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難しくてもちょっと知りたい最新の歯周病治療・歯周病研究 
論文紹介p081(no.366-370)

No.370
Non-surgical periodontal therapy with systemic antibiotics in patients with untreated aggressive periodontitis: a systematic review and meta-analysis.
Keestra JA, Grosjean I, Coucke W, Quirynen M, Teughels W.
J Periodontal Res. 2014 Dec 18. [Epub ahead of print]

このメタ解析の目的は、未治療侵襲性歯周炎に対して、スケーリングルートプレーニング(SRP)と比較した時に、SRPと併用する異なる全身的抗生剤の効果を評価することである。
侵襲性歯周炎において、SRPはしばしば全身的抗生剤と併用される。しかしながら、長期のこれら抗生剤の効果や、異なる抗生剤間の効果の差はほとんど知られていない。
MEDLINE-PubMedデータベースが、最も初期の記録から2014年1月まで検索された。幾つかのジャーナルは手検索され、何人かの著者は追加の情報のためにコンタクトが取られた。次のような成績測定が解析された。つまり平均プロービングポケット深さの減少、平均臨床的アタッチメントレベル獲得、とプロービング時の出血の平均変化である。抽出データはランダム効果モデルを用いて蓄積された。加重平均の差が計測され、多様性が評価された。
検索の結果、296のアブストラクトが得られた。最終的に101の論文が選別され、そのうち14論文が適格基準に合致した。全身的抗生剤は中等度 (3ヶ月後に0.36 ± 0.22 mm、6ヶ月後に0.42 ± 0.22 mm、そして12ヶ月後0.88 ± 0.27 mm) 、深い (0.74 ± 0.36 mm at 3 mo, 6 mo 0.85 ± 0.55 mm and 12 mo 1.26 ± 0.81 mm) ポケットに対し、有意な追加のポケット深さの減少を示し、そして中等度(3ヶ月後0.26 ± 0.18、6ヶ月後0.52 ± 0.15そして12ヶ月後0.83 ± 0.38)と深い(3ヶ月後0.59 ± 0.18、6ヶ月後0.96 ± 0.21、12ヶ月後1.00 ± 0.80)ポケットに対し、有意な臨床的アタッチメントレベル獲得を示した。
侵襲性歯周炎患者の治療に対して、非外科的歯周治療と組み合わせた全身的抗生剤を用いると、非外科的治療単独と比べて有意に追加的な効果がみられた。メトロニダゾール+アモキシシリンが最も強力な抗生剤の組合せであることを示す、明瞭な傾向がみられた。
(侵襲性歯周炎、非外科的治療、全身的抗生剤)
「前回と同じ著者、タイトルもほぼ同じ、で何が違うかというとchronicがaggressiveなっただけだ。2014年12月アクセプトなので、今年中には紙媒体にでてくるのだろう。
解析記述パターンも同じ。侵襲性歯周炎でも抗生剤を併用すれば、プラスアルファの効果がでるという。慢性歯周炎と比べると、抗生剤を併用しない場合に比べて、3ヶ月後の効果の差は低いが、6ヶ月と12ヶ月では差は大きくなるという。少なくとも1年は抗生剤を併用した効果が続くということのようだ。
用いる抗生剤は何がいいかについては、結論を出せていない。ただ、メトロニダゾール+アモキシシリンがベストだと結論づけられないが、その効果は明らかだという。この組合せ以外の抗生剤では付加的な効果を示すことができなかった。というのも対象論文数が、アジスロマイシンが2、ドキシサイクリンが2、メトロニダゾールが1、メトロニダゾール+アモキシシリンが10、テトラサイクリンが1となっており、その数がものを言っている。
抗生剤の併用については、慎重に症例を選ぶべきだということ。第6回の歯周病ヨーロッパワークショップでは侵襲性歯周炎か、慢性歯周炎の重度あるいは進行性タイプに限定すべきという提言がされている。」
(平成27年10月1日).


No.369
Non-surgical periodontal therapy with systemic antibiotics in patients with untreated chronic periodontitis: a systematic review and meta-analysis.
Keestra JA, Grosjean I, Coucke W, Quirynen M, Teughels W.
J Periodontal Res. 2015 Jun;50(3):294-314.

