スイス滞在騒動記(その2)
大学への手紙 後半
「手紙」その1からの続きです。 (その1が手紙前半、その2が後半です)
ここベルンではーたぶんスイスではーお金持ちは別として一般庶民の殆どが共同住宅住まいです。あまり住宅事情はよくありません。住むに当たっての制約は厳しく、夜10時から翌朝6時までの入浴は禁止、日曜日に掃除、洗濯をしてはしいけない、大きな音は出してはいけない、平日でもお昼1時から3時までは静かに過ごすこと、夜10以降のテレビは静かに見ること、出窓にものをおいてはいけない(ただし他へ植え次ぐための食物はよい)etc、こんな規約が厳格に定められています。われわれは住んでまだ日が浅く洗礼は受けてませんが、知り合った日本人の人は、前述の「掟」に従っていないと周りからクレームを受けたそうです。アパートでの洗濯場はたいがい共同のようで、そんなんでやっていけるの!とびっくりしました。場所によってやり方が異なるようですが、空いていればいつ使ってもよい、ノートがあって予約をするやり方、各部屋の住人によって使用できる曜日が決まっているなど、のルールが各共同住宅で共同の洗濯機の使用法が決まっていました。ただ実際には洗濯機が使用中で使えなかった、ということは殆どありませんでした。我々日本人はかなりの頻度で洗濯をする民族のようです。 われわれが入ったアパートの部屋は丁寧に使用されていて清潔感あふれる部屋でした。古い建物ですが部屋はぴかぴか、置物や家具の後ろ、天井の隅に至るまでほこり一つありません。大げさではありません。こちらの賃貸契約ではー部屋を空けるときは入った時と同じ状態で出て行くことーとあり、これが文字通り実行されるそうです。ある日本人のひとは大金はたいてプロの掃除屋さん(もとの通りに修復して掃除する専門家:商売が成り立っている)に頼んだそうですがそれでも大家さんにクレームされたそうです。もちろんゴミを出すのも生半可ではありません。35literの公式ポリ袋を130円(一袋!)で買って決められた日と場所に決められた内容のゴミを出します。 買い物を少しちゃかして書きましたが、ものをレジへ並べたり、詰め込むのもお客、たいがいの店では包んだり袋にいれたりしません。ましてやテープを貼るもしません。土曜日は午後4時まで、日曜日は基本的に全てのお店がお休みです。開いているのは中央駅のキオスクのたぐいと一部のレストラン、あとはマクドナルドぐらいでしょうか。日曜日わずかに開いている店も混雑してはいません。 駅には改札がありません。郊外電車、トラムやバスはお客が目的地までの該当する金額の切符を自販機で買って(スイス国鉄では切符を売る窓口があっても改札はない)電車がくれば乗り込みます。そして目的地で降ります。電車が駅に着くと扉の横にあるボタンを押す、するとしばらくの間だけ扉が開くのです。降りるのも同じ。車掌が開けたり閉めたりしないのです。これは大阪の街で育った私にはとんでもないルールに思えました。私は定期を買いましたがいつもポケットに入れてるだけ、取り出すことも誰に見せることもありません。(この手紙を書いた時点ではそうでしたが、これには裏があることが後になってわかりました。別の機会にお話しします) 信号待ちの時エンジンを止める車が少なくありません、遮断機でも降りようものならほとんどの車がエンジンをとめます。青になると一斉にエンジンをかけます。少しでも排気ガスを減らそうとするのでしょうか。遮断機と言えば、踏切を車で通りすぎるときが日本と全く発想が違います。日本では一旦停止ですよね。こちらでは止まることがダメで、アクセルをふかして止まらずに通り過ぎるのがルールなのです。おもしろいですね。 中央駅から大学まではトラム、バスでも、歩いてもいけます。この中世の町並み広がるベルンの町中を歩いていると、おれは何でこんなとこ歩いてるんやろう、ついさっきまで難波の雑踏を歩いていたのに・・・ 飛行機のなかであと1/4ぐらいというとき子供に「ラピートのっておうち帰りたい」、最初のホテルでは「ここは善友のおうちちゃう」といわれて親が不安な気持ちでいただけにとても落ち込んだものでした。
新しい住居についてから子供たちはホームシックもなく元気に遊んでいます。裏は芝生が広がり、電車にもすぐ乗れるのでご機嫌です。ただ保育所でお友達と遊んでいたのが、ここではまだスイスのお友達がいないのでちょっとその点は発散できないようです。 何日かかけてこの文章をうちましたが今日日曜日は久しぶりに良い天気です。まわりに家はありますが人が住んでいるとはとても思えません。でもえんとつからは湯気でしょうか、たなびくこともなくそれぞれの家から白いものが立ちのぼっているのが見えます。たくさん持ってきたCDは適当な時期に送り返そうと思っています。小鳥のさえずりと教会の鐘だけが澄み渡った緑と青い空に響きます。
柔らかい陽ざし、青、緑と白のなかで
Ittigen、Switzerland よしお、みちよ、よしとも、よしまさ
PS週末中央駅はごった返していました。スキーのヤッケを着て、スキーとわずかの荷物を持って、大勢の人、家族連れがスキー靴のまま駅の中、プラットホームを闊歩していました。
(2007.5月19日更新)
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