しまぶくろ歯科医院 番外編コラム 本文へジャンプ

スイス滞在記(その15 )


スイスとスイス人B


  子供を持つ我々にとってよかったことのひとつに治安がいい、ということがありました。日本と同じくらいの感覚で、まー平和でしたね。でもあとで、ラボの人に「おまえたちは知らずに危ないところにいっていた」なんて言われましたがね。でも子供と街を歩いていて危険を感じたことなどありませんし、そんな場所もありませんでした。ベルンは都会ではなく田舎町ということかも知れませんが。
  スーパーにはたいがい掲示板がありました。そこには色んな張り紙がしてありました。またバス停や大学の入り口でも、よく張り紙がしてありました。それらの張り紙には住所と電話番号、ご丁寧に電話番号のところを控えとして持って帰れるように、電話番号をたくさん書いてはさみを入れてあるのもよく見かけました。内容はというと、ピンサロのやテレクラの張り紙ではありません。張り紙いわく、「家(部屋)を探しています、3+1/2」、「車売りますスズキ・・・」、「コンピューターの買い手求む・・・」などなど。
ちょっと話はそれます。同じベルン大学の医学部の人が、引っ越そうと大家さんに申し出ると、次の借り手を捜せと言われたそうです。ちょっとびっくり。こちららの賃借関係は日本とはかなり違っていました。貸し手の立場は絶大で、また不動産屋を介した賃借はあまりないように見受けられました。国土が狭く住宅も不足していて、需要に比して供給が少ないからだと考えられます。不動産屋さんを介さないのは、どうも個人で探そうと思えば探すことの出来るほどの生活圏の狭さ、そして一番の理由、スイス人が節約家(けち)ゆえにこのような方法が一般的になるように思えました。先の医学部の日本人の方は、結局いろんなところへ張り紙をして新しい借り手を見つけたそうです。ラボのスイス人に聞くと、その人は6、7回転居したそうですが(それぐらいの引っ越しはふつうだそうです)、その人も全て新聞や張り紙のたぐいあるいは直接見つけて来たそうです。「何故不動産屋さんで探さないんだ」と聞くと、そんな馬鹿なこと出来るもんかという顔で「高い手数料をとられるから」の一言でした。
  ええとなにが言いたかったかと言うと張り紙の話でした。そう、電話と住所、名前まで世間へそうやって公開するわけです。ちょっと考えられません。「ムラ」のような社会に思えました。そういえば、奥さんの日本の実家から手紙が来ましたが、住所だけしか書かれていないのに、つまり島袋の宛名がないのに、ちゃんと(?)届いていました。のどかでへいわ〜。
  ただちょっと言い過ぎかなと思うのは、研究室では盗難被害のことがいつも警告されていました。ちょっと席を外すときも、貴重品は必ず鍵のかかったところへといわれました。またこの国もヨーロッパの他の国と同様、ご多分に漏れず他国(特に東欧、第三世界)からの流入者が問題になっているようです。ここはドラッグをする人が多いようで、日常茶飯事的に街中でクスリの取引がされているとも聞きました。国会議事堂の裏手がそんな取引場所の一つだそうで、新聞で議事堂の裏手に柵とゲートを作る計画が新聞に載ってました。ドラッグをする人のために、こちらでは当局がヤク中のたまり場へ滅菌済みの注射器などを無料でばらまくようです。麻薬を持つこと自体は法に触れないと聞きました。ドラッガーは病院でドラッグを与えて管理しよう、と計画して国連からクレームされたとも聞きました。やるのは勝手だけど自己完結してね、他人に迷惑かけるようなことにならないでね。という姿勢でしょうか。
 表面的には平和でも、仮住まいの我々にはわからない色んな問題があるようです。

(平成 22年 1月 28日追加

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