このメタ解析の目的は未治療慢性歯周炎患者において、スケーリングルートプレーニング(SRP)単独と比較して、SRPと併用した異なる全身的抗生剤の効果を評価することである。
慢性歯周炎のほとんどは付加的な全身的抗生剤なしに治療されるが、最近のメタ解析は、SRPと併用して用いた全身的抗生剤には臨床的な有用性があることを示している。しかしながら、今日用いられる全身的抗生剤のレジメは幅広いバリエーションがある。全身的抗生剤の選択が臨床的有用性の大きさに影響するかどうかは明瞭ではない。
MEDLINE-PubMedデーターベースが初期の記録から2013年5月16日まで検索された。幾つかのジャーナルは手検索をおこない、そして何人かの著者らには追加の情報のためにコンタクトがとられた。解析した結果の測定は平均プロービング時の出血、平均臨床的アタッチメントレベル獲得と平均プロービング深さの減少であった。抽出データは変量効果モデルを用いて蓄積された。加重平均差が計算され、不均質性が評価された。
検索の結果281のアブストラクトが得られた。結局95の研究が選択され、43の研究が適格基準に合致していた。全身的抗生剤は中等度(3ヶ月で0.27 mm ± 0.09、6ヶ月で 0.23 mm ± 0.10 そして12ヶ月で0.25 mm ± 0.27) と重度ポケット(3ヶ月で0.62 mm ± 0.17、6ヶ月で 0.58 mm ± 0.16 そして12ヶ月で0.74 mm ± 0.30)に対して有意な(p < 0.05)追加的なポケット深さの減少を示した。統計学的に、抗生剤の特定のタイプが別のタイプを上回ることはなかった。しかしながら、初期の中等度あるいは重度なポケットに対して、臨床的データを解析した時、幾つかの傾向が明白になった。
SRPと組み合わせた全身的抗生剤はSRP単独に比較して追加で臨床的な改善を提供した。統計学的に有意差はないが、最初に中等度と重度であったポケットにはその傾向があり、メトロニダゾールあるいはアモキシシリンと組み合わせたメトロニダゾールは、ドキシサイクリンあるいはアジスロマイシンよりも著しい臨床的改善を生じせしめた。加えて、臨床的恩恵の大きさは経時的に(1年)、より小さくなる傾向であった。
(慢性歯周炎、非外科的治療、全身的抗生剤)
「アブストラクトでは中等度と深いポケットのデータが出ているが、抗生剤の投与あるなしで、平均のポケット差は3、6、12ヶ月後でそれぞれ0.28mm±0.09、0.37mm±0.05、0.26mm±0.13となっている。用いている抗生剤は、アモキシシリン+クラブラン酸(1)、アジスロマイシン(7)、クラリスロマイシン(1)、ドキシサイクリン(低濃度10、高濃度4)、メトロニダゾール(5)、メトロニダゾール+アモキシシリン(7)、モキシフロキサシン(1)、オルニダゾール(1)、スピラマイシン(1)、テトラサイクリン(1)、である。研究が1つしかない抗生剤のデータを省くと、SRP単独とSRP+抗生剤間の平均ポケット深さの差はメトロニダゾール+アモキシシリンのデータのために、より明瞭になるようだ。
アタッチメントレベルの解析では、対象研究を3、6、12ヶ月フォローに絞ると抗生剤あるなしの差が低くなり、1年後には差がなくなってしまう。
どの抗生剤が最も効果的かについては、決定づけるのが難しい。ただ、ポケット深さとアタッチメントレベルを指標にすると、メトロニダゾール+アモキシシリン>メトロニダゾール>ドキシサイクリン>メトロニダゾールというところでしょうか。」
(平成27年9月28日)


No.368
Efficacy of homecare regimens for mechanical plaque removal in managinggingivitis a meta review.
Van der Weijden FA, Slot DE.
J Clin Periodontol. 2015 Apr;42 Suppl 16:S77-91.

