯の喪失を低めてCAL喪失を限定的にしていることが支持される。
5年以上SPTに定期的に通う患者と比較すると、不定期な患者の歯の喪失や疾患進行は高い。
PMPRは患者のモチベーションや口腔清掃指導などと関連しているようだ。動機づけのためにも、SPT継続や患者のプラークコントロール向上のためにもPMPRは役立つのだろう。歯周治療の進行に対するPMPR自体の影響の大きさを評価できる可能性は限定的だが、今回のデータはメインテナンスに対する、患者自身によるプラーク除去とおよびプロフェッショナルプラークコントロールの組み合わせを支持している。というのはPMPRをおこなわない患者自身によるプラークコントロールだけでは、相当な歯周炎の悪化が示されているからである。」
(平成27年6月14日)


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