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スイス滞在騒動記(その14)

スイスとスイス人A


  どうもスイス人というと頑固で、自分勝手で、unfriendlyでなどと周りの国からギャグ半分烙印を押されているようです。そう日本人がエコノミックアニマルといわれているような感覚で。スイスは山国で耕地が少なく、また資源もないため大昔は貧乏な国だったようです。いろいろあってそれが今は周りの国が不景気であえいでいるようなときでもスイスでは失業率が少なく永世中立と称して戦争に関わらずにすんで豊かに暮らしている、と周囲の国に思われているようです。スイスがそんな風に周辺国から思われているとは知りませんでした。
 第二次大戦中スイスはドイツ枢軸国及びその占領地によって周囲を囲まれました。ドイツは枢軸国イタリアとの輸送ルート確保のためスイスを支配下におさめる必要がありました。でも結果的にドイツはスイスへ軍を進めませんでした。その理由として、機動力のあったドイツ軍も自然の要塞が守る山国スイスへは侵攻し難かった、宿敵イギリス攻略を優先したなどがありますが、スイスがドイツ・イタリア間の輸送の安全を確約したことも大きいようです。自由に通行できるのになまじ時間やお金をかけて兵を進めて変に抵抗されて輸送に必要な道路やトンネルを爆破でもされるとその復旧が大変というドイツの考えがあったようです。そればかりか、スイスはドイツが必要とした工業製品や兵器なども多く輸出していたようです。そしてお金。戦時中安全を求めて種々の国から集まってきたお金。もちろんスイスの銀行を信用して。その中で今でも問題になっているのが、ユダヤ人たちが預けたお金です。多くのユダヤ人がスイスの銀行へお金をあずけました。しかし、少なからずのユダヤ人が・・・。口の悪いヒトが曰く、スイスは枢軸国に加担しながら他人の不幸を横目に永世中立という立場を利用して多くの甘い汁を吸ってきた。実際にはスイスも戦場と化する可能性もありそれなりの苦労はあったのでしょうが。
 このような背景もあってスイスは周りの国から何かと言われることがあるようです。でも永世中立がそのような目的で宣言したわけではないでしょうけどね。
 スイスの人は本当にunfriendlyか。一般的な傾向として確かにそうは感じます。でも、・・・・・私達の隣の住人、ある日突然呼び鈴がなって私達の前に現れます。なんかわからんけどなんか言っている。僕たちは最初なんか文句いってんのかと思ってびくびくしてたんですが、なんかついてこいと屋根裏に、一緒に行って扉を開けるとなんとそこには子供の遊び道具が。その人は英語が全くダメで我々もその人にはカタコトのドイツ語が全く通じなくて、我々は全く会話が出来ないのですが、その人の身振りで曰く、裏庭で子供が遊んでいるのを見てsympathyを感じる。どうも我々の住んでる部屋の本来の住人から日本から人が来るというのは知っていたみたいです。遠くから異国へ子供を連れて大変でしょう、ということでしょうか。子供が大きくなっていらなくなったおもちゃを幾らでも使ったらいい、といっているみたいなのです。それから時々うちから作ったものをもっていく、向こうから作ったからと料理やお菓子を持ってきたりしてくれます。相変わらずほとんど会話は成り立ちませんが。
  私はこちらへ来るまで知らなかったのですがスイスでは国民の男子全員が兵役の義務を負います。女子は志願兵。通算すると1年ほどの兵役義務があるようです。職場でも「おれは来週から兵役に行くから」と数週間いなくなるそうです。確かに週末など軍服を着た人を駅などでよく見かけます。長い銃を持ったおぼこい顔の軍服兄ちゃんに横に座られたりして。ですからかれらは銃を扱えるのです。そのうえ各家庭では銃の保持を含むある最低限の武装が義務づけられているそうです。スイスで発砲騒ぎや銃による殺人が多いなどあまり聞いたことがありませんでした。ー銃の所持を禁止しようというどこかのキャンペーンが少し滑稽に思えるぐらいーそれから、築10年以内の住宅には核シェルターを併設する事が義務づけられています。これは知り合った日本人方のアパートで真剣なやつを見せてもらいました。分厚い扉とエアーフィルターまで付いていました。我々のアパートは古いせいかそんな真剣なものはありませんでした。でも核シェルターといっても普段は地下の物置となっているのですが・・・。このスイスの人はこれをどれぐらい有効なものとして、どれくらい真剣に作っているのか知りませんが、少なくとも法律で決まっているからカッコつくもんをつくっといたらいいええねというやり方ではないようです。核戦争があっても自分たちだけは生き残る?
  それから食料や種々の備蓄も個人のレベルから国家レベルまで強力に行われているようです。第二次大戦中スイスは周囲をドイツ、イタリア枢軸軍に囲まれていたことを書きました。彼らはスイスを封鎖する事も簡単に出来たわけです。スイス人にはこのような経験が強烈に残っているのでしょうか。食料を自国の生産だけではまかないきれないスイスにとってこのような状況は致命的なこと、との認識がかなり強いようです。日本もそうですけど日本と違って、スイスは高いお金をかけて自国の農業を保護する選択肢のようです。輸入すればイタリアやフランスその他の地中海諸国などから幾らでも安い農作物がはいって来るようですが。自国の農業は絶対つぶさせないようしているようです。
  彼らの生活は非常に質素です。そしてまじめですね。ものの作りがしっかりしていてそれを長く使う。安くするために質が悪くなるようなことはしない感じです。→そのBへ続く

(平成21年12月13日追加)

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