システマティックレビューで示されたエビデンスに基づいて、成人におけるプラークの機械的プラーク除去や歯肉炎に対する、有用なホームケアブラッシングレジメの効果と安全性はどのようなものか?
この研究目的を満たす適切な論文検索のために、3つのインターネットソースが用いられた(2014年8月とそれまで)。プラークスコアと歯肉炎スコアが調査対象の一次パラメーターと考えられた。効果と関連して安全性が重要な側面と考えられた。選択された論文に示されたデータと結論が抽出された。重要なバイアスリスクが評価され、発生したエビデンスが格付けされた。
176の固有レビューを独立してスクリーニングした結果、出版された、適格なシステマティックレビューが10でああった。プラークと歯肉炎指数に及ぼす、歯ブラシを用いた口腔清掃指導の効果を評価したレビューが1つ、手用ブラシと電動ブラシの効果を評価したものが5つ、そして歯ブラシの安全性を評価したレビューが3つ、と歯ブラシのコンタミネーションを評価した1つ、とに分類された。
ブラッシングはデンタルプラークレベルを減少させるのに効果的であった。歯肉炎に関して電動ブラシは手用ブラシよりも有効である。回転振動タイプが有用であるとの最も多いエビデンスがある。一般に、歯ブラシは歯やその被覆組織に安全と言える。
(デンタルプラーク、歯肉炎、手用ブラシ、メターレビュー、電動ブラシ、安全性、システマティックレビュー、ブラッシング、歯ブラシのコンタミネーション)
「プラークスコアに対するTBIの効果は手用ブラシで42%減少、電動ブラシで46%減少となっている。コクランレビューでは、プラーク除去に対しても歯肉炎に対しても電動ブラシの方がより効果的であると報告されている。回転振動式の電動ブラシは前後に振動するタイプの電動ブラシよりもプラーク除去(観察期間が短期11%、長期21%)についても、歯肉炎の改善(短期6%、長期11%)についても他の電動ブラシや手用ブラシよりも効果的であった。電動ブラシは刷掃のために動かす必要がないので、ブラシを歯面に当てることに専念できる。それが電動ブラシを使用する際のメリットだろう。ただし、電動ブラシを使用するにしても、清掃指導は必須である。
ブラッシング方法について:ある特定のブラッシング方法が、他の方法よりも明らかに優れている、というエビデンスはない。ブラッシング方法や清掃道具も重要だが、患者の熱心さやどれぐらい口腔清掃指導に従うかなどもまた清掃効果を左右する因子である。
歯ブラシの毛の硬さは植毛の直径と長さに関係している。ある程度の毛の硬さがないと、機械的にプラークを除去できない。毛先の柔らかい歯ブラシよりもふつうの硬さの方が有意に高く清掃効果のあることが示されている。ブラッシングによる歯肉の擦過創は一次的な現象で、歯肉の擦過創が全て歯肉退縮に至るわけではない。ブラッシングと歯肉退縮との関連性は、未だ結論には達していない事象である。
一日に何回磨けばよいか:一日に何度磨けば良いかに対する標準的な推薦指針はない。24時間に一度、歯間部清掃を含めて細部に至るまで、ブラッシングによってプラークを除去することは歯肉炎やう蝕を予防するのに理にかなった方法のように思える。アメリカの歯科医師会は1日2回を提唱している。26年間フォローの研究では、一日1回以上、毎日欠かさず口腔清掃をおこなった場合には、口腔清掃習慣を身につけなかった場合に比べて、歯の喪失リスクは49%減少する。
推奨されるブラッシング時間はしばしば2分と言われる。電動ブラシには2分タイマーがついているものもある。患者は実際に行なっているブラッシング時間よりも、長くブラッシングを行っていると自分では信じている。手用ブラシでのブラッシング時間はおおよそ30秒から60秒との報告がある。ブラッシング時間が長ければ、ブラッシングの効果もまた増加する。それゆえに、用いる歯ブラシ如何に関わらず、2分かそれ以上のブラッシングが推奨されるべきであろう。ブラッシング時間は効果的な毎日のブラッシングの最も容易にコントロールできるパラメーターでもある。
ブラッシング圧:歯ブラシは硬い表面からプラークを除去するに当たって、剪断力の適応を必要とする。歯ブラシにはあるレベル以上の硬さが必要で、歯面のプラーク除去にはある程度の力も必要となる。過剰なブラッシング力は歯ブラシによる擦過創の一因と言われる。ただ歯肉の擦過創はブラッシング力の影響を受けないという報告もある。
ブラッシング圧が1.0Nから3.0Nに上昇するにつれて、刷掃効果の増加も観察されている。ある特定の歯ブラシを用いての研究だが、4.0Nまではブラシ圧と清掃効果とには正の相関がみられたが、4.0Nを越えると効果はむしろ減少した。これは、ブラシの植毛の歪みによるものかも知れない。4.0Nを越えると、側方へ弯曲して、ブラッシング圧が清掃効果を決定する唯一の因子ではないこと示しているようだ。
歯ブラシの消耗:アメリカの歯周病学会でではブラシの毛がすり減る3,4ヶ月かそれ以前における、歯ブラシ交換を提唱している。消耗した歯ブラシの清掃効果は低下するであろう、ということは、理解はできても、これを明確に支持するエビデンスは少ない。
歯ブラシで効果的に清掃できる使用期間は、使用者のブラッシング習慣、ブラッシング頻度、ブラッシング時間、ブラッシング圧、ブラッシング方法などによって異なる。歯ブラシの使用期間はプラーク除去効果に重要なパラメーターではないように思える。それに対して、消耗率は清掃効果の低下に関して決定的な要因の1つである。歯ブラシの消耗は植毛の歪みや広がりなどの目に見える状態から判断できる。
舌背の清掃について:乳頭と溝のある舌背には多くの種類の微生物が生息している。舌背は口腔内の他の部位への細菌の供給源となっている。それゆえに、舌クリーニングは口腔ホームケアの1つとして提唱されている。舌清掃で口臭が減少するとか、他部位への菌の移動が減るとか報告があるが、逆に差がないとの報告もある。著者らの見解としては、重要なプラーク形成細菌の大部分は舌由来ではないと推測している。通常のブラッシングだけ、とブラッシング+舌クリーニングを比較した最近のシステマチックレビューでは、確かに舌まで清掃すると舌苔は減少するものの、推奨されるべき頻度、時間、方法についてのエビデンスはまだ確立されていない。
歯磨剤の機械的効果:プラーク除去を容易にする目的でブラッシング時には通常歯磨剤を併用する。伝統的に歯磨剤には研磨剤を配合すべきだとの考え方があった。研磨剤はプラーク除去を容易にし、ステインも除去することが想定されるからである。しかし、歯磨剤を使用したブラッシングは、歯磨剤を用いないブラッシングに比較して、追加的な効果はなかったとの報告がある。歯磨剤の使用や、研磨剤の配合がプラーク除去効果を高めることもなかった。むしろ歯磨剤を用いない方が有意に多く(3%)プラークを除去できた。歯磨剤を使用してもプラーク除去効果が増加するどころか、むしろ低下するという報告がなされている。少なくとも研磨剤の配合は、プラーク除去効果に関しては限定的との結論がなされている。プラーク除去効果は研磨剤の有無よりは、ブラシの毛先の到達度という機能が必須のようだ。
<まとめ>
1回のプロフェッショナルプロフィラキシスに加えて、1回の、歯ブラシを用いた口腔清掃指導は歯肉炎の軽減に、小さな効果がある。これには中等度のエビデンスである。
手用ブラシに関して、歯肉炎に有効であるとの系統だったエビデンスはない。
プラークスコアに関して、手用ブラシの清掃指導の治療効果は前後で42%の加重平均の差が評価される、という強いエビデンスがある。同様に電動ブラシに対して、ブラッシング指導も行った後には、おおよそ46%のプラーク減少の加重平均差として効果が評価される、という同じく強いエビデンスがある。
手用ブラシと電動ブラシの比較では、短期においても長期においても、電動ブラシは手用ブラシよりもプラークおよび歯肉炎を減少させる効果がある、という強いエビデンスがある。
現在のところ、短期的には回転振動タイプの電動ブラシが前後に振動するタイプよりもプラーク除去および歯肉炎に対して効果があるとの限定的なエビデンスがある。電動ブラシの他のいかなる様式についても優位性は確立していない。
歯ブラシの使用が歯肉に創傷を作りうるという状況証拠がある。ただ、ブラッシングと歯肉退縮については、その関連を支持するあるいは否定的な、強いが結論のでないエビデンスがある。手用ブラシと電動ブラシに関して言うと,歯ブラシの使用と軟組織の創傷との明確な関連はない。手用ブラシと回転振動タイプの電動ブラシとの間に歯肉退縮に関する有意差はない、という限定的ではあるが強いエビデンスはある。」
(平成27年9月22日)


No.367
Single versus double flap approach in periodontal regenerative treatment.
Schincaglia GP, Hebert E, Farina R, Simonelli A, Trombelli L.
J Clin Periodontol. 2015 Jun;42(6):557-66.

骨内欠損治療において、リコビナントヒト血小板由来増殖因子-BB(rhPDGF-BB 0.3mg)とβ-toricalcium phosphate(β-TCP)をベースとした再生治療の成績を、アクセス方法、シングルフラップアプローチ(SFA)とダブルフラップアプローチ(DFA)、の違いで比較することである。
15と13部位の欠損がそれぞれSFAとDFAに無作為に割り当てられ、rhPDGF-BB + β-TCPが移植された。プロービングパラメーターが、外科処置の前と6ヶ月後に評価された。ビジュアルアナログスケールを用いて、痛み(VASpain)が自己申告された。
12部位のSFAと6部位のDFAが術後2週間でフラップの完全閉鎖を示した。プロービングパラメーターおよびレントゲン的な欠損の再生について、6ヵ月後の変化に群間に有意差はなかった。1日、2日、6日後、DFA群に比較してSFA群は有意なVAS痛みの少なさが認められた。1日後SFA群に比較してDFA群では鎮痛剤の服用数が有意に多かった。
rhPDGF-BBとβ-TCPを組み合わせたとき、SFAはDFAと比較して同程度の臨床成績を示し、処置の治癒が良好で、術後最初の数日は痛みも鎮痛剤の服用も少なくてよい結果であった。
(ベータ三カルシウムリン酸、歯周炎、血小板由来増殖因子、外科的フラップ創傷治癒)
「頬側にだけフラップを翻転させるSFAと頬舌側にフラップをあける(ただしsimplified papilla preservation flap)との比較。
CAL獲得がSFAが4mmに対し、DFAは3.2mmとSFAの方が有利、ポケットデプスも4.1mmと3.6mmで良好な結果だったようだ(ただしともに有意差は無し)。そして、rhPDGF-BBがない場合でも、過去の報告だが、SFAが1mm上回っている。症例数が少ないので有意差はないが、少なくとも両処置は同等の臨床成績を示している。
まあ当たり前だと思うが、粘膜骨膜弁の翻転を片側だけと両側を比べれば、前者の方が侵襲は少ないので創面閉鎖や創傷治癒の安定も早かろう。もちろん歯肉退縮量も抑えられている。
少なくとも臨床成績や患者サイドのメリットはあるものの適応症は選ぶことになるだろう。口蓋側に欠損が広がるようだと頬側だけの弁アプローチしにくい。」
(平成27年8月16日)


No.366
Variables affecting tooth survival and changes in probing depth: a long-term follow-up ofperiodontitis patients.
Saminsky M, Halperin-Sternfeld M, Machtei EE, Horwitz J.
J Clin Periodontol. 2015 Jun;42(6):513-9.

この研究の目的は、18年までフォローされた、歯周治療開業医患者において、歯の残存率および患者と口腔内変数との関連を評価することである。
最初の診査(T0)、再評価(TRe)とT0後10年以上(TF)を含む病歴記録があり、歯周治療とTReの後もサポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)を受けた、歯周治療開業医の患者が含まれた。全身状態、プラークスコア(PI)、6点法プロービングデプス(PPD)、プロービング時の出血、抜歯とSPT受診がT0、TRe、とTF時の患者ファイルからデータが抽出された。記述統計とcox回帰分析が行われた。
50人の患者(26 ± 4 本/患者、1301本)が包含基準を満たした。20本と129本がTRe前/後でそれぞれ抜歯された。それらのうち96本が歯周病が原因であった。TRe時にPPD>7mm (HR = 17.7, 95%CI 8.6, 36.6)、60歳以上 (HR = 3.3, 95%CI 1.5, 7.2)、複根歯(HR = 1.9, 95%CI 1.2, 3.1)、そしてSPT<3 回/年 (HR = 1.8, 95%CI 1.1, 2.9)がフォロー期間中、歯の喪失に対する最もベストの予後因子であった(p < 0.05, Cox 回帰分析)。 継続する、統計学的に有意な減少が、フォロー期間中残存した歯で、平均PPDに認められた[T0 , TRe , TF でそれぞれ、4.3 ± 1.8 mm、3.5 ± 1.4 mm、3.2 ± 1.3 mm(p < 0.001, Repeated-measures test)].
定期的なSPTは低い歯の喪失率とプロービングデプスの継続した減少と関連があった。初期治療後のPPD、60歳以上、複根歯、頻度低いSPTは歯周治療患者内で長期の歯の存続に対する強いネガティブな予後因子であった。
(長期フォロー、歯周治療プライベートオフィスと統計予知モデル、歯周リスク因子、プロービングポケットデプス、サポーティブペリオドンタルセラピー、歯の喪失)
「今回8-18年フォローで、歯の喪失率は7.5%で、0.16本/人/年であった。似たような報告では、喪失率は7.7%(10年)、7.1%(22年)から低いところでは1.8%(10年)や1.5%(9から10年)とあり、システマティックレビューでは1.5~9.8%との数字が出されている。
ポケットは抜歯となった歯を除いて平均でいうと減少している。中等度ポケットの73.9%と深いポケットの89.3%はメインテナンス中に改善していたが、浅いポケットの6.1%と中等度ポケットの2.3%が逆に悪化したようだ。
SPT受診が低かった人のリスクはあまり高くなかった。これは低受診の患者の深いポケット率が非常に低い(3%)ということがあったからのようだ。過去の報告では低SPTは5.6倍のリスクがあるとかの報告もあるからね。
このような結果をみていつもしみじみ思うのだが、60歳以上とか、複根歯とか、再評価時のポケット深さだとか、リスクが高いといわれても、患者さんにとってはどうしようもない要因だよね。」
(平成27年8月9日)